先日、問題が豊富と噂のHirchの微分トポロジーをついに購入(一万円もした…)したので、さっそく気になる問題や行間を備忘録がてら埋めていきたいと思います。
基本的には気分で書いていくので、全ての問題を答えるわけではないことだけ注意してください。(要望があれば、気合いで考えてみたいとは思います。)
なお、私の多様体についての理解はTuやLee、Greub-Halperin-Vanstoneの多様体の本程度のものしかないため、記載内容が間違っている可能性は大いにあります。そのため、指摘事項等あれば教えてください。
問題などの項番については、一章の第一節の問1を問題1.1.1などと表すので、本と比較する際はご参考ください。
以下、内容です。
複素射影空間$CP^n$と同様の構成により、$4$元数$n$次元射影空間$HP^n$は$4n$次元解析的多様体となる。
この問題を取り上げた理由は、普通にこの事について考えた事がなかったからです。
本「問1、Grassmann多様体が多様体である事を示せ。」
私「知ってる知ってる。Tuで見たことある。」
本「問2、$CP^n$が多様体である事を示せ。」
私「知ってる知ってる。小林で見たことある。」
本「問3、$HP^n$が多様体である事を示せ。」
私「??????」
なお、本証明においては、各$H^n$は自然な方法で$\mathbb R^{4n}$と(位相も込みで)同一視されている事とします。
$HP^n$は、全ての各要素が$0$でない$H^{n+1}\backslash\{0\}$の元$q=(q_0,…,q_n)$の同値類$[q]=[q_0,…,q_n]$の集合で、その関係は、零でない四元数$h\in H$に対し各要素を全て右から$h$倍したもの$[q]h=[qh]$と$[q]$と同じものとみなしている空間である。($H$の非可換性の制約のため、必ず右からかけると約束する。)
まず、チャートを構成する。
各$i=0,…,n$について$U_i := \{[q_0,…,q_n] \in HP^n | q_i \neq 0\}$は開で、$\{U_i\}$は$HP^n$を被覆する。
いま、任意の同値類$[q]= [q_0,…,q_n]\in U_i$の代表元に対し、$h := q_i^{-1}$をかけると$(q_0,…,q_n)⋅h = (q_0 q_i^{-1}, …, 1, …, q_nq_i^{-1})$となり、第 i 成分を 1 に解析的に正規化できることがわかる。
これにより座標写像$\phi_i: U_i \to H^n\simeq R^{4n},$$[q_0,…,q_n]\mapsto (…,q_j q_i^{-1}, …)$($i=j$の場合を除く。)がwell-defindに定まる。
逆写像は、単に$\psi_i: H^n \to U_i, $$(h_1,…,h_n)\mapsto[h_1:…:h_{i-1}:1:h_i:…:h_n]$で与えられる。
$\phi_i$ と $\psi_i$ は互いに逆で、多項式の形なので連続、したがって同相。よって各 $U_i$ は $H^n$すなわち$\mathbb R ^{4n}$と同相。
これにより、チャート$(U_i,\phi_i)$が構成された。
次にアトラスの座標変換をみる。
各$\phi_i\phi_i^{-1}$は明らかに解析的なので、$i< j$として、$U_{i,j}=U_i\cap U_j$上の座標変換$\phi_{i,j}=\phi_i\phi_j^{-1}$を見れば十分である。
いま、各$[h]\in U_{i,j}$は、その第$i,j$成分が0ではないものである。従って、
$\phi_{i,j}(h)$
$=\phi_i[…:h_{j-1}:1:h_j:…]$
$=(…:h_{i-1}h_i^{-1}:h_{i+1}h_i^{-1}:…:h_{j-1}h_i^{-1}:h_i^{-1}:h_jh_i^{-1}:…)$
となる。
これは明らかに各成分が多項式で構成されており、解析的である。
最後に、位相の制約について確認する。
前提として、チャートとして構成した$\phi_i: U_i \to H^n\simeq \mathbb R^{4n}$によって、各$U_i $は$\mathbb R^{4n}$と同相であることに注意する。
そのため、各$U_i$はハウスドルフかつ第二可算である。そしてこの集まり$\{U_i\}_{i\in\{0,…,n\}}$は、有限個の$HP^n$の被覆となっており、被覆が有限ならハウスドロフ性と第二可算性は引き継がれるので、$HP^n$もまたハウスドロフかつ第二可算である。
従って、$HP^n$は$4n$次元解析的多様体である。
この問題単体としての難易度は、複素の場合を参考に解いてねという指示があったので、意外と躓かずに構成ができました。(いうて、n+1組用意して一つで割って、一つの要素が0でない開集合を考えるだけなので…。)
ただ、複素数の時とは違って、積の可換性が4元数では失われるので、その状態で本当に「多様体であること」を構成から導けるのかという事については、追ってみて初めてなるほどと気付きました。
ちなみに、この4元数の多様体について少し気になったので色々と検索したところ、以下のことが知られているみたいです。(目についた話題を挙げているだけなので、真偽は不明…)
・16元数以上の〇〇元数射影空間は、そもそも可除性(一意に定まる割り算)がないため、いわゆる「割って同一視して作れる射影空間」は存在しない。
・8元数の射影空間$OP^n$は、$OP\simeq S^8、OP^2\simeq F_4/Spin(9)$(主束)として実現可能。ただし、$n \geq 2$の場合は結合性が8元数の場合失われるため、射影空間と同様の構成によるチャートや遷移写像がwell-defindに構成出来ない。$n \geq 3$の場合は、主束が作れないためそもそも構成できない。
・$HP^n \simeq Sp(n+1)/(Sp(n)×Sp(1))$(等質空間表現)から、4元数n次元射影空間が4n次元多様体であることはすぐにわかる。
参考: The Octonions
念のために補足しておくと、〇〇元数それ自体は、基底をとることで〇〇次のベクトル空間$\mathbb R^k$($k$は〇〇のこと)と表せるので、それ自体は明らかに多様体の構造を取ります。
今回問題となっているのは、その射影空間ですね。
あと、この調査中に、普通にこの本の回答を作ろうとしている方が居たみたいです。(もう、問題8からでも良いかな…)
次回何を書くかは未定ですが、第二章まではゆっくりと書いていこうかなとおもっています。