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小数部分を積分する

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はじめに

こんにちはkzです。これが初めてのMathlogの投稿です!よろしくお願いします。

初めに注意としてこの記事では積分可能性など厳密な議論を行っていないことを言っておきます。

小数部分を積分しよう

積分
01{1x}ndx
の値を求めよ。

ここで{x}xの小数部分を表します。つまりガウス記号を使えば{x}=x[x]と書き直すことができます。

今回はこの積分のn=1,2,3の場合について解いてみます。

n=1の場合

一番簡単な場合です。とりあえず{x}=x[x]を使いたいのでx1xと置換してみましょう。すると
01{1x}dx=1{x}x2dx=1x[x]x2dx

つぎはガウス記号の性質を使います。nx<n+1のとき[x]=nとなるので積分区間を分割してみます。すると
1x[x]x2dx=n=1nn+1xnx2dx=n=1[logx+nx]nn+1=n=1(logn+1n1n+1)

となり求める積分を無限和に帰着させることができました!

この無限和の形を見るとn=11n+1が収束しないので気になりますね。ここで次の定数を思いしましょう。

Eulerの定数

 γ:=limn(k=1n1klogn)

この形を無理やり作り出してみましょう!
n=1(logn+1n1n+1)=limNn=1N(logn+1n1n+1)=limN(n=1N(logn+1n)+1log(N+1)n=1N+11n+log(N+1))=limN(1log(N+1)+n=1Nlogn+1nγ)

ここでlogの和は積のlogに直せるので
n=1Nlogn+1n=logn=1Nn+1n=log(213243N+1N)=log(N+1)

よって求める和は
limN(1log(N+1)+n=1Nlogn+1nγ)=limN(1log(N+1)+log(N+1)γ)=1γ

よって答えは次のようになります。

 01{1x}dx=1γ

なかなかきれいになりましたね。

n=2の場合

無限和に直すまではやることは変わりません。置換して計算を進めましょう。

01{1x}2dx=1{x}2x2dx=n=1nn+1{x}2x2dx=n=1nn+1(xn)2x2dx=n=1nn+1(12nx+n2x2)dx=n=1(1+2nlognn+1+nn+1)=n=1(2+2log(nn+1)n1n+1)

ここからがn=1の場合と比べて厄介です。とりあえずEulerの定数を作り出してみましょう。
limN(2N+2n=1Nlog(nn+1)nlog(N+1)+1+log(N+1)n=1N+11n)=limN(2Nlog(N+1)+1+2n=1Nlog(nn+1)nγ)

残りの和をn=1のときと同じように積に直してみましょう。
n=1Nlog(nn+1)n=logn=1N(nn+1)n=log(112122323343(N1)N1NN1NN(N+1)N)=logN!(N+1)N

よって
limN(2Nlog(N+1)+1+2n=1Nlog(nn+1)nγ)=1γ+limN(2Nlog(N+1)+2logN!(N+1)N)=1γ+limNlog((N!)2e2N(N+1)2N+1)

残りはlogの中身の極限を求めるだけです。この極限はStirlingの公式を用いれば求められます。

Stirlingの公式

limnn!ennn+12=2π

これを認めれば簡単に極限がわかりますね
limN(N!)2e2N(N+1)2N+1=limN(N!eN(N+1)N+12)2=limN(N!eNNN+12(NN+1)N+12)2=limN(2π(11N+1)(N+1)N+12N+1)2=2πe2

これを代入して
1γ+limNlog((N!)2e2N(N+1)2N+1)=1γ+log(2πe2)=log2πγ1

よって答えは次のようになります。

 01{1x}2dx=log2πγ1

n=3の場合

同じように和の形までもっていきましょう。気合が大事。
01{1x}3dx=1{x}3x2dx=1(x[x])3x2dx=n=1nn+1x33nx2+3n2xn3x2dx=n=1(2n+123n+3n2logn+1nn2n+1)=n=1(323n+3n2logn+1n1n+1)

Eulerの定数を作ると
limNn=1N(323n+3n2logn+1n1n+1)=limN(32N32N(N+1)+3n=1Nlog(n+1n)n2+1log(N+1)+log(N+1)n=1N+11n)=limN(132N2log(N+1)+3n=1Nlog(n+1n)n2γ)

和を積に直して計算してみましょう。
n=1Nlog(n+1n)n2=logn=1N(n+1n)n2=log(212112322222432332542442N(N1)2(N1)(N1)2(N+1)N2NN2)

ここでk=2,3Nとすれば
k(k1)2kk2=k(k1)2k2=k2k+1
と約分できるので
log(212112322222432332542442N(N1)2(N1)(N1)2(N+1)N2NN2)=log((N+1)N211233547N2N1)

よって
limN(132N2log(N+1)+3n=1Nlog(n+1n)n2γ)=limN(132N2log(N+1)+3log((N+1)N211233547N2N1)γ)=1γ+limNlog((N+1)3N21e32N2(11233547N2N1)3)

この極限値を表すには次の定数を用いる必要があります。

Glaisher–Kinkelinの定数

A=limn112233nnen24nn22+n2+112

この式をうまいこと作りだしましょう!
limN(N+1)3N21e32N2(11233547N2N1)3=limN(11233547N2N1eN22(N+1)N213)3=limN((11223344NN)2eN22NN2+N+16NN2+N+16N!(N+1)N213)3=limN(11223344NNeN24NN22+N2+112)6(NN+12N!eNeNNN2+N+16NN+12(N+1)N213)3=A6(2π)32limNe3N(NN+1)3N2+1

よって
1γ+log(A6(2π)32limNe3N(NN+1)3N2+1)=32log(2π)6logAγ+1+limN(3N+(3N2+1)log(NN+1))

最後にlog(NN+1)=1N+112(N+1)2+O(1(N+1)3)とテイラー展開できるので
limN(3N+(3N2+1)log(NN+1))=limN(3N+(3N21)(1N+1+12(N+1)2+O(1(N+1)3)))=limN(3N+3N21N+1+3N212(N+1)2+O(1N))=limN(3N28N32(N+1)2+O(1N))=32
これで目的の値がわかりました。

 01{1x}3dx=32log(2π)6logAγ12

終わりに

今回はn=3までの場合を解いてみました。

ちなみにGlaisher–Kinkelinの定数はStirlingの公式の拡張になっています。詳しくは こちら

投稿日:20231211
更新日:20231213
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