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現代数学解説
文献あり

D. ShanksによるGauss和の符号決定

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前回の記事 で示したD. Shanksによる等式
(q2;q2)n(q;q2)nj=0n(q;q2)j(q2;q2)jqn(2j+1)=j=02nq(j+12)(q2;q2)n(q;q2)nj=0n1(q;q2)j(q2;q2)jqn(2j+1)=j=02n1q(j+12)
はGauss和の符号決定に応用することができる. 奇数Nに対して, Gauss和の二乗が
(k=0N1e2πik2N)2=(1)N12N
となることは比較的容易に示されることであり,
k=0N1e2πik2N=±(1)N12N
であることまでは分かる. しかし, その符号を決定することはそれより難しい問題として知られている. 以下はD. Shanksによる1958年の証明である.

Gauss和

k=0N1e2πik2N={NN=1(mod4)iNN=3(mod4)

Shanksによる等式
(q2;q2)n(q;q2)nj=0n(q;q2)j(q2;q2)jqn(2j+1)=j=02nq(j+12)(q2;q2)n(q;q2)nj=0n1(q;q2)j(q2;q2)jqn(2j+1)=j=02n1q(j+12)
において, q=v2,v=eiθとすると,
(q2;q2)n(q;q2)n=vnk=1nv2kv2kv2k1v12k=vnk=1nsin2kθsin(2k1)θ
ここで,
Qn:=k=1nsin2kθsin(2k1)θ
とすると, 2つの等式は
j=0nQnQjvjn4jn=j=02nvj2jj=0n1QnQjvjn4jn=j=02n1vj2j
θを実数として複素共役を考えると,
j=0nQnQjvj+n+4jn=j=02nvj2+jj=0n1QnQjvj+n+4jn=j=02n1vj2+j
となる. Nを奇数として, N:=2r+1,θ:=2πNとすると,
k=0N1vk2=k=rrv(r+k)2=vr2k=rrv(N1)k+k2=vr2k=rrvk2k=vr2(k=0r1vk2+k+k=0rvk2+k)
rを偶数のとき, r=2nとすると,
k=0N1vk2=v4n2(k=02n1vk2+k+k=02nvk2+k)=j=0l1QnQjv(j+n)(4n+1)+j=0lQnQjv(j+n)(4n+1)=j=0n1QnQj+j=0nQnQj(v4n+1=1)
ここで, Qkk=0,1,,nに対して正の実数であるから,
k=0N1vk2=N
である. rが奇数のとき, r=2n+1とすると,
k=0N1vk2=v(2n+1)2(k=02nvk2+k+k=02n+1vk2+k)=v(2l+1)2(j=0nQnQjvj+n+4jn+j=0nQn+1Qjvj+(n+1)+4j(n+1))=j=0nv(4n+3)(n+j)(v2n+12jQnQj+v2n+2+2jQn+1Qn)
ここで, v4n+3=1
Qn+1=sin(2n+2)θsin(2n+1)θQn=Qn
であることから,
k=0N1vk2=2ij=0nsin((2n+12j)θ)QnQj
を得る. これは虚部が正である. よって,
k=0N1vk2=iN
が成り立つ.

q級数の有限和の等式を応用することで, 符号が分かるのは興味深いと思う.

参考文献

[1]
Daniel Shanks, Two theorem of Gauss, Pacific J. Math, 1958, 609-612
投稿日:31
更新日:32
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Wataru
Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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