任意のパラコンパクトHausdorff多様体$M$は、Banach空間の閉部分集合である。特にそのような多様体は完備距離空間である。
定理1.3.4をヒントにしてくださいというのがあったので、その議論をもとに示していきます。
なお、証明中に$\tanh$で関数の挙動を制限している部分が出てきますが、それは単にノルムの評価をしやすくしているだけなので、別に不要です。
$M$はパラコンパクトHausdorff多様体なので、各点近傍に相対コンパクトで局所有限なアトラス$\{(U_i,\phi_i)\}_{i\in I}$が取れる。
また、パラコンパクト性から、このアトラスに従属する1の分割$\{\varphi_i\}_{i\in I}$を取れる。
いま、各チャート$(U_i,\phi_i)$について、$\pi_k,(k=1,…,n)$を射影として、多様体上の実数値関数$f_{i,k} (x)=\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
\tanh ((\pi_k\circ \phi_i)(x)) ,(x\in U_i),\\
0,(x\not\in U_i)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$
を定める。
添字集合$\Lambda=I× \{0,1,…,n\}$をとり、Banach空間$E:=l^1(\Lambda,\mathbb R)$を考える。(これは単に、$\mathbb R^\Lambda$の部分空間で、$\Sigma|x_i|<\infty$を満たすものの集まりで出来るBanach空間のこと。ノルムは各$x=(x_i)$に対して$\Sigma|x_i|$で与えられる。)
そして写像$g:M\to E$を、$(i,0)$成分が$\varphi_i(x)$、その他$(i,k)$成分が$\varphi_i(x)f_{i,k}(x)$であるものとして定める。これは
$\left\| g(x) \right\|_1=\Sigma_i(|\varphi_i(x)|+\Sigma_{k=1}^n|\varphi_i(x)f_{i,k}(x)|) \leq 1+n$
を意味し、よってwell-defindである。また、その構成から明らかに連続である。
まず、単射性を確認する。任意に$x,y\in M$をとり、$x\neq y$とする。1の分割から、ある$i\in I$で$\varphi_i(x)>0$なるものがあるので、それをとって固定する。
もし$y\not\in U_i$なら$g$の$(i,0)$成分を見れば明らかに$g(x)\neq g(y)$。
そこで、$y\in U_i$とする。仮に、$\varphi_i(x)\neq \varphi_i(y)$なら、再び$g$の$(i,0)$成分を見ればよい。よって$\varphi_i(x)=\varphi_i(y)$とする。このとき$\phi_i$が同相なのである$k$で$f_{i,k}(x)\neq f_{i,k}(y)$となる。すなわち$g$の$(i,k)$成分を見れば、$g(x)\neq g(y)$である。
よって$g$は単射。続いてproperである事を見る。
任意にコンパクト集合$K\subset E$をとる。コンパクト集合に対する$l^1 $Tail lemma(コンパクト集合上の数列の末尾の和はいくらでも小さくできる。)により、ある有限集合$J\subset \Lambda$が存在して、$\Sigma_{j\not\in J}|v_j|<1/2,(\forall v=(v_j)\in K)$を満たすようにとれる。
したがって、各$x\in F^{-1}(K)$に対して、$\Sigma_{(i,0)\not \in J }\varphi_i(x)\leq \Sigma_{j \not \in J}|g(x)_j|<1/2$、すなわち$\Sigma_{(i,0) \in J }\varphi_i(x)>1/2$が成り立つ。これは特に、有限個の$i$のいずれかで$\varphi_i(x)>0$を意味するので、$x\in \cup_{(i,0)\in J}\overline{\mathrm{supp}(\varphi_i)}$。すなわち$F^{-1}(K)\subset\cup_{(i,0)\in J}\overline{\mathrm{supp}(\varphi_i)}$を得る。
右辺は有限個のコンパクト集合の合併なのでコンパクトであり、左辺は閉集合の連続写像による逆像なので閉集合、すなわちコンパクトである。
$K$は任意であったので、これにより$F$はproperである。
ところで、$M$は多様体なので局所コンパクト空間であり、$E$はノルム空間なのでHausdorffであるから、$g$がproperな連続写像であることにより$g$は閉写像である。
すなわち$g(M)$は閉であり、よって以上により、$g$はBanach空間$E$への閉埋め込みである事がわかる。
また、$M$上の距離関数$d$を$d(x,y)=\left\| g(x)-g(y) \right\|_1$で定めると、$g(M)$は完備距離空間なので完備距離であり、特に$g$が像$g(M)$への同相だから、この距離はもとの多様体$M$の位相を生成する。
よって$M$は完備距離空間でもある。