半径$1$の円に内接する正$n$角形の対角線の長さの総積を$L(n)$とする。次の極限値を求めよ。また、必要であれば$\displaystyle\lim_{n \to 0}\frac{\sin x}{x}=1$を証明なしに用いても良い。
$\displaystyle\lim_{n \to \infty}\frac{1}{n}\log\{\frac{1}{n^\frac{3n}{2}}L(n)\}$
複素数平面上の原点中心半径$1$の円に内接する正$n$角形を考える。このとき正$n$角形の頂点に対応するを複素数を反時計回りに$Z_1,Z_2,\cdots,Z_n$とし、$Z_1=1$とすれば$\displaystyle Z_k=\cos\frac{2(k-1)}{n}π+i\sin\frac{2(k-1)}{n}π\quad(k=1,2,\cdots,n)$
と表すことができる。
またド・モアブルの定理より
$\displaystyle Z_k^n=\c\{2(k-1)π\}+i\s\{2(k-1)π\}$=1
となり、$Z_k$は$x^n-1=0$の異なる$n$個の解であることがわかる。
因数分解と因数定理より、
$x^n-1=(x-1)(x^{n-1}+x^{n-2}+\cdots+x+1)$
$\qquad\quad=(x-Z_1)(x-Z_2)\cdots(x-Z_{n-1})(x-Z_n)$
特に$Z_1=1$であるので
$x^{n-1}+x^{n-2}+\cdots+x+1=(x-Z_2)(x-Z_3)\cdots(x-Z_n)$
であることがわかる。$\cdots①$
ここで
$a_{j,k}=|Z_k-Z_j|\quad(j,k=1,2,\cdots,n \quad j\neq k)$とした時の$a_{j,k}$の総積$A_{n,n}$について考える。
$A_{1,k}=A_{2,k}=\cdots=A_{n,k}$
であるので、
$A_{n,n}=A_{1,k}^n$
となる。また、$Z_1=1$なので
$Α_{1,k}=|Z_2-1||Z_2-1|\cdots|Z_n-1|$
複素数の絶対値の掛け算はまとめられるので
$A_{1,k}=|Z_2-1||Z_2-1|\cdots|Z_n-1|$
$\qquad=|(Z_2-1)(Z_3-1)\cdots(Z_n-1)|$
絶対値の中は$①$の左辺の$x$に$1$を代入し、$(-1)^{n-1}$倍したものと同じであるので右辺の$x$に$1$を代入して$(-1)^{n-1}$倍したものに置き換えることができるのて
$A_{1,k}=|(Z_2-1)(Z_3-1)\cdots(Z_n-1)|$
$\qquad=|(-1)^{n-1}(1^{n-1}+x^{n-2}+\cdots+1+1)|$
$\qquad=|(-1)^{n-1}n|$
$\qquad=n$
よって
$A_{n,n}=A_{1,k}^n=n^n$である。$\cdots②$
また、
$a_{α,β}=a_{β,α}\quad(α,β\in(j \cap k))$
であることから$A_{n,n}=n^n$は正$n$角形の辺と対角線の長さの総積の$2$乗であることがわかる。これより$n^n$を辺の長さの総積の$2$乗で割ることで$L(n)^2$を求めることができることがわかったので辺の長さの総積の$2$乗を求める。
ここで$O$を原点として$O$から$Z_{k-1}Z_k$へ垂直に直線を引いた時の交点を$T$とする。
$\triangle O Z_{k-1} Z_k$は$|Z_{k-1}|=|Z_k|$であることから二等辺三角形である。よって$Z_{k-1}T=Z_kT$であり、$\angle Z_{k-1} O Z_k=\displaystyle\frac{2π}{n}$であるので
$\angle Z_{k-1} O T=\angle Z_k O T=\displaystyle\frac{π}{n}$
これより正$n$角形の辺の長さは
$\displaystyle|Z_{k-1}|\sin\frac{π}{n}+|Z_k|\sin\frac{π}{n}=2\sin\frac{π}{n}$
となる。
よって$L(n)^2$は
$\displaystyle\{(2\sin\frac{π}{n})^n\}^2=(2\sin\frac{π}{n})^{2n}$
となり、
$L(n)^2=\displaystyle\frac{n^n}{(2\sin\frac{π}{n})^{2n}}=(\frac{n}{4\sin^2\frac{π}{n}})^n$
より
$L(n)=\displaystyle(\frac{n}{4\sin^2\frac{π}{n}})^{\frac{n}{2}}$
となる。
今回求めるべき極限値は
$\displaystyle\lim_{n \to \infty}\frac{1}{n}\log\{\frac{1}{n^\frac{3n}{2}}L(n)\}=\lim_{n \to \infty}\frac{1}{n}\log\{\frac{1}{n^\frac{3n}{2}}(\frac{n}{4\sin^2\frac{π}{n}})^{\frac{n}{2}}\}$
$\displaystyle\qquad\qquad\qquad\qquad\quad\:\:\,=\lim_{n \to \infty}\frac{1}{2}\log\frac{1}{n^3}\frac{n}{4\sin^2\frac{π}{n}}$
ここで$\displaystyle n→\infty$において$\displaystyle\frac{π}{n}→0$であるから
$\displaystyle\lim_{n \to \infty}\frac{n}{4\sin^2\frac{π}{n}}=\lim_{n \to \infty}\frac{n(\frac{π}{n})^2}{4(\frac{π}{n})^2\sin^2\frac{π}{n}}$
$\displaystyle\qquad\qquad\qquad=\lim_{n \to \infty}\frac{n^3}{4π^2}$
となり、
$\displaystyle\lim_{n \to \infty}\frac{1}{2}\log\frac{1}{n^3}\frac{n}{4\sin^2\frac{π}{n}}=\lim_{n \to \infty}\frac{1}{2}\log\frac{1}{n^3}\frac{n^3}{4π^2}$
$\displaystyle\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad=-\log2-\logπ$
よって今回求めるべき極限値は$-\log2-\logπ$である。