学部で行列式を習った際,ある数式が頭を過った.
$$
\left[\frac{f(x)}{g(x)}\right]’
=\frac{f’(x)g(x)-f(x)g’(x)}{g(x)^2}
$$
商の微分の分子である.
これを行列式を用いて表すと,
$$
\left[\frac{f(x)}{g(x)}\right]’
=-\frac{
\begin{vmatrix}
f(x) & g(x) \\
f’(x) & g’(x)
\end{vmatrix}}
{g(x)^2}
$$
となる.ロンスキアンを知っていれば
$$
\left[\frac{f(x)}{g(x)}\right]’
=-\frac{W(f,g)}{g(x)^2}
$$
となる.ロンスキアンを微分ととらえると,なんとなく$1/f$の微分$-f’/f^2$のアナロジーであると気付けるだろう.
次に,先の公式を用いて特殊なケースについて考える.
$f \longmapsto ax+b,g \longmapsto cx+d$として,
$$\begin{align} \left[\frac{ax+b}{cx+d}\right]’ &=-\frac{ \begin{vmatrix} ax+b & cx+d \\ a & c \end{vmatrix}} {(cx+d)^2}\\ &=-\frac{ \begin{vmatrix} b & d \\ a & c \end{vmatrix}} {(cx+d)^2}\\ &=\frac{ \begin{vmatrix} a & b \\ c & d \end{vmatrix}} {(cx+d)^2} \end{align}$$
筆者はこれを暗記し,同様の微分を暗算で検算している.
$f \longmapsto af+b,g \longmapsto cf+d$として,
$$\begin{align} \left[\frac{af(x)+b}{cf(x)+d}\right]’ &=-\frac{ \begin{vmatrix} af(x)+b & cf(x)+d \\ af’(x) & cf’(x) \end{vmatrix}} {(cf(x)+d)^2}\\ &=-\frac{ \begin{vmatrix} b & d \\ af’(x) & cf’(x) \end{vmatrix}} {(cf(x)+d)^2}\\ &=\frac{ \begin{vmatrix} a & b \\ c & d \end{vmatrix}f’(x)} {(cf(x)+d)^2} \end{align}$$
筆者はこれを暗記し,同様の微分を暗算で検算している.
$g \longmapsto g^n$として,
$$\begin{align} \left[\frac{f(x)}{g(x)^n}\right]’ &=-\frac{ \begin{vmatrix} f(x) & g(x)^n \\ f’(x) & ng(x)^{n-1}g’(x) \end{vmatrix}} {g(x)^{2n}}\\ &=-\frac{ \begin{vmatrix} f(x) & g(x) \\ f’(x) & ng’(x) \end{vmatrix}g(x)^{n-1}} {g(x)^{2n}}\\ &=\frac{f’(x)g(x)-nf(x)g’(x)}{g(x)^{n+1}} \end{align}$$
これは商の微分で証明できるため,筆者同様高校時代に気付いた者も多いだろう.