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ルート2の近似がしたい!

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前置き

この記事は私れもんのいれもんの初記事なので温かい目で読んでくださると嬉しいです。
https://mathlog.info/articles/x4pUA4YRQBy5ILj58zKn (Mathlog Advent Calendar 2023)
この記事は上記のmathlogの企画のアドベントカレンダー高校部門の12/17の記事です。ぜひ他の記事も読んでみてください!

はじめに

この記事では皆さんも知っている通り無理数である$\sqrt2$の近似をしていきます。
本文が難しいと思った人でも最後に軽いおまけをつけているのでそこだけでも読んでくれたら嬉しいです。

連分数展開

連分数とはなんぞやという人もいると思うので簡単に連分数とは何かを書いておきます。

連分数

連分数とは$\frac{1}{\frac{2}{3}}$のように分母の中に分数が入っているものです。

ではどうやって$\sqrt2$を連分数で表すかですが、$$\frac{1}{1+\sqrt2}=\sqrt2-1$$を使っていきます。これを変形すると
$$\sqrt2=1+\frac{1}{1+\sqrt2}$$
となります。この右辺の$\sqrt2$にこの式を代入すると
$$\sqrt2=1+\frac{1}{2+\frac{1}{1+\sqrt2}}$$
となります。
これを無限に繰り返すことで$\sqrt2$の連分数展開
$$\sqrt2=1+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+ \frac{1}{\vdots }}}}$$
が得られます。
このままだととても場所を取るので$\sqrt2$の連分数展開を
$$\sqrt2= \lbrack 1;2,2,2, \cdots \rbrack $$
と表します。


$$[2;3,4,5]=2+\frac{1}{3+\frac{1}{4+\frac{1}{5}}}$$

また、このようにそれぞれの分子が$1$になっているものを正則連分数と言い、今回扱う連分数は全て正則連分数です。
とりあえずここまでをまとめときます。

$\sqrt2$の正則連分数展開は
$$ \sqrt2= \lbrack 1;2,2,2, \cdots \rbrack $$

$\sqrt2$の連分数展開を途中で切ったものの値を求めてみましょう。
$$\lbrack 1;2\rbrack=\frac{3}{2}=1.5$$
$$\lbrack 1;2,2\rbrack=\frac{7}{5}=1.4$$
$$\lbrack 1;2,2,2\rbrack=\frac{17}{12}=1.416\cdots$$
となって$\sqrt2$の近似になっていることがわかります。連分数は無限に続いているので無限に精度の良い近似を得ることができます。特に$3$番目の分数は今日の日付の逆数ですね。(これがやりたくて今日にしました。)
これだけでも近似はできていますが私はまだ満足しません。
次に正整数$a,b$$a^2-2b^2=-1$を満たすときの$b\sqrt2$の連分数展開を考えます。
$\sqrt2$の時と同様に
$$\frac{1}{a+b\sqrt2}=b\sqrt2-a$$
を使っていきます。
先ほどと同様にすると
$$b\sqrt2=\lbrack a;2a,2a,2a, \cdots \rbrack $$
$$\sqrt2=\frac{1}{b}\lbrack a;2a,2a,2a, \cdots \rbrack$$
となります。
とりあえずまとめると

正整数$a,b$$a^2-2b^2=-1$を満たすとき$\sqrt2$の正則連分数展開は
$$\sqrt2=\frac{1}{b}\lbrack a;2a,2a,2a, \cdots \rbrack$$

特に$a=b=1$の場合はさっきと一致しているので正しいことがわかりますね。

$\sqrt2$の近似をする

最後の連分数展開を$\frac{1}{b}\lbrack a;2a,2a\rbrack$で切った時を考えます。
$$\frac{1}{b}\lbrack a;2a,2a\rbrack=\frac{4a^3+3a}{b(4a^2+1)}$$
$$a^{\prime}=4a^3+3a,b^{\prime}=b(4a^2+1)$$
とおくとこれらも
$$a^{\prime2}-2b^{\prime2} =-1$$
を満たします。

正整数$a,b$$a^2-2b^2=-1$を満たすとき
$$a^{\prime}=4a^3+3a,b^{\prime}=b(4a^2+1)$$
$a^{\prime2}-2b^{\prime2}=-1$を満たす。

$$a^{\prime2}-2b^{\prime2}$$
$$=16a^6+24a^4+9a^2-32a^4b^2-16a^2b^2-2b^2\\$$
$$=16a^4(a^2-2b^2)+8a^2(a^2-2b^2)+16a^4+(a^2-2b^2)+8a^2$$
$$=-1$$

したがって$$a_0=b_0=1,a_{n+1}=4a_{n}^3+3a_{n},b_{n+1}=b_{n}(4a_{n}^2+1)$$
とおくと全ての$n$について
$$a_{n}^2-2b_{n}^2=-1$$
を満たすとわかります。
この式を整理すると$a_{n},b_{n}$は常に正なので
$$\sqrt2=\frac{\sqrt{a_{n}^2+1}}{b_{n}}$$
となり、$\frac{a_{n}}{b_{n}}$はちゃんと$\sqrt2$の近似になっていることがわかります。これは$\sqrt2$の連分数展開を途中で切ったものなので当たり前と言えば当たり前ですね。
$\frac{a_{n}}{b_{n}}$$\sqrt2$$n$回近似と呼ぶことにします。
試しに求めてみると
$$\frac{a_0}{b_0}=\frac{1}{1}=1$$
$$\frac{a_1}{b_1}=\frac{7}{5}=1.4$$
$$\frac{a_2}{b_2}=\frac{1393}{985}=1.4142131\cdots$$
$$\frac{a_3}{b_3}=\frac{10812186007}{7645370045}=1.4142135623730950487\cdots$$
となり$3$回近似の時点でかなりの精度です。

一般項を求める

まず$a_{n}$の一般項を求めます。
気づいている人もいると思いいますが$a_{n}$の漸化式は$\sinh$$3$倍角の公式になっています。
$\sinh$とは双極正弦関数のことでハイパボリックサインと読みます。双極余弦関数というものもあり、これらの定義は次のとおりです。

双曲線関数

$$\sinh x=\frac{e^{x}-e^{-x}}{2}$$
$$\cosh x=\frac{e^{x}+e^{-x}}{2}$$

また、この定義から導かれる性質として次のものがあります。

$$\cosh ^2 x-\sinh ^2 x=1$$

$3$倍角の公式

$$\sinh 3x=4\sinh^3 x+3\sinh x$$
$$\cosh3x=4\cosh^3 x-3\cosh x$$

$\sinh x$$3$倍角の公式と$a_{n}$の漸化式を見比べると、$t$$\sinh t=1$となるように取ると(ここでは重要ではないですが$t=\sinh^{-1} 1= \ln (1+\sqrt2)$)$a_{n}$の一般項は

$$a_{n}=\sinh (3^{n}t)$$
と書けます。
$\theta_{n}=3^{n}t$とおくと
$$a_{n}=\sinh \theta_{n}$$
$a_{n}$の一般項が求まりました。
次にこれを利用して$b_{n}$の一般項を求めます。
$$b_{n}=b_{n-1}(4\sinh^2 \theta_{n-1}+1)$$
公式$1$を用いると
$$ b_{n}$$
$$=b_{n-1}(4\cosh^2 \theta_{n-1}-3)$$
$$=b_{n-1}\frac{(4\cosh^3 \theta_{n-1}-3\cosh\theta_{n-1})}{\cosh\theta_{n-1}}$$
$\cosh x$$3$倍角の公式より
$$b_{n}=b_{n-1}\frac{\cosh\theta_{n}}{\cosh\theta_{n-1}}$$
公式$1$より$\cosh\theta_{0}=\sqrt2$なので$b_0=1$より
$$b_{n}=\frac{\cosh\theta_{n}}{\sqrt2}$$
したがって$\sqrt2$$n$回近似は
$$\frac{a_{n}}{b_{n}}=\frac{\sinh\theta_{n}}{\cosh\theta_{n}}\sqrt2$$
と書けます。なんと$\sqrt2$の近似を連分数を使って求めていたはずが双曲線関数を使って表せてしまいました!
双曲線関数の定義より
$$\lim_{n \to \infty} \frac{\sinh\theta_{n}}{\cosh\theta_{n}}=1$$
なので
$$\lim_{n \to \infty} \frac{a_{n}}{b_{n}}=\sqrt2 $$
とちゃんとなりました!

まとめ

$\sqrt2$$n$回近似($1 \leq n $)は$\sinh t=1$となる$t$$n$を使って表される$\theta_{n}=3^{n}t$を使って
$$\frac{\sinh\theta_{n}}{\cosh\theta_{n}}\sqrt2 $$
と書ける。

連分数やら双曲線関数やらを使うとは思っていませんでした。どうして連分数から双曲線関数が出てくるのかは私はわかりませんが結構綺麗になったので満足です!拙い記事ですがここまで読んでくださってありがとうございます。以上、れもんのいれもんの「$\sqrt2$の近似がしたい!」でした。

おまけ

ここまでで$\sqrt2$の近似をしてきましたがなんか難しそうだし操作もめんどくさいですよね。そんなときに頭を使わずに脳死の手作業で近似できる方法を紹介しようと思います。(安心してください、開平法ではありません。)
それは次の操作です。

$\sqrt{2}-1$の近似は
$0$から始めて$2$を加えて逆数にするを繰り返すことでできる.

これなら脳死でできますね。試しにしてみます。
$$0,2,\frac{1}{2},\frac{5}{2},\frac{2}{5},\frac{12}{5},\frac{5}{12}$$
このように$\sqrt{2}$の近似の$\frac{17}{12}$が得られました。(前述の通りこれは今日の日付の逆数です。)
なぜこの操作でできるのかというと
$a_{0}=0$,この操作を$n$回繰り返したものを$a_{n}$とすると$\sqrt{2}$の連分数展開より
$$\sqrt{2}-1=[0;2,2,2,\cdots]$$
$$[0]=0=a_{0}$$
$$[0;2]=\frac{1}{2}=\frac{1}{2+a_{0}}=a_{1}$$
$$[0;2,2]=\frac{1}{2+\frac{1}{2}}=\frac{1}{2+a_{1}}=a_{2}$$
というふうに
$$a_{n+1}=[0;2,2,2,\cdots,2(2がn+1個)]=\frac{1}{2+a_{n}}$$
となるからです。
本文が難しいと思った人もぜひこの方法で$\sqrt{2}$の近似をしてみてください。
改めましてれもんのいれもんの「$\sqrt2$の近似がしたい!」でした。

投稿日:20231216
更新日:20231217

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