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階乗の類似と偶発的な線型的関係~不完全ガンマ関数を添えて~

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k=1nn!k!
の閉じた形式を求めたくなったのが始まり。この値をnに関する数列とみなしてanと置くと、簡単な操作によりa1=1,an+1=1+(n+1)anが分かり、階乗の定義に類似する。
母関数をk=1anxnとしたいところだけれど、anが階乗のオーダーで大きくなるので、
f(x)=k=1akk!xkとする。
微分したりxを掛けたりなんやかんやすると(あとで解説します)、
f(x)=ex11xと分かる。
ちなみに、元のanの定義式から分かる通り、
limnann!=e1
となる。

階乗のα類似物(勝手に命名)を、
αPn+1=α+(n+1)αPn,αP1=1
として定義する。
今回の記事は、この数列の閉じた形式を見つけ、実数値に拡張する。


α=1の場合と同様に、母関数を求める。
やっぱり増加速度は階乗くらいなので、
αf(x)=k=1αPkk!xk
とする。
もとの漸化式を出したいので、両辺にxを掛けて微分。
αf(x)+xf(x)=k=1(k+1)αPkk!xk
ここで、両辺に
α(ex1)=k=1αk!xk
を足すことで、漸化式の形を作る。
f(x)+xf(x)+α(ex1)=k=1α+(k+1)αPkk!xk
=k=1αPk+1k!xk
あとは両辺を積分する。積分定数はαとかになる。
xf(x)+α(ex1)αx=k=1αPk+1(k+1)!xk+1=f(x)x
これより、
f(x)=(1α)x+α(ex1)1x
と分かる。
この式にα=1を代入すると、先ほどのanの母関数に一致していることが分かります。
(後で言及することですが、この式の分子は"xex11:αに内分(外分)している"とみると面白いです。)

次は階乗との比の極限を求めてみる。漸化式のままでは不明瞭だったのが、母関数を得たことにより、
(1α)x1x=n=1(1α)xn
α(ex1)1x=αn=1xnn!m=0xm=αn=1(11!+12!+...1n!)xn
とべき級数に展開し係数比較をすることで、
αPnn!=αk=1n1k!+(1α)
と、(閉じた形ではないけれど)明示的な式が得られる。この状態でnとすると、右辺は良く知られた総和で(k=1からに注意)、
limnαPnn!=1α+α(e1)
となる。α=0の場合は階乗に一致するので当然1で、
α=1のときは上のanに一致し、e1と先ほど得られた結果と一致する。
そして、この結果において、収束値は
"1e1α:1αに内分(外分)する値"と見てみると興味深い、かも?

極限、母関数、明示的な公式(閉じていないけれど)が得られたので、今度は連続な関数にしてみる。
つまり階乗とガンマ関数の関係みたいなものですね。

  

せっかく似たような形の漸化式的関係を満たすガンマ関数の積分表示
Γ(x)=0tx1etdt
があるので、利用してみる。積分範囲を0~∞としてしまうと定数項が消えてしまうので、[0,1]で。定数項がαになるように調整して、
Γa(x)=α01tx1e1tdt
とすると、
Γa(x)=α01tx1e1tdt=α[tx1e1t]01α(x1)01tx2e1tdt=α+(x1)Γa(x1)
と上手くいきそうなんだけど、Γα(1)(αP1に相当)の値を計算してみると、
Γa(1)=α01e1tdt=α[e1t]01=α(1e)
1になってくれない。別のアプローチをとったほうがよさそう。

母関数から得た明示式
αPnn!=αk=1n1k!+(1α)
を利用する。
k=1n1k!について、
k=1n1k!=k=1(1k!1(k+n)!)
としても、問題はない...はず。調和数を実数値に拡張するときも、
このように有限和を無限和に置き換えてnを実数値xにする、という手法をとる。
(一般にはミューラーの公式というらしいのですが、拙いネット検索能力では言及している記事が見つけられませんでした。情報をお持ちの方が
いましたらぜひコメントください。)
さて、いまからnを実数値に置き換えるので、ここから先はガンマ関数で書く。無限和の足している部分はただの収束する値なので、
g(x)=k=11Γ(k+x+1)
とおき、この関数の閉じた形を得るのがゴール。
ここで、「反復積分に関するコーシーの公式」を用いる。それは何?って話だけれど、詳しくはWikipediaとかにあるのでそこを読んでください。
axaxn1...ax1f(t)dx1dx2dx3...dxn1=1(n1)!ax(xt)n1f(t)dt
が成り立つらしい。すごい。
それを、
h(x)=xαに適用してみる。n回積分すると、
h(n)(x)=1(n1)!0x(xt)n1tαdt
となる。一方で、この関数はただのべき乗関数(?)なので、手で積分することも可能で、
h(n)(x)=xα+n(α+1)(α+2)...(α+n)=Γ(α+1)xα+nΓ(α+n+1)
となる。真ん中の分母はいわゆる上昇階乗冪っていうやつです。記事を書いている人がその記法に不慣れなので直接ガンマ関数で表しています。
2式を比較することで、
Γ(a+1)xα+nΓ(a+n+1)=1Γ(n)0x(xt)n1tαdt
(右辺のΓ(n)については整数値を動かすのでガンマ関数の形で書く必要はないですが、見栄えのため直しました。)
何はともあれ、これで分母にガンマ関数の逆数の表示が積分の形で得られた。ここから、nn=1まで総和を取る。
(厳密には収束性とか極限とインテグラルの交換とか色々と気にしないといけないですが、共通テスト1週間前で多忙のため交換可能であることを認めておきます。)
そうすると、
n=1Γ(α+1)xα+nΓ(α+n+1)=n=11Γ(n)0x(xt)n1tαdt=0xtαn=1(xt)n1Γ(n)dt=0xtαextdt
なんとexとの畳み込みになる。あとはx=1を代入して整理すれば、
g(x)=k=11Γ(k+x+1)=1Γ(α+1)01tαe1tdt
と定積分で表せた。あとは件の明示式
αPnn!=αk=1n1k!+(1α)
に当てはめれば(計算略)、
αP(x)=Γ(x)((1α)+α(e1))α01tx1e1tdt
と実数値に拡張できた。(ガンマ関数のように1だけずらしていることに注意。)
更に、不完全ガンマ関数
γ(a,x)=0xta1etdt
を用いれば、
aP(x)=Γ(x)((1α)+α(e1))αeγ(x,1)
とも書ける。

完走した感想

興味深いのは、元々の漸化式においての、毎回αを足していることから予想されるαに関しての複雑性は実際にはなく、
xを固定すれば"線形的な"関係になっている。つまりαの一次式。
整数ならいうまでもなく、αが有理数だとしてもαPnが整数となるようなnが存在するのは、掛け算しまくるのでそうなるだろうな、と予想できます。
αが無理数の時にαPnが常に無理数であることを示せ、とか、面白そう。
ガンマ関数の類似ということで、反射公式や無限乗積展開はないか考えていますが、和が含まれることでかなり難しいです。逆数の無限和もきつそう。

今日もS台で共通テスト演習をした休憩時間に思いついてすぐに書いた出来立てホカホカの記事です。1週間前に何をやっているのだろう。

投稿日:111
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n=1 帰納法の失敗

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