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隣接3項間漸化式の特性方程式が重解の場合も他の場合と同じように解きたい

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はじめに

簡単のため、数列は$ a_0 $から始まるものとします。

$ p, q $を実数とします。実数からなる数列$ \{a_n\} $

$ a_{n+2} = p a_{n+1} + q {a_n} $

をみたしているとします。この数列を一意に定めるには$ a_0, a_1 $の値が必要ですが、ここでは定めず、その代わりこの漸化式の解に任意定数が2つあるものと考えます。

このとき、次のような結果が知られています:

  • もし方程式$ x^2 = px + q $が2つの異なる実数解$ \alpha, \beta $を持てば、任意定数$ A, B $を用いて$ a_n = A \alpha^n + B \beta^n $と書ける。
  • もし方程式$ x^2 = px + q $が重解$ \alpha $を持てば、任意定数$ A, B $を用いて$ a_n = (An + B) \alpha^n $と書ける。
  • もし方程式$ x^2 = px + q $が2つの異なる虚数解$ \alpha, \beta $を持てば、任意定数$ A, B $を用いて$ a_n = A \alpha^n + B \beta^n $と書ける。

・・・これ、気持ち悪くありませんか?

なんで$ \alpha = \beta $のときだけ式の形が違うんですか?

この記事ではその謎を解明します。

導入

方程式$ x^2 = px + q $が解$ \alpha, \beta = \alpha + \epsilon $を持つと仮定し、$ \epsilon \rightarrow 0 $の極限で何が起こるかを観察します。

計算

$ \alpha \neq \beta $なので、

$ a_{n+2} - \alpha a_{n+1} = \beta (a_{n+1} - \alpha a_n) $
$ a_{n+2} - \beta a_{n+1} = \alpha (a_{n+1} - \beta a_n) $

が成り立ち、それぞれ任意定数を用いて

$ a_{n+1} - \alpha a_{n} = B' \beta^n $
$ a_{n+1} - \beta a_{n} = A' \alpha^n $

と書けます。あえて$ a_0, a_1 $を定めなかったので、$ A' $$ B' $を具体的に求める必要がなく、本質的な議論に集中できます。

もちろん、$ \epsilon \rightarrow 0 $の極限で$ A' - B' \rightarrow 0 $になります。

上の式から下の式を引くと、

$ (\beta - \alpha) a_n = B' \beta^n - A' \alpha^n $

よって、

$ A = \frac{-A'}{\beta - \alpha}, B = \frac{B'}{\beta - \alpha} $

とおけば、

$ a_n = A \alpha^n + B \beta^n $

が得られます。

さて、ここから具体的に$ A, B $の値を評価していきましょう。

$ a_{n+1} - \beta a_{n} = A' \alpha^n $$ n = 0 $を代入して$ A' = a_1 - \beta a_0 $
$ a_{n+1} - \alpha a_{n} = B' \beta^n $$ n = 0 $を代入して$ B' = a_1 - \alpha a_0 $

なので、$ \beta - \alpha = \epsilon $であることから

$ A = \frac{-(a_1 - \beta a_0)}{\epsilon}, B = \frac{a_1 - \alpha a_0}{\epsilon} $

と求めることができます。

さて、$ \beta = \alpha + \epsilon $を代入することで

$ A = \frac{-(a_1 - \beta a_0)}{\epsilon} = - \frac{(a_1-\beta a_0 - \epsilon a_0)}{\epsilon} = -B + a_0 $

が成り立ちます。$ A $$ B $の分子は$ \epsilon \rightarrow 0 $で徐々に近づいていきますが、分母がそれを丁度打ち消した形になっています。

これを一般項に代入すると

$ a_n = (-B + a_0) \alpha^n + B (\alpha + \epsilon)^n $

となります。これを二項定理で展開すると、

$ \displaystyle a_n = a_0 \alpha^n + nB\epsilon \alpha^{n-1} + \sum_{k=0}^{n-2} B {}_n C_k \alpha^k \epsilon^{n-k} $

となります。

$ B = \frac{a_1 - \alpha a_0}{\epsilon} $なので、$ \displaystyle \lim_{\epsilon \rightarrow 0} B \epsilon $$ 0 $でない有限の値を取り、$ n > 1 $であれば$ \displaystyle \lim_{\epsilon \rightarrow 0} B \epsilon^n = 0 $になります。

$ \sum $の中に注目すると、$ n - k \geq 2 $なので$ B (\epsilon)^{n-k} \rightarrow 0 $となり、$ \sum $全体の極限も$ 0 $になります。

$ \displaystyle \lim_{\epsilon \rightarrow 0} nB\epsilon \alpha^{n-1} = n(a_1 - \alpha a_0) \alpha^{n-1} = n \left( \frac{a_1}{\alpha} - a_0 \right) \alpha^n $

なので、$ a_0 = P, \frac{a_1}{\alpha} - a_0 = Q$とおくことで

$ a_n = (P + Qn) \alpha^n $

の形にできました。

まとめ

$ \varepsilon \rightarrow 0 $で、$ a_n = A \alpha^n + B \beta^n $$ A $$ B $は「逆方向に」大きくなるものの、その差は一定に収束するのでこれが$ \alpha^n $の項になり、「1つ下」の次数の項が$ n\alpha^n $の項に対応し、その下はすべて消えるようです。

投稿日:630
更新日:630

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nayuta_ito
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