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Oreの定理(指数が最小の素因子なら正規)

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$$\newcommand{ab}[1]{\left\lvert #1 \right\rvert} \newcommand{abs}[1]{\mathbb{A_{R}}_{_{#1}}[x]} \newcommand{ae}[0]{\qquad\mathrm{a.e.}} \newcommand{angle}[1]{\left\langle #1 \right\rangle} \newcommand{bb}[0]{mathbb} \newcommand{bm}[0]{\boldsymbol} \newcommand{C}[0]{\mathbb C} \newcommand{cls}[2]{{\clsa_{#1}\!\!^{#2}}} \newcommand{de}[0]{\coloneq} \newcommand{f}[2]{{_{#1}F_{#2}}} \newcommand{F}[5]{\f{#1}{#2}\hgs{#3}{#4}{#5}} \newcommand{fg}[2]{\L[\begin{matrix}#1\\ #2\end{matrix}\R]} \newcommand{fh}[0]{\newcommand{\fg}[2]{\L[\begin{matrix}#1\\ #2\end{matrix}\R]}} \newcommand{g}[0]{\Gamma} \newcommand{gf}[2]{\L[\begin{matrix}#1\\ #2\end{matrix}\R]} \newcommand{GL}[1]{\operatorname{GL}_{#1}(\C)} \newcommand{h}[3]{\left[\begin{matrix}#1\\ #2\end{matrix};#3\right]} \newcommand{hgs}[3]{\left[\begin{matrix}#1\\ #2\end{matrix};#3\right]} \newcommand{i}[1]{{-{#1}}} \newcommand{If}[0]{\mathrm{if}\quad} \newcommand{imply}[0]{\implies} \newcommand{isin}[0]{\in} \newcommand{kd}[2]{\delta_{{#1},{#2}}} \newcommand{L}[0]{\left} \newcommand{m}[1]{\left(\matrix{#1}\right)} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{o}[1]{\operatorname{#1}} \newcommand{ok}[2]{\ordi{}{#1}{#2}} \newcommand{ordi}[3]{\frac{d #1^{#3}}{d #2^{#3}}} \newcommand{p}[2]{\part{#1}{#2}{}} \newcommand{p}[2]{{_{#1}\phi_{#2}}} \newcommand{part}[3]{\frac{\partial #1^{#3}}{\partial #2^{#3}}} \newcommand{pk}[2]{\part{}{#1}{#2}} \newcommand{pol}[0]{\operatorname{Pol}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{Q}[5]{\p{#1}{#2}\hgs{#3}{#4}{#5}} \newcommand{q}[2]{{_{#1}\phi_{#2}}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{R}[0]{\right} \newcommand{Res}[0]{\operatorname{Res}} \newcommand{rsum}[1]{\sum_{#1}\!^\R} \newcommand{sgn}[0]{\operatorname{sgn}} \newcommand{SL}[1]{\operatorname{SL}_{#1}(\C)} \newcommand{Speed}[0]{\operatorname{Speed}} \newcommand{t}[0]{\vartheta} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} \newcommand{zero}[0]{\overline{\varphi}} $$

群論でよく知られた命題の一つに,次の命題がある.

Ore's theorem

有限群$G$に対して,$|G|$を割り切る最小の素因子を$p$とする.このとき,指数が$p$の部分群は正規部分群である.

この定理にはいくつかの証明があるので,それを紹介していこうと思う.この記事では$x^k=k^{-1}xk$のように略記する.またこの記事においては,Lagrangeの定理の使用をいちいち断らない.

剰余群をうまく使う

一つ目の証明のためには次の補題を使う.

$G$が真の部分群の積$HK$に等しいなら,$H,K$$G$の中で共役ではない.

$G=HK$だから$G$の任意の元$x$$x=hk, h\in H, k\in K$のように書ける.よって
$$ H^x=H^{hk}=H^k $$
となる.ここで$H, K$が共役であると仮定すると,ある$x\in G$がって$K=H^x$だが,上の変形によって$K=H^k$としてよい.そうすれば,
$$ G=G^k=(HK)^k=H^kK^k=KK=K $$
となって,$K$が真部分群であることに反する.

これを用いることで,元の命題は次のように示すことができる.

$G$の指数$p$の部分群$H, K$があって$H$$K$が共役であるとする.このとき$H\cap K\subset H$であることと,$H\ne K$に注意すれば
\begin{align} p=[G:K]\ge[H:H\cap K]>1 \end{align}
でなくてはならないから,$p$$|G|$を割り切る最小の素数であることにより$[H:H\cap K]=p$でなければならない.よって積の法則から$|HK|=|K|[H:H\cap K]=|G|$であることと$HK\subset G$によって$G=HK$.これは補題2と仮定に反するから,$H=K$でなければならず$H$は正規.

この証明とかなり似た証明を別に書くことができるが,ここでは述べないことにする.

群作用

群作用を用いることでより簡潔に示すことができる.集合$X$上の置換群を$\Sigma(X)$としておく.

$G$$H$による左剰余類への作用によって誘導される準同型$\phi:G\to\Sigma(G/H)\cong\mathfrak S_p$を考える.このとき核は正規部分群だから,$\ker \phi=H$を示せばよい.$h\in \ker H$なら,$hH=H$より$h\in H$で,$\ker \phi\le H$となる.また,
\begin{align} |\operatorname{im}\phi|&=|G/\ker\phi|=[G:H][H:\ker\phi]\\&=p[H:\ker\phi] \end{align}
である.ここで$|\operatorname{im}\phi|$$p!$の約数になるので,$[H:\ker\phi]\ne 1$とすると$p$以下の素因子を$|H|$が持つことになり,$p$の最小性に反する.

表現論

群作用で示す場合とほとんど大差ないが,表現論を用いて示すこともできる.まず,次の補題を示す必要がある.

有限群$G$とその部分群$H, K$に対してぐん
\begin{align} \angle{\o{Ind}^G_H\bm 1_H,\o{Ind}^G_K\bm 1_K}_G \end{align}
は両側剰余類$H\backslash G/K$の個数と等しくなる.

あまり名前が定まっていないが, この論文 の初めの方で見ることができる.

Frobeniusの相互律から,
\begin{align} \angle{\o{Ind}^G_H\bm 1_H,\o{Ind}^G_K\bm 1_K}_G &=\angle{\bm 1,\Res_H^G\o{Ind}^G_K\bm 1_K}_H\\ &=\dim (\C[G/K])^H \end{align}
だから,作用$H\curvearrowright G/K$に対してBurnsideの補題を用いることによって,
\begin{align} \dim (\C[G/K])^H=\dim\C[H\backslash G/K] \end{align}
がわかるので,補題が従う.(直接商写像を考えてもよい)

これを用いて求めていた定理を示すことができる.

$H$が正規でないと仮定する.まず,$G$$H$による左剰余類への作用によって置換表現
\begin{align} \rho:G\to\o{GL}(V), V:=\C[G/H] \end{align}
という置換表現が得られて,この表現の次数は$p$である.このとき,
$$ \sum_{g\in G/H}g $$
$V$不変で,Maschkeの定理から
$$ W:=\left\{\sum_{g\in G/H}a_gg\in V:\sum_{g\in G/H} a_g=0\right\} $$
$G$不変でならなければならない.よって,$\rho$の指標を$\chi$とすると指標$\psi$があって
\begin{align} \chi=1+\psi, \psi(1)=p-1 \end{align}
となるはずである.ここで,補題3と,$H$が正規でないという仮定から$p$が素数なので
\begin{align} \angle{\chi,\chi}_G=2 \end{align}
となって,
\begin{align} \angle{\psi,\psi}_G&=\angle{\chi,\chi}_G-2\angle{\chi,1}_G+\angle{1,1}_G\\ &=2-2\dim V^G+1\\ &=1 \end{align}
だから$\psi$は既約.またその次数は$\psi(1)=p-1$であることがわかる.ここで$p>3$なら,既約次数が$|G|$を割ることに注意すると$p$の最小性に反することになるから,$H$は正規部分群.
$p=2$の場合も,$G/H\cong \mathfrak S_2$の置換符号に$\psi$は一致するので,$\mathfrak S_2$の符号表現$\sgn$$\psi:G\to \Sigma(G/H)$の合成$\psi=\sgn\circ\phi $と書けることになる.この表現の核が$H$に一致するから,結果として$H$は正規.

表現論にはあまり慣れていないので,間違っている点やより簡略化できる点があれば教えてほしいと思う.

投稿日:425
更新日:425
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