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自分なりのカークマンシステム

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$$$$

前に記事を書いたシュタイナートリプルシステムシステムは
$n^{2}+n+1$人から$n+1$人ずつのグループを作り、
自分以外の全員に対して、同じ人と一度しか組まない組み合わせです。
今回はコレを分解可能にできるカークマントリプルシステムの組み立て方を紹介してみたいと思います。

カークマントリプルシステム

シュタイナーシステムが有限射影平面を基にしてるのに対して
カークマンシステムは有限アフィン平面を基にしています。

私が今回記事に書く射影平面、アフィン平面は共にデザルグ平面と呼ばれています。他にも非デザルグ平面と呼ばれるものが数種類ありますが、ここでは長くなるのでやめときます。

しかしアフィン平面ならば射影平面に変換できます。
今回紹介するカークマンシステムは
$p^{2}$人から$p$人ずつの$p$個のグループを$p+1$個に分解できます。
因みに$p$は素数です。

本当は素数じゃなくてもできる場合があるのですが、その場合の一般的な組み立て方法も証明もわかりません。
なので位数が素数の場合の条件付きで今回私が発見した作成方法を書きたいと思います。

まず$p$の平方形のブロックに$1$から$p^{2}$までの数字を入れて、左上の$1$を中心に縦と横と斜めの直線で引いた数をグループとします。
$0$$0$行から$(p-1)$$(p-1)$行の$p$のブロック。
$【p^{2}ブロック】p=5$の場合
縦
${1,6,11,16,21}$
${2,7,12,17,22}$
${3,8,13,18,23}$
${4,9,14,19,24}$
${5,10,15,20,25}$
横
${1,2,3,4,5}$
${6,7,8,9,10}$
${11,12,13,14,15}$
${16,17,18,19,20}$
${21,22,23,24,25}$

そして残りの数の斜めを引いていきます。
(斜めだと途中で数が足りなくなるので、足していきます)
$【x=1】$
斜線!FORMULA[28][36913844][0] 斜線$y=x$
${1,7,13,19,25}$
${2,8,14,20,21}$
${3,9,15,16,22}$
${4,10,11,17,23}$
${5,6,12,18,24}$
斜線!FORMULA[34][1144264534][0] 斜線$y=2x$
${1,8,15,17,24}$
${2,9,11,18,25}$
${3,10,12,19,21}$
${4,6,13,20,22}$
${5,7,14,16,23}$
斜線!FORMULA[40][1144265495][0] 斜線$y=3x$
${1,9,12,20,23}$
${2,10,13,16,24}$
${3,6,14,17,25}$
${4,7,15,18,21}$
${5,8,11,19,22}$
斜線!FORMULA[46][1144266456][0] 斜線$y=4x$
${1,10,14,18,22}$
${2,6,15,19,23}$
${3,7,11,20,24}$
${4,8,12,16,25}$
${5,9,13,17,21}$
縦横の$2$と角度別の斜線$p-1$を足して$p+1$個に分解できます。

図を見てわかる通り縦横は一目瞭然ですが、
斜めでは何故ほかの数字と被らないか気になります。
そこで私なりに証明しました。

九九の表を用いる手法

各斜線の傾きの度合いを、ブロックで表す。
$1$を含む一列一行を退かした$(p-1)^{2}$のブロックを作ります。
$1$から出発した直線 
図3斜線:$y=x$を基準と定め
$y$$1~(p-1)$まで下に降りるにしたがって
$x$$x~(p-1)x$倍ずつに斜線が横に広がってマスに当たります。
倍数ごとの角度違いの斜線 倍数ごとの角度違いの斜線
もし列と行で$x$$y$の乗算が同じになるとグループ内で被る。
$y×x$にすると、
九九の表 九九の表
九九の表になるため左上からの斜線を基準に上下対称になる。
素数は$1$から$p-1$までの数の$a$に対して互いに素なので
完全剰余系の基本定理により
$p$を法とすると余りが全て異なる数になり、
縦横の数字が異なるラテン方格になります。
!FORMULA[70][36643648][0]の場合 $p=5$の場合
よって倍数により角度の違う
(p-1)個の斜線すべてで異なることが分かります。
$1$を含んだ一行一列を退かせたままなので、斜線のブロックのマスの数に$1$を足して、$1$行目すべてに$1$を挿入。

!FORMULA[75][36643648][0]斜線のブロック $p=5$斜線のブロック
各倍数(列)ごとの$1$から$p$までの斜線の場合全て引き下す。
(つまり$1$行目の全ての$1$$p$を法として$1$足して$2$となり$2$行目から$p$行目の数字も$1$を足していき、$1$行目すべての$1$$p$になるまで続けます。これを$y=x$から$y=(p-1)x$までの倍数列全て行う。)

九九なので倍数間隔で構築できたお陰で、斜線ブロックの画像を見てわかる通り左$1$列から右$(p-1)$列で$p$を法として$1,2,3$と数字の間隔が空いている。これによって各倍数ごとの$1$から$p$までの斜線の場合全て引き下しても各倍数列の数字と被らない。

この斜線のブロックの列の並びがグループになります。
これら斜線のブロックに縦横の直線$2$つを足して
$p^{2}$$p$個の$p$グループを$p+1$個に分解でき、同じものと一度しか組まない方法が証明できました。

完全剰余系の基本定理

a、n が互いに素であるとするとき、n−1個の相異なる整数
   1a、2a、3a、· · ·、(n −1)a
をnで割った余りは、1 からn-1までの全ての整数が
1回ずつすべて (順不同で) 現れる。

要約すると縦横以外の斜め下の直線に当たるグループの作り方は$1~(p-1)$の九九の表の中で素数を法とし、すべて違う余りに$1$を足した数を参考に書き起こせばいいという事ですね。

※斜線のブロックのマスの上下の位置が『$ p^{2} $ブロック』(上下)で、
斜線のブロックのマスの中の数字が『$ p^{2} $ブロック』(左右){左から$1 \Longrightarrow p$}
として置き換える。

カークマンの話

 カークマントリプルシステムを作ったイギリス人数学者トーマス・カークマンは、実は最初にシュタイナートリプルシステムを作った人でもあります。
 しかし、名前が売れておらずスイス人数学者ヤコブ・シュタイナーが再発見したことにより名前が付けられました。さらにカークマンは同国の有名数学者アーサー・ケイリーやジェームス・ジョセフ・シルベスターと折り合いが悪く、シルベスターが「この分野を作った」と主張しカークマンの業績を横取りするような事もありました。  

カークマンの女学生問題

今回記事にしたのは$p^{2}$人から$p$人のグループを$p$個作り、$p+1$に分けることでした。
カークマンが作った最初の問題は$15$人の女学生は$3$人を$5$つのグループを作り、$7$日間に分けるとき、毎日$1$回だけ一緒に登下校する組合せを考えろという問題でした。現在これは一般化し$15$人ではなく$6n+3$人となっています。
 これも悲しい話ですが、一般化した女学生の問題はインド系アメリカ人数学者$2$人が証明しましたが、その数年前に中国人アマチュア数学者が証明していました。しかし論文を中国科学院数学研究所が「基本的に新しい結果ではなく、価値がない」という文言と一緒に不受理になりました。数年後価値に気付いて本人に賞を与えましたが、その時は教師以外でも仕事をし重労働で体に限界がきていて、$48$歳で息を引き取りました。ちなみに死後二日後にカナダのトロント大学からのお誘いのメールが届きました。
アーベル的悲劇です。

追記

一般カークマントリプルシステムは頂点の数が$6n+3$であれば必ず成り立つことを示しています。しかしそれを作成する決まりの方法が無かったので、この素数位数のカークマンシステムの作成方法を応用して頂点の数が$3^{m}$になる場合のみの作り方を書こうと思います。

完全剰余系の基本定理で素数の累乗$p^{m} $$aから(p-1)a$$a$に対しても互いに素なのは明らかです。

$p$を素数として

$(1行目)=1…(p^{n}-1)=(1とp^{n}は互いに素)$ $(2行目)=2(1…(p^{n}-1))=(2とp^{n}は互いに素)$ $(3行目)=3(1…(p^{n}-1))=(3とp^{n}は互いに素)$ $………$$(p-1行目)=(p-1)(1…(p^{n}-1))$まで続ける。$p$$p^{n}$の約数なので$(p-1)$行目に抑える。
列の数は斜線に対称なので被らない。
これで縦p横p^{n}の斜線ブロックが作れる。

位数$3$の場合のカークマンシステムの元になるアフィン平面は
$3^{2}$の縦3横3

〇〇〇 〇〇〇 〇〇〇
〇〇〇 〇〇〇 〇〇〇
〇〇〇 〇〇〇 〇〇〇
123 101112 192021
456 131415 222324
789 161718 252627
の頂点に縦横に線を引きそして斜線は上で示した九九の表を用いた方法で示せますが、縦3横9

〇〇〇〇〇〇〇〇〇
〇〇〇〇〇〇〇〇〇
〇〇〇〇〇〇〇〇〇
の場合は縦線と斜線はできても横線ができません。
しかし通常の位数$3$アフィン平面の頂点の数である$3^{2}$の数を利用して、1段目、2段目、3段目の三か所に置くとします。
そして数字をはめて
⑴⑵⑶⑷⑸⑹⑺⑻⑼
⑽⑾⑿⒀⒁⒂⒃⒄⒅
⒆⒇㉑㉒㉓㉔㉕㉖㉗
として、上で示した方法で作成すると
縦線
$ 1,10,19-2,11,20-3,12,21-4,13,22-5,14,23-6,15,24-7,16,25-8,17,26-9,18,27$

斜線y=x
$ 1,11,21-2,12,22-3,13,23-4,14,24-5,15,25-16,16,26-7,17,27-8,18,28-9,10,20$

斜線y=2x
$1,12,23-2,13,24-3,14,25-4,15,26-5,16,27-6,17,19-7,18,20-8,10,21-9,11,22$

斜線y=3x
$1,13,25-2,14,26-3,15,27-4,16,19-5,17,20-6,18,21-7,10,22-8,11,23-9,12,24 $

斜線y=4x
$1,14,27-2,15,19-3,16,20-4,17,21-5,18,22-6,10,23-7,11,24-8,12,25-9,13,26$

斜線y=5x
$1,15,20-2,16,21-3,17,22-4,18,23-5,10,24-6,11,25-7,12,26-8,13,27-9,14,19$

斜線y=6x
$1,16,22-2,17,23-3,18,24-4,10,25-5,11,26-6,12,27-7,13,19-8,14,20-9,15,21$

斜線y=7x
$1,17,24-2,18,25-3,10,26-4,11,27-5,12,19-6,13,20-7,14,21-8,15,22-9,16,23$

斜線y=8x
$1,18,26-2,10,27-3,11,19-4,12,20-5,13,21-6,14,22-7,15,23-8,16,24-9,17,25$

横線(アフィン平面$3^{2} $縦線)
$1,4,7-2,5,8-3,6,9-10,13,16-11,14,17-12,15,18-19,22,25-20,23,26-21,24,27$
横線(アフィン平面$3^{2} $横線)
$1,2,3-4,5,6-7,8,9-10,11,12-13,14,15-16,17,18-19,20,21-22,23,24-25,26,27$
横線(アフィン平面$3^{2} $斜線y=x)
$1,5,9-4,8,3-7,2,6-10,14,18-13,17,12-16,11,15-19,23,27-22,26,21-25,20,24$
横線(アフィン平面$3^{2} $斜線y=2x)
$1,6,8-2,4,9-3,5,7-10,15,17-11,13,18-12,14,16-19,24,26-20,22,27-21,23,25$
と表わせます。この結果を
縦3横27
$〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇$
$〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇$
$〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇$

$⑴⑵⑶⑷⑸⑹⑺⑻⑼⑽⑾⑿⒀⒁⒂⒃⒄⒅⒆⒇㉑㉒㉓㉔㉕㉖㉗$
$㉘㉙㉚㉛㉜㉝㉞㉟㊱㊲㊳㊴㊵㊶㊷㊸㊹㊺㊻㊼㊽㊾㊿………54$
$55565758596061626364656667686970717273…………81$
に、この横並びの数字対して前に示した縦3横3、縦3横9のカークマンシステムも使う。
これを繰り返して作成できるのは頂点の数が$3^{2}$個のアフィン平面から始まり、縦3だから横並びの数字が$3^{m}$づつ増える場合のみ使えます。

一般カークマンシステムの頂点の数が
$6n+3= 3^{m}$
$n= \frac{3^{m-1}-1}{3-1}$
のみこの方法で作成が可能です。

また位数$3$の場合のみでなくこの作成方法は素数位数であれば成り立つので

頂点の数が
$p(p-1)n+p=p^{m}$
$n=\frac{p^{m-1}-1}{p-1}$
のみカークマンシステムを作成できます。

投稿日:20231024
更新日:16時間前

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