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正四面体を多次元に一般化したとき、2つの異なる頂点と重心を結ぶ三角形が直角二等辺三角形に漸近する

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$$\newcommand{a}[0]{\bm{a}} \newcommand{b}[0]{\bm{b}} \newcommand{bm}[1]{\boldsymbol{#1}} \newcommand{c}[0]{\bm{c}} \newcommand{g}[0]{\bm{g}} \newcommand{seq}[3]{{#1}_{#2},\,\ldots,\,{#1}_{#3}} \newcommand{x}[0]{\bm{x}} $$

はじめに

正四面体を多次元に一般化したもの、すなわち$d$次元上に$d+1$個の頂点を配置し、その異なる2頂点の距離が全て等しいものを正単体と呼ぶ。
本記事では、正単体の重心と異なる2頂点からなる三角形を考え、その三角形が次元を上げることで直角二等辺三角形に漸近することを示します。

正単体の重心

まず正単体の重心を考えます。

正単体の重心

$d$次元単体の重心とは、各頂点の座標を指すベクトルの平均値である。

例えば2次元単体である三角形の重心の座標はその頂点$\a$, $\b$, $\c$の平均値$\frac{\a+\b+\c}{3}$である。

正単体の性質

$d$次元正単体は次の性質が成り立ちます。

$d$を自然数とし、$d$次元正単体の各頂点を$\seq{\a}{1}{d+1}$、その重心を$\g$とする。
このとき以下の性質が成り立つ。

  1. 各頂点からの距離が全て等しい任意の点は重心を通る正単体との直交空間上に存在する。
    言い換えれば、重心ではない各頂点からの距離が全て等しい点を$\x$とおくと、角$ \angle\x\g\a_i$は直角になる。
  2. 重心$\g$と各頂点$\a_i$との距離は全て等しい。
  3. 各頂点間の距離を$1$としたとき、重心と各頂点との距離はそれぞれ$\sqrt{\frac{d}{2(d+1)}}$である。

$d$に関する帰納法を使う。
$d=1$のとき、$1$次元正単体は直線上の2点$\a$, $\b$であり、重心$\g$はその中点である。すなわち直線$\a\b$の長さを$1$とすると$\a\g=\b\g =\frac{1}{2}$より(2)と(3)が成り立つ。
また$\a$$\b$から長さの等しい点を$\x$とおくと、三角形$\a\g\x$$\b\g\x$は3辺の長さが等しいので合同となり、特に角$\angle\a\g\x = \angle\b\g\x$が成り立つ。
今、$\angle\a\g\b$は一直線なので$\angle\a\g\x$$\angle\b\g\x$はそれぞれ直角になるため(1)が成り立つ。

$d=k+1$のとき、$k+1$次元正単体の各頂点を$\seq{\a}{1}{k+2}$、その重心$\g$、各頂点からの距離が等しい点を$\x$と置く。
このとき、点$\seq{\a}{1}{k+1}$$\seq{\a}{2}{k+2}$はそれぞれ$k$次元正単体となる。

(2)を示す。
$\seq{\a}{1}{k+1}$正単体の重心を$\g'$とおくと、重心の計算式より
$$ \g =\frac{\sum_{i=1}^{k+2}\a_i}{k+2}=\frac{\a_{k+2}}{k+2}+\frac{k+1}{k+2}\frac{\sum_{i=1}^{k+1}\a_i}{k+1}\\ =\frac{\a_{k+2}}{k+2}+\frac{k+1}{k+2}\g' $$
とかけるので、重心$\g$は直線$\g'\a_{k+2}$上にある。
今、$\a_{k+2}$$\seq{\a}{1}{k+1}$正単体の各頂点と等しい距離にあるため、帰納法の仮定より正単体の各$\a_i(i< k+2))$に対し、$\angle\a_i\g'\a_{k+1}=\angle\a_i\g'\g$は直角。
よって三角形$\a_i\g'\g$は2辺とその間の角が等しいので全て合同。
よって各$i< k+2$に対し、$\a_i\g$の長さは全て等しい。
同様の証明を$\seq{\a}{2}{k+2}$に対して行うことで各$1< i$に対して$\a_i\g$の長さが全て等しいことが示せる。
すなわち各$i$に対して$\a_i\g$の長さが等しいので(2)が成り立つ。

(1)を示す。
各頂点$\seq{\a}{1}{k+2}$からの距離が等しい点を$\x$と置く。
(2)より$\g$$\x$$\seq{\a}{1}{k+1}$正単体の各頂点から等しい距離にあるので、帰納法の仮定より$\seq{\a}{1}{k+1}$正単体とその重心$\g'$, $\g$, $\x$を含む平面は直交する。
同様の議論で$\g$$\x$$\seq{\a}{2}{k+2}$正単体とその重心$\g''$, $\g$, $\x$を含む平面は直交する。
ここで$\seq{a}{1}{k+2}$正単体は$\seq{a}{1}{k+1}$$\seq{a}{2}{k+2}$の和空間であり、各直交空間$\g'\g\x$$\g''\g\x$の共通部分である直線$\g\x$は和空間$\seq{a}{1}{k+2}$と直交する。

(3)を示す。
$\seq{\a}{1}{k+1}$正単体を考える。その重心$\g'$$\seq{\a}{1}{k+2}$正単体の重心$\g$$\a_{k+2}$は(2)の証明より同一直線上にあり、$\g=\frac{\a_{k+2}+(k+1)\g'}{k+2}$で表せる。

今、(1)より各頂点$\a_i(i< k+2)$に対し、三角形$\a_i\g'\a_{k+2}$は直角三角形なので$(\a_i\g)^2+(\g'\a_{k+2})^2=(\a_i\a_{k+2})^2 = 1$が成り立つ。
今、$\g\a_{k+2}=\frac{k+1}{k+2}\g'\a_{k+2}$が成り立つので
$k$次元正単体の重心と頂点の距離を$L_k$と置くと次の漸化式が成り立つ。

$$ L_{k+1}^2=1-(\frac{k+1}{k+2}L_{k})^2 $$

これを整理すると
$$ (k+2)^2L_{k+1}^2=(k+1)^2 - (k+1)^2L_k^2 $$

であり、

$$ ((k+1)+1)^2L_{k+1}^2 - \frac{(k+1)((k+1)+1)}{2} = -((k+1)^2L_k^2 - \frac{k(k+1)}{2}) $$

と書ける。そこで

$$ A_k := (k+1)^2L_k^2 - \frac{k(k+1)}{2} $$

と置くと、$A_1=0$であり、$A_k = (-1)^{k-1}A_1$と書けるので、

$$ (k+1)^2L_k^2 = \frac{k(k+1)}{2} $$
が成り立つ。

よって$L_k\geq 0$より

$$ L_k = \sqrt{\frac{k}{2(k+1)}} $$

すなわち$\seq{\a}{1}{d+1}$正単体の重心と各頂点間の距離は$\sqrt{\frac{d}{2(d+1)}}$となる。

$d$を自然数とする。
このとき各頂点間の長さが$1$$\seq{\a}{1}{d+1}$正単体の重心と頂点との距離は次元を限りなく大きくすることで$\frac{\sqrt{2}}{2}$に収束する。
特に、異なる2頂点と重心からなる三角形は直角二等辺三角形に漸近する。

$$ \lim_{d\to \infty}\sqrt{\frac{d}{2(d+1)}}=\frac{\sqrt{2}}{2} $$
より明らか。
つまり三平方の定理の逆と辺の長さと間の角の大きさの連続性より、異なる2頂点の重心からなる三角形は直角二等辺三角形に漸近する。

投稿日:1日前
更新日:1日前
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一応、数学の博士号を持っています。 技術的な記事(TeXを含む):https://qiita.com/nekonibox

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