目標
この記事では,異なるつの実数解をもつ次方程式
を,倍角の公式
を用いて解く方法を紹介する.
標準形の場合
簡単のため,まずはという形の次方程式について考える(は実数).
(後述の通り,実は適当な式変形によってすべての次方程式はこのという形に帰着される.)
異なる3つの実数解をもつ条件
本記事では異なるつの実数解をもつ次方程式だけを考察対象とする.
後の議論のため,が異なるつの実数解をもつための条件を求めておく.
異なる3つの実数解をもつ条件
を実数とする.このとき,次方程式が異なるつの実数解をもつための必要十分条件は,が成り立つことである.
関数を考えると,次方程式が異なるつの実数解をもつための必要十分条件は,次方程式が異なるつの実数解をもち,かつが成り立つことである.
軸と異なる点で交わる次関数のグラフ
いまだから,次方程式が異なるつの実数解をもつための必要十分条件はである.さらにこのとき,解と係数の関係より
が成り立つから
も用いると
となる.よって,はと同値であることがわかった.ところでが成り立つとき
より自動的にが成り立つから,「かつ」はと同値である.
したがって以下と仮定する.
証明でも指摘した通り,この仮定の下では自動的にが成り立つことに注意.
解の1つを求める
方程式を,倍角の公式に近い形へと変形する.
であることに注意して
と変数変換すれば,方程式は
と書き換えられる.いまと仮定していたことを思い出すと,右辺について
が成り立つから,中間値の定理より
を満たすがただつ存在する.
の取り方
倍角の公式より,は明らかにの解である.
ここまでの議論より,次の命題を得る.
解の1つをで表す
はを満たす実数とする.このとき
を満たすがただ一つ存在し,
は方程式の解である.
3つの実数解をすべて求める
3つすべての解をで表す
はを満たす実数とする.このとき
を満たすがただ一つ存在し,
は方程式の異なるつの実数解である.
が成り立つから,前節と同様の議論によって
は方程式の実数解となる.あとはこれらつが相異なることを示せばよいが,それはより
が成り立つことから従う.
つの解の大小関係
一般形の場合
標準形に帰着する
左辺から次の項を消去するために
と変数変換すると
となる.ただし,新たな係数は
で定めた.この標準形の方程式を解くことができれば,変数変換をもとに戻すことでの解も得られる.
異なる3つの実数解をもつ条件
3次方程式が異なる3つの実数解をもつ条件
はを満たす実数とする.このとき,3次方程式が異なるつの実数解をもつための必要十分条件は,が成り立つことである.
先述の方法で標準形に帰着すると,この方程式が異なるつの実数解をもつための必要十分条件はが成り立つことだった.
を用いて計算すると
だから,はと同値である.
まとめ
ここまでの議論をまとめれば,次の結果を得る(計算略).
はを満たす実数とする.このとき,次のことが成り立つ.
- 3次方程式が異なるつの実数解をもつための必要十分条件は,が成り立つことである.
- が成り立つとき,
を満たすがただ一つ存在し,3次方程式の異なるつの実数解は
と表される.