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反復積分についてのCauchyの公式といろいろ

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今回は この動画 で紹介されていた反復積分についてのCauchyの公式(Cauchy formula for repeated integration)が高校範囲でも(少なくとも高校範囲での厳密性において)示せることが分かったので紹介します。ちなみに、この公式を使ってベータ関数やマクローリン展開の式も導くことができることも分かりました。

まず公式について

反復積分についてのCauchyの公式

$n$を自然数、$a$を実数とするとき、
$$\int_{a}^{x}\!\!\!\int_{a}^{x_1}\!\!\!\int_{a}^{x_2}\cdots\int_{a}^{x_{n-1}}f(x_n)\,dx_n\cdots dx_{2}dx_1=\frac{1}{(n-1)!}\int_{a}^{x}(x-t)^{n-1}f(t)\,dt$$

[追記] これは部分積分を使えば下の補題なしで示すことができるようです。そっちの方が綺麗かも。

これを示すために、以下の補題をまず示します。

積分の微分

$$\frac{d}{dx}\biggl(\int_{a}^{x}(x-t)^nf(t)\,dt\biggr)=n\int_{a}^{x}(x-t)^{n-1}f(t)dt$$

普通に展開して示します。
\begin{align}\notag \frac{d}{dx}\biggl(\int_{a}^{x}(x-t)^nf(t)\,dt\biggr)&=\frac{d}{dx}\biggl(\sum_{k=0}^{n} \int_{a}^{x}{}_n C_kx^{k}(-t)^{n-k}f(t)dt\biggr)\\\notag &=\sum_{k=1}^{n}\biggl(kx^{k-1}{}_n C_k\int_{a}^{x}(-t)^{n-k}f(t)dt+{}_n C_kx^k\cdot (-x)^{n-k}f(x)\biggr)+(-x)^nf(x)\\\notag &=\sum_{k=1}^{n}\biggl(nx^{k-1}{}_{n-1} C_{k-1}\int_{a}^{x}(-t)^{n-k}f(t)dt+{}_n C_kx^k(-x)^{n-k}f(x)\biggr)+(-x)^nf(x)\\\notag &=n\int_{a}^{x}\sum_{k=0}^{n-1}{}_{n-1}C_{k}x^k(-t)^{n-1-k}f(t)dt+\sum_{k=0}^{n}{}_n C_kx^k(-x)^{n-k}f(x)\\\notag &=n\int_{a}^{x}(x-t)^{n-1}f(t)dt+(x-x)^nf(x)\\\notag &=n\int_{a}^{x}(x-t)^{n-1}f(t)dt \end{align}
よって示せた。

Wikipediaによればこれはライプニッツの積分法則とやらで導かれるそうです。(僕はよくわかってない。)

では公式の証明。

数学的帰納法で示します。
まず、n=1について、
$$\int_{a}^{x}f(t)\,dt=\frac{1}{(1-1)!}\int_{a}^{x}(x-t)^{1-1}f(t)\,dt$$
であるから成立。
n=kでの成立を仮定したとき、
\begin{align}\notag \int_{a}^{x}\!\!\!\int_{a}^{x_1}\!\!\!\int_{a}^{x_2}\cdots\int_{a}^{x_{k}}f(x_{k+1})\,dx_{k+1}\cdots dx_{2}dx_1 &=\int_{a}^{x}\!\!\!\:\biggl(\frac{1}{(k-1)!}\int_{a}^{t}(t-s)^{k-1}f(s)\,ds\biggr)dt \end{align}
ここで、先程導いた式から、$$\frac{d}{dt}\biggl(\int_{a}^{t}(t-s)^kf(s)\,ds\biggr)=k\int_{a}^{t}(t-s)^{k-1}f(s)ds$$
であるから、
\begin{align}\notag \int_{a}^{x}\!\!\!\:\biggl(\frac{1}{(k-1)!}\int_{a}^{t}(t-s)^{k-1}f(s)\,ds\biggr)dt&=\int_{a}^{x}\!\!\!\:\biggl\{\frac{d}{dt}\biggl(\frac{1}{k!}\int_{a}^{t}(t-s)^{k}f(s)\,ds\biggl)\biggr\}dt\\\notag &=\frac{1}{k!}\int_{a}^{x}(x-t)^kf(t)dt \end{align}
よってこのとき$n=k+1$でも成立する。
したがって数学的帰納法から示された。

やったぜ。

ベータ関数

ベータ関数

$$B(x,y)\coloneqq\int_{0}^{1}t^{x-1}(1-t)^{y-1}\,dt$$

式の形が先程の公式と似てますね。

ベータ関数の積分公式

$m,\,n$を自然数、$\alpha,\,\beta$を実数としたとき、
$$\int_{\alpha}^{\beta}(\beta -x)^m(x-\alpha)^n\,dx = \frac{m!\,n!}{(m+n+1)!}(\beta-\alpha)^{m+n+1}$$
とくに$\alpha=0,\,\beta=1$で、
$$B(m,n)=\frac{m!\,n!}{(m+n+1)!}$$

反復積分の公式と、もとの反復積分の定義から等式を作り出すことができます。
反復積分についてのCauchyの公式より、
$$\int_{\alpha}^{x}\!\!\!\int_{\alpha}^{x_1}\!\!\!\int_{\alpha}^{x_2}\cdots\int_{\alpha}^{x_{m}}(x_{m+1}-\alpha)^{n}\,dx_{m+1}\cdots dx_{2}dx_1=\frac{1}{m!}\int_{\alpha}^{x}(x-t)^{m}(t-\alpha)^n\,dt$$である。ここで、左辺の式は容易に計算することができ、$$\int_{\alpha}^{x}(x-\alpha)^k\,dx=\frac{(x-\alpha)^{k+1}}{k+1}$$が任意の自然数$k$に成り立つことに注意すれば、
\begin{align} \int_{\alpha}^{x}\!\!\!\int_{\alpha}^{x_1}\!\!\!\int_{\alpha}^{x_2}\cdots\int_{\alpha}^{x_{m}}(x_{m+1}-\alpha)^{n}\,dx_{m+1}\cdots dx_{2}dx_1&=\frac{(x-\alpha)^{n+m+1}}{(n+1)(n+2)\cdots(n+m+1)}\\ &=\frac{n!}{(m+n+1)!}(x-\alpha)^{m+n+1} \end{align}
が成立する。これを先ほどの式にもどせば、
\begin{align}\notag \frac{1}{m!}\int_{\alpha}^{x}(x-t)^{m}(t-\alpha)^n\,dt=\frac{n!}{(m+n+1)!}(x-\alpha)^{m+n+1}\\\notag \iff \int_{\alpha}^{x}(x-t)^{m}(t-\alpha)^n\,dt=\frac{m!\,n!}{(m+n+1)!}(x-\alpha)^{m+n+1} \end{align}
ここで$x=\beta$を代入してから、$t$$x$にかえてあげれば、
$$\int_{\alpha}^{\beta}(\beta -x)^m(x-\alpha)^n\,dx = \frac{m!\,n!}{(m+n+1)!}(\beta-\alpha)^{m+n+1}$$
となって示された。

すごーい。

$e^x$のマクローリン展開

$e^x$のマクローリン展開

$$e^x=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{x^n}{n!}$$

この証明をする際に出てくる次の式は、反復積分の公式で、上でやったのと全く同じ方針で示すことができます。

$$ e^x=\sum_{k=1}^{n}\frac{x^k}{k!}+\frac{1}{n!}\int_{0}^{x}(x-t)^{n}e^t\,dt$$

反復積分についてのCauchyの公式より、
$$\int_{a}^{x}\!\!\!\int_{a}^{x_1}\!\!\!\int_{a}^{x_2}\cdots\int_{a}^{x_{n}}e^{x_{n+1}}\,dx_{n+1}\cdots dx_{2}dx_1=\frac{1}{n!}\int_{a}^{x}(x-t)^{n}e^t\,dt$$
左辺は容易に計算することができ、
$$\int_{a}^{x}\!\!\!\int_{a}^{x_1}\!\!\!\int_{a}^{x_2}\cdots\int_{a}^{x_{n}}e^{x_{n+1}}\,dx_{n+1}\cdots dx_{2}dx_1=e^x-\sum_{k=1}^{n}\frac{x^k}{k!}$$
とわかるので、ここから
$$e^x=\sum_{k=1}^{n}\frac{x^k}{k!}+\frac{1}{n!}\int_{0}^{x}(x-t)^{n}e^t\,dt$$
となるので示せた。

でけた。

考察(?)

反復積分による式変形は部分積分と似てるところがあるような気がします。ベータ関数にしてもマクローリン展開にしても証明する際に部分積分していきますし。どうなんでしょうか。あと式の形が畳み込みに似てますが何か関係がるんでしょうか。気になる。

投稿日:20231225
更新日:117
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