皆様ごきげんよう。
三角関数は、角と数を結び付ける関数です。三角形の辺の比から始まった$\sin,\cos,\tan$を、どんな角に対しても使えるようにすると、回転や周期的な変化も表せます。
この連作は、①基礎を理解する、②問題の条件から解法を選ぶ、③実際の問題で使う、という三段階で進みます。
第1回では、数学Ⅱの三角関数を初めて学ぶ方に向けて、定義、グラフ、公式、その基本的な使い方を説明します。
数学Ⅰの二次方程式や三角比は使いますが、ベクトル・複素数平面・微分積分は使いません。
公式を覚えるときは、どの角の関係を表しているか、どの条件で使えるかも一緒に確認してください。
第2回で解法を選ぶための土台になります。
初めて読む場合は、①一般角と単位円、②グラフ、③加法定理と倍角・半角、④積和・和積と合成、⑤方程式・不等式、と分けて学習してください。
それぞれの確認問題を、説明を閉じて解き直してから先へ進みます。
公式の導出で止まったときと、値の符号や区間で止まったときでは、読み直す場所が違います。
特殊角の表は、最初は単位円と直角三角形から作れれば十分です。
その後は計算のたびに全てを導き直さなくても使えるよう、短い確認問題で繰り返します。
公式を再構成できることと、速やかに使えることの両方を育てます。
この記事では、角や数の範囲を短く書くため、区間の記号を使います。$a\lt b$として、$[a,b]$は$a\leq x\leq b$を満たす実数$x$全体、$(a,b)$は$a\lt x\lt b$を満たす実数$x$全体です。$[a,b)$は$a\leq x\lt b$、$(a,b]$は$a\lt x\leq b$です。角括弧側の端を含み、丸括弧側の端を含みません。
点の座標にも$(a,b)$を使いますが、区間か点かは文脈で区別します。また、$\{a,b\}$は列挙した二つの数の集合、$[a,+\infty)$は$x\geq a$、$(-\infty,b]$は$x\leq b$を満たす実数全体です。$\infty$は実数の端点ではなく、上または下に限りがないことを示し、角括弧で含める対象ではありません。
$x\in I$は「$x$が範囲$I$に入る」、$I\cup J$は「$I$または$J$に入る数全体」を表します。関数の定義域は入れてよい数の範囲、値域は実際に出てくる値の範囲です。記号が読みづらいときは、不等式へ戻して読んでください。
平面上で、原点から右向きに延びる半直線を出発点にします。この半直線を原点の周りで回した角を考え、反時計回りを正、時計回りを負とします。
例えば$90^\circ$は反時計回りに四分の一周、$-90^\circ$は時計回りに四分の一周です。$450^\circ$は一周してからさらに$90^\circ$回った角です。このように、$0^\circ$から$180^\circ$だけに限らず、負の角や一周を超える角も扱うものを一般角といいます。
$90^\circ$と$450^\circ$は、回った量は違いますが、最後の半直線の位置は同じです。角そのものと、その角が指す方向を区別しておきましょう。
半径$r$の円で、$0$以上、一周以下の中心角に対応する弧の長さを$l$とすると、比$l/r$は円の大きさによらず決まります。この比を角の大きさとするのが弧度法です。単位はラジアンですが、数式では通常省略します。
一周の弧長は$2\pi r$なので、一周は$2\pi$、半周は$\pi$です。
度数法と弧度法
$\displaystyle 180^\circ=\pi,\qquad 1^\circ=\frac{\pi}{180}$
$\displaystyle 30^\circ=\frac\pi6,\quad45^\circ=\frac\pi4,\quad60^\circ=\frac\pi3,\quad90^\circ=\frac\pi2$
$\displaystyle l=r\theta,\qquad S=\frac12r^2\theta$
確認問題 1
半径$4$、中心角$-30^\circ$の回転を考える。(1)角を弧度で表せ。(2)終辺の方向が同じで、$0\leq\theta\lt 2\pi$に入る角を求めよ。(3)中心角$5\pi/6$の扇形の弧長と面積を求めよ。
(1)$-\pi/6$。(2)$-\pi/6+2\pi=11\pi/6$。(3)弧長$10\pi/3$、面積$20\pi/3$。
回転の符号と、通常の扇形の正の中心角を区別します。方向を戻す操作では、元の回転量まで同じになるわけではありません。
原点を中心とする半径$1$の円を単位円といいます。角$\theta$が指す半直線と単位円の交点を$P=(x,y)$とします。
三角関数の定義
$\displaystyle\cos\theta=x,\qquad\sin\theta=y$
$\displaystyle\tan\theta=\frac yx=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}\quad(\cos\theta\ne0)$
単位円上の点 $P$。横座標が $\cos\theta$、縦座標が $\sin\theta$(図は鋭角の一例)。
$\displaystyle \theta=\frac\pi2+n\pi\quad(n\text{は整数})$
第一象限から順に、座標の符号を読めば十分です。
| 象限 | $\cos\theta$ | $\sin\theta$ | $\tan\theta$ |
|---|---|---|---|
| 第1 | 正 | 正 | 正 |
| 第2 | 負 | 正 | 負 |
| 第3 | 負 | 負 | 正 |
| 第4 | 正 | 負 | 負 |
| $\theta$ | $0$ | $\pi/6$ | $\pi/4$ | $\pi/3$ | $\pi/2$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $\sin\theta$ | $0$ | $1/2$ | $\sqrt2/2$ | $\sqrt3/2$ | $1$ |
| $\cos\theta$ | $1$ | $\sqrt3/2$ | $\sqrt2/2$ | $1/2$ | $0$ |
| $\tan\theta$ | $0$ | $1/\sqrt3$ | $1$ | $\sqrt3$ | 未定義 |
$P$は単位円上なので$x^2+y^2=1$です。したがって
$\displaystyle \boxed{\sin^2\theta+\cos^2\theta=1}.$
$\displaystyle \boxed{1+\tan^2\theta=\frac1{\cos^2\theta}}$
単位円上で$x$軸に関して反転すると$(x,y)$が$(x,-y)$になり、角は$-\theta$になります。同じように、$y$軸で反転すると角は$\pi-\theta$です。
| 角 | 正弦 | 余弦 |
|---|---|---|
| $-\theta$ | $-\sin\theta$ | $\cos\theta$ |
| $\pi-\theta$ | $\sin\theta$ | $-\cos\theta$ |
| $\pi+\theta$ | $-\sin\theta$ | $-\cos\theta$ |
| $\pi/2-\theta$ | $\cos\theta$ | $\sin\theta$ |
確認問題 2
$\pi\lt \theta\lt 3\pi/2$、$\cos\theta=-12/13$のとき、$\sin\theta,\tan\theta$を求めよ。角の範囲がなかった場合、何が決まらないかも述べよ。
$\sin^2\theta=1-144/169=25/169$。第三象限なので$\sin\theta=-5/13$、$\tan\theta=5/12$。範囲がなければ正弦の符号が二通りあり、正接も$\pm5/12$の二通り。
二乗の式が与えるのは絶対値までです。符号は単位円上の位置から補います。
一周回ると単位円上の同じ点に戻るため
$\displaystyle \sin(\theta+2\pi)=\sin\theta,\qquad\cos(\theta+2\pi)=\cos\theta.$
$\displaystyle \tan(\theta+\pi)=\tan\theta$
$\sin x$は単位円上の点の高さです。$0$から反時計回りに進むと、高さは$0\to1\to0\to-1\to0$と変わります。
正弦は高さ、余弦は横座標の変化。どちらも一周 $2\pi$ で同じ形に戻ります。
| $x$ | $0$ | $\pi/2$ | $\pi$ | $3\pi/2$ | $2\pi$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $\sin x$ | $0$ | $1$ | $0$ | $-1$ | $0$ |
| $\cos x$ | $1$ | $0$ | $-1$ | $0$ | $1$ |
$-\pi/2\lt x\lt \pi/2$では、直線$OP$の傾きが負から正へ増加し、$\tan x$はすべての実数値を一度ずつ取ります。$x=0$では$0$、$x=\pm\pi/4$では$\pm1$です。
破線上の $x=\pm\pi/2$ では正接は未定義。各枝は増加し、周期は $\pi$。
$\displaystyle -\frac\pi2+n\pi\lt x\lt \frac\pi2+n\pi$
$y=f(x)$のグラフ上に$(u,f(u))$があるとします。新しい式の中身が$u$になる$x$を求めれば、その点の移動先が分かります。
| 新しい式 | 元の点の移動先 | 起こる変化 |
|---|---|---|
| $y=f(x-a)$ | $(u+a,f(u))$ | 右へ$a$($a\lt 0$なら左) |
| $y=f(x)+d$ | $(u,f(u)+d)$ | 上へ$d$ |
| $y=Af(x)$ | $(u,Af(u))$ | 縦の長さが$|A|$倍。$A\lt 0$なら$x$軸で反転 |
| $y=f(Bx)$、$B\ne0$ | $(u/B,f(u))$ | 横の長さが$1/|B|$倍。$B\lt 0$なら$y$軸で反転 |
ここでは$x$が動く変数で、$A,B,C,D$は一つのグラフを決める固定した定数です。これらの定数を変えて複数のグラフを比べるときは、パラメータとして扱います。
$y=Af(Bx+C)+D$で$B\ne0$なら、元の点は
$\displaystyle \boxed{(u,f(u))\longmapsto\left(\frac{u-C}{B},Af(u)+D\right)}.$
| 元の入力$u$ | $0$ | $\pi/2$ | $\pi$ | $3\pi/2$ | $2\pi$ |
|---|---|---|---|---|---|
| 新しい$x$ | $\pi/6$ | $5\pi/12$ | $2\pi/3$ | $11\pi/12$ | $7\pi/6$ |
| 新しい$y$ | $1$ | $3$ | $1$ | $-1$ | $1$ |
同じ高さを取る点が、横に半分の位置へ移ります。青は $y=\sin x$、緑は $y=\sin2x$。
青は $y=\sin x$、緑は $y=2\sin(2x-\pi/3)+1$。緑の中心線は $y=1$、周期は $\pi$。
$y=-2\sin(-2x+\pi/2)+1$を考えます。$u=-2x+\pi/2$なら、基本正弦の点$(u,v)$は$(\pi/4-u/2,1-2v)$へ移ります。$u$が増えると$x$は減り、元の山$v=1$は$y=-1$の谷へ移ります。
| 元の入力$u$ | $0$ | $\pi/2$ | $\pi$ | $3\pi/2$ | $2\pi$ |
|---|---|---|---|---|---|
| 新しい$x$ | $\pi/4$ | $0$ | $-\pi/4$ | $-\pi/2$ | $-3\pi/4$ |
| 新しい$y$ | $1$ | $-1$ | $1$ | $3$ | $1$ |
同じ番号が対応する点です。元の入力が増えると新しい入力は減り、山は谷へ移ります。
$g(x)=2f(x/3+1)-4$なら、$f$の点$(u,v)$は$g$の点$(3u-3,2v-4)$へ移ります。「横三倍」と「左へ移動」を並べるだけでなく、この点の対応を使えば移動の順序で迷いません。逆に$g$上の点$(x,y)$に対応する$f$の点は$(x/3+1,(y+4)/2)$です。
三角関数では、山・谷・零点・中心線を通る点を対応させると、グラフの式を確かめやすくなります。ただし同じ周期と上下の端を持つだけでは、任意の曲線が正弦波だとは決まりません。式を逆に作る問題では「正弦・余弦の移動と伸縮でできたグラフ」という前提を使います。
正弦・余弦を移動・伸縮した波と分かっていて、「最大値$3$、最小値$-1$、最小周期$\pi$、$x=\pi/6$で最大」なら、上下の平均から$D=1$、半差から振幅$2$、周期から$|B|=2$と読めます。最大になる点を余弦の山へ合わせれば
$\displaystyle y=2\cos\left(2\left(x-\frac\pi6\right)\right)+1.$
確認問題 3
関数$f$のグラフ上に$(2,3)$がある。(1)$y=f(2x)$の対応する点、(2)$y=-2f(3x-6)+1$の対応する点を求めよ。
(1)$2x=2$より$(1,3)$。(2)$3x-6=2$より$x=8/3$、縦座標は$-2\cdot3+1=-5$。従って$(8/3,-5)$。
元の入力を固定し、括弧の中身をその入力へ合わせます。係数をそのまま横の倍率にしないでください。
確認問題 4
(1)$y=-2\cos(2x-\pi/2)+1$の振幅、最小周期、値域、$x=0,\pi/4,\pi/2$での値を求めよ。(2)最大値$2$、最小値$-4$、最小周期$4\pi$で、$x=\pi$に山がある正弦波を、一つの余弦で表せ。
(1)振幅$2$、周期$\pi$、値域$[-1,3]$。三つの値は順に$1,-1,1$。(2)波の中心$-1$、振幅$3$、横係数$1/2$より、例えば$y=3\cos((x-\pi)/2)-1$。
(2)は「平均・半差・一周期の幅・山の位置」の順に読むと、式を逆向きに作れます。
角を足したとき、三角関数の値は単純な足し算になりません。例えば$\sin(\pi/6+\pi/6)=\sqrt3/2$ですが、$\sin(\pi/6)+\sin(\pi/6)=1$です。
正しい関係が加法定理です。
$\displaystyle \begin{aligned} \sin(\alpha\pm\beta)&=\sin\alpha\cos\beta\pm\cos\alpha\sin\beta,\\ \cos(\alpha\pm\beta)&=\cos\alpha\cos\beta\mp\sin\alpha\sin\beta. \end{aligned}$
単位円上で$P=(\cos\alpha,\sin\alpha)$、$Q=(\cos\beta,\sin\beta)$とすると、座標から
$\displaystyle PQ^2=2-2(\cos\alpha\cos\beta+\sin\alpha\sin\beta).$
$\displaystyle \cos(\alpha-\beta)=\cos\alpha\cos\beta+\sin\alpha\sin\beta.$
$\displaystyle \begin{aligned}\sin(\alpha+\beta)&=\cos\left((\pi/2-\alpha)-\beta\right)\\&=\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta.\end{aligned}$
$\displaystyle \tan(\alpha\pm\beta)=\frac{\tan\alpha\pm\tan\beta}{1\mp\tan\alpha\tan\beta}$
$\displaystyle \sin\frac\pi{12}=\frac{\sqrt6-\sqrt2}{4}$
確認問題 5
$\cos(\pi/12)$と$\tan(\pi/12)$を求めよ。
$\pi/12=\pi/4-\pi/6$より、$\cos(\pi/12)=(\sqrt6+\sqrt2)/4$。正接の公式の分母は$1+1/\sqrt3\gt 0$なので、$\tan(\pi/12)=(1-1/\sqrt3)/(1+1/\sqrt3)=2-\sqrt3$。
既知の角の差へ分け、余弦の符号と正接の分母を確認します。
加法定理で$\alpha=\beta=\theta$とすると
$\displaystyle \begin{aligned} \sin2\theta&=2\sin\theta\cos\theta,\\ \cos2\theta&=\cos^2\theta-\sin^2\theta\\ &=1-2\sin^2\theta=2\cos^2\theta-1,\\ \tan2\theta&=\frac{2\tan\theta}{1-\tan^2\theta} \end{aligned}$
確認問題 6
$\pi/2\lt \theta\lt \pi$、$\sin\theta=4/5$のとき、$\sin2\theta,\cos2\theta$を求めよ。
$\cos\theta=-3/5$なので$\sin2\theta=-24/25$、$\cos2\theta=1-2(16/25)=-7/25$。
正弦の倍角には余弦の符号が必要です。余弦の倍角は正弦だけの式を選べます。
$\displaystyle \sin^2\frac\theta2=\frac{1-\cos\theta}{2},\qquad \cos^2\frac\theta2=\frac{1+\cos\theta}{2}.$
$\displaystyle \tan\frac\theta2=\frac{\sin\theta}{1+\cos\theta}$
確認問題 7
$\pi\lt \theta\lt 2\pi$、$\cos\theta=1/3$とする。$\sin(\theta/2),\cos(\theta/2)$を求めよ。
$\pi/2\lt \theta/2\lt \pi$より、正弦は正、余弦は負。従って$\sin(\theta/2)=1/\sqrt3$、$\cos(\theta/2)=-\sqrt{2/3}$。
平方根の正負は、元の角ではなく半分にした角の象限で決めます。
$\displaystyle \boxed{\sin3\theta=3\sin\theta-4\sin^3\theta},\qquad \boxed{\cos3\theta=4\cos^3\theta-3\cos\theta}$
確認問題 8
加法定理を$2\theta+\theta$へ使い、$\cos3\theta=4\cos^3\theta-3\cos\theta$を自力で導け。
$c=\cos\theta,s=\sin\theta$とすると、$\cos3\theta=(2c^2-1)c-2s^2c$。$s^2=1-c^2$を代入して$4c^3-3c$を得る。
残す関数を余弦に決め、途中に現れた正弦の二乗を消す経験をしてください。
まず一つを、手順まで確認します。
$\displaystyle \begin{aligned}\sin(\alpha+\beta)&=\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta,\\\sin(\alpha-\beta)&=\sin\alpha\cos\beta-\cos\alpha\sin\beta.\end{aligned}$
$\displaystyle \begin{aligned}2\sin\alpha\cos\beta&=\sin(\alpha+\beta)+\sin(\alpha-\beta),\\2\cos\alpha\sin\beta&=\sin(\alpha+\beta)-\sin(\alpha-\beta).\end{aligned}$
$\displaystyle \begin{aligned}2\cos\alpha\cos\beta&=\cos(\alpha+\beta)+\cos(\alpha-\beta),\\2\sin\alpha\sin\beta&=\cos(\alpha-\beta)-\cos(\alpha+\beta).\end{aligned}$
確認問題 9
余弦の和と差の加法定理を書き、(1)$2\cos\alpha\cos\beta$、(2)$2\sin\alpha\sin\beta$の積和公式を導け。
(1)二式の和で正弦の積が消える。(2)$\cos(\alpha-\beta)$から$\cos(\alpha+\beta)$を引くと余弦の積が消え、$2\sin\alpha\sin\beta$が残る。上の二公式となる。
特に(2)の引く順番を確かめてください。
今度は$\sin\alpha+\sin\beta$を積にしたいとします。積和公式の右辺は「二角の和」と「二角の差」でした。そこで
$\displaystyle u+v=\alpha,\qquad u-v=\beta$
$\displaystyle u=\frac{\alpha+\beta}{2},\qquad v=\frac{\alpha-\beta}{2}.$
$\displaystyle \boxed{\sin\alpha+\sin\beta=2\sin\frac{\alpha+\beta}{2}\cos\frac{\alpha-\beta}{2}}.$
$\displaystyle \begin{aligned}\sin\alpha-\sin\beta&=2\cos\frac{\alpha+\beta}{2}\sin\frac{\alpha-\beta}{2},\\\cos\alpha+\cos\beta&=2\cos\frac{\alpha+\beta}{2}\cos\frac{\alpha-\beta}{2},\\\cos\alpha-\cos\beta&=-2\sin\frac{\alpha+\beta}{2}\sin\frac{\alpha-\beta}{2}.\end{aligned}$
確認問題 10
同じ$u,v$を使い、(1)$\sin\alpha-\sin\beta$、(2)$\cos\alpha-\cos\beta$の和積公式を導け。
(1)$\sin(u+v)-\sin(u-v)=2\cos u\sin v$。(2)$\cos(u+v)-\cos(u-v)=-2\sin u\sin v$。$u=(\alpha+\beta)/2,v=(\alpha-\beta)/2$を代入すれば上の二公式となる。
和と差を取り違えず、余弦の差のマイナスを残します。
確認問題 11
導出を見ずに、(1)$\sin5x\cos x$、(2)$\cos5x-\cos x$、(3)$\sin(5\pi/12)+\sin(\pi/12)$を変形・計算せよ。
(1)$(\sin6x+\sin4x)/2$。(2)$-2\sin3x\sin2x$。(3)$2\sin(\pi/4)\cos(\pi/6)=\sqrt6/2$。
導けることに加え、必要な向きを速やかに使えることも練習します。
$a\sin x+b\cos x$を一つの正弦で表すことを、三角関数の合成といいます。$r=\sqrt{a^2+b^2}\gt 0$とし
$\displaystyle \cos\alpha=\frac ar,\qquad\sin\alpha=\frac br$
$\displaystyle \boxed{a\sin x+b\cos x=r\sin(x+\alpha)}.$
$\displaystyle \sin x+\sqrt3\cos x=2\sin(x+\pi/3).$
合成で分かること
振幅は、全体として取り得る大きさの限界です。指定区間でその限界を取れるかは、移動後の角の範囲で判断します。
確認問題 12
$\sqrt3\sin x-\cos x$を合成せよ。(1)全実数、(2)$0\leq x\leq\pi/3$での値域を求めよ。
$2\sin(x-\pi/6)$。(1)$[-2,2]$。(2)位相は$[-\pi/6,\pi/6]$なので値域は$[-1,1]$。
正弦の係数と余弦の係数を照合して位相を決め、指定範囲のある小問では位相の範囲も移します。
$\sin x=\sin\alpha$では、高さが等しい点を探します。円の対称性から
$\displaystyle x=\alpha+2n\pi\quad\text{または}\quad x=\pi-\alpha+2n\pi$
$\displaystyle \cos x=\cos\alpha\iff x=\pm\alpha+2n\pi.$
$\displaystyle \tan x=\tan\alpha\iff x=\alpha+n\pi.$
$\displaystyle u=\frac\pi6,\frac{5\pi}6,\frac{13\pi}6,\frac{17\pi}6$
確認問題 13
$0\leq x\lt 2\pi$で、$\cos(2x-\pi/3)=1/2$を解け。
$2x-\pi/3=\pm\pi/3+2n\pi$より$x=n\pi$または$x=\pi/3+n\pi$。元の範囲では$0,\pi/3,\pi,4\pi/3$。
変換後は二周分あります。一般解に元の範囲を入れれば、周回を落とさずに絞れます。
例えば$0\leq x\lt 2\pi$で$\sin x\geq1/2$は、高さが$1/2$以上の円弧に対応します。境界は$x=\pi/6,5\pi/6$なので
$\displaystyle \frac\pi6\leq x\leq\frac{5\pi}6.$
$\displaystyle x\in\left[\frac\pi4,\frac\pi2\right)\cup\left[\frac{5\pi}4,\frac{3\pi}2\right).$
確認問題 14
$0\leq x\lt 2\pi$で、$\cos x\lt -1/2$と$\tan x\geq1$をそれぞれ解け。
余弦は$x\in(2\pi/3,4\pi/3)$。正接は$x\in[\pi/4,\pi/2)\cup[5\pi/4,3\pi/2)$。
不等号が厳密な境界と、そもそも未定義の境界は、除く理由が違います。
$\sin(2x-\pi/3)\geq1/2$を$0\leq x\lt \pi$で解く場合、$u=2x-\pi/3$とすると
$\displaystyle -\pi/3\leq u\lt 5\pi/3.$
$\displaystyle \boxed{x\in[\pi/4,7\pi/12]}.$
確認問題 15
$0\leq x\lt \pi$で、$\sin(-2x+\pi/3)\geq1/2$を解け。
$u=-2x+\pi/3$の範囲は$(-5\pi/3,\pi/3]$。この範囲と正弦の条件との共通部分は$(-5\pi/3,-7\pi/6]\cup[\pi/6,\pi/3]$。従って$x\in[0,\pi/12]\cup[3\pi/4,\pi)$。
開端の$x=\pi$は位相の左端へ移ります。元へ戻した後も除きます。
正しい公式を使っていても、角の範囲や符号を落とすことがあります。どの情報を落としたかを説明してから、次の短い答案を直してください。
確認問題 16
次の答案を直せ。(1)$0\leq x\leq2\pi$で$\sin x=0$だから解は$0,\pi$。(2)$0\leq x\lt 2\pi$で$\tan x\geq0$だから解は$[0,\pi/2]\cup[\pi,3\pi/2]$。
(1)閉区間の右端$2\pi$も解なので、$0,\pi,2\pi$。(2)正接の極は未定義なので、解は$[0,\pi/2)\cup[\pi,3\pi/2)$。
(1)は角の区間の情報、(2)は関数の定義域の情報を落とした誤りです。どちらも公式自体は正しく使えています。答えを出した後に、含めた点へ値を入れられるか、除いた端が元の範囲に入らないかを確かめます。
確認問題 17
次の説明を直せ。(1)$-\sin x-\sqrt3\cos x=2\sin(x+\pi/3)$。(2)$y=\sin(2x-\pi/3)$は$y=\sin x$を右へ$\pi/3$動かしたグラフ。
(1)右辺の係数はどちらも正なので違う。例えば$2\sin(x+4\pi/3)$、または$-2\sin(x+\pi/3)$と表せる。(2)点$(u,\sin u)$は$(u/2+\pi/6,\sin u)$へ移る。横を$1/2$倍してから右へ$\pi/6$動かす。
正接の値だけで合成の角を選ぶと、第一象限と第三象限を取り違えることがあります。元の係数に合わせて正弦・余弦の符号も確認します。横の移動は、角に加えた定数そのものではなく、中身が元の入力になる$x$から求めます。
確認問題 18
(1)$\pi\lt \theta\lt 2\pi$で$\cos\theta=1/2$なら$\cos(\theta/2)=\sqrt3/2$、という結論を直せ。(2)$\tan(\alpha+\beta)$が定義されれば、正接の加法定理の右辺も常に使えるか。
(1)$\pi/2\lt \theta/2\lt \pi$なので半角の余弦は負で、$-\sqrt3/2$。(2)使えない。例えば$\alpha=\beta=\pi/2$では和の正接は$\tan\pi=0$だが、右辺の$\tan\alpha,\tan\beta$は未定義。
半角公式の二乗からは大きさしか分かりません。角を半分にした後の範囲で符号を補います。公式については、求めたい左辺が存在することと、選んだ表示の全ての量が存在することは別です。例(2)は正弦・余弦の加法定理を先に使えば処理できます。
確認問題 19
$g(x)=-2f(-3x+\pi)+1$とする。(1)$f$の点$(u,v)$に対応する$g$の点を表せ。(2)$f$を$0\leq u\leq2\pi$で考えるとき、対応する$g$の入力範囲を求めよ。(3)$f(u)=\sin u$なら、$g$の振幅・最小の正の周期と、$g$の点$(0,1)$へ戻る$f$の点を求めよ。
(1)$-3x+\pi=u$より、$((\pi-u)/3,1-2v)$。(2)$u$が増すと$x$は減るので、範囲は$[-\pi/3,\pi/3]$。(3)振幅$2$、周期$2\pi/3$。逆対応は$(u,v)=(-3x+\pi,(1-y)/2)$だから、$(0,1)$は$f$の点$(\pi,0)$へ戻る。
横と縦の係数がともに負でも、それぞれの点対応から考えられます。入力の端は順序が反転するので、小さい$x$から書き直します。正弦の奇性を使って同じ式を別の形にしても、元の点がどの点へ移るかという対応自体は、この式で確認できます。
単位円の座標が正弦・余弦、傾きが正接でした。その定義から符号・周期・グラフを読み、加法定理から主要な公式を作りました。方程式と不等式では、最後に元の角の範囲へ戻すことも確認しました。
第3回「実践問題編」の第Ⅰ段階は、この回だけで取り組めます。まず基本事項を使えるか確かめ、その後、第2回「典型と解法選択」へ進んでください。第2回では、同じ公式でも、何を求める問題かによって使う向きが変わることを整理します。
同じ問題を解き直すことは基礎の定着です。その後、式の見た目や角の範囲が変わっても、定義・公式の条件を読み直せるかを確かめます。第2回で判断の理由を学び、第3回の転移・総合の問題で、変形した後に何を調べるかまで練習してください。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。皆さんの日常に良き数学の彩のあらんことを。それでは、ごきげんよう。