0
現代数学解説
文献あり

特異点論入門〜これほど簡単な入門記事は多分ない〜part9と3/4

21
0
$$\newcommand{CC}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{defa}[0]{\overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow}} \newcommand{defe}[0]{\overset{\text{def}}{=}} \newcommand{igen}[1]{\left\langle#1\right\rangle} \newcommand{Im}[1]{\mbox{Im}(#)} \newcommand{jacob}[0]{\frac{\partial f}{\partial x_{1}},\dots , \frac{\partial f}{\partial x_{n}}} \newcommand{K}[0]{\mathcal{K}} \newcommand{keq}[0]{\sim_{\scriptsize{\K}}} \newcommand{KK}[0]{\mathbb{K}} \newcommand{m}[0]{\mathfrak{m}} \newcommand{Mod}[0]{\mbox{mod }} \newcommand{NN}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{PP}[0]{\mathbb{P}} \newcommand{R}[0]{\mathcal{R}} \newcommand{req}[0]{\sim_{\scriptsize{\R}}} \newcommand{RR}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{ZZ}[0]{\mathbb{Z}} $$

数値半群の特異点論〜Semigroup of Values〜

こんにちは!ではさっっそく!!!

とても初等整数論すぎるイントロ

本記事では自然数全体集合$\NN$$0$以上の整数全体を表します。
断りがなければ$\igen{a_{1},\dots,a_{n}}$$\NN$$a_{1},\dots,a_{n}$で生成される空間とします。

部分モノイド

$H\subset \NN$$\NN$の部分モノイド(submonoid)とは

  • $0\in H$
  • $\forall x,y\in H$に対し、$x+y\in H$
    を満たすことを言う

また$H^{\times}:=H\setminus \{0\}$とする

  • $\igen{4,6}$は部分モノイド
  • $\igen{5,7}$は部分モノイド

何となく察しがついてくると思うのですが、部分モノイドは$\igen{a_{1},\dots,a_{n}}$の形で表せそうです、じゃあ示しましょう。

$H$を部分モノイドとし、$a\in H^{\times}$とする。$0\leq i\leq a-1$に対して
$h_{i}:= \begin{cases} \min\{h\in H^{\times}|h\equiv i\ (\Mod a)\} &(\{h\in H^{\times}|h\equiv i\ (\Mod a)\}\neq \emptyset)\\ 0 &(\{h\in H^{\times}|h\equiv i\ (\Mod a)\}= \emptyset) \end{cases}$
とすると、$H=\igen{h_{0},\dots,h_{a-1}}$

  • $\supset$は明らか
  • 右辺を$G$とする。任意に$h\in H$をとる。$h=0$ならば明らかに$h\in G$ゆえ、$h\neq0$を考える。これに対し$h\equiv h_{i}\ (\Mod a)$なるような$i$がとれる。$h=h_{i}+\lambda a$($\lambda\in \NN$:自然数)ゆえ、$h\in\igen{h_{i},a}\subset G$($a$の定め方から$a=h_{0}$)
    よって$H\subset G$

例1の2個目を見ればわかるように、生成元の個数は少なくできそうです。
$H=\igen{5,7}$について$a=5$とすれば命題1から$H=\igen{5,21,7,28,14}$となるわけですが、$21$$28$$14$もなくても良い気がしますよね。実際

  • $21=3\times 7$
  • $28=4\times 7$
  • $14=2\times 7$
    なのですから。
    では、一番スッキリした生成元とは何でしょうか?
極小生成系

(命題1で得られたようなものをはじめ)$H=\igen{a_{1},\dots,a_{n}}$なる集合$\{a_{1},\dots,a_{n}\}$を生成系(system of generators)という
さらに$H$の生成系の中で包含関係で極小なものを$H$極小生成系(minimal system of generators)という

生成系というものはさまざまな表し方があるので包含関係がないペアも考えられます。
$\igen{5,21,7,28,14}$$\igen{5,7,100}$はどちらも部分モノイドとして一致しているが、包含関係はないですね!ただ、包含関係の中で極小なものは考えられるはずです。

極小とは...?

集合$S$に順序$\leq$が与えられているとします。
この時$A\in S$極小とは「$B\leq A$であれば$A=B$」となることです。逆に極大は$\leq$$\geq$にすればいいですね。極大イデアルとかは正にこれですよね!

ただ実は極小生成系は1つに定まってしまうのです!ヤバ嬉〜〜
なんとその証明を具体的な形を提示して証明しちゃいます!!

部分モノイド$H$に対して$H^{\times}\setminus (H^{\times}+H^{\times})$が唯一の極小生成系になる

$G=H^{\times}\setminus (H^{\times}+H^{\times})$とする.

任意の$H$の生成系$\{a_{1},\dots,a_{n}\}$をとり、任意の$i$$a_{i}\neq0$と約束する。また$G=\{g_{1},\dots,g_{e}\}\ (g_{1}< g_{2}<\dots< g_{e})$とする。

  • $G\subset \{a_{1},\dots,a_{n}\}$を示す。
    任意の$g\in G$について、生成系なので$g=z_{1}a_{z}+\cdots+z_{n}a_{n}$と書け、ある$z_{i}$$0$でないので、$h=z_{1}a_{z}+\cdots+(z_{i}-1)a_{i}+\cdots+z_{n}a_{n}$とおけば、$g=a_{i}+h$
    今、$h\neq0$と仮定すると、$g\in H^{\times}+H^{\times}$となるので、$h=0$
    よって$g\in\{a_{1},\dots,a_{n}\}$
  • $\igen{G}=H$を示す
    明らかに$\subset$なので、逆を示す。$0\in G$ゆえ$H^{\times}\subset G$のとき調べる。
    $\begin{align} H^{\times}=&H^{\times}\setminus(H^{\times}+H^{\times})\\ & \sqcup(H^{\times}+H^{\times})\setminus(H^{\times}+H^{\times}+H^{\times})\\ &\sqcup(H^{\times}+H^{\times}+H^{\times})\setminus(H^{\times}+H^{\times}+H^{\times}+H^{\times})\\ & \sqcup\cdots\\ =&G\sqcup(G+G)\sqcup(G+G+G)\sqcup\cdots\\ \subset&\igen{G} \end{align}$
    よって示された

数値半群の定義

さてさて、やっと数値半群の定義になります。数値半群は部分モノイドであって、ある有限性を備えているものになります!

数値半群

$H$を部分モノイドとする。以下の同値な命題の全て(即ち、いずれかひとつ)を満たす時数値半群(semigroup of values/numerical semigroup)という

  • $H$の生成系$\{a_{1},\dots,a_{n}\}$$\gcd(a_{1},\dots,a_{n})=1$を満たす
  • $c\in H$が存在し、任意の$x\in \ZZ$に対し「$x\geq c\Rightarrow x\in H$」を満たす
    この$c$のことをコンダクター(導手,conductor)という
  • $h\in H$が存在し、$h+1\in H$を満たす

同値であることは示さないです!!

  • $\igen{4,6}$は部分モノイドだが数値半群でない
    $\igen{4,6,9}$は数値半群、コンダクターは$12$
  • $\igen{5,7}$は数値半群、コンダクターは$24$

$H$を数値半群とする

  • $H$の極小生成系を$\{a_{1},\dots,a_{n}\}$とすると、$\mbox{emb}(H):=n$埋込次元(embedding dimension)という。この$H$$n$元生成($n$-generated)という。
  • $\mbox{mult}(H):=\min(H^{\times})$重複度(multiplicity)という
  • $F(H):=c-1$フロベニウス数(Frobenius number)という

代数幾何学の文脈で埋込次元といえば「(定義イデアルを$I$として)局所座標環$\CC\{x,y\}/I$の唯一の極大イデアル$\m$について$\dim_{\CC}\m/\m^{2}$」のことを指すが、確かに$\m/\m^{2}$$\m$極小な生成元たちを表しているし、$H^{\times}\setminus(H^{\times}+H^{\times})$にめちゃめちゃ似ている
また定義多項式$f$の位数のことを重複度と呼ぶが、実は$2$つの重複度は一致する

数値半群の別の導入

$\phi:(\CC,0)\to (\CC^{2},0);\phi(t)=(x(t),y(t))$を複素平面曲線(パラメータ表示)とします。このとき簡単のため$x(t)=t^{m}$という形に限ります。というのも、任意のパラメータは$\CC$の原点付近の座標変換($\R$-同値)で上の形に実現できるのです。一方$y(t)\in\CC\{t\}$は冪級数とします。
このときふと思うわけです。
あれ、$2$変数多項式$f(x,y)$$\begin{cases}x=x(t)\\ y=y(t)\end{cases}$を代入したくね?
そしてさらに思うわけです
それって$\CC\{x,y\}\to\CC\{t\}$の環準同型写像を誘導している
と。
確認してみましょう!

上の写像を$\phi^{\ast}$と表すとします
任意の$f,g\in\CC\{x,y\}$をとると

  • $\phi^{\ast}(f+g)=f(x(t),y(t))+g(x(t),y(t))=\phi^{\ast}(f)+\phi^{\ast}(g)$
  • $\phi^{\ast}(f\cdot g)=f(x(t),y(t))\cdot g(x(t),y(t))=\phi^{\ast}(f)\cdot\phi^{\ast}(g)$
  • $\phi^{\ast}(1)=1$
    環準同型ですね!ちなみに核は曲線の定義イデアルになります。また像は$\CC\{x(t),y(t)\}$となります!

では気になるのが全射にならないのってどんな時?
はい、命題あげます

$\phi^{\ast}$:全射$\iff$曲線$\phi(t)$が非特異

読まなくていいよ、だってめちゃめちゃお気持ち証明っぽいから
  • $\Rightarrow$
    定義イデアルを$I$とすると、準同型定理から$\CC\{x,y\}/I\cong\CC\{t\}$
    このとき微分同相$h:(\CC^{2},0)\to(\CC^{2},0)$が存在し、$h^{\ast}(I)(:=I\circ h)=\igen{y}$が成り立つ。$y$は非特異なので$I$すなわち$\phi(t)$も非特異
  • $\left.\frac{d}{dt}\phi(t)\right|_{t=0}\neq(0,0)$なので微分係数を$(c_{1},c_{2})$とおくと$\phi(t)=(c_{1}t+\text{(高次の項)},c_{2}t+\text{(高次の項)})$とでき、座標変換$t=(c_{1}t+\text{(高次の項)})$を施すと、$\phi(t)\sim(t,\frac{c_{2}}{c_{1}}t+\text{(高次の項)})$とできる。
    任意の$\gamma(t)\in\CC\{t\}$$\CC\{x,y\}\ni\gamma(x)\overset{\phi^{\ast}}{\mapsto}\gamma(t)$で与えられるので全射

私共のような特異点論の人間は全射じゃない$\phi^{\ast}$に興味があるのです。ではどのくらい全射から遠いかって気になりません?全射から遠ければ遠いほど素行の悪い特異点が出てきそうです
ホモロジーを勉強したことのある人は$\mbox{Coker}$というのを思い浮かべるでしょう。大正解です!

$f:M\to N$:加群の準同型
$\mbox{Coker}(f)\defe N/\mbox{Im}(f)$を余像といいます
終域の空間から像を潰してあげれば像でない空間が得られるので便利ですよね
($f$:全射$\iff\mbox{Coker}(f)=0$)

さて本題に戻ると、$\mbox{Coker}(\phi^{\ast})=\CC\{t\}/\CC\{x(t),y(t)\}$なので具体例で観察していきましょう。

$\CC\{t\}$$\CC$-ベクトル空間としてみると基底は$\{1,t,t^{2},\dots\}$
$\phi(t)=(t^{3},t^{5})$とすると$\CC\{t\}/\CC\{x(t),y(t)\}=\igen{t,t^{2},t^{4},t^{7}}$
$t^{3},t^{6},t^{9},\dots$$x,x^{2},x^{3},\dots$で与えられ、
$t^{5},t^{8},t^{10}$$y,xy,y^{2}$で与えられる。

例3の$t$の指数部分に着目すると、、、あれ?めちゃめちゃ数値半群の計算じゃね?
確かに$\CC\{t\}$の指数部分は$\NN$と一致していて、$\CC\{x(t),y(t)\}$の指数部分は$\igen{3,5}$と一致している!!
思い出してください。コンダクターは以降が全部数値半群の元になる最小の整数でした。そのコンダクターに対応する概念を教えます

コンダクターイデアル

$\mathfrak{C}\defe\left\{x\in\CC\{t\}|x\cdot\CC\{t\}\subset\CC\{x(t),y(t)\}\right\}$コンダクターイデアル(導手イデアル、conductor ideal)と言い、これは$\CC\{t\}$のイデアルであって、$\CC\{x(t),y(t)\}$を含む

$\CC\{t\}$単項イデアル整域なので$\mathfrak{C}=\igen{t^{c}}$なる整数$c$が存在します!!この$c$こそがコンダクターになるのです!!

まとめ

  • 数値半群の極小生成元について学びましたね!
  • 特異点の良し悪しを計る上で$\CC\{t\}/\CC\{x,y\}$を調べればよく、より簡単に$\NN\setminus H$を調べれば良さそうです!

今回はちょっとガサツな感じになりますが、以上になります!それでは!!

参考文献

[1]
松岡直之, 可換環論への招待ー数値半群を通じた環構造探究ー, 共立出版, 2016
[2]
G.-M.Greuel・ C.Lossen・E.Shustin, Introduction to Singularities and Deformations, Springer Monographs in Mathematics, Springer, 2007
投稿日:20時間前
更新日:20時間前
数学の力で現場を変える アルゴリズムエンジニア募集 - Mathlog served by OptHub

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中