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コンテストリレーDay5のL問題の「愚直な」解法

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この記事で扱うのは先日行われた「コンテストリレー」のDay5の最終問題, 関数方程式(整数分野)の「愚直な」解法です.

コンテストリレーDay5 (L問題)

関数$f: \mathbb{N}\to\mathbb{N}$であって, 任意の正の整数$m, n$に対し
$$ f(m)+n\mid f(m)^2+2mf(n)+f(n^2) $$
を満たすものをすべて求めよ.

「利口な」, つまり綺麗な模範解答はwriterであるMid_math28さんの記事が扱っています!
URL: https://mathlog.info/articles/NuuZuEl33q4d68VrUhO9

この問題には悩まされましたが, 最終的には計算量の多い愚直な方法で, なんとか解き切ることができました. 模範解答(Mid_math28さんの記事)は非常にスマートなので, そちらもぜひ参照してください.

それでは解いていきます. 解き始める前に解の予想ですが, ちょっと試せば$f(n)=n$が解であると見当がつきます. それではまず基本的な性質を確認しておきましょう.

次の性質が成り立つ:
(1) $f(1)=1$.
(2) $f(n)+1\mid 2n+2$.
(3) $f(n^2)\equiv n^2\pmod {f(n)+n}$.

(1)
与式に$(m, n)=(1, 1)$を代入することで$f(1)+1\mid f(1)^2+2f(1)+f(1)$, $f(1)+1\mid 2$が成り立つ. $f(1)\geq 1$より$f(1)=1$である.

(2)
$(m, n)=(n, 1)$を代入すると$f(n)+1\mid f(n)^2+2n+1$. $f(n)\equiv -1\pmod {f(n)+1}$に注意すると$f(n)+1\mid 2n+2$.

(3)
$(m, n)=(n, n)$を代入すると$f(n)+n\mid f(n)^2+2nf(n)+f(n^2)$であり, $f(n)\equiv -n\pmod {f(n)+n}$であるから
$$ \begin{align*} f(n)^2+2nf(n)+f(n^2)&\equiv n^2-2n^2+f(n^2)\pmod {f(n)+n}\\ \implies f(n^2)&\equiv n^2\pmod {f(n)+n}. \end{align*} $$

ここまでは5分くらいでたどり着けます. $f(1)$が分かったので$f(2)$を求めてみましょう.

$f(2)=2$である. また$f(4)=4$である. さらに$f(n)+2\mid 4n+8$である.

定理1の(2)より$f(2)+1\mid 6$であるから, $f(2)=1, 2, 5$.

$f(2)=1$の場合, 定理1の(3)より$f(4)\equiv 4\pmod 3$. また$(m, n)=(1, 2)$とすれば$3\mid 1+2+f(4)$より$3\mid f(4)$. これは矛盾.

$f(2)=5$の場合, $f(4)\equiv 4\pmod 7$. $f(4)+1\mid 10$と併せて$f(4)=4$. $(m, n)=(3, 2)$とすれば, $f(3)+2\mid 38$であり, また定理1の(2)より$f(3)+1\mid 10$であるが, これをともに満たす$f(3)$は存在しない.

よって$f(2)=2$である. また, $f(4)\equiv 4\pmod 4$及び$f(4)+1\mid 10$から$f(4)=4$.

$(m, n)=(n, 2)$とすれば$f(n)+2\mid f(n)^2+4n+4$で例によって$f(n)\equiv -2\pmod {f(n)+2}$なので, $f(n)+2\mid 4n+8$.

$f(2)$を求めるのもちょっと面倒でしたね. 次はより一般的な結果として$f(n)\leq n$を示していきましょう!

任意の正の整数$n$に対し, $f(n)\leq n$が成り立つ.

定理1の(2)より, $f(n)+1\mid 2n+2$であるから, $f(n)+1=2n+2$を棄却できれば, $f(n)+1\leq n+1$, $f(n)\leq n$が示される.

$f(s)+1=2s+2$なる正整数$s$が存在したと仮定する. このとき, 定理2より
$$ f(s)+2\mid 4s+8\implies 2s+3\mid 4s+8\implies 2s+3\mid 2 $$
となるがこれは不可能. よって$f(n)+1\neq 2n+2$である. $2n+2$の約数は大きい順に$2n+2, n+1, \dots$なので$f(n)+1\leq n+1$, よって$f(n)\leq n$である.

$f(n)\leq n$が分かりました!そろそろ$f(n)=n$を直接示したいころですが, そのために$f(s)\neq s$なる正整数$s$が存在したと仮定し, その中で最小のものを持ってくることにします. $f(s)=t$とすれば$t< s$であるので$f(t)=t$が成り立ちます!

$s+t\mid 4t^2$が成り立つ. よって必然的に$4t^2>s$である.

$(m, n)=(t, s)$を代入すれば$s+t\mid t^2+2t^2+f(s^2)$であり, 定理1の(3)より$f(s^2)\equiv s^2\equiv t^2\pmod {s+t}$であるので$s+t\mid 4t^2$であり, 故に$4t^2>s$である.

さて, $k<\sqrt{s}$なる任意の正整数$k$に対し, $f(k^2)=k^2$が成り立ちます($s$の最小性に注意). $f(2)$を絞ったときのように, $f(s)+k$で割り切れる, という関係を使って$s, t$を絞りたいところです. $f(s)+k\mid f(s)^2+2sk+k^2$となりますから($k^2< s$に注意!)
$$ t+k\mid 2k^2+2sk\implies t+k\mid 2t(s-t) $$
が成立します. $2t(s-t)$$k$に依らないので扱いやすそうです. 定理4から$s<4t^2$なので, $2t(s-t)<8t^3$ですね. つまり, $t+k_1, t+k_2, t+k_3, t+k_4$があまり公約数をもたないように$k_1, k_2, k_3, k_4$を定めることができれば, 大きい$t$で破綻することを導けます.

$t\pmod 3$によって$k_1, k_2, k_3, k_4$は変わりますが, $\sqrt{s}>5$であれば嬉しいものが見つかります.

$s\leq 25$である.

$s>25$を仮定する.

$k^2< s$なる任意の正整数$k$に対し, $t+k\mid 2t(s-t)$が成立する(先ほどの議論). このとき$k=1, 2, 3, 4, 5$は必ず取ることができる.

$t\equiv 0, 1\pmod 3$のとき, $t+1, t+2, t+3, t+4$の最小公倍数は$(t+1)(t+2)(t+3)(t+4)/2$である(※).

また, $t\equiv 2\pmod 3$のとき, $t+2, t+3, t+4, t+5$の最小公倍数は$(t+2)(t+3)(t+4)(t+5)/2$である(※).

よって, $t\pmod 3$によらず
$$ \begin{align*} (t+1)(t+2)(t+3)(t+4)/2&\leq 2t(s-t)< 8t^3\\ t^4+10t^3+35t^2&\leq 16t^3 \end{align*} $$
である(一段目最後の不等式は定理4を用いた)が, これが満たされることはない.

よって, $s\leq 25$である.

(※)の捕捉

$t\equiv 0, 1\pmod 3$のとき, $\mathrm{lcm}(t+1, t+2)=(t+1)(t+2)$で, $\mathrm{lcm}(t+3, t+4)=(t+3)(t+4)$である. $((t+1)(t+2), (t+3)(t+4))=2$なので
$$ \mathrm{lcm}(t+1, t+2, t+3, t+4)=(t+1)(t+2)(t+3)(t+4)/2. $$

$t\equiv 2\pmod 3$のときは$t\to t+1$に置き換えているだけである.

あとは$s=3, 5, 6, 7...25$を人力で試すだけですね!(非本質部分につき, 値を求める部分は省きます)

投稿日:714
更新日:715
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