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高校数学解説
文献あり

スターリング数の相互関係と一般項

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はじめに

 この記事ではスターリング数の相互関係
[nnk]=m=0k(knk+m)(n+kn+m){m+km}{nnk}=m=0k(knk+m)(n+kn+m)[m+km]
や一般項の公式
{nk}=j=0k(1)kjjnj!(kj)![nk]=m=n2nk(m1k1)(2nkm)j=0mn(1)nk+jjmkj!(mnj)!
についてまとめていきます。

スターリング数

 第一種・第二種スターリング数は上昇階乗・下降階乗
xn=x(x+1)(x+2)(x+n1)xn=x(x1)(x2)(xn+1)
と冪乗xnとの関係
xn=k=0n[nk]xkxx=k=0n(1)nk[nk]xkxn=k=0n{nk}xkxn=k=0n(1)nk{nk}xk
に現れる係数のことを言い、これらは
[n+1k]=n[nk]+[nk1]{n+1k}=k{nk}+{nk1}
という漸化式を満たします。

母関数

 まずスターリング数の母関数の一種を求めておきます。

(1+t)x=0kn(1)nk[nk]xktnn!

dndtn(1+t)x=xn(1+t)xn
に注意すると
(1+t)x=n=0xntnn!=n=0(k=0n(1)nk[nk]xk)tnn!
とわかる。

ex(et1)=0kn{nk}xktnn!

jn=k=0n{nk}jk=k=0n{nk}j!(jk)!
に注意すると
exn=0(k=0n{nk}xk)tnn!=n=0(k=0n{nk}j=0xj+kj!)tnn!=n=0(k=0n{nk}j=kxj(jk)!)tnn!=n=0(j=0(k=0n{nk}j!(jk)!)xjj!)tnn!=j=0(n=0jntnn!)xjj!=j=0ejtxjj!=exet
が成り立つのでこの両辺をexで割ることで主張を得る。

(log(1+t)t)k=k!n=k(1)nk[nk]tnkn!(et1t)k=k!n=k{nk}tnkn!

(1+t)x=exlog(1+t)=k=0xk(log(1+t))kk!ex(et1)=k=0xk(et1)kk!
に注意するとわかる。

第二種スターリング数の一般項

 ちなみに第二種スターリング数の一般項については母関数から直接求めることができます。

{nk}=j=0k(1)kjjnj!(kj)!

ex(et1)=k=0xkk!(et1)k=k=0xkk!j=0k(1)kj(kj)ejt=k=0xkk!j=0k(1)kj(kj)n=0(jt)nn!=n,k=0(j=0k(1)kj(kj)jn)xkk!tnn!
より
{nk}=1k!j=0k(1)kj(kj)jn=j=0k(1)kjjnj!(kj)!
を得る。

Nörlund多項式

 次にスターリング数の母関数と関わりの深いネールント多項式というものについて解説していきます。

(tet1)z=n=0Nn(z)tnn!
によって定まるzについての多項式Nn(z)ネールント多項式と言う。

 ネールント多項式は通常Bn(z)のように表されますが、ここではzについての多項式という側面を強調するためにNn(z)と表すことにします。
 ちなみにBn(z)という記法はより一般にベルヌーイ多項式の類似の一つとして
(tet1)zext=n=0Bn(z)(x)tnn!
というzおよびxについての多項式Bn(z)(x)を考えていることに起因しています。

漸化式と次数

tetet1=n=0B^ntnn!
とおくと漸化式
Nn(z)=znk=1n(nk)B^kNnk(z)
が成り立つ。

ddt(tet1)z=z(1tetet1)(tet1)z=zt(tetet11)(tet1)z=z(n=0B^n+1n+1tn(n+1)!)(n=0Nn(z)tnn!)=zn=0(k=0n(nk)B^k+1k+1Nnk(z))tnn!
より
ddt(tet1)z=n=0Nn+1(z)tnn!
と係数比較することで
Nn+1(z)=zk=0n(nk)B^k+1k+1Nnk(z)=zn+1k=0n(n+1k+1)B^k+1Nnk(z)=zn+1k=1n+1(n+1k)B^kNnk+1(z)
を得る。

 Nn(z)n次多項式である。

 n=0のときは明らかであり、n1のときは上の漸化式からわかる。

スターリング数との関係

 以下
Fz(t)=(tet1)z
とおきます。

Fz+1(t)et=n=0(1nz)Nn(z)tnn!

ddtFz(t)=z(1tetet1)(tet1)z=zt(Fz(t)Fz+1(t)et)
より
Fz+1(t)et=Fz(t)tzFz(t)
が成り立つことに注意するとわかる。

(log(1+t)t)z=zn=0Nn(z+n)z+ntnn!

(log(1+t)t)z=Fz(log(1+t))
および
(1nz)Nn(z)=n!2πiFz+1(w)ewwn+1dw
に注意してζ=ew1とおくことで
n!2πiFz(log(1+ζ))ζn+1dζ=n!2πiFz(w)(ew1)n+1ewdw=n!2πiFz+n+1(w)wn+1ewdw=(1nz+n)Nn(z+n)=zz+nNn(z+n)
を得る。

(1)k[nnk]=(n1k)Nk(n){n+kn}=(n+kk)Nk(n)

(log(1+t)t)k=kn=0Nn(n+k)n+ktnn!=(1)nk!n=0[n+kk]tn(n+k)!(et1t)k=n=0Nn(k)tnn!=k!n=0{n+kk}tn(n+k)!
より
(1)n[n+kk]=(n+k1k1)Nn(n+k){n+kk}=(n+kk)Nn(k)
がわかるのでこれを適当に変形することで主張を得る。

スターリング数の相互関係

 いまスターリング数がネールント多項式によって表せたことから次のような興味深い事実が成り立ちます。

 kを固定したとき
[nnk],{n+kn}
nについての2k次多項式とみなせ、特に多項式として
[nnk]={n+kn}
が成り立つ。

 定理8より
[nnk]=(1n)(2n)(kn)k!Nk(n){n+kn}=(n+1)(n+2)(n+k)k!Nk(n)
が成り立つことからわかる。

 そしてこのことを用いることで以下の相互関係が導かれます。

[nnk]=m=0k(1)km(n+m1k+m)(n+kn+m){m+km}{nnk}=m=0k(1)km(n+m1k+m)(n+kn+m)[m+km]

 2k次多項式f
f(n)=[nnk]
によって定めたとき(k0において)
f(m)=0(m=0,1,2,,k)
に注意してラグランジュの補間公式を考えることで
f(n)=m=0kf(m)j=kjmkn+jm+j=m=0k(1)k+m(n+k)!(n+m)(nk1)!1(kj)!(k+m)!f(m)[nnk]=m=0k(1)k+m(n+m1k+m)(n+kn+m){m+km}
を得る。
 同様に
f(kn)=m=0kf(k+m)j=0jk+m2k(kn)jk+mj=m=0kf(k+m)j=kjmknjmj{nnk}=m=0k(1)k+m(n+m1k+m)(n+kn+m)[m+km]
を得る。

 ちなみに
(1)k(x1k)=(kxk)
と変形すると
[nnk]=m=0k(knk+m)(n+kn+m){m+km}{nnk}=m=0k(knk+m)(n+kn+m)[m+km]
とも表せます。

[nk]=m=n2nk(1)km(m1k1)(2nkm){mkmn}{nk}=m=n2nk(1)km(m1k1)(2nkm)[mkmn]

[nk]=m=0nk(1)n+mk(n+m1n+mk)(2nkn+m){n+mkm}=m=n2nk(1)km(m1k1)(2nkm){mkmn}
とわかる。

第一種スターリング数の一般項

 いま第一種スターリング数が第二種スターリング数を用いて表せたことにより次のような一般項の公式が得られます。

[nk]=m=n2nk(m1k1)(2nkm)j=0mn(1)nk+jjmkj!(mnj)!

 第二種スターリング数の一般項
{mkmn}=j=0mn(1)mnjjmkj!(mnj)!
から
[nk]=m=n2nk(1)km(m1k1)(2nkm){mkmn}=m=n2nk(m1k1)(2nkm)j=0mn(1)nk+jjmkj!(mnj)!
を得る。

参考文献

[1]
H. W. Gould, The Lagrange interpolation formula and Stirling numbers, Proc. Amer. Math. Soc., 1960, pp. 421–425
[2]
N. E. Nörlund, Vorlesungen über Differenzenrechnung, Berlin, 1924, pp. 146-147
投稿日:2024219
更新日:2024219
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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  8. スターリング数の相互関係
  9. 第一種スターリング数の一般項
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