$n$ を正の整数とする。$n$ の正の約数のうち,$3$ で割って $1$ 余るものの個数を $f(n)$,$3$ で割って $2$ 余るものの個数を $g(n)$ とする。
(1) $f(2800),\,g(2800)$ を求めよ。
(2) $f(n) \geqq g(n)$ を示せ。
(3) $g(n)=15$ であるとき,$f(n)$ がとりうる値を求めよ。
正の整数 $k$ の正の約数の個数を $\tau(k)$ と書き,空の積は $1$ とする。$n$ の素因数分解を
$$
n=3^{a}\prod_{i=1}^{r}p_i^{\alpha_i}\prod_{j=1}^{s}q_j^{\beta_j}=3^{a}PQ,\qquad p_i\equiv1,\quad q_j\equiv2\pmod 3
$$
と書く。ここで $a,r,s\geqq0$,$\alpha_i,\beta_j\geqq1$ であり,素数 $p_1,\dots,p_r,q_1,\dots,q_s$ は相異なる。さらに
$$
A=\tau(P)=\prod_{i=1}^{r}(\alpha_i+1),\qquad B=\tau(Q)=\prod_{j=1}^{s}(\beta_j+1),
$$
$$
S(n)=f(n)+g(n),\qquad D(n)=f(n)-g(n)
$$
とおく。$Q$ の正の約数 $q_1^{v_1}\cdots q_s^{v_s}$ を指数ベクトル $\boldsymbol v=(v_1,\dots,v_s)$ と同一視し,その全体と成分和を
$$
\mathcal V=\prod_{j=1}^{s}\lbrace 0,1,\dots,\beta_j\rbrace,\qquad \lvert\boldsymbol v\rvert=v_1+\cdots+v_s
$$
と書く($\mathcal V$ の要素数は $B$)。最後に,整数 $d$ に対し $\chi(d)$ を $d\equiv1,\,2,\,0\pmod3$ に応じてそれぞれ $1,\,-1,\,0$ と定める。$\chi$ はすべての整数 $d,e$ について $\chi(de)=\chi(d)\chi(e)$ を満たし(完全乗法性),
$$
D(n)=\sum_{d\mid n}\chi(d)
$$
である。
(i) $n$ の正の約数のうち $3$ の倍数でないものは,$P$ の約数 $d_P$ と $Q$ の約数 $d_Q$ の積 $d_Pd_Q$ として一意に表される。
(ii) $d_Q$ の指数ベクトルを $\boldsymbol v$ とすると,$d_Pd_Q\equiv(-1)^{\lvert\boldsymbol v\rvert}\pmod3$ である。
(iii) $f(n)=A\,f(Q)$,$g(n)=A\,g(Q)$,$S(n)=AB$ である。ここで $f(Q)$,$g(Q)$ はそれぞれ $\lvert\boldsymbol v\rvert$ が偶数,奇数である $\boldsymbol v\in\mathcal V$ の個数に等しい。
(i) $3$ の倍数でない約数では $3$ の指数が $0$ であるから,素因数分解の一意性より従う。
(ii) $p_i\equiv1$,$q_j\equiv-1\pmod3$ より $d_Pd_Q\equiv\prod_{j}(-1)^{v_j}=(-1)^{\lvert\boldsymbol v\rvert}$。
(iii) (ii) より $d_Pd_Q$ の剰余は $d_P$ によらず $\lvert\boldsymbol v\rvert$ の偶奇だけで決まり,$d_P$ の選び方は $A$ 通りある。(i) と合わせて前半を得る。$S(n)$ は $3$ の倍数でない約数の総数であるから,(i) より $AB$ に等しい。
素因数の種類ごとの作用をまとめる。
| 素因数 | $\chi$ の値 | $f,g$ への作用 |
|---|---|---|
| $3$ | $0$ | 寄与しない(指数 $0$ の場合のみ数えられる) |
| $p\equiv1\pmod3$ | $1$ | $f,g$ をともに $\alpha+1$ 倍する |
| $q\equiv2\pmod3$ | $-1$ | 指数の偶奇によって剰余類を入れ替える |
本問は,$3$ を除去し,$P$ を共通の倍率 $A$ として分離したのち,直方体格子 $\mathcal V$ 上で成分和の偶奇を数える問題に帰着する。
$\mathcal V$ の点を $\lvert\boldsymbol v\rvert$ の偶奇で塗り分けると,隣接する点の色が交互に変わる多次元の市松模様が得られる。(1) の $2800=2^4\cdot5^2\cdot7$ では $Q=2^4\cdot5^2$,$\mathcal V=\lbrace0,\dots,4\rbrace\times\lbrace0,1,2\rbrace$ であり,$\lvert\boldsymbol v\rvert$ が偶数の点を $+$,奇数の点を $-$ で表すと次のようになる。
| $v_2\backslash v_1$ | $0$ | $1$ | $2$ | $3$ | $4$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $0$ | $+$ | $-$ | $+$ | $-$ | $+$ |
| $1$ | $-$ | $+$ | $-$ | $+$ | $-$ |
| $2$ | $+$ | $-$ | $+$ | $-$ | $+$ |
$+$ は $8$ 個,$-$ は $7$ 個であり,$f(Q)=8$,$g(Q)=7$ である。この図から,(a) 両色の個数が一致するのはどのような場合か,(b) 一致しないとき差はいくつか,(c) 両色を結ぶ具体的な対応は何か,という問いが生じる。(a)(b) に代数的に答えるのが本解,(c) の対応を構成して答えるのが別解1 である。
$3$ と互いに素な剰余類 $\lbrace1,2\rbrace$ の乗法は,符号 $\lbrace+1,-1\rbrace$ の乗法と同型である($2\equiv-1$)。このため互いに素な $u,v$ の積では,二つの個数 $(f,g)$ が
$$
\begin{pmatrix}f(uv)\\ g(uv)\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}f(v)&g(v)\\ g(v)&f(v)\end{pmatrix}\begin{pmatrix}f(u)\\ g(u)\end{pmatrix}
$$
のように混ざり合う(
補題5
)。この形の行列はすべて固有ベクトル $(1,1)^{\top}$,$(1,-1)^{\top}$ を共有し,対応する固有値はそれぞれ $f(v)+g(v)$,$f(v)-g(v)$ である。すなわち和 $S$ と差 $D$ は積に関して同時に対角化される座標であり,ともに乗法的になる。和は
補題2
により $S(n)=AB$ と直ちに決まるので,残る情報はすべて差 $D$ に集約される。
素数冪における $D$ の値は
$$
D(3^{a})=1,\qquad D(p^{\alpha})=\alpha+1,\qquad D(q^{\beta})=\sum_{k=0}^{\beta}(-1)^k=\frac{1+(-1)^{\beta}}{2}
$$
であり,いずれも非負である。これが (2) の不等式の局所的な理由であり,次の定理に集約される。
すべての正の整数 $n$ について
$$
D(n)=A\prod_{j=1}^{s}\frac{1+(-1)^{\beta_j}}{2}=\begin{cases}A&(Q\text{ が平方数})\\ 0&(Q\text{ が平方数でない})\end{cases}
$$
が成り立つ。ただし $Q=1$ は平方数とみなす。したがって
$$
f(n)=A\left\lceil\frac{B}{2}\right\rceil,\qquad g(n)=A\left\lfloor\frac{B}{2}\right\rfloor.
$$
すべての正の整数 $n$ について次が成り立つ。
(a) $f(n)\geqq g(n)$。
(b) $A\mid f(n)$,$A\mid g(n)$,$f(n)-g(n)\in\lbrace0,A\rbrace$。
(c) $f(n)=g(n)$ であるための必要十分条件は,$Q$ が平方数でないことである。
(d) $f(n)>g(n)$ ならば $\gcd(f(n),g(n))=f(n)-g(n)=A$。特に $f(n)-g(n)\mid g(n)$。
(e) $g(n)>0$ ならば $g(n)\leqq f(n)\leqq2g(n)$ であり,右の等号は $B=3$ のときに限る。
(a)〜(c) は 定理3 から直ちに従う。(d) $B=2k+1$ と書くと $(f,g)=(A(k+1),Ak)$ であり,$\gcd(k+1,k)=1$ より $\gcd(f,g)=A$。(e) $f=g$ なら自明である。$f>g>0$ なら $B=2k+1$,$k\geqq1$ であり,$f/g=(k+1)/k\leqq2$,等号は $k=1$ のときに限る。
注意すべき点を挙げる。
以下は数値設定と設問構成からの分析であり,出題者の意図については推定を含む。
| 着目する構造 | 数学的翻訳 | 導かれる解法 |
|---|---|---|
| 剰余類の乗法と符号の乗法の同型 | 和 $S$ と差 $D$ の乗法性 | 本解 |
| 具体的な数 $2800$ | 偶奇の選び方の表 | 3.1 節 |
| $f>g$ のときの $\gcd(f,g)=f-g$ | 整除性による一括決定 | 3.2 節 |
| 指数格子の市松模様 | 偶奇を反転する対合 | 別解1 |
| $g(n)=15$ が奇数 | 相補約数の対合の固定点 | 別解2 |
| $D(n)=\sum_{d\mid n}\chi(d)$ の非負性 | 二次形式の表現数 | 参考解1 |
| 同上($n\equiv1\pmod3$ の場合) | 3-core 分割の個数 | 参考解2 |
$f,g$ を個別に数えず,和 $S=f+g$ と差 $D=f-g$ を扱う。互いに素な積について $S,D$ がともに乗法的であることを示し( 1.3 節 ),素数冪での値から 定理3 を得る。(1) は $S,D$ の連立で,(2) は $D\geqq0$ で,(3) は $A\mid g$ と $D\in\lbrace0,A\rbrace$ による必要条件と,実現例の構成による十分性で処理する。
互いに素な正の整数 $u,v$ について
$$
f(uv)=f(u)f(v)+g(u)g(v),\qquad g(uv)=f(u)g(v)+g(u)f(v)
$$
が成り立つ。したがって $S(uv)=S(u)S(v)$,$D(uv)=D(u)D(v)$ である。
$\gcd(u,v)=1$ より,$uv$ の正の約数は $u$ の約数 $d$ と $v$ の約数 $e$ の積 $de$ として一意に表される。$3\nmid de$ となるのは $3\nmid d$ かつ $3\nmid e$ のときに限り,このとき
$$
1\cdot1\equiv2\cdot2\equiv1,\qquad 1\cdot2\equiv2\cdot1\equiv2\pmod3
$$
であるから,二式を得る。辺々加減すると
$$
S(uv)=\bigl(f(u)+g(u)\bigr)\bigl(f(v)+g(v)\bigr),\qquad D(uv)=\bigl(f(u)-g(u)\bigr)\bigl(f(v)-g(v)\bigr).
$$
素数冪での値を求める。$3^{a}$ の正の約数のうち $3$ の倍数でないものは $1$ のみであるから $S(3^{a})=D(3^{a})=1$。$p\equiv1\pmod3$ なら $p^k\equiv1$ であるから $S(p^{\alpha})=D(p^{\alpha})=\alpha+1$。$q\equiv2\pmod3$ なら $q^k\equiv(-1)^k$ であるから
$$
S(q^{\beta})=\beta+1,\qquad D(q^{\beta})=\sum_{k=0}^{\beta}(-1)^k=\frac{1+(-1)^{\beta}}{2}.
$$
$S(1)=D(1)=1$ であり,素因数分解に現れる相異なる素数の冪は互いに素であるから,
補題5
と素因数の種類の個数に関する帰納法により
$$
S(n)=AB,\qquad D(n)=A\prod_{j=1}^{s}\frac{1+(-1)^{\beta_j}}{2}.
$$
これで
定理3
が示された。
$2800=2^4\cdot5^2\cdot7$ であり,$2\equiv5\equiv2$,$7\equiv1\pmod3$ であるから,$P=7$,$Q=2^4\cdot5^2$,$A=2$,$B=5\cdot3=15$ である。$Q$ は平方数であるから
$$
f(2800)+g(2800)=AB=30,\qquad f(2800)-g(2800)=A=2.
$$
よって
$$
f(2800)=16,\qquad g(2800)=14.
$$
素数冪における $D$ の値はすべて非負整数であり,$D(n)$ はそれらの積であるから $D(n)\geqq0$,すなわち $f(n)\geqq g(n)$ である。等号が成り立つのは $Q$ が平方数でないとき,かつそのときに限る。
$g(n)=15$ とする。
必要条件。
補題2
より $15=g(n)=A\,g(Q)$ であり,$g(Q)$ は非負整数であるから $A\mid15$,すなわち $A\in\lbrace1,3,5,15\rbrace$。また
定理3
より $f(n)-15\in\lbrace0,A\rbrace$。よって
$$
f(n)\in\lbrace15,\,16,\,18,\,20,\,30\rbrace.
$$
十分性。$n=2^{29}$ とすると $A=1$,$B=30$ であり,$B$ が偶数なので $f(n)=g(n)=15$。次に $c\in\lbrace1,3,5,15\rbrace$ に対し
$$
n=2^{30/c}\cdot7^{\,c-1}
$$
とおくと $A=c$,$B=\frac{30}{c}+1$ であり,$c$ は奇数だから $\frac{30}{c}$ は偶数,$B$ は奇数である。よって
定理3
より
$$
g(n)=c\cdot\frac{B-1}{2}=15,\qquad f(n)=c\cdot\frac{B+1}{2}=15+c.
$$
$c=1,3,5,15$ により $f(n)=16,18,20,30$ が実現する。
以上より,$f(n)$ のとりうる値は
$$
f(n)=15,\ 16,\ 18,\ 20,\ 30.
$$
実現例を表にまとめる。
| $f(n)$ | $n$ の例 | $A$ | $B$ |
|---|---|---|---|
| $15$ | $2^{29}$ | $1$ | $30$ |
| $16$ | $2^{30}$ | $1$ | $31$ |
| $18$ | $2^{10}\cdot7^{2}$ | $3$ | $11$ |
| $20$ | $2^{6}\cdot7^{4}$ | $5$ | $7$ |
| $30$ | $2^{2}\cdot7^{14}$ | $15$ | $3$ |
| 設問 | 答 |
|---|---|
| (1) | $f(2800)=16,\ g(2800)=14$ |
| (2) | すべての正の整数 $n$ で $f(n)\geqq g(n)$(等号は $Q$ が平方数でないときに限る) |
| (3) | $f(n)=15,\ 16,\ 18,\ 20,\ 30$ |
3.1,3.2 節は特定の設問に対する他の導出,3.3,3.4 節は高校数学の範囲で完結する別解,3.5,3.6 節は大学数学の既知定理を用いる参考解である。3.7 節で同じ系列に属する変形を,3.8 節で解法の比較をまとめる。
補題2 より $f(2800)=2f(Q)$,$g(2800)=2g(Q)$($Q=2^4\cdot5^2$)である。$\lvert\boldsymbol v\rvert=v_1+v_2$ の偶奇は $v_1,v_2$ の偶奇の組で決まるから,座標ごとの偶数値・奇数値の個数を掛け合わせればよい。
| 素数冪 | 指数の範囲 | 偶数の指数 | 奇数の指数 |
|---|---|---|---|
| $2^4$ | $0\leqq v_1\leqq4$ | $3$ 個 | $2$ 個 |
| $5^2$ | $0\leqq v_2\leqq2$ | $2$ 個 | $1$ 個 |
$\lvert\boldsymbol v\rvert$ が偶数となるのは(偶,偶)と(奇,奇)の組であるから
$$
f(Q)=3\cdot2+2\cdot1=8,\qquad g(Q)=3\cdot1+2\cdot2=7.
$$
よって $f(2800)=16$,$g(2800)=14$。
1.2 節 の表の $+$ と $-$ の個数に一致する。この計算は,座標ごとの偶数値・奇数値の個数 $(e_j,o_j)$ を行列 $\begin{pmatrix}e_j&o_j\\ o_j&e_j\end{pmatrix}$ で合成する方法( 3.7 節 )の $s=2$ の場合であり,差 $(3-2)(2-1)=1$ をとれば本解の $D(Q)=1$ に戻る。
補題4 (d) により,$f>g$ のとき差 $f-g$ は $\gcd(f,g)$ に等しい。この不変量を用いると,倍率 $A$ に言及せずに $f-15$ が $15$ の正の約数であることが分かる。
$g(n)=15$ とする。$f(n)=g(n)$ なら $f(n)=15$。$f(n)>g(n)$ なら 補題4 (d) より $f(n)-15=\gcd(f(n),15)$ は $15$ の正の約数であるから,$f(n)\in\lbrace16,18,20,30\rbrace$。十分性は 2.2 節 の実現例による。
実現例の組 $(f,g)=(16,15),(18,15),(20,15),(30,15)$ の最大公約数はそれぞれ $1,3,5,15$ で,差に一致する。本解が用いた $A\mid g$ は 補題2 だけから従うのに対し,$\gcd(f,g)=f-g$ は $f,g$ の完全な公式( 定理3 の後半)を要する。必要とする情報は多いが,「差が最大公約数に等しい」という形は,実現可能な組の特徴付け( 定理12 )の条件そのものである。
1.2 節 の市松模様において,色の異なる点を具体的に組にする。各座標の値を $(0,1),(2,3),\dots$ と隣接する二数の組に分け,組をもつ座標のうち番号最小のものだけを動かす。この規則により操作は対合となり,対応せずに残る点を完全に特定できる。
補題2
より $f(n)=A\,f(Q)$,$g(n)=A\,g(Q)$ であり,$f(Q),g(Q)$ は $\lvert\boldsymbol v\rvert$ が偶数,奇数である $\boldsymbol v\in\mathcal V$ の個数である。
各 $j$ について,集合 $E_j\subset\lbrace0,1,\dots,\beta_j\rbrace$ と写像 $\pi_j:E_j\to E_j$ を
$$
E_j=\lbrace v : 0\leqq v\leqq\beta_j,\ v\text{ は奇数,または }v\text{ は偶数かつ }v < \beta_j\rbrace,\qquad \pi_j(v)=\begin{cases}v+1&(v\text{ が偶数})\\ v-1&(v\text{ が奇数})\end{cases}
$$
で定める。$E_j$ から除かれる値は,$\beta_j$ が偶数のときの $\beta_j$ のみである。
$$
\mathcal V^{\ast}=\lbrace\boldsymbol v\in\mathcal V : \text{ある }j\text{ で }v_j\in E_j\rbrace
$$
とし,$\boldsymbol v\in\mathcal V^{\ast}$ に対して $j(\boldsymbol v)=\min\lbrace j : v_j\in E_j\rbrace$ とおき,$\iota(\boldsymbol v)$ を $\boldsymbol v$ の第 $j(\boldsymbol v)$ 成分を $\pi_{j(\boldsymbol v)}(v_{j(\boldsymbol v)})$ に置き換えたものと定める。
$\iota$ は $\mathcal V^{\ast}$ から $\mathcal V^{\ast}$ への写像で $\iota\circ\iota=\mathrm{id}$ を満たし,$\lvert\iota(\boldsymbol v)\rvert$ と $\lvert\boldsymbol v\rvert$ の偶奇は異なる。また
$$
\mathcal V\setminus\mathcal V^{\ast}=\begin{cases}\varnothing&(\text{ある }\beta_j\text{ が奇数})\\ \lbrace(\beta_1,\dots,\beta_s)\rbrace&(\text{すべての }\beta_j\text{ が偶数})\end{cases}
$$
である($s=0$ のときは後者で,$\mathcal V$ は空の指数ベクトル $1$ 点からなる)。
$\pi_j$ は $E_j$ を $E_j$ に移し($v$ が偶数で $v < \beta_j$ なら $v+1\leqq\beta_j$ は奇数,$v$ が奇数なら $v-1$ は偶数で $v-1 < \beta_j$),$\pi_j\circ\pi_j=\mathrm{id}$ を満たし,値の偶奇を反転する。
$\boldsymbol w=\iota(\boldsymbol v)$,$j=j(\boldsymbol v)$ とする。$\boldsymbol w$ は第 $j$ 成分だけが $\boldsymbol v$ と異なり,$w_j=\pi_j(v_j)\in E_j$,かつ $k < j$ では $w_k=v_k\notin E_k$ である。よって $\boldsymbol w\in\mathcal V^{\ast}$,$j(\boldsymbol w)=j$ であり,$\iota(\boldsymbol w)$ は第 $j$ 成分を $\pi_j(\pi_j(v_j))=v_j$ に戻したもの,すなわち $\boldsymbol v$ である。成分和の偶奇は第 $j$ 成分の偶奇とともに反転する。
最後に,$\boldsymbol v\notin\mathcal V^{\ast}$ はすべての $j$ で $v_j\notin E_j$ を意味し,$\lbrace0,\dots,\beta_j\rbrace\setminus E_j$ は $\beta_j$ が奇数なら空集合,偶数なら $\lbrace\beta_j\rbrace$ である。
補題6 より,$\iota$ は $\mathcal V^{\ast}$ の中で成分和が偶数の点と奇数の点との間の全単射を与える。
$n=3^{a}m$,$3\nmid m$ とおく。$3$ の倍数である約数は数えないので $f(n)=f(m)$,$g(n)=g(m)$ である。$m$ の正の約数 $d$ に対し $\kappa(d)=m/d$ とおくと,$\kappa\circ\kappa=\mathrm{id}$ かつ $\chi(d)\chi(\kappa(d))=\chi(m)$ である。
$3\nmid m$ とする。
(i) $m\equiv2\pmod3$ ならば $f(m)=g(m)$ である。
(ii) $m\equiv1\pmod3$ ならば,$g(m)$ が奇数であることは,$m=t^2$,$t\equiv2\pmod3$ を満たす正の整数 $t$ が存在することと同値である。同様に,$f(m)$ が奇数であることは,$m=t^2$,$t\equiv1\pmod3$ を満たす正の整数 $t$ が存在することと同値である。
(i) $\chi(m)=-1$ より,$\kappa$ は剰余類 $1$ の約数全体と剰余類 $2$ の約数全体の間の全単射である。
(ii) $\chi(m)=1$ より,$\kappa$ は $G=\lbrace d\mid m : d\equiv2\pmod3\rbrace$ を $G$ に移す対合である。$G$ は $\kappa$ の固定点と,$2$ 元集合 $\lbrace d,\kappa(d)\rbrace$($d\neq\kappa(d)$)とに分割されるから,$G$ の要素数の偶奇は固定点の個数の偶奇に等しい。固定点は $d^2=m$ を満たす $d\in G$ であり,存在すれば $d=\sqrt m$ に限る。よって $g(m)$ が奇数であることは,$\sqrt m$ が整数でかつ $\sqrt m\equiv2\pmod3$ であることと同値である。$f$ についても同様である。
符号付きの和 $D(n)$ を,ある集合の要素の個数として表せば,非負性は自明になる。$\omega=\frac{-1+\sqrt{-3}}{2}$ とし,Eisenstein 整数環 $\mathbb Z[\omega]=\lbrace x+y\omega : x,y\in\mathbb Z\rbrace$ と,そのノルム
$$
N(x+y\omega)=(x+y\omega)\overline{(x+y\omega)}=x^2-xy+y^2
$$
を用いる。
次の事実は代数的整数論の標準的な結果である。
(i) $\mathbb Z[\omega]$ は Euclid 整域であり,$0$ でも単数でもない元は,単数倍と順序を除いて一意に素元の積に分解される。単数は $\pm1,\pm\omega,\pm\omega^2$ の $6$ 個である。ノルムは乗法的である。
(ii) 有理素数 $\ell$ は次のように分解する。$\ell=3$ は $3=-\omega^2(1-\omega)^2$($N(1-\omega)=3$)。$\ell\equiv1\pmod3$ は,互いに同伴でない共役な素元 $\pi,\bar\pi$ により $\ell=\pi\bar\pi$($N(\pi)=\ell$)。$\ell\equiv2\pmod3$ は $\mathbb Z[\omega]$ でも素元であり,$N(\ell)=\ell^2$。
$R(n)=\left\lvert\lbrace(x,y)\in\mathbb Z^2 : x^2-xy+y^2=n\rbrace\right\rvert$ とおくと,すべての正の整数 $n$ について $R(n)=6D(n)$ が成り立つ。
$R(n)$ はノルム $n$ の元 $z\in\mathbb Z[\omega]$ の個数である。$n>0$ より $z\neq0$ であり,$z$ の単数倍 $6$ 個は相異なり,ノルムも等しい。よって $R(n)=6I(n)$,ただし $I(n)$ はノルム $n$ の元の同伴類の個数である。
$z$ の素因子のノルムは $n$ を割り切るから,$z$ の素元分解には $n$ の素因数を割り切る素元しか現れない。
定理8
より,ノルム $n=3^{a}\prod_ip_i^{\alpha_i}\prod_jq_j^{\beta_j}$ の元の同伴類は
$$
z\sim(1-\omega)^{c}\prod_{i}\pi_i^{x_i}\bar\pi_i^{\,y_i}\prod_{j}q_j^{\,w_j}\qquad(p_i=\pi_i\bar\pi_i)
$$
の形に一意に表され,$N(z)=n$ は $c=a$,$x_i+y_i=\alpha_i$,$2w_j=\beta_j$ と同値である。よって
$$
I(n)=\prod_{i=1}^{r}(\alpha_i+1)\prod_{j=1}^{s}\frac{1+(-1)^{\beta_j}}{2}
$$
であり,これは
2.2 節
で求めた $D(n)$ の積表示に一致する。
$D(3k+1)$ は,整数 $k$ の 3-core 分割の個数に等しい。$3$ の冪を除いた部分が $3$ で割って $1$ 余るか $2$ 余るかで場合分けすれば,(2) は分割の個数の非負性に帰着する。
非負整数 $k$ の分割 $\lambda=(\lambda_1\geqq\lambda_2\geqq\cdots)$ の Young 図形の各マス $c$ について,$c$ の右にあるマスの個数と下にあるマスの個数の和に $1$ を加えたものを $c$ のフック長という。すべてのマスのフック長が $3$ の倍数でない分割を 3-core 分割といい,その個数を $a_3(k)$ と書く(空分割により $a_3(0)=1$)。
すべての非負整数 $k$ について $a_3(k)=D(3k+1)$ が成り立つ。母関数で書けば
$$
\sum_{k\geqq0}a_3(k)z^k=\prod_{\ell\geqq1}\frac{(1-z^{3\ell})^3}{1-z^{\ell}}=\sum_{k\geqq0}D(3k+1)z^k.
$$
第一の等号は $t$-core 分割の母関数 $\prod_{\ell}(1-z^{t\ell})^t/(1-z^{\ell})$ の $t=3$ の場合であり,第二の等号は非自明な $q$ 級数恒等式である。$a_3(k)=D(3k+1)$ は Granville–Ono がモジュラー形式の理論を用いて示し,Hirschhorn–Sellers(2009)が Jacobi の三重積公式に基づく初等的証明を与えた。
5.7 節
では,これを
補題9
に帰着させる証明の概略を述べる。
(2) の証明。$n=3^{a}m$,$3\nmid m$ とおくと $D(n)=D(m)$ である。
以下は独立の解法とは数えず,既出の解法の表現違い,または構成の変種として扱う。
$\chi$ の完全乗法性から
$$
D(n)=\sum_{d\mid n}\chi(d)=\prod_{\ell^{e}\parallel n}\bigl(1+\chi(\ell)+\chi(\ell)^2+\cdots+\chi(\ell)^{e}\bigr)
$$
であり,各因子は $1$($\ell=3$),$e+1$($\ell\equiv1$),$0$ または $1$($\ell\equiv2$)である。本解を一行に圧縮した形である。
$H(X)=A\prod_{j}(1+X+\cdots+X^{\beta_j})$ とおくと,偶数次・奇数次の係数和がそれぞれ $f(n),g(n)$ であるから
$$
f(n)=\frac{H(1)+H(-1)}{2},\qquad g(n)=\frac{H(1)-H(-1)}{2},\qquad H(1)=AB,\quad H(-1)=D(n).
$$
$q\nmid m$ のとき,$q^{\beta}$ の指数のうち偶数の個数を $e=\lfloor\beta/2\rfloor+1$,奇数の個数を $o=\lceil\beta/2\rceil$ とすると
$$
\begin{pmatrix}f(mq^{\beta})\\ g(mq^{\beta})\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}e&o\\ o&e\end{pmatrix}\begin{pmatrix}f(m)\\ g(m)\end{pmatrix}.
$$
固有値 $e+o=\beta+1$,$e-o\in\lbrace0,1\rbrace$ に対応する固有ベクトルが $(1,1)^{\top}$,$(1,-1)^{\top}$ であり,$D(mq^{\beta})=(e-o)D(m)$ と $D(1)=1$ から帰納法で $D\geqq0$ を得る。
$q\equiv2\pmod3$,$q\nmid m$ のとき,$m$ の各約数 $d$ について $d,qd,\dots,q^{\beta}d$ の剰余類は交互に並ぶ。隣同士を打ち消すと,$D(q^{\beta}m)$ は $\beta$ が偶数なら $D(m)$,奇数なら $0$ である。同様に $D(p^{\alpha}m)=(\alpha+1)D(m)$($p\nmid m$),$D(3^{a}m)=D(m)$($3\nmid m$)。特に,$q\mid n$ であっても $D(q^2n)=D(n)$ が成り立つ。$q$ 型素因数の指数は偶奇だけが意味をもち,$n$ は $D$ を保ったまま $P\prod_{\beta_j\text{ が奇数}}q_j$ に縮約される。
$3$ と互いに素な約数を一様に選ぶと,$q_j$ の指数 $V_j$ は独立で $\lbrace0,\dots,\beta_j\rbrace$ 上一様であり
$$
\frac{D(n)}{S(n)}=\mathbb E\bigl[(-1)^{V_1+\cdots+V_s}\bigr]=\prod_{j=1}^{s}\frac{1}{\beta_j+1}\sum_{v=0}^{\beta_j}(-1)^v=\begin{cases}1/B&(B\text{ が奇数})\\ 0&(B\text{ が偶数})\end{cases}
$$
となる。独立性が乗法性に対応する。偏りの比がとりうる値は $0,1,\frac13,\frac15,\dots$ に限られ,いずれも実現する。
$\sigma>0$ に対し $W_\sigma(n)=\sum_{d\mid n}\chi(d)\,d^{-\sigma}$ も同様に積に分解する。$q$ 型の因子は $z=q^{-\sigma}\in(0,1)$ として
$$
\sum_{k=0}^{\beta}(-z)^k=\frac{1-(-z)^{\beta+1}}{1+z}>0
$$
であり,他の因子も正である。よって $W_\sigma(n)>0$ であり,有限和なので $\sigma\to+0$ として $D(n)\geqq0$ を得る。厳密な不等式を経由するが,根拠は同じ局所因子の乗法性である。
$D(n)=A\sum_{d\mid Q}(-1)^{\Omega(d)}$ と書ける( 5.5 節 )。等号条件が平方数判定そのものであることを示す表示である。
別解1 の対合 $\iota$ で組になる $2$ 点は一つの座標で $1$ だけ異なるので,$\iota$ は $\mathcal V^{\ast}$ の隣接 $2$ 点による敷き詰め(ドミノタイリング)を与え,各ドミノは両色を $1$ 点ずつ覆う。すべての辺の長さ $\beta_j+1$ が奇数なら点の総数は奇数で,$\mathcal V$ 全体の敷き詰めは不可能であるが,その事実だけでは余る点の色は決まらない。色の決定には具体的な敷き詰めが必要である。
場合分けを経ずに $f(Q),g(Q)$ を同時に決める構成である。
$\mathcal V$ の $B$ 個の点を,$\boldsymbol v^{(0)}=\boldsymbol 0$ から始まり,隣り合う $2$ 点が一つの成分でちょうど $1$ だけ異なるように一列 $\boldsymbol v^{(0)},\dots,\boldsymbol v^{(B-1)}$ に並べることができる。このとき $\lvert\boldsymbol v^{(k)}\rvert\equiv k\pmod2$ であり
$$
f(Q)=\left\lceil\frac{B}{2}\right\rceil,\qquad g(Q)=\left\lfloor\frac{B}{2}\right\rfloor.
$$
$s$ に関する帰納法による。$s=0$ では $\mathcal V$ は $1$ 点で自明である。$s-1$ 次元の格子 $\mathcal V'=\prod_{j < s}\lbrace0,\dots,\beta_j\rbrace$ に条件を満たす列 $\gamma$ があるとする。$\mathcal V$ を層 $\mathcal V'\times\lbrace c\rbrace$($c=0,1,\dots,\beta_s$)の順にたどり,$c$ が偶数の層では $\gamma$ を順方向に,奇数の層では逆方向にたどる。層の内部では $\gamma$ の性質により条件が満たされる。層の継ぎ目では,前の層の終点と次の層の始点が $\gamma$ の同じ端点に対応するので,第 $s$ 成分だけが $1$ 増える。始点は $\boldsymbol 0$ である。隣り合う点で成分和の偶奇が反転するので $\lvert\boldsymbol v^{(k)}\rvert\equiv k\pmod2$ であり,$0\leqq k\leqq B-1$ のうち偶数は $\lceil B/2\rceil$ 個である。
局所的な対の構成(別解1)に対し,これは格子全体を一本の交互列に並べる大域的な構成である。
すべての $\beta_j$ が偶数のとき $b_j=\beta_j+1$ はすべて奇数であり,
$$
t=v_1+b_1v_2+b_1b_2v_3+\cdots+(b_1\cdots b_{s-1})v_s
$$
は $\mathcal V$ から $\lbrace0,1,\dots,B-1\rbrace$ への全単射で,係数がすべて奇数なので $t\equiv\lvert\boldsymbol v\rvert\pmod2$ である。よって $f(Q)=\frac{B+1}{2}$。ある $\beta_j$ が奇数の場合は,その座標での隣接ペアにより $f(Q)=g(Q)$ とする。
| 解法 | 主に利用する構造 | 対象 | 範囲 | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 本解 | 和・差の乗法性 | 全設問 | 高校 | 局所計算だけで全設問を統一,記述量が最小 | $\gcd(u,v)=1$ の明示,$3^{a}$ の寄与は $1$ |
| 3.1 節 | 偶奇の選び方の表 | (1) | 高校 | 定義に最も近く検算に向く | 素因数が多いと煩雑 |
| 3.2 節 | $\gcd(f,g)=f-g$ | (3) | 高校 | 候補を一括決定 | $f,g$ の完全な公式が必要 |
| 別解1 | 指数格子の対合 | 全設問 | 高校 | 対応を構成し,残る点まで特定 | 対合性の検証,残るのは角の点 |
| 別解2 | 相補約数の対合 | (3) | 高校 | 奇数性から平方数を検出 | 偶奇計数を別途要する |
| 参考解1 | Eisenstein 整数のノルム | (2) | 大学 | 差を個数として解釈 | 素元分解の理論が必要 |
| 参考解2 | 3-core 分割 | (2) | 大学 | 約数と分割の接続 | 恒等式の証明が高度 |
試験場での第一選択は本解である。(1)〜(3) が同じ補題から導かれ,(3) で必要な情報($A\mid g$,$D\in\lbrace0,A\rbrace$)が (2) の証明の副産物として得られる。別解1 は計算量が同程度で,不等式の理由を具体的な対応として示す点で説明力が高い。別解2 は (3) の数値の奇数性を活かす着眼として価値がある。参考解は試験の答案には過剰であるが,差 $D(n)$ が非負になる理由を,二次形式・分割という異なる対象の個数として説明する。
本問から抽出される,「約数(より一般に乗法的に生成される対象)を合同条件で分類して数える」問題に対する探索手順を述べる。
| 症状 | 検討する表現・道具 | 本問での例 |
|---|---|---|
| 約数を剰余類で分類する | 素因数ごとの剰余と指数への分解 | 1.1 節 |
| 二つの個数が積で混ざる | 和と差,指標による対角化 | 本解,1.3 節 |
| 剰余類が $\pm1$ のように掛け合わさる | 指数和の偶奇,交代和 | 2.2 節 |
| 個数の大小比較 | 偶奇を反転する対合と固定点 | 別解1 |
| 指定された個数が奇数 | 相補対応 $d\leftrightarrow m/d$ の固定点 | 別解2 |
| 指定値からの逆算 | 整除性,$\gcd$ などの不変量,標準形の族 | 本解 (3),3.2 節 |
| 符号付き和の非負性 | 別の対象の個数としての解釈 | 参考解1,参考解2 |
| 交代和が素数冪ごとに分かれる | 生成関数の $X=-1$ 代入,遷移行列 | 3.7 節 |
同じ構造は,値が $0,\pm1$ の完全乗法的関数(実数値の Dirichlet 指標)が与えられれば常に現れる。たとえば次が成り立ち,いずれも本解・別解1 がそのまま通用する。
| 事項 | 高校数学での扱い | 一般理論 |
|---|---|---|
| 剰余類の乗法 | $2\equiv-1$,符号の規則 | $(\mathbb Z/3\mathbb Z)^{\times}\cong C_2$,Dirichlet 指標 |
| 和と差 | 連立して $f,g$ を復元 | 群環 $\mathbb Z[C_2]$ の指標による分解 |
| 差の積公式 | 展開と因数分解 | 乗法的関数,Dirichlet 畳み込み $\mathbf 1\ast\chi$ |
| 差の非負性 | 局所因子が $0,1,\alpha+1$ | 実指標の約数和の非負性,$\zeta_K=\zeta\cdot L(\cdot,\chi)$ |
| 平方数の判定 | 指数がすべて偶数 | Liouville 関数の約数和 |
| 偶奇の対応 | 隣接する指数の組 | 符号反転対合,Gray code |
| 差の個数解釈 | 扱わない | 二元二次形式の表現数,Eisenstein 整数のイデアル |
| 分割との関係 | 扱わない | 3-core 分割,abacus 表示 |
本解,別解1,別解2,3.1,3.2 節および 3.7 節の大半は左欄の範囲で完結する。右欄は,それらの計算が成り立つ理由を説明する理論である。
非負整数の組 $(F,G)$ について,$(F,G)=(f(n),g(n))$ を満たす正の整数 $n$ が存在するための必要十分条件は
$$
F=G\geqq1\qquad\text{または}\qquad F>G\geqq0\ \text{かつ}\ (F-G)\mid G
$$
である($0$ はすべての正の整数で割り切れるとする)。特に正の整数 $k$ について
$$
\lbrace f(n) : g(n)=k\rbrace=\lbrace k\rbrace\cup\lbrace k+c : c\text{ は }k\text{ の正の約数}\rbrace
$$
であり,その要素数は $\tau(k)+1$ である。
必要性。$B$ が偶数なら $F=G=AB/2\geqq1$。$B$ が奇数なら $F-G=A\geqq1$,$G=A\cdot\frac{B-1}{2}$ より $(F-G)\mid G$。
十分性。任意の $A,B\geqq1$ について $N=7^{A-1}2^{B-1}$ は $\tau(P)=A$,$\tau(Q)=B$ を満たすから,
定理3
より $(f(N),g(N))=\left(A\lceil B/2\rceil,\,A\lfloor B/2\rfloor\right)$。$F=G=k\geqq1$ なら $(A,B)=(1,2k)$ とし,$F>G$ で $c=F-G$ が $G$ を割り切るなら $(A,B)=(c,\,2G/c+1)$ とすればよい。
後半は $G=k\geqq1$ の場合であり,$k$ と $k+c$($c\mid k$)はすべて相異なるので要素数は $1+\tau(k)$ である。
$(f(n),g(n))$ は二つの不変量 $A=\tau(P)$,$B=\tau(Q)$ だけで決まり,任意の $(A,B)$ が $2$ と $7$ の冪の積 $7^{A-1}2^{B-1}$ で実現される。本問 (3) は $k=15$,$\tau(15)+1=5$ の場合である。
$\chi$ は法 $3$ の唯一の非自明な Dirichlet 指標であり,Kronecker 記号 $\left(\frac{-3}{d}\right)$ に一致する。$D=\mathbf 1\ast\chi$(Dirichlet 畳み込み)であるから,乗法的関数の畳み込みとして $D$ は乗法的である。
補題5
はこの特別な場合にあたる。Dirichlet 級数では,$\operatorname{Re}s>1$ において
$$
\sum_{n=1}^{\infty}\frac{D(n)}{n^{s}}=\zeta(s)L(s,\chi)=\zeta_{K}(s),\qquad K=\mathbb Q(\sqrt{-3})
$$
が成り立つ。$\zeta_K$ は $K$ の Dedekind ゼータ関数であり,$n^{-s}$ の係数はノルム $n$ のイデアルの個数である。これが参考解1 の背景である。Euler 積の各因子は素数の分解型(分岐・完全分解・惰性)に対応する:
$$
\zeta_K(s)=\frac{1}{1-3^{-s}}\prod_{\ell\equiv1\ (3)}\frac{1}{(1-\ell^{-s})^{2}}\prod_{\ell\equiv2\ (3)}\frac{1}{1-\ell^{-2s}}.
$$
(2) の不等式は,次の一般定理の特殊な場合である。
$h:\mathbb Z_{>0}\to\mathbb R$ を $h(1)=1$ を満たす完全乗法的関数とする。このとき
$$
\sum_{d\mid n}h(d)\geqq0\quad(\text{すべての }n\geqq1)\iff h(\ell)\geqq-1\quad(\text{すべての素数 }\ell)
$$
が成り立つ。
($\Rightarrow$) $n=\ell$ とおけば $1+h(\ell)\geqq0$。
($\Leftarrow$) $\sum_{d\mid n}h(d)=\prod_{\ell^{e}\parallel n}\bigl(1+h(\ell)+\cdots+h(\ell)^{e}\bigr)$ であり,$x\geqq-1$ のとき $1+x+\cdots+x^{e}\geqq0$ である。実際,$x\geqq0$ なら自明,$x=-1$ なら値は $0$ または $1$,$-1 < x < 0$ なら値は $\frac{1-x^{e+1}}{1-x}>0$ である。
実数値の Dirichlet 指標 $\psi$ は $\psi(\ell)\in\lbrace0,\pm1\rbrace$ を満たすから,常に $\sum_{d\mid n}\psi(d)\geqq0$ である。$\psi=\chi_4$ のとき,これは Jacobi の公式 $r_2(n)=4\sum_{d\mid n}\chi_4(d)$ が示す二平方和の表現数の非負性と同じ内容であり,$\psi$ が奇素数 $\ell$ を法とする Legendre 記号のときは 4.3 節 の平方剰余の主張になる。
約数の剰余類の分布を群環の元として記録する。$C_2=\lbrace1,\varepsilon\rbrace$($\varepsilon$ が剰余類 $2$ に対応)として
$$
F_n=f(n)\cdot1+g(n)\cdot\varepsilon\in\mathbb Z[C_2]\cong\mathbb Z[X]/(X^2-1)
$$
とおくと,
補題5
は互いに素な $u,v$ について $F_{uv}=F_uF_v$ を意味する。$C_2$ の二つの指標 $X\mapsto1$,$X\mapsto-1$ は環準同型 $\mathbb Z[X]/(X^2-1)\to\mathbb Z$ を与え,$F_n$ をそれぞれ $S(n)$,$D(n)$ に写す。生成関数の $X=\pm1$ への代入(3.7 節),遷移行列の対角化(1.3 節),期待値 $\mathbb E[(-1)^{V_1+\cdots+V_s}]$,Dirichlet 指標は,いずれもこの指標による分解($C_2$ 上の離散 Fourier 変換)の別表現である。なお $F\mapsto(S,D)$ は単射であるが全射ではなく,像は $S\equiv D\pmod2$ を満たす組からなる。2.3 節の検算はこの事実による。
一般の法 $m$ では $F_n\in\mathbb Z[(\mathbb Z/m\mathbb Z)^{\times}]$ となり,剰余類 $c$ に属する約数の個数は指標の直交関係により
$$
\frac{1}{\varphi(m)}\sum_{\psi}\overline{\psi(c)}\sum_{d\mid n}\psi(d)
$$
で与えられる($\psi$ は法 $m$ の Dirichlet 指標全体を動く)。群の位数が $2$ を超えると複素数値の指標が現れ,個々の剰余類の個数は複数の指標の寄与の和として表される。
$\Omega(d)$ を重複を込めた $d$ の素因数の個数とし,$\lambda(d)=(-1)^{\Omega(d)}$ を Liouville 関数という。$Q$ の素因数はすべて $\chi$ の値が $-1$ であるから,$d\mid Q$ について $\chi(d)=\lambda(d)$ であり
$$
D(n)=A\sum_{d\mid Q}\lambda(d),\qquad \sum_{d\mid m}\lambda(d)=\begin{cases}1&(m\text{ が平方数})\\ 0&(m\text{ が平方数でない})\end{cases}
$$
が成り立つ。後者は任意の正の整数 $m$ について成り立つ恒等式で,素数冪ごとの交代和 $\sum_{k=0}^{e}(-1)^k$ の積として示される。Dirichlet 級数では $\sum_{n}\lambda(n)n^{-s}=\zeta(2s)/\zeta(s)$ と同値である。本問の等号条件(
補題4
(c))は,この平方数判定の特殊な場合である。
$\Lambda=\mathbb Z+\mathbb Z\omega\subset\mathbb C$ は六角格子(正三角形格子)であり,$N(z)=\lvert z\rvert^2$ である。したがって
補題9
は
$$
6D(n)=\bigl(\text{原点中心,半径 }\sqrt n\text{ の円周上にある }\Lambda\text{ の点の個数}\bigr)
$$
と読める。$u=2x-y$,$v=y$ とおくと $4(x^2-xy+y^2)=u^2+3v^2$ である。$u,v$ の偶奇が異なれば $u^2+3v^2$ は奇数であるから,$u^2+3v^2=4n$ の解では $u\equiv v\pmod2$ となり,$(x,y)=\left(\frac{u+v}{2},v\right)$ と戻せる。よって $6D(n)$ は $u^2+3v^2=4n$ の整数解の個数でもある。
格子そのものを数えることもできる。有限指数の部分格子 $L\subset\Lambda$ で $\omega L=L$ を満たすもの($L=-L$ と合わせて $60^\circ$ 回転で不変なもの)は,$\mathbb Z[\omega]$ の $0$ でないイデアルにほかならない。$\mathbb Z[\omega]$ は単項イデアル整域であるから $L=z\Lambda$ と書け,$[\Lambda:z\Lambda]=N(z)$ である。したがって
$$
D(n)=\left\lvert\lbrace L\subset\Lambda : [\Lambda:L]=n,\ \omega L=L\rbrace\right\rvert
$$
であり,$D(n)$ は回転対称性を保つ指数 $n$ の部分格子の個数である。たとえば $D(7)=2$ は $(3+\omega)\Lambda$ と $(3+\bar\omega)\Lambda$ に対応し,$D(2)=0$ は指数 $2$ の部分格子($3$ 個ある)がいずれも回転で不変でないことに対応する。
$t$-core 分割は,abacus(そろばん)表示によって成分の和が $0$ の整数ベクトル $(n_0,\dots,n_{t-1})$ と一対一に対応し,分割の大きさは $\frac t2\sum_i n_i^2+\sum_i i\,n_i$ で与えられる(Garvan–Kim–Stanton,1990)。$t=3$ で $(n_1,n_2)=(-v,-u)$ とおくと,3-core 分割は $(u,v)\in\mathbb Z^2$ と一対一に対応し,その大きさは
$$
k=3(u^2+uv+v^2)-2u-v
$$
となる。$x=3u-1$,$y=3v$ とおけば $x^2+xy+y^2=3k+1$ であり,
$$
a_3(k)=\left\lvert\lbrace(x,y)\in\mathbb Z^2 : x^2+xy+y^2=3k+1,\ x\equiv2,\ y\equiv0\pmod3\rbrace\right\rvert.
$$
ここで $x^2+xy+y^2=N(x-y\omega)$ である。$\mathbb Z[\omega]/3\mathbb Z[\omega]$ の単数群は位数 $6$ で,$\pm1,\pm\omega,\pm\omega^2$ の像がそれを尽くす。したがってノルムが $3$ と互いに素な元 $z$ の $6$ 個の単数倍のうち,$z\equiv2\pmod{3\mathbb Z[\omega]}$ を満たすものはちょうど一つである。$z=x-y\omega\equiv2$ は $x\equiv2$,$y\equiv0\pmod3$ と同値であるから,右辺は $R(3k+1)/6$ に等しく,
補題9
により $a_3(k)=D(3k+1)$ を得る。すなわち
定理10
は abacus による全単射を認めれば
補題9
に帰着し,参考解1 と参考解2 は六角格子という共通の背景をもつ。$4(3k+1)=(2x+y)^2+3y^2$ と書き直せば,Baruah–Nath(2014)による定式化「$x^2+3y^2$ による $12k+4$ の表現数は $6a_3(k)$」にも一致する。
実射影空間 $\mathbb RP^{\beta}$ は各次元に一つずつ胞体をもつ胞体分割をもつので,その Euler 標数は $e(\mathbb RP^{\beta})=\sum_{k=0}^{\beta}(-1)^k$ であり,Euler 標数は直積について乗法的である。したがって
$$
D(n)=A\cdot e\bigl(\mathbb RP^{\beta_1}\times\cdots\times\mathbb RP^{\beta_s}\bigr).
$$
また,成分和の偶奇で符号を付けた和は,超対称量子力学の Witten 指数 $\operatorname{Tr}(-1)^{F}$ と形式的に同じ形をしており,別解1 の対合は「対をなして打ち消し合う状態」と「残る状態」の区別に相当する。ただしこれらは形式的な対応にとどまる。Euler 標数は一般には負にもなりうるので,非負性の根拠にはならない。非負性を保証しているのは,本問に固有の局所因子の値($0$ または $1$)と,対合の固定点の具体的な特定である。
約数の剰余類と二次形式の関係の原型は,Fermat の二平方定理(17 世紀)と,その表現数を与える Jacobi の公式 $r_2(n)=4\sum_{d\mid n}\chi_4(d)$(1829)である。二元二次形式の体系的理論は Gauss の『整数論』(1801)に始まり,Dirichlet は算術級数定理(1837)の証明のために指標と $L$ 関数を導入して,二次形式の表現数と類数の理論を展開した。$\mathbb Z[\omega]$ の算術は三次相互法則の研究の中で発展し,Eisenstein が 1844 年にその証明を公表した。$t$-core 分割は対称群のモジュラー表現論(ブロックの分類に関する Nakayama 予想)に起源をもち,その組合せ論的・数論的研究は Garvan–Kim–Stanton(1990),Granville–Ono(1996)らによって進められた。$a_3(k)=D(3k+1)$ の初等的証明は Hirschhorn–Sellers(2009)による。本問は,これらの理論が交わる最も初等的な場面の一つになっている。
| 設問 | 答 |
|---|---|
| (1) | $f(2800)=16,\ g(2800)=14$ |
| (2) | $f(n)-g(n)\in\lbrace0,\tau(P)\rbrace$ より $f(n)\geqq g(n)$ |
| (3) | $f(n)=15,\ 16,\ 18,\ 20,\ 30$ |