導入
とする。また、数列や文字列のインデックスはから始まるものとする。
を正の実数とし、ごとに定まるの3文字からなる無限列を以下で定義する。
お気持ち
実際にはの2文字からなる列ですが、「であり同時にである」項が発生することがあるため、そのような項を表す文字としてが導入されています。
集合を以下で定義する:
数列をの元を小さい方から並べたものとする。とくに、任意のに対してである。
の3文字からなる無限列を以下で定義する:
任意のに対し、
とする。
の定義から明らかに任意のに対してなので、かつが成り立つことはない。
これは
Sturmian word
の一般化である。Sturmian wordはが無理数であるときのみを対象にするのに対し、この記事では主にが有理数であるときを扱うので、Sturmian wordに関する直接の車輪の再発明ではない。
例
のとき
となります。を小さい順に並べると、
と並びます。これらを記号に変換すると、
となります。最初のを除くと、
フィボナッチ列
と本質的に同じものになります。
のとき
となります。を小さい順に並べると、
と並びます。これらを記号に変換すると、
となります。
定義から明らかに、が有理数の時は周期性があり、「を既約分数で表した時の分子」に対応する位置が周期になります。
また、を既約分数でと書くと、の1周期分にはが最初に回、が回、が回現れます。
以下では、を満たす有理数についてのみ考えます。
正の有理数に対し、をのうち番目のより前の部分とする。
性質
の周期の前の文字
をより大きい非整数の有理数とする。このとき、先頭以外のの前の文字はである。
任意のを満たす有理数に対し、を満たすが存在しないことと、はの並びを含むことは、同値である。
の場合、であることから定理は成り立つ。
でを満たすが存在する場合、を満たす任意のに対してが成り立つことから明らかである。
それ以外の場合、鳩ノ巣原理から即座に従う。
を既約分数でとおき、をで割った商をとする。このとき、の末尾はである。ただし、この部分には回現れる。
の末尾から考えることで、以下のことを示せばよいことがわかる:
任意の整数に対して、が成り立つ。
これはの定義からが成り立つことから即座にわかる。
はの先頭にを追加してをに置き換えたものです。
このように、は後ろの部分を別の有理数から生成される列に「分離」できることがわかりました。
からを分離する
では、「分離」された残りの列はどうなるでしょう。次の定理が成り立ちます:
分離定理
を既約分数でとおき、をで割った商を、余りをとする。このとき、もしならば次が成り立つ:
ただし
- はとの最大公約数
- はの最初以外ののをに変えたもの
- はの最初のをに変えたもの
次のことを証明すればよい:
とする。このとき、の整数部分との整数部分は等しい。
以下でこれを証明する。
である。ところで、であるから、これをに代入すると、
を得る。よって
であるから、にを足した際に、の倍数を「踏むか越えない」ことを示せばよい。
(i) のとき
であるから成り立つ。
(ii) のとき
とは互いに素なので少なくとも一方は奇数である。ところで、であるからが偶数ならばも偶数であり、が既約分数であることに矛盾する。したがっては奇数である。
ところで、
である。さて、が奇数であればこの分数は分母と分子がともに偶数であるため約分できる。したがって、この分数は任意の整数に対して区間に入ることはない。
よって、より題意が示された。
さらなる一般化
定理4で「のとき」を強調していますが、これはで反例が見つかったからです。
の値が最小の反例はのケースで、このとき
となり、文字列が一致しないことがわかります。また、数値の上でも
となり、整数部分は一致しません。
おわりに
最初に立てた予想が一般には成り立たないことが分かって落胆しましたが、それでも一部は成り立つので記事にしました。
ところで、最小の反例はですが、某ゲームではまでしか出てきません。狙ったのでしょうか・・・?