こんにちは.
タイトルの通り, 大学数学の面白い応用を紹介するシリーズをやってみようと思います. 見つけ次第更新する感じでやっていきます.
今回紹介する問題は次です.
空間ベクトルが一次独立でないことの必要十分条件はまたはであることを示せ.
とおくとにおいて
であることに注意すると, 与えられた条件は, 次多項式が存在して
即ち, においてがの倍数であることと同値である.
ここでは既約で, はUFDであること, またが次多項式であることを踏まえると, がの倍数またはの倍数であることと同値である.
ところが前者は即ちと, 後者はと同値である.
これを見ると, 空間ベクトルつまりではなく複素数係数まで広げてしまうとこの主張は成り立たなくなるというのも分かって面白いですね.
さらに簡潔な方法もあります.
の成分のcyclicな入れ替えによるの表現をとおく. によるの非自明な安定部分空間がとに限ることを示せばよい.
が既約なことは簡単に確かめられは既約分解のひとつであるが, のへの制限は(次元が異なるので)同型でないことから, 既約分解の仕方はこれしかない.(*) 従って, 安定部分空間はの直和で表せ, そのうち非自明なのはのみである.
(*)では, 一般に有限群の(標数0の体上の)表現の既約分解のひとつを, の既約表現全体を, に同型なたちの和をとおいたとき, という分解は最初のによる分解によらず一意である, という事実を用いています.