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Twitterの問題の解説 ((n^2-2)^2-2…≡n modp

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$$\newcommand{a}[0]{\alpha} \newcommand{asn}[0]{\hspace{16pt}(\mathrm{as}\ n\to\infty)} \newcommand{b}[0]{\beta} \newcommand{beq}[0]{\begin{eqnarray*}} \newcommand{c}[2]{{}_{#1}\mathrm{C}_{#2}} \newcommand{cb}[0]{\binom{2n}{n}} \newcommand{d}[0]{\mathrm{d}} \newcommand{del}[0]{\partial} \newcommand{dhp}[0]{\dfrac{\pi}2} \newcommand{ds}[0]{\displaystyle} \newcommand{eeq}[0]{\end{eqnarray*}} \newcommand{ep}[0]{\varepsilon} \newcommand{F}[0]{\mathbb{F}} \newcommand{Fp}[0]{\mathbb{F}_p} \newcommand{G}[1]{\Gamma({#1})} \newcommand{g}[0]{\gamma} \newcommand{hp}[0]{\frac{\pi}2} \newcommand{I}[0]{\mathrm{I}} \newcommand{l}[0]{\ell} \newcommand{limn}[0]{\lim_{n\to\infty}} \newcommand{limx}[0]{\lim_{x\to\infty}} \newcommand{nck}[0]{\binom{n}{k}} \newcommand{p}[0]{\varphi} \newcommand{Res}[1]{\underset{#1}{\mathrm{Res}}} \newcommand{space}[0]{\hspace{12pt}} \newcommand{sumk}[1]{\sum_{k={#1}}^n} \newcommand{sumn}[1]{\sum_{n={#1}}^\infty} \newcommand{t}[0]{\theta} \newcommand{tc}[0]{\TextCenter} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} \newcommand{Zp}[0]{\mathbb{Z}_p} $$

こんにちは.

今回は, Twitterで出した以下の問題の解説をしようと思います.
${}$

$\begin{cases} ((((n^2-2)^2-2)^2-2)^2-2)^2-2\equiv n\mod\!p\\[5pt] 0< n< p<100 \end{cases}$
を満たす整数$n$と素数$p$の組の数を求めてください.

${}$

方針

$f(X)=X^2-2$, $F(X)=f(f(f(f(f(X)))))-X$として, 各素数$p$に対して有限体$\Fp$での$F$の根の個数が分かれば良いです.

$f$が2倍角の公式に似ていることに着目すると, $f(\zeta+\zeta^{-1})=\zeta^2+\zeta^{-2}$となることがわかるので, $F(\zeta+\zeta^{-1})=\zeta^{32}+\zeta^{-32}-\zeta-\zeta^{-1}$となり, $\zeta$$1$$31$乗根とすると$\zeta+\zeta^{-1}$$F$の根になっていることが分かります.

つまり, 元の方程式は, 32倍角の公式で元に戻る値は, という問題なのです. 実際, $\mathbb{R}$上では, $\zeta_{31}+\zeta_{31}^{-1}=2\cos\frac{2\pi}{31}$$F$の根になっています.

このように具体的に解は構成できるように見えますが, しかし例えば$p=31$のときは$1$の原始$31$乗根は存在しないため, 困ってしまいます.

そこで, まず$\bar{\mathbb{Q}}$で解をとり, それを各$\Fp$に落とすという方針で, まとめて議論していきます.

${}$

解答

$\begin{cases} ((((n^2-2)^2-2)^2-2)^2-2)^2-2\equiv n\mod\!p\\[5pt] 0< n< p<100 \end{cases}$
を満たす整数$n$と素数$p$の組の数を求めてください.

${}$

一般に $f(X)=X^2-2,\ F(X)=\underbrace{f(f(\cdots f}_n(X)))-X$ として, $F$$\Fp$での根の数を調べる.

まず$\bar{\mathbb{Q}}$での根を求めると,

$$ F(\zeta+\zeta^{-1})=\zeta^{2^n}+\zeta^{-2^n}-(\zeta+\zeta^{-1})$$

から, $\zeta$$1$$2^n-1$乗根か$2^n+1$乗根ならこでは$0$より,
$$ S=\{2\}\cup\{\zeta_{2^n-1}^i+\zeta_{2^n-1}^{-i}\}_{1\leq i\leq\frac{2^n-2}2}\cup\{\zeta_{2^n+1}^i+\zeta_{2^n+1}^{-i}\}_{1\leq i\leq\frac{2^n}2}$$
$2^n$個が$F$$\bar{\mathbb{Q}}$での根である. ここで一般に$\zeta_k$$1$の原始k乗根を表す. $S$の表示を整理して
$$ S=\{2\}\cup\{\ \zeta_k^i+\zeta_k^{-i}\mid \ k|2^n\pm1,\ k\neq1,\ \gcd(i,k)=1,\ 0< i<\tfrac k2\}$$
としておく. $N=(2^n+1)(2^n-1)$として, $S$$\mathbb{Q}[\zeta_N]$の整数環$\Z[\zeta_N]$に含まれている.
${}$

代数的整数論により, $\Z[\zeta_N]$において素イデアル分解を$(p)=\prod_{i=1}^g\mathfrak p_i^e$として,
$$ \psi:\Z[\zeta_N]\twoheadrightarrow\Z[\zeta_N]/\mathfrak{p}_1\stackrel{\sim}{\longrightarrow}\F_{p^f}$$
とおくと, $\psi(S)\cap\Fp$の要素数が, $F$$\Fp$での根の数である.

$\Z[\zeta_N][X]\twoheadrightarrow\F_{p^f}[X]$による$F$の像を考えれば, ($\F_{p^f}$では重根があるかもしれないが)$F$の像の根は, $F$の根の像に一致する. 従って, 根の像$\psi(S)$$\F_p$の共通部分が$\Fp$での根全体となる.

${}$

$\psi(S)$を調べるためには, $N$の素因数$q$に対して$\psi(\zeta_{q^m})$を調べればよい.

$\psi(\zeta_{q^m})=\begin{cases}1 & (q=p)\\ \zeta_{q^m} &(q\neq p)\end{cases}$

ただし, 右辺の$\zeta_{q^m}$$\bar{\F}_p$での$1$の原始$q^m$乗根を表す.

$q=p$のとき:) $(\zeta_{p^m}-1)^{p^m}\in(p)\subset \mathfrak{p}_1$ より$ \zeta_{p^m}-1\in\mathfrak{p}_1$なので$\psi(\zeta_{p^m})=1$.

$q\neq p$ のとき:) $\psi(\zeta_{q^m})^{q^{m-1}}\neq1$を示せばよい. もしそうでなければ$\zeta_q-1\in \mathfrak{p}_1$だが, $( \zeta_q-1)^q\in \mathfrak{p}_1 \cap (q)=0$で矛盾. □

${}$

補題より, $\psi(\zeta_k)=\zeta_{k'}$(ただし$k=p^ak'$, $k'$$p$の倍数でない)とわかる. これにより$S$の像を計算すると,

$$ S=\{2\}\cup\{\ \zeta_k^i+\zeta_k^{-i}\mid \ k|2^n\pm1,\ k\neq1,\ \gcd(i,k)=1,\ 0< i<\tfrac k2\}$$
$$ \psi(S)=\{2\}\cup\{\ \zeta_k^i+\zeta_k^{-i}\mid \ p\!\!\not{}| \, k|\,2^n\pm1,\ k\neq1,\ \gcd(i,k)=1,\ 0< i<\tfrac k2\}$$

である.
${}$

最後に$\zeta_k^i+\zeta_k^{-i}\in \Fp$となる条件を求める.

$$ \begin{align*}\zeta_k^i+\zeta_k^{-i}\in \Fp\iff& \zeta_k+\zeta_k^{-1}\in \Fp \\ \iff& (\zeta_k+\zeta_k^{-1})^p=\zeta_k+\zeta_k^{-1}\\ \iff& \zeta_k^p+\zeta_k^{-p}=\zeta_k+\zeta_k^{-1}\\ \iff& \{\zeta_k^p,\zeta_k^{-p}\}=\{\zeta_k,\zeta_k^{-1}\}\\ \iff& \zeta_k^{p\pm1}=1\\ \iff& p\equiv\pm1\mod k \end{align*}$$

ただし, 3行目から4行目への変形では, 和と積が等しい2数は集合として等しい(解と係数の関係)を用いた.

同様の理由から$\zeta_k^i+\zeta_k^{-i}$たちは全て異なることと合わせて,

$$ \#(\psi(S)\cap\Fp )=1+\sum_{\begin{gather*}k|2^n\pm1,\ k\neq1\\p\equiv\pm1\mod k\end{gather*}} \frac12\p(k)$$

により, 各$p$に対する$n$の個数が計算できる.

${}$

(ただし, これで分かるのは$\Fp$での根の個数なのに対し, 元の条件は$0< n< p$だったので, $n=0$が解の場合だけ特殊であるが, そのような$p$$p=2$だけである. このとき$n$の可能性は1つである.)

従って, 求める答えは
$$ 1+\sum_{2< p<100} \bigg(1+\sum_{\begin{gather*}k|32\pm1,\ k\neq1\\p\equiv\pm1\mod k\end{gather*}} \frac12\p(k) \bigg)$$

である.

${}$

$p$に対し, $\sum$の条件を満たす$k$は何か考える. $k$の可能性は$k=3,11,31,33$のみなので, それぞれが$p\equiv \pm1\mod k$を満たす$p$を求めると,

$k=3$が満たす:全ての$p>3$
$k=11$が満たす:$p=23,43,67,89$
$k=31$が満たす:$p=61$
$k=33$が満たす:$k=67$

となる. 従って, 解$n$の個数は
${}$
$p=23,43,89$では $1+\sum_{k=3,11}\frac12\p(k)=7$

$p=61$では $1+\sum_{k=3,31}\frac12\p(k)=17$

$p=67$では $1+\sum_{k=3,11,33}\frac12\p(k)=17$
${}$
であり, その他の$p>3$では$1+\sum_{k=3}\tfrac12\varphi(k)=2$個となる. $p=2,3$では1つである.

100未満の素数は25個であることから, 答えは$1+1+7\times3+17+17+(25-7)\times2=$$93$である.
${}$

補足

最初に2倍角の公式の5回合成だと見えて, 1の31乗根と33乗根を考えれば良いと分かっても, $\F_{31}$などでは重解が出てよく分からなくなってしまうことから, 少し工夫が必要という問題でした.

今回の方程式の$\Fp$での解の個数は, $\mathrm{mod}\ 31,33$で決まっているので, $p$$31\times 33$で割った余りで個数が分類できるということになります. では, 一般に方程式の$\Fp$での解の個数が$p$を何かで割った余りで分類できるかというと, 常にそうとは限りません.

実は, 類体論により, 方程式の$\mathbb{Q}$上分解体がAbel拡大であればそうであることが示せますが, Abelでない場合にはmodで決まらない例があります.

今回の例から, 解が1の冪根を使って表せる場合は一般に$p$のmodで個数が決まりそうだなという気がしますが, Abel拡大の場合は類体論と密接に関係しているKronecker-Weberの定理より必ず解は1の冪根を使って表せるので, 感覚的には納得がいきますね.

${}$

それでは, 読んでくださった方, ありがとうございました.
${}$

${}$

投稿日:724
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東大数理M1

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