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高校数学解説
文献あり

5^πは双子素数か.

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$5^\pi$ は整数か.

 令和$4$年度国際信州学院大学理学部数学入試問題の第$4$問として出題されたこの問題は有名ですが,その難易度は他の入試問題(国信大を除き)の比ではないです.
 その要因として$5^\pi=156.9925\cdots$より値が大きいため予想しづらいことと,$157$にとても近いことが挙げられます.
 今回の記事では整数にとても近いという要因を解消しようと思います.
 大体手計算のみで$2$時間以内に解けるくらいの問題にしたい
 ただ個人的に$5^\pi$は残しておきたかったので、

ボツ

$5^\pi$ は素数か.

 このように整数という対象そのものを変えてしまおうという目論見です.
 (解きたい人はどうぞ.因みに$157$は素数です)
 いろいろ試行錯誤(2秒)して出来た問題が

$5^\pi$は双子素数か.

 タイトルにもありますが,この問題です
 すぐ解説に移るので,解きたい人は今考えてみてください.

双子素数について

 一般に「双子素数」と言ったとき,差が$2$の素数のを指すのか,その組を構成する素数ひとつを指すのかが調べても曖昧だったので,(問題文を短くするために)後者の方にしました.

以下僕なりの考え方と解答を載せます.

解く

値の予想

 流石に双子素数では無いだろうと予想して進めていきます
 
 まず大雑把な比較を考えますが,ここで僕が気になったことが$5^{0.14\cdots}<5^{0.2}=\sqrt[5]{5}$という点です.ここで,$\sqrt[x]{x}(x>0)$$x\geq e$の範囲で単調減少であることを思い出すと$\sqrt[5]{5}<\sqrt[4]{4}=1.41\cdots$より$5^\pi<125\times 1.42\cdots=177.5$が分かります.

 上からの評価は一応できましたが,もちろん初見では$5^\pi$の値は分かっていないのでもっと厳しい評価ができるかもしれません.

 $125$以上$177$以下の双子素数は
$$ 137,139,149,151,(179)$$
 なので,$139\leq 5^\pi\leq149$または$151\leq5^\pi\leq 179$だったらいいなぁと考えます($149<5^\pi<151$とかの評価は流石にしたくないのと,値的に$5^\pi<139$にはならなさそう).$150$$5^\pi$との比較が良さそうなので試してみます.
 
 $6$$5^{\pi -2}$の比較をすれば良いので,$\dfrac{9}{8}<\pi -2<\dfrac{8}{7}$よりまず$6$$5^\frac{8}{7}$の比較を試してみます

 $7$乗して$6^7=279936,5^8=390625$より$6<5^\frac{8}{7}$ですが$5^{\pi -2}<5^{\frac{8}{7}}$なので$6$$5^{\pi -2}$の大小は判断できません.
 ただ$\dfrac{22}{7}$$\pi$の誤差は$0.0012\cdots$なのでなんとなく$150<5^\pi$だろうなという予想が立ちます(ここで決めつけて先に進んでもいいですが,結局次の計算をすることになるのでこの段階でします).

 $6$$5^\frac{9}{8}$の比較をしますが,$6^7$$5^8$をさっき計算したのでそんなに苦じゃないです.
 $6^8<6\times280000=1680000,5^9>5\times390000=1950000$より$6<5^\frac{9}{8}<5^{1.41\cdots}$.よって$150<5^\pi$が分かりました.

残りの証明

 あと示さなければいけないことは

  • $\dfrac{25}{8}<\pi<3.2$の証明

  • $151<5^\pi$の証明
     です.はぁ...

$\pi<3.2$

 $2023$年関西医科大学医学部後期の入試問題で誘導付き$(\displaystyle\int_{0}^{1}\dfrac{x^2(x+1)^2(x-1)^2}{x^2+1})$で出されたらしいですが,今回は与えられていないので定番の周長比較で示します.  

 半径$\dfrac{1}{2}$の円に外接する正$16$角形を考えると,その周長は$16\tan\dfrac{\pi}{16}$です.
$$\tan\dfrac{\pi}{16}=\dfrac{\sin\frac{\pi}{8}}{1+\cos\frac{\pi}{8}}=\dfrac{\frac{\sqrt{2-\sqrt{2}}}{2}}{1+\frac{\sqrt{2+\sqrt{2}}}{2}}=(1+\sqrt{2})(\sqrt{4-2\sqrt{2}}-1)$$
 より,これが$\dfrac{1}{5}$より小さいことを示せば(示すことができれば)良いです.
 $\dfrac{1}{5(1+\sqrt{2})}+1=\dfrac{\sqrt{2}+4}{5}$
 $\left(\sqrt{4-2\sqrt{2}}\right)^2-\left(\dfrac{\sqrt{2}+4}{5}\right)^2=\dfrac{82-58\sqrt{2}}{25}<0$ (この値は$-0.000975\cdots$なのでかなりギリギリでした)
 よって$\sqrt{4-2\sqrt{2}}<\dfrac{1}{5(1+\sqrt{2})}+1$となり,整理すると$\dfrac{1}{16}\pi<\tan\dfrac{\pi}{16}<(1+\sqrt{2})(\sqrt{4-2\sqrt{2}}-1)<\dfrac{1}{5}$が示されます.

 ちなみに,$\tan7.5\degree=(\sqrt{3}-\sqrt{2})(\sqrt{2}-1)$を知っていれば(or導出できれば)正$24$角形の評価で$\sqrt{3}<1.733,1.414<\sqrt{2}<1.415$より簡単に大小比較できます.

$\dfrac{25}{8}<\pi$

 かなり厳しい評価が必要です.僕は正$48$角形で考えました

半径$1$の円に内接する正$48$角形の面積は$24\sin\dfrac{\pi}{24}=12\sqrt{2-2\cos\frac{\pi}{12}}=12\sqrt{2-\sqrt{2+\sqrt{3}}}$より,これが$\dfrac{25}{8}$より大きいことを示せば良いです.
 $\left(\sqrt{2-\sqrt{2+\sqrt{3}}}\right)^2-\left(\dfrac{25}{96}\right)^2>2-\sqrt{3.733}-0.0679=\sqrt{3.73301041}-\sqrt{3.733}>0$
 より$\sqrt{2-\sqrt{2+\sqrt{3}}}>\dfrac{25}{96}$となり,両辺$12$倍することで示せます.

 面積比較で示したのは気分です.周長比較でもいけます.

$151<5^\pi$

 $150<5^\pi$を示した時と同様,$151<5^\frac{25}{8}$を示せばよいです.

そのまま$8$乗して$270281038127131201<298023223876953125$でも良いのですが,さっきのように$6.04<5^\frac{9}{8}$がやりやすそうです.

 二項定理を使いたいのでさらに工夫できないか考えると,
$6.04^8<6.06^8=6^8\times1.0828567056280801<1680000\times1.1=1848000<5^9$
 より示せました.

 <別解>
 やり方はほぼ同じですが,$1.208<5^\frac{1}{5}$を示す方も(指数の仮分数を真分数にするという点で)発想としてあると思います.このとき
 $1.208^5<1.21^5=1.1^{10}$から示すと良いと思います.それでも繰り上がりがめんどいのでやめます

以上より$151<5^\pi<179$から$5^\pi$が双子素数でないことが証明できました!

あとがき

 $5^\pi$が双子素数または整数でないことを大小比較を使わずに証明する方法,また円周率を誘導無しで周長or面積比較以外で示す方法ってあるんでしょうか.  

おまけ

おまけ

$2^{e+\pi}$は素数か.

暇な人は素数のところを整数にして考えてみてください

以上です. 読んでいただきありがとうございました.

参考文献

投稿日:202359
更新日:2023121

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ぴー
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