前回の記事ではまだ幾何代数の幾何的な性質が現れていませんでした。幾何代数の特徴は幾何的な概念が代数的に定義できるということです。この記事では直交と平行という幾何的な概念でそれを示します。
ベクトル$u$と$v$が反可換であるとき、ベクトル$u$と$v$は直交しているという。これを
$$
u \bot v
$$
と表す。
ここで反可換とは$uv = -vu$となることです。反可換は反交換子が$0$となることと同値です。$uv = -vu \iff uv + vu = 0$だからです。
たしかにこれは代数的な定義です。しかし直交とは幾何的な概念です。この代数的な定義は幾何的な性質と整合が取れているのでしょうか。
反交換子が$0$であることは$(u + v)^2 = u^2 + v^2$と同値です。これは三平方の定理と同じ形です。
任意のベクトル$u$, $v$について
$$
u \bot v \iff (u + v)^2 = u^2 + v^2
$$
が成り立つ。
三平方の定理が幾何的な概念である直交を反可換という代数的な性質で定義する正当性を与えます。
ベクトル$u$と$v$が可換であるとき、ベクトル$u$と$v$は平行しているという。これを
$$
u \parallel v
$$
と表す。
可換であるということは$uv = vu$です。交換子を$[u, v] = uv - vu$と定めると、可換であることは交換子が$0$であることと同値です。
平行という幾何的概念を可換という代数的な性質で定めた正当性ももちろんあります。それは$u$と$v$がスカラー倍の関係になります。
任意のベクトル$u$, $v$について
$$
u \parallel v \iff u = k v
$$
が成り立つ。ただし$k$はあるスカラー。
$u$, $v$が平行であるとします。つまり、$uv = vu$が成り立ちます。両辺を右から$v$を掛けます。
$$ uvv = vuv $$
縮約公理より$vv = v^2$はスカラーであり、可換であるとき$uv = vu$はスカラーとなるため、
$$
u = \frac{uv}{v^2}v
$$
であり$vu/v^2$はスカラーです。
逆は自明です。$uv = (k v)v = k v^2$ であり$vu = v (k v) = k v^2$であることから可換です。