物理の入試問題を解いているとよく出てくる遠心力。最近まで「円軌道のものに適用できる慣性力」だと理解していましたが、どうやら違うということを知りました。それならいつ使えるんだ、と思ってWikipediaを見ているとページの最後に次のような記述が…
何かよくわかりませんが、すごく使いやすそうな式です。今回はこの式を使って遠心力と、残り二つの慣性力を導出していきます。
公式1に相対導関数とありますがちゃんと定義されていないっぽいです。したがってこちらで解釈して厳密に定義しておこうと思います。
$3$つの直行基底$\lbrace\vb*{e}_1,\vb*{e}_2,\vb*{e}_3\rbrace$に対して次を満たす$A_1,A_2,A_3$が一意に取れるので,
$$\vb*{A}=A_1\vb*{e}_1+A_2\vb*{e}_2+A_3\vb*{e}_3$$
$\vb*{A}$の相対導関数$\dfrac{d^*\vb*{A}}{dt}$を次のように定義する.
$$\dfrac{d^*\vb*{A}}{dt}\equiv\dfrac{dA_1}{dt}\vb*{e}_1+\dfrac{dA_2}{dt}\vb*{e}_2+\dfrac{dA_3}{dt}\vb*{e}_3$$
よく考えると、かなり直感的だとわかります。また、線形性や外積の微分、(スカラー)×(ベクトル)の微分については$\frac{d}{dt}$と同様に振る舞います。
角速度ベクトル$\vb*{\omega}$を,回転座標系の回転の右ねじの向きで,長さが角速度の大きさであるベクトルであるとする.具体的には次を満たすものとする.
このような$\vb*{\omega}$の存在と一意性はそこそこ簡単に証明できます。
回転座標系の公式は定義1と定義2に従って、積の微分に注意して展開すると証明できます。
回転座標系における加速度、つまり回転座標系に固定された観測者から見た$\vb*{A}$の加速度とはどう表されるでしょうか。それは、定義1を思い出せば$\dfrac{d^*}{dt}\left(\dfrac{d^*}{dt}\vb*{A}\right)$と考えられます。これは定義1が直感的であるのと同じくらいには直感的です。以下、$\dfrac{d^*}{dt}\left(\dfrac{d^*}{dt}\vb*{A}\right)=\dfrac{d^{*2}\vb*{A}}{dt^2}$と表記し、これを計算していきます。
質量$m$の質点の位置ベクトルを$\vb*{r}$とし,この質点に加わる実際の力を$\vb*{F}$とする.
$$\begin{aligned}
\dfrac{d^2\vb*{r}}{dt^2}&=\dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{d^*\vb*{r}}{dt}+\vb*{\omega}\times\vb*{r}\right)\\
&=\dfrac{d}{dt}\dfrac{d^*\vb*{r}}{dt}+\dot{\vb*{\omega}}\times\vb*{r}+\vb*{\omega}\times\dfrac{d\vb*{r}}{dt} \\
&=\dfrac{d^{*2}\vb*{r}}{dt^2}+\vb*{\omega}\times\dfrac{d^*\vb*{r}}{dt}+\dot{\vb*{\omega}}\times\vb*{r}+\vb*{\omega}\times\left(\dfrac{d^*\vb*{r}}{dt}+\vb*{\omega}\times\vb*{r}\right) \\
&=\dfrac{d^{*2}\vb*{r}}{dt^2}+\vb*{\omega}\times(\vb*{\omega}\times\vb*{r})+2\vb*{\omega}\times\dfrac{d^*\vb*{r}}{dt}+\dot{\vb*{\omega}}\times\vb*{r}
\end{aligned}$$
$m\dfrac{d^2\vb*{r}}{dt^2}=\vb*{F}$なので変形すると,
$$m\dfrac{d^{*2}\vb*{r}}{dt^2}=\vb*{F}-m\vb*{\omega}\times(\vb*{\omega}\times\vb*{r})-2m\vb*{\omega}\times\dfrac{d^*\vb*{r}}{dt}-m\dot{\vb*{\omega}}\times\vb*{r}$$
出来ました。
角速度ベクトルが$\vb*{\omega}$の回転座標系に固定された観測者から見た質点の運動について次の運動方程式が成立する.
$m\vb*{a}=\vb*{F}-m\vb*{\omega}\times(\vb*{\omega}\times\vb*{r})-2m\vb*{\omega}\times\vb*{v}-m\dot{\vb*{\omega}}\times\vb*{r}$
普通の慣性力として右辺に加えればいいです
遠心力です。ベクトル三重積で展開すれば、
$$-m\vb*{\omega}\times(\vb*{\omega}\times\vb*{r})
=m\omega^2\vb*{r}-m(\vb*{\omega}\cdot\vb*{r})\vb*{\omega}$$
となり、$mr\omega^2$に似た形の項が出てきます。また座標設定で簡単に$\vb*{\omega}\cdot\vb*{r}=0$とできます。
同じ表現として、$\vb*{\omega}$と$\vb*{r}$のなす角を$\theta$とすれば、大きさが$m|\vb*{r}||\vb*{\omega}|^2\sin\theta$で、向きが$\vb*{r}$を$\vb*{\omega}$に垂直な平面に射影したものと同じベクトルともいえます。
コリオリの力というらしいです。座標設定で$\vb*{v}$の向きを固定していることが多く、この場合、遠心方向について考えるときは無視されます。
オイラー力というらしいです。$\vb*{\omega}$の変化を考察する場面があまりないのでよくわからないですが$\dot{\vb*{\omega}}=\vb*{0}$でないパターンを見たことがない気がします…