Fibonacci数列はで定まる整数列である.本稿では以下の定理を示す:
以下に述べる証明はDuverneyDuverneyによるものである.
の無理性
一般に実数が十分に収束の速い無限級数表示を持つ場合,それを用いての無理性が示せることがある.その一例としての無理性の証明を復習する.正整数が存在してとなったと仮定しよう.すると
なので,分母を払って
を得る.これを以下のように二つに分ける:
両辺にを掛けて左辺を整数にする:
上の式の値をと定める.するとはでに収束する.実際,
より
となる.一方では整数なので,十分大きいに対してである.言い換えると,十分大きいに対して
が成り立つことになるが,そのようなことはあり得ない.以上でが無理数であることが示された.
-指数関数,-対数関数
の良い無限級数表示を得るために,以下のような関数を準備する.
-指数関数,-対数関数
とする.に対して
と定め,-指数関数と呼ぶ.またに対して
と定め,-対数関数と呼ぶ.
これらは通常の指数関数および対数関数のTaylor展開において正整数をに置き換えたものである.このような置き換えを類似と呼ぶ.
よりなので,これを繰り返し用いることで
が得られる.一方で
なので,これを繰り返し用いることで
が得られる.(1)の対数微分と(2)を比較することで求める式を得る.
ここでFibonacci数列の一般項を思いだそう.およびと定める.またに対してと定める.とすると
であり,Fibonacci数列の一般項は
で与えられる.よっては
と表すことができる.に注意すると,EandLから以下の表示が得られる:
-指数関数は収束が非常に速いため,これを無理性の証明に用いることができる.
証明
以上の準備のもとでの無理性を示そう.実は,無理性より少し強い以下の主張を示すことができる.証明の構造は,前述のの無理性の証明と本質的に同じである.
と定める.と仮定すると,psiformulaよりとなる.よってでない元を用いて
と表せる.分母を払って
を得る.これを以下のように二つに分ける:
両辺にを掛けて左辺をの元にする:
上の式の値をと定める.するとはでに収束する.実際,に注意すると,適当な定数に対して
が成り立つので
となる.またはで有界である.実際,よりは有限の値に収束するので,
となり,右辺はで有限の値に収束するのでよい.以上より
が得られた.一方では整数なので,十分大きいに対してである.言い換えると,十分大きいに対して
が成り立つ.について差分を取ると,十分大きいに対して
が成り立つことになるが,そのようなことはあり得ない.以上でが無理数であることが示された.
[1]
R. André-Jeannin, Irrationalité de la somme des inverses de certaines suites récurrentes, Comptes Rendus de l'Académie des Sciences, Série I, 1989, 539–541
[2]
D. Duverney , Irrationalité de la somme des inverses de la suite Fibonacci, Elemente der Mathematik, 1997, 31–-36