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自作問題あなぐら 4(方程式の解の実部についての考察)

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問題

 $a,\ b,\ c$を正の定数とし,$x$についての方程式
$$ x^3 + a x^2 + b x + c = 0 $$
を考える.

  1. この方程式の実数解は全て負であることを示せ.
  2. この方程式の全ての解の実部が負であることの必要十分条件は$a b > c$であることを示せ.

余話

 この問題の(1)の元ネタは昔の大阪大の問題です.また(2)は制御理論を勉強したときに学んだ,とある定理が背景です.

解答

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(1) $f(x) = x^3 + a x^2 + b x + c$とおく.$f'(x) = 3 x^2 + 2 a x + b$ゆえ,$x \geq 0$では$f'(x) > 0$となる.よって$x \geq 0$の範囲では$f(x)$は単調増加であり,$f(0) = c > 0$である.よって$f(x) = 0$となる実数$x$は非負の範囲には存在しない.よって与方程式の実数解は全て負である.
(2) 与方程式の解の組み合わせは,(i)重解を含めて実数解3つ,(ii) 実数解1つと互いに共役な虚数解2つ,の場合がある.それぞれの場合について題意を証明する.
 (i)のとき,与方程式の3実数解を$\alpha$$\beta$$\gamma$(ただし$\alpha < \beta < \gamma$)とおく.このとき
\begin{align} \begin{cases} \alpha + \beta + \gamma = - a, \\ \alpha \beta + \beta \gamma + \gamma \alpha = b, \\ \alpha \beta \gamma = - c \end{cases} \end{align}
が成り立つ.よって
\begin{align} a b - c &= - (\alpha + \beta + \gamma) (\alpha \beta + \beta \gamma + \gamma \alpha) + \alpha \beta \gamma \\ &= - (\alpha^2 \beta + \alpha \beta^2 + \beta^2 \gamma + \beta \gamma^2 + \gamma \alpha^2 + \gamma^2 \alpha + 2 \alpha \beta \gamma) \end{align}
である.ここで$\alpha$$\beta$$\gamma$の実部が全て負であると仮定すると,このとき$\alpha$$\beta$$\gamma$は全て負だから括弧内の各項は負となる.したがって$a b - c > 0$つまり$a b > c$を得る.
 逆に$a b > c$のとき,(1)より解は全て負.
 (ii)のとき,与方程式の3解は$\alpha$$\beta$$\bar{\beta}$(ただし$\alpha$は実数で$\beta$は虚数)とおける.すると
\begin{align} \begin{cases} \alpha + \beta + \bar{\beta} = - a, \\ \alpha \beta + \beta \bar{\beta} + \bar{\beta} \alpha = b, \\ \alpha \beta \bar{\beta} = - c \end{cases} \end{align}
が成り立つ.よって
\begin{align} a b - c = - 2 (\alpha^2 + |\beta|^2) \mathrm{Re}(\beta) - 4 \alpha \{\mathrm{Re}(\beta)\}^2 \end{align}
となる.ここで$\alpha$$\beta$$\bar{\beta}$の実部が負であると仮定すると,このとき$\alpha < 0$$\mathrm{Re}(\beta) < 0$であるから$a b - c > 0$が成立.
 逆に$a b > c$のとき,(1)より$\alpha < 0$が得られる.そして$f(x) = 0$の実数解が$x = \alpha$のみで,$f(\alpha) = 0$および$f(0) = c > 0$であることから$\alpha < x$の範囲では$f(x) > 0$であり,$x < \alpha$では$f(x) < 0$である.このことと$f(-a) < 0$から$-a < \alpha$がわかる.これを用いると,$\alpha + \beta + \bar{\beta} = - a$から
\begin{align} \mathrm{Re}(\beta) = - \frac{a + \alpha}{2} < 0 \end{align}
を得る.よって$\alpha$$\beta$$\bar{\beta}$の実部が負.
 以上より,示すべき命題は示された.

投稿日:227
更新日:416
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