1
高校数学解説
文献あり

ラマヌジャンの論文3:ある連立方程式について

99
0

はじめに

 この記事ではラマヌジャンの書いた論文"Note on a set of simultaneous equations"を読んでいきます。
 タイトルの3という番号はハーディによる書籍"Collected Papers of Srinivasa Ramanujan"におけるナンバリングに準じています。ちなみに"Collected Papers"の全容については こちらのサイト こちらのサイト にて閲覧することができます。

概説

 この論文の主題は2n個の未知数
x1,x2,,xn,y1,y2,,yn
に関する連立方程式
x1+x2++xn=a1x1y1+x2y2++xnyn=a2x1y12+x2y22++xnyn2=a3  x1y12n1+x2y22n1++xnyn2n1=a2n
の解き方を紹介することにあります。

解説

 いま
ϕ(θ)=i=1nxi1yiθ
とおくと、これは
ϕ(θ)=k=0(i=1nxiyik)θk
と展開できるので、上の方程式は
ϕ(θ)=a1+a2θ+a3θ2++a2nθ2n+
が成り立つことと言い換えられる。
 ところでϕ(θ)の定義から
ϕ(θ)=A1+A2θ+A3θ2+Anθn11+B1θ+B2θ2++Bnθn
と表すと
A1+A2θ+A3θ2+Anθn1=(1+B1θ+B2θ2++Bnθn)×(a1+a2θ+a3θ2++a2nθ2n+)
が成り立つので、この両辺の各係数を比較することで
A1,A2,,An,B1,B2,,Bn
に関する線形方程式
(A1A2A3An0000)=(a1000a2a100a3a2a10anan1an20an+1anan1a1an+2an+1ana2an+3an+2an+1a3a2na2n1a2n2an)(1B1B2Bn)
が得られる。
 さてこの方程式は後半のn行から
B1,B2,,Bn
を求めることができ、その値と前半のn行から
A1,A2,,An
を求めることができる。あとは部分分数分解によって
A1+A2θ+A3θ2+Anθn11+B1θ+B2θ2++Bnθn=i=1nxi1yiθ
と変形することで所望の
x1,x2,,xn,y1,y2,,yn
が得られる。

計算例

 例えば
x,y,z,u,v,p,q,r,s,t
に関する連立方程式
x+y+z+u+v=2px+qy+rz+su+tv=3p2x+q2y+r2z+s2u+t2v=16p3x+q3y+r3z+s3u+t3v=31p4x+q4y+r4z+s4u+t4v=103p5x+q5y+r5z+s5u+t5v=235p6x+q6y+r6z+s6u+t6v=674p7x+q7y+r7z+s7u+t7v=1669p8x+q8y+r8z+s8u+t8v=4526p9x+q9y+r9z+s9u+t9v=11595
を考えたとき、対応する
ϕ(t)=x1pθ+y1qθ+z1rθ+u1sθ+v1tθ=A1+A2θ+A3θ2+A4θ3+A5θ41+B1θ+B2θ2+B3θ3+B4θ4+B5θ5
に関する方程式

(A1A2A3A4A500000)=(2000003200001632000311632001033116320235103311632674235103311631669674235103311645261669674235103311159545261669674235103)(1B1B2B3B4B5)
を解くと
ϕ(θ)=2+θ+3θ2+2θ3+θ41θ5θ2+θ3+3θ4θ5
と求まる(らしい)。これを
ϕ(t)=2+θ+3θ2+2θ3+θ4(1+θ)(13θ+θ2)(1+θθ2)=35(1+θ)+3649θ10(13θ+θ2)2+9θ2(1+θθ2)
と変形し、もうちょい部分分数分解することで
(xpyqzrusvt)=(35118+5103+52185103525+82515258251+52)
と求まる。

参考文献

[1]
S. Ramanujan, Note on a set of simultaneous equations, Journal of the Indian Mathematical Society, 1912, 94-96
投稿日:21日前
更新日:15日前
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

子葉
子葉
1069
262603
主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中