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erdosの未解決問題を解いてみた

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初めに

https://www.erdosproblems.com/ にある https://www.erdosproblems.com/315 を解決したという話です. (ただし後述するようにオリジナリティは怪しいです)
とりあえず問題を書くための準備をしていきます:

シルベスター数列siを, s0=1,s1=2,si+1=si2si+1で帰納的に定める.

nを正の整数としたとき,
i=1n11si+1sn1=1
が成立します. 証明は帰納法すればokです.

erdosproblem-315

正整数の無限列a1a2a3が次の式を満たしたとする:
i=11ai=1

このとき, lim infiai2ilimisi2i=1.264であり, かつ等号成立はai=si(iZ>0)と同値であるか?
(ここで, abca(bc)を意味する)

これが解けたという話をしていくのですが, 先にどうオリジナリティが怪しいかという話をしておきます:
まず, 上の問題に対して, 次のような有限バージョンが考えられます(こっちの方が自然な気もする):

有限版

正整数の列a1a2a3anが次の式を満たしたとする:
i=1n1ai=1

このとき, ansn1であり, かつ等号成立はai=si(i<n)と同値であるか?

で, これはすでに解かれています. 英語版wikipedia によると1919年の論文ですでに言及されているらしいです. 自分もerodosの問題を考えるにあたり, とりあえず上の命題の証明( Sou )を読みました.
すると, 大体そのままの手法でerdosの方の問題が解けてしまいました. なのでオリジナリティが怪しいというわけです.

あとそもそも https://www.erdosproblems.com/ はerdosとは関係ない個人サイトなので, もうすでに解かれている(けどサイトが更新されていない)という可能性もあると思います. 解法が初等的だし.

もしすでに解いてた文献があればご一報ください. 以下証明に入るので常体です.

(追記:2025/3/19) arXivに論文としてあげました. こっちの方が行間がうまってて丁寧かも?(英語だけど) https://arxiv.org/abs/2503.02317 (追記終)

証明

まず, 問題をやや一般化して述べる. そのためにシルベスター数列を一般化し, 性質について調べる.

一般化シルベスター数列

正整数nに対し, 一般化シルベスター数列si(n)を, s0(n)=n,s1(n)=n+1,si+1(n)=si(n)2si(n)+1で帰納的に定める.

正整数n,lおよび非負整数mに対し, 次の式がすべて成立する.

  1. i=1m11si(n)+1sm(n)1=1n
  2. sm+1(n)1=i=0msi(n)
  3. n2l1<sl(n)(n+1)2l1
  4. sl+m1(n)=sl(sm(n)1)

1,2はmの, 3,4はlの帰納法で容易に確かめられる.

nを正の自然数とする.
このとき, 数列(si(n)2i)i>0は広義単調減少数列であり, 数列((si(n)1)2i)i>0は広義単調増加である.
従って, どちらの数列も収束先を[n,n+1]に持つ.

iが正なら, si+1(n)=si(n)2si(n)+1si(n)2およびsi+1(n)1=si(n)2si(n)(si(n)1)2から前半がわかる.
後半は命題1の3番目の不等式から従う.

erdosproblem-315(の一般化)

nを正の整数とし, 正整数の無限列a1a2a3が次の式を満たしたとする:
i=11ai=1n
このとき, lim infiai2ilimisi(n)2iであり, かつ等号が成立するのはai=si(n)(iZ>0)のときのみである.

次が大事な補題となる. (本質的に Sou の議論をパッケージ化したもの.)

uを正の実数, tを正の自然数とする. ここで, 正の実数列u1u2u3およびv1v2v3が次の条件を満たしたとする.

  1. ntならば, i=1nui+ui=1nui=uかつ i=1nvi+ui=1nviu
  2. n<tならば, vnun

このとき, 任意の正整数nに対し, i=1nvii=1nui.

nの帰納法で示す. 条件2よりn<tなら自明. n(t)未満での成立を仮定し, nでの成立を示す.
もし, vnunなら, n1での帰納法の仮定から明らか.
もし, i=1nvii=1nuiなら, 条件1より,
i=1nviui=1nviui=1nui=i=1nui.
よって, vn>unかつi=1nvi<i=1nuiと仮定して示せばよい. i=jnvi<i=jnvi を満たすようなjの中で最大のものをmと置く.
すると, mの最大性より, m<lnならi=mlvii=mluiが成立する. よって, 下の補題よりi=mnvii=mnuiがわかる. m1での帰納法の仮定と合わせ, i=1nvii=1nuiが従う.

この補題は Sou のpropsitionと同一だが, self-containednessを上げるためにここで述べる.

正の実数列u1u2unおよびv1v2vnが次の条件を満たしたとする.

  • 任意のmnに対し, i=1mvii=1mui

このとき, i=1nvii=1nuiが成立する.

必要ならunを小さく取り替えて, i=1nvi=i=1nuiと仮定してよい. αi=log(ui),βi=log(vi)と置く. すると, (αi)(βi)の優数列であるという条件の下でi=1neαii=1neβiを示せばよい. これはムーアヘッドの不等式から従う. ムーアヘッドの不等式に関しては AOPS などを参照.

あとは補題2を上手く使っていけば定理1が示せる. 示したい定理を再掲する:

(定理3の再掲)

nを正の整数とし, 正整数の無限列a1a2a3が次の式を満たしたとする:
i=11ai=1n
このとき, lim infiai2ilimisi(n)2iであり, かつ等号が成立するのはai=si(n)(iZ>0)のときのみである.

(定理3)

まず, a1n+1の場合に帰着できることを示す.

数列aisi(n)と全項が一致するときは主張は自明. よって, aisi(n)となるiが存在するとしてよい. このようなiの中で最小のものを再びiと置く. すると, iの最小性と命題1の1より,
j=i1aj=1si(n)1
が成立する. 命題1の4と合わせ, 数列をi1項分スライドさせることで結局a1n+1(従ってa1n+2)としてよい.

n=1の場合は例外処理がいるので, n1の場合を先に示す.
正の実数列uiを次のように定義する:
ui={(n+2)1i=12(n+1)2i=2si2(l)1i3
ここで, l=12n(n+1)2(n+2)である. vi=ai1, u=n1, t=2と置くと, これらが補題2の条件を満たすことを順に示す.
代入計算により, 1n(u1+u2)=2n(n+2)2(n+1)2=1l=uu1u2.
よって, 任意の正の整数mt=2に対し,
1ni=1muiui=1mui=1li=3mui1li=3mui=1li=1m21si(l)i=0m21si(l)=0
最後の等式に, 命題1の3,4を用いた. これにより, 条件1の前半がわかった.
次に後半を示す. mを任意の正の整数とし, q=1ni=1m1aiと置く. i=11ai=1nより, q>0. また, qの分母はni=1maiの約数. よって, q1ni=1m1ai. これは条件1の後半を示す.
条件2はa1n+2より明らか.
よって, 補題2が使え, 任意のmに対し, i=1muii=1mviとなる. これと, i=1ui=u=i=1viを合わせると, ujvjとなるjが無限個ないといけない. ゆえに, lim infjaj2j=lim infjvj2jlimjsj2(l)2j. 命題2と合わせ, lim infjaj2j(s1(l))1/8=(l+1)1/8. また, 命題2より, limjsj(n)2j(s3(n)1)1/8=(n(n+1)(n2+n+1))1/8. 今, n2より, n(n+1)(n2+n+1)>l+1となるので, 所望の不等式が示された.

n=1の場合は,
ui={13i=1,2310i=3si3(31)1i4
として, t=3とすれば同様の議論が回る.

投稿日:2024518
更新日:24日前
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