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高校数学の問題を大学数学で解く その1

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こんにちは.

タイトルの通り, 大学数学の面白い応用を紹介するシリーズをやってみようと思います. 見つけ次第更新する感じでやっていきます.

今回紹介する問題は次です.

空間ベクトル(abc),(bca),(cab)が一次独立でないことの必要十分条件はa=b=cまたはa+b+c=0であることを示せ.

f(X)=aX2+bX+cとおくとR[X]/(X31)において
f(X)=aX2+bX+cXf(X)=bX2+cX+aX2f(X)=cX2+aX+b
であることに注意すると, 与えられた条件は, 2次多項式gR[X]が存在して
f(X)g(X)=0in R[X]/(X31)

即ち, R[X]においてf(X)g(X)X31=(X1)(X2+X+1)の倍数であることと同値である.

ここでX2+X+1は既約で, R[X]はUFDであること, またf,g2次多項式であることを踏まえると, f(X)X1の倍数またはX2+X+1の倍数であることと同値である.

ところが前者はf(1)=0即ちa+b+c=0と, 後者はa=b=cと同値である.

これを見ると, 空間ベクトルつまりR3ではなく複素数係数まで広げてしまうとこの主張は成り立たなくなるというのも分かって面白いですね.

さらに簡潔な方法もあります.

R3の成分のcyclicな入れ替えによるZ/3Zの表現をρとおく. ρによるR3の非自明な安定部分空間がV1={(x,y,z)|x=y=z}V2={(x,y,z)|x+y+z=0}に限ることを示せばよい.

V1,V2が既約なことは簡単に確かめられR3=V1V2は既約分解のひとつであるが, ρV1,V2への制限は(次元が異なるので)同型でないことから, 既約分解の仕方はこれしかない.(*) 従って, 安定部分空間はV1,V2の直和で表せ, そのうち非自明なのはV1,V2のみである.

(*)では, 一般に有限群Gの(標数0の体上の)表現(ρ,V)の既約分解のひとつをV=U1Uk, Gの既約表現全体を(ρi,Wi)i=1, Wiに同型なUjたちの和をViとおいたとき, V=V1Vという分解は最初のUjによる分解によらず一意である, という事実を用いています.

投稿日:36
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投稿者

東大数理M1

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