複素数に関する問題は、いくつかの定理さえ暗記したらボコすことができる。
$\displaystyle \begin{array}{{>{\displaystyle}l}} 方程式 x^3−9x−9=0 の 3 つの複素数解を x=α,β,γとします.\\なお,これらは相異なることが保証されます.\\次の値を求めてください.\\(α^3+α^2−10α−8)(β^3+β^2−10β−8)(γ^3+γ^2−10γ−8) \end{array}$
$\displaystyle \begin{array}{{>{\displaystyle}l}} f(x)=x^3-9x-9とする。\\ また1の三乗根で1でないものをωとして、 f(α)=0より、\\ α^3=9α+9だから、代入して\\ (α^3+α^2−10α−8)(β^3+β^2−10β−8)(γ^3+γ^2−10γ−8)\\ =(α^2−α+1)(β^2−β+1)(γ^2−γ+1)\\ =(α+ω)(α+ω^2)(β+ω)(β+ω^2)(γ+ω)(γ+ω^2)\\ =f(-ω)f(-ω^2) =(-10+9ω)(-10+9ω^2)=100+90+81=271 \end{array}$
あなたがこの記事を読むことでこの変形が決して不自然ではないことを学ぶだろう。
fをモニック多項式とする。
$α_1,α_2,,,α_n$ を$f(x)=0$の解として、
$f(t)=(t-α_1)(t-α_2)(t-α_3)...(t-α_n)$ $
(-1)^nf(-t)=(t+α_1)(t+α_2)(t+α_3)...(t+α_n)$
この定理を読むことで、
$g(x)$を根$β_1,β_2,,,,β_m$をもつ多項式として、
$$
\prod_{i=1}^{n}g(α_i)=\prod_{i=1}^{n}(α_i-β_1)(α_i-β_2),,,
(α_i-β_m)
=(-1)^m(-1)^n\prod_{i=1}^{m}f(β_i)
$$
というように変形することができると分かる。
これが多項式置換公式だ。頻出なので覚えよう。
$f,g$をモニック多項式とする。fの根は $α_1,α_2,,,α_n$
$g$の根は$β_1,β_2,,,β_n$
$$
(-1)^n\prod_{i=1}^{n}g(α_i)
=(-1)^m\prod_{i=1}^{m}f(β_i)
$$
この公式はOMCの複素数の問題で頻出で、知っているか知っていないかで世界が180°変わる。実際に問題を解くときは、このgの根が実数、純虚数、円分体のみになると都合がいいのだ!例題は根がω、ω^2だから都合がいい。
例えば、OMC225(E)はこれで瞬殺できる。
難易度橙というのは飾りである。
$X$ に関する $101$ 次方程式 $X^{101}+2024X^{50}−2025=0 $ の(重複度を込めて)$101$ 個の複素数解を$ X=α_1,α_2,…,α_{101}$とします.
このとき、 $$\prod_{i=1}^{101} \sum_{j=0}^{100} α_i $$は正整数値になるので,それがもつ正の約数の個数を解答してください.
解き方
基本中の基本と多項式置換公式で瞬殺です。
$ζ$ を $1$ の原始 $101$ 乗根として、
$ 1+x+x^2+,,,,+x^{100}=0の解はζ,ζ^2,,,,ζ^{100}$ だから前述した都合がいいパターンだ!(円分体で分からないことあれば円分体の項目を参照)
多項式置換公式より、
$ f(x)=X^{101}+2024X^{50}−2025$ $
g(x)=1+x+x^2+,,,,+x^{100}として、$ $
f(ζ)=2024(ζ^{50}-1)だから、$ $$
\prod_{i=1}^{101} \sum_{j=0}^{100} α_i
=\prod_{i=1}^{101} g(a_i)=\prod_{i=1}^{100}f(β_i) $$ $$
=\prod_{i=1}^{100}f(ζ^i)
=\prod_{i=1}^{100}2024(ζ^{50}-1)
=2024^{100}\prod_{i=1}^{100}(ζ-1) $$
(なぜこの等式が成立するかは円分体の項目を参照) $$
=2024^{100}f(1)=2024^{100}\times 101
$$
多項式置換公式の偉大さが分かった。
もうあなたは円分体を用いることを躊躇ない。
$ f(α)=0 $
$ f(x)=x^n+g(x)$ とした場合、
$α^n=-g(α)$
当たり前に見えるかもしれないが、非常に重要
$f$をモニック多項式とする。
$f$の$x$の$i$次の係数を$A_i$とする。
また、$f(x)=0$の解について、$i$次の基本対称式を$S_i$とした場合、
$S_i=(-1)^iA_{n-i}$
$f$を因数分解すると分かる。
全ての対称式は、基本対称式の和、差、積で表せる。
★$i$次以下の対称式に、$i+1$以上の基本対称式は登場しない。
全ての交代式は、対称式と差積の積になる。
$T_k=\sum_{i=1}^{n}\alpha_i^k
$として、
$
T_1=S_1$ $
T_2=S_1^2-2S_2$ $
T_3=S_1^3-3S_1S_2+3S_3$ $
T_4=S_1^4-4S_1^2S_2+4S_1S_3+2S_2-4S_4$
$f(x)=x^n-S_1x^{n-1}+(-1)^nS_n=0$
として、 $T_n=S_1^n-n(-1)^nS_n=0$
$f(x)$は$x^n$以外に$n/2$以上の次数の係数は$0$である。
具体的には、$ f(x)=x^n+g(x)$ として、($g(x)$は$(n-1)/2$次以下の多項式)
このとき、$ T_n=-nA_n$
基本対称式でどう構成するかをちゃんと考えたら
答えが分かる。
$$\sum_{i=1}^{n}\alpha^n=\sum_{i=1}^{n}-g(α)$$
ここで$$\sum_{i=1}^{n}g(α)=nA_n+V$$
Vの各項には$S_1....S_{[n/2]}$ が必須になるが、これは全て0である。よってV=0であり、QED
これらの定理を用いることで、複素数に関してはOMCで無双することが可能になるのだ。
$x^n-1=0$ $の解のうち、1でないもののうち1つを代表して、 ζ_nとする。$ $ 特に、n=3のとき、ζ_3=ωと表す。$ $ 当然、ζ^n=1$ $ 1+ζ+ζ^2+,,,,+ζ^{n-1}=0である。$
今後、円分体は母関数編で用いるので
今のうちに紹介することにした。
⓪円分体$ {1,ζ,ζ^2,,,ζ^{n-1}}$は乗法において巡回群Cnである。特に、逆元を定義できるので、
$ζ^k$($k$は負の整数)は定義してよい。
①素数円分体は対称的である。具体的には、$f(ζ)$が${ζ,ζ^2,,,ζ^{n-1}}$において対称式ならば任意の整数$k$で
$f(ζ)=f(ζ^k)$で、これは必ず実数である。
②円分体は、円分体$Q(ζm)$($m$は素数の累乗)の積で表せる
具体的には、$x^{12}=1$の解は全て$3$乗根${1,ω,ω^2}$と$4$乗根${1,i,-1,-i}$の積で表せる。
③[発展]一意分解整域となる円分体 $Q(ζm) (m≡0,1,3(mod4))$は、$m $が $3, 4, 5, 7, 8, 9, 11, 12, 13, 15, 16, 17,$
$
19, 20, 21, 24, 25, 27, 28, 32, 33, 35, 36, 40, 44, 45, 48, 60, 84$ の場合だけである。これ以外の$m$では素因数分解は一意でない。
① $ x^3-1=(x-1)(x-ω)(x-ω^2)$
$
x^2+x+1=(x-ω)(x-ω^2)$
$
x^3+1=(x+1)(x+ω)(x+ω^2)$
$
x^2-x+1=(x+ω)(x+ω^2)$
$
x^6-1=(x-1)(x-ω)(x-ω^2)(x+1)(x+ω)(x+ω^2)$
$
x^6+1=(x-i)(x-ωi)(x-ω^2i)(x+i)(x+ωi)(x+ω^2i)$
$
x^{12}-1=(x-1)(x-ω)(x-ω^2)(x+1)(x+ω)(x+ω^2)$
$
(x-i)(x-ωi)(x-ω^2i)(x+i)(x+ωi)(x+ω^2i)$
$
②ω^2+ω=-1$
③部分分数分解
$$
\frac{1}{x^3-1}=\frac{1}{(x-1)(x-ω)(x-ω^2)}=\frac{1}{x-1}+\frac{ω}{x-ω}+\frac{ω^2}{x-ω^2}
$$
読者への挑戦
③の式を$x^6-1,x^{12}-1$に拡張してみよう。
$\displaystyle \begin{array}{{>{\displaystyle}l}} ω^3=1 をみたす 1 でない複素数 ω に対して,\\ −(ω−1)^6 を求めてください. \end{array}$
$\displaystyle \begin{array}{{>{\displaystyle}l}} 次の xについての方程式の(重複度を込めて)1000個の複素数解を\\ x=α_1,α_2,…,α_{1000}とします.\\5x^{1000}+15x^{999}−3=0\\このとき,次の総和は整数となるので,\\この値を素数 997 で割った余りを求めてください.∑_{k=1}^{1000}α_k^{1000} \end{array}$
$\displaystyle \begin{array}{{>{\displaystyle}l}} x に関する方程式\\ x^{200}+x^{199}+3x^2−3=0\\ は相異なる 200 個の複素数解を持つので,それぞれの k 乗の\\総和を A_k とします. 1000A_{199}+A_{200} の値を求めてください. \end{array}$
$\displaystyle \begin{array}{{>{\displaystyle}l}} 2025 次方程式 x^{2025}=x^8+x^4+x+1 の重複を含めた 2025 個の\\複素数解を α_1,α_2,…,α_{2025} とし, M=∏_{n=1}^{2025}∏_{m=1}^{2025}(α_n+α_m)\\ とおきます.M は正の整数となるので,\\Mを素数 2027 で割った余りを解答してください. \end{array}$
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