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高校数学の問題を大学数学で解く その1

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$$\newcommand{a}[0]{\alpha} \newcommand{asn}[0]{\hspace{16pt}(\mathrm{as}\ n\to\infty)} \newcommand{b}[0]{\beta} \newcommand{beq}[0]{\begin{eqnarray*}} \newcommand{c}[2]{{}_{#1}\mathrm{C}_{#2}} \newcommand{cb}[0]{\binom{2n}{n}} \newcommand{d}[0]{\mathrm{d}} \newcommand{del}[0]{\partial} \newcommand{dhp}[0]{\dfrac{\pi}2} \newcommand{ds}[0]{\displaystyle} \newcommand{eeq}[0]{\end{eqnarray*}} \newcommand{ep}[0]{\varepsilon} \newcommand{G}[1]{\Gamma({#1})} \newcommand{g}[0]{\gamma} \newcommand{hp}[0]{\frac{\pi}2} \newcommand{I}[0]{\mathrm{I}} \newcommand{l}[0]{\ell} \newcommand{limn}[0]{\lim_{n\to\infty}} \newcommand{limx}[0]{\lim_{x\to\infty}} \newcommand{nck}[0]{\binom{n}{k}} \newcommand{p}[0]{\varphi} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Res}[1]{\underset{#1}{\mathrm{Res}}} \newcommand{space}[0]{\hspace{12pt}} \newcommand{sumk}[1]{\sum_{k={#1}}^n} \newcommand{sumn}[1]{\sum_{n={#1}}^\infty} \newcommand{t}[0]{\theta} \newcommand{tc}[0]{\TextCenter} \newcommand{threevec}[3]{\begin{pmatrix}{#1}\\{#2}\\{#3}\end{pmatrix}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

こんにちは.

タイトルの通り, 大学数学の面白い応用を紹介するシリーズをやってみようと思います. 見つけ次第更新する感じでやっていきます.

今回紹介する問題は次です.

空間ベクトル$\threevec{a}{b}{c}, \threevec{b}{c}{a}, \threevec{c}{a}{b}$が一次独立でないことの必要十分条件は$a=b=c$または$a+b+c=0$であることを示せ.

$f(X)=aX^2+bX+c$とおくと$\R[X]/(X^3-1)$において
\begin{align*} f(X)&=aX^2+bX+c\\[5pt] Xf(X)&=bX^2+cX+a\\[5pt] X^2f(X)&=cX^2+aX+b \end{align*}
であることに注意すると, 与えられた条件は, $2$次多項式$g\in\R[X]$が存在して
$$ f(X)g(X)=0\qquad \mathrm{in}\ \R[X]/(X^3-1)$$

即ち, $\R[X]$において$f(X)g(X)$$X^3-1=(X-1)(X^2+X+1)$の倍数であることと同値である.

ここで$X^2+X+1$は既約で, $\R[X]$はUFDであること, また$f,g$$2$次多項式であることを踏まえると, $f(X)$$X-1$の倍数または$X^2+X+1$の倍数であることと同値である.

ところが前者は$f(1)=0$即ち$a+b+c=0$と, 後者は$a=b=c$と同値である.

${}$

これを見ると, 空間ベクトルつまり$\R^3$ではなく複素数係数まで広げてしまうとこの主張は成り立たなくなるというのも分かって面白いですね.

${}$

さらに簡潔な方法もあります.

$\R^3$の成分のcyclicな入れ替えによる$\Z/3\Z$の表現を$\rho$とおく. $\rho$による$\R^3$の非自明な安定部分空間が$V_1=\{(x,y,z)\big|x=y=z\}$$V_2=\{(x,y,z)\big|x+y+z=0\}$に限ることを示せばよい.

$V_1,V_2$が既約なことは簡単に確かめられ$\R^3=V_1\oplus V_2$は既約分解のひとつであるが, $\rho$$V_1,V_2$への制限は(次元が異なるので)同型でないことから, 既約分解の仕方はこれしかない.(*) 従って, 安定部分空間は$V_1,V_2$の直和で表せ, そのうち非自明なのは$V_1,V_2$のみである.

${}$

(*)では, 一般に有限群$G$の(標数0の体上の)表現$(\rho,V)$の既約分解のひとつを$V=U_1\oplus\cdots\oplus U_k$, $G$の既約表現全体を$(\rho_i,W_i)_{i=1}^\ell $, $W_i$に同型な$U_j$たちの和を$V_i$とおいたとき, $V=V_1\oplus\cdots\oplus V_\ell$という分解は最初の$U_j$による分解によらず一意である, という事実を用いています.

${}$

${}$

${}$

投稿日:15日前
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投稿者

東大理数B4です

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