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超微分の小ネタの拡張?:有理型関数と超微分

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複素関数論エアプです。間違いがあれば指摘してくださいお願いします。

超微分の小ネタが、もう小ネタの範疇に収まらなくなってきている気がしますが、やっていきます。今回は有理型関数の超微分です。

有理型関数とは

有理型関数とは、極以外の特異点を持たない解析関数である。(Wikipedia 有理型関数 より)

要は整関数の商として表される関数です。

考えるもの

これです。

fは領域D{zC|R1<|z|<R2}内で有理型関数であり、{zC||z|<R1}には
重複度siの零点αi (i=1,2,,p)
重複度tjの極βj (j=1,2,,q)を持ち、
領域D内には零点も極も持たない。
この時、
zf(z)f(z)=n=0anzn
anを求めたい。

ここで、領域D上に反時計回りの単純閉曲線Cをとると、ローラン級数から、
an=12πiCunf(u)f(u)du
とおける。
これを留数定理から求めましょう。

a0のとき

これは所謂 偏角の原理 というものですが、浅学のためしっかり証明していきます。

零点の場合

f(z)=(zαi)sig(z)と置くと、f(z)=si(zαi)si1g(z)+(zαi)sig(z)となるため、
f(z)f(z)=sizαi+g(z)g(z)
と表せる。
このとき、g(z)g(z)は極をもたないため、f(z)f(z)z=aiに一位の極をもつ。よって留数は(zαi)1の係数に等しく、siとなる。

極の場合

f(z)=(zβj)tig(z)と置くと、f(z)=tj(zβj)tj1g(z)+(zβj)tjg(z)となるため、
f(z)f(z)=tjzβj+g(z)g(z)
と表せる。
このとき、g(z)g(z)は極をもたないため、f(z)f(z)z=βjに一位の極をもつ。よって留数は(zβj)1の係数に等しく、tjとなる。

留数定理より、a0=i=1psij=1qtj

an(n1)のとき

z=0に零点または極がある場合

その重複度を表す整数mを定める。
f(z)=zmg(z)とおくと、f(z)=mzm1g(z)+zmg(z)となるため、
znf(z)f(z)=mzn1+zng(z)g(z)
と表されるが、明らかに極を持たないため留数は0となる。

αi(0)の場合

f(z)=(zαi)sig(z)と置くと、f(z)=si(zαi)si1g(z)+(zαi)sig(z)となるため、
znf(z)f(z)=siznzαi+zng(z)g(z)
と表せる。
このとき、zng(z)g(z)は極をもたないため、znf(z)f(z)z=αiに一位の極をもつ。よって留数は、
limzαi(zαi)znf(z)f(z)=limzαi(sizn+(zαi)zng(z)g(z))=siαin

βj(0)の場合

f(z)=(zβj)tjg(z)と置くと、f(z)=tj(zβj)tj1g(z)+(zβj)tjg(z)となるため、
znf(z)f(z)=tjznzβj+zng(z)g(z)
と表せる。
このとき、zng(z)g(z)は極をもたないため、znf(z)f(z)z=βjに一位の極をもつ。よって留数は、
limzβj(zβj)znf(z)f(z)=limzβj(tjzn+(zβj)zng(z)g(z))=tjβjn

よって留数定理より、an=i=1psiαinj=1qtiβjn
(結局{αi}ないし{βj}0があろうが無かろうが値が変わることは無い。)

結論

00=1とすれば、
a0=i=1psiαi0j=1qtjβj0
と表されるため、結局すべての非負整数nについて
an=i=1psiαinj=1qtjβjn
と表せる。これは、零点のn乗和と極のn乗和の差に他ならない。

最後に

二つの整関数A(z),B(z)を定め、ある領域内の
A(z)=0の解のn乗和をAn
B(z)=0の解のn乗和をBnと表します。
二つの整関数の積A(z)B(z)について、
(A(z)B(z))=n=0An+Bnzn
であることはすぐに分かります。
有理型関数はA(x)B(x)と表せます。
今回はそれについて
(A(x)B(x))=n=0AnBnzn
と表されることが明らかになりました。
超微分における対数チックな性質ですね。

なにか間違い等ありましたら指摘お願いいたします。

投稿日:515
更新日:515
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vunu
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  1. 有理型関数とは
  2. 考えるもの
  3. a0のとき
  4. 零点の場合
  5. 極の場合
  6. an(n1)のとき
  7. z=0に零点または極がある場合
  8. αi(0)の場合
  9. βj(0)の場合
  10. 結論
  11. 最後に