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この記事は
日曜数学 Advent Calendar 2024
の
また、
発表スライドへのリンク: https://x.com/apu_yokai/status/1850478429734314458
この記事では、平面上に任意にとった
任意にとる
ここで「
最初に、「用語など」のセクションで「
の形の陰関数で表される曲線で、楕円、双曲線、放物線など、円錐を平面で切り取った断面の形になることから、「円錐曲線」とも呼ばれています。
なお、
分野によっては、正円や二直線を
「解の自由度」について、まず具体例から考えてみましょう。
つぎのような三元一次方程式について考えます。
(係数に深い意味はないです。)
解いてみると、解として
が得られます。
解となるのは1つだけで、自由に動かすことはできませんね。
式の数を1つ減らしてみるとどうなるでしょうか。
これでは解は1つに定まりません。
ただし、
例えば
「
さて、上記の実験から、「
実際、これは正しくて、もう少し厳密な言い方をすると次のように書くことができます。
・ 連立一次方程式の解の自由度と行列の
また、次の関係式が成り立つ。
解の自由度
ここで太字のアルファベットはベクトルや行列を表しています。
行列の
ざっくりと、「
詳しく知りたい方は参考文献をご覧ください。
したがって、
しかし、実際には
式の両辺を定数倍しても
ちょっと脱線しますが、グラフ描画アプリ「Geogebra」では、ツールの中に「
Geogebraのツール「
双曲線と楕円の境界線は放物線となる
図
見てのとおり、その境界線は放物線となります。
以前、Twitter(現X)で「4点を通る放物線は一般に2つある」というネタをポストしたことがありますが、その2本の放物線は双曲線と楕円の境界線にもなっているというわけでした。
● そのときのポスト
任意の4点を通る放物線は0個〜2個ありますの図
— apu (@apu_yokai) January 4, 2020
なお、3点の場合は無数にあり、5点の場合は0個〜1個あります。
したがって放物線上の異なる5点の位置が分かれば元の放物線が復元できますが、4点の場合は(特殊な配置を除き)別の放物線も現れるため一意に定まりません pic.twitter.com/YRvMwP0RVb
「中心」の軌跡が双曲線となる配置の例
「中心」の軌跡が楕円となる配置の例
オレンジ色の曲線が
さて、オレンジ色の曲線の形をみてください。図
その直感は正しくて、実際にオレンジ色の曲線は
「中心」の軌跡が楕円にるのか双曲線になるのかは、固定する4点の配置により決まります。
図
ざっくりいうと、4点が凸四角形になる配置のときは「双曲線」になり、凹四角形になる配置のときは「楕円」になります。
そして驚くべきことに、この「中心」の軌跡は、固定した4点に対応する「九点円錐曲線」と一致します!
「九点円錐曲線」とは、4点に対して一意に定まる
九点円錐曲線が双曲線となる例
九点円錐曲線がと楕円となる例
観察したところでは確かに「中心」の軌跡と「九点円錐曲線」は一致するようですが、本当に一致するかどうか数式で確かめたいですよね!
いろいろやってみましたが、真正面からのゴリ押し計算ではあまりにも計算量が膨大すぎてうまくいきませんでした。(膨大な計算に自信のある人は挑戦してみてね)
そこで、ちょっとひねった方法を考えてみます。
まず、固定した
すると、固定した
そして、(★)の係数を見れば
厳密には、(★)の式では
この
このときの「何らかの
次に、九点円錐曲線上の点のうち
「
【証明の方針】
それではまず中心の座標を
中心の座標を計算しやすいように
と置いて(★)の式を書き換えます。
中心の座標を
中心の座標が原点になるように
点対称になるということは、
これを使って、
さっそくやってみましょう!
まずは中心が原点になるように平行移動して
この式の
(
ここまでで、
ここからは、ある定数
を満たすことを示します。
それはすなわち、
それには、
まともに計算しようとすると膨大な計算が必要となってしまいますので、ここでは
次数のみに注目すると、
これを
ここで、この式の分母に出てくる
引き続き次数のみに注目すると
この式が
「
未知数が
自由度で考えると、自由度は
を見れば、全体を定数倍にする自由度があることがわかります。
したがって、
こうして得られた
(
九点円錐曲線上の点のうち
円錐曲線の自由度
このことは、先ほどと同じ手順で
となることからわかります。
ここからさらに定数倍の自由度
したがって、「中心の座標と、曲線上の点を
ここで「九点円錐曲線」の「九点」について振り返ってみると、そのうち
まず、
次に、
に対する影響は
結局、九点円錐曲線の
「
最後に
ゴリ押し計算で焦点の軌跡を描くことに成功したのですが、なんとも奇妙な曲線が現れました。
楕円をゆがめたような曲線や、双曲線をゆがめたような曲線を3つ掛け合わせたみたいに見えます。
また、双曲線群の焦点の軌跡は楕円をゆがめたような曲線に、楕円群の焦点の軌跡は双曲線をゆがめたような曲線になっているようです。
これらがどういう曲線なのか、何か面白い性質があるのか気になりますね!
焦点の軌跡の例
焦点の軌跡の例
この「焦点の軌跡をどうやって求めたか?」についてもなかなか面白い話題だと思いますが、締め切りに間に合いそうにないので今回はここまでにします。
興味のある方はどうすれば二次曲線の係数から焦点の座標を計算できるか考えてみてね!
数学パズルとしてもそれなりに面白いと思います。
(「おわりに」のセクションにある私のDesmosファイル内の数式を解析すればわかっちゃいますけどね)
【2024.12.24追記】
二次曲線の係数から焦点の座標を計算する方法について記事を書きました!
記事へのリンク:
二次曲線の焦点の座標を係数から計算する
このセクションは日曜数学会のときに「おまけ」として付け加えた内容です。
「こんな質問が来るかな」と予想していたら、本当に質問されてとても嬉しかったです。
何かというと、「九点円」という割と知られた幾何学の図形があるのですが、「九点円錐曲線」と名前が似ているので、何か関係があるのか、という質問です。
結論からいうと、深い関係があります!
まず、「九点円」について説明しましょう。
任意の三角形
九点円錐曲線は4点から定まる
つまり、九点円錐曲線は九点円を一般化したものといえそうですね!
九点円錐曲線と九点円の関係
図11では点Dが△ABCの垂心の位置に来た時に一時停止するようにしています。九点円錐曲線が九点円になっていることが分かると思います。
これでこの記事はおわりです。
最後に、記事を作るために作ったDesmosファイルへのリンクを貼っておきます。
Desmos:5点を通る二次曲線 4点を固定したときの中心と焦点の軌跡≪記事作成用≫
4点を自由に動かせます。"auto" のパラメータを
今回も、Twitter(現X)でのやりとりが発表内容のベースとなっています。色々な情報や意見を頂き感謝します。
特に、K. Miyamoto ( @KMiya3114 ) さんから教えていただいた「九点円錐曲線」はとても興味深い対象だと思います。
大いに参考になりました。ありがとうございました。
【関連ポスト】 https://x.com/KMiya3114/status/1839239103155679350
また、「
【関連ポスト】 https://x.com/toku51n/status/1852930805292790245
発想のきっかけとなったのは miyamath ( @miyamath84 ) さんのこのポストでした。
【関連ポスト】 https://x.com/miyamath84/status/1838927657901359438
そのほかにも、色々なポストを参考にさせていただいています。
今後ともよろしくお願いいたします。
この記事に関連して、何か面白そうな発見などありましたらご連絡いただければ幸いです。