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三平方の定理の整数解を網羅する!

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問題

今回考える問題は次のような問題です.

$a^2+b^2=c^2$を満たす整数解$(a,b,c)$を全て網羅しなさい.

結果は有名で, 求める整数解は無限にあります. 整数$m,n$を用いて
\begin{align*} (a,b,c)=(2mn,m^2-n^2,m^2+n^2) \end{align*}
で全て網羅されていることが知られています. 今回はこの結果を立体射影を用いて幾何学的に求め, さらにその一般化を考えます.

立体射影を用いた解法

問題は$x^2+y^2=1$の有理数解$(x,y)$を網羅することに言い換えることができます. ここで$(x,y)$$\mathbb{R}^2$内の単位円$\mathbb{S}^1$上の点と考えます. このとき$N=(0,1)$として$f\colon \mathbb{S}^1\setminus\{N\}\to \mathbb{R}$$(x,y)\in\mathbb{S}^1$に対し$N$$(x,y)$を結ぶ直線と$x$軸との交点$(u,0)$を対応させる写像とします(下図参照).
立体射影!FORMULA[16][-4132796][0] 立体射影$f\colon \mathbb{S}^1\setminus\{N\}\to \mathbb{R}$
具体的に$x,y$$u$の関係式を出してみます. ある$t\in \mathbb{R}$が存在して$(x,y)=t(u,0)+(1-t)N$が成り立つのでこれを解くと$y\neq 1$を考慮して
\begin{align*} u=\frac{x}{1-y} \end{align*}
を得ます. 逆に$(x,y)$$u$を用いて表すこともできます. $x^2+y^2=1$$x=(1-y)u$より$(1-y)^2u^2+y^2=1$なので, これを$y$について解けば$y$$u$で表すことができます. よって
\begin{align*} (x,y)=\left(\frac{2u}{u^2+1},\frac{u^2-1}{u^2+1}\right) \end{align*}
となります. ここで$x,y$が有理数なら$u$も有理数かつ$u$が有理数なら$(x,y)$も有理数であることに注目しましょう. つまりこの対応$f$は全単射であって, さらに$x^2+y^2=1$の有理数解と$\mathbb{R}$上の有理点$u$が一対一に対応していることが分かります!これで全ての有理数解を網羅することができます.
\begin{align*} x^2+y^2=\left(\frac{2u}{u^2+1}\right)+\left(\frac{u^2-1}{u^2+1}\right)^2=1 \end{align*}
において$u=m/n$とすれば
\begin{align*} (2mn)^2+(m^2-n^2)^2=(m^2+n^2)^2 \end{align*}
となります. つまり初めの問題の整数解は$(a,b,c)=(2mn,m^2-n^2,m^2+n^2)$で尽くされることが示されました.

今作った写像$f$は立体射影と呼ばれる写像です. 一般の次元でも定義できるので次節でそれを紹介します.

立体射影(一般化)

前節では1次元球面$\mathbb{S}^1$(円周)から$\mathbb{R}^1$への立体射影を考えました. これを一般化すると次のようになります.

立体射影

$\mathbb{S}^n:=\{(x_1,x_2,\ldots ,x_n,x_{n+1})\in \mathbb{R}^{n+1}\mid x_1^2+\cdots +x_{n+1}^2=1\}$$n$次元単位球面として, $\mathbb{S}^n$立体射影(stereographic projection)$f\colon \mathbb{S}^n\setminus\{N\}\to\mathbb{R}^n$を次のように定める.
\begin{align*} f(x_1,x_2,\ldots ,x_n,x_{n+1})= \left(\frac{x_1}{1-x_{n+1}},\frac{x_2}{1-x_{n+1}},\ldots ,\frac{x_n}{1-x_{n+1}}\right) \end{align*}
ただし$N=(0,0,\ldots ,1)$とした.

これも先に紹介した$\mathbb{S}^1$の立体射影と同じで, $N$$(x_1,\ldots ,x_{n+1})$を結ぶ直線と超平面$x_{n+1}=0$との交点を対応させる写像となっています. これも同様に全単射です. つまり$(u_1,u_2,\ldots ,u_n)\in \mathbb{R}^n$に対して, $u^2:=u_1^2+u_2^2+\cdots +u_n^2$として
\begin{align*} f\left(\frac{2u_1}{u^2+1},\frac{2u_2}{u^2+1},\ldots ,\frac{2u_n}{u^2+1},\frac{u^2-1}{u^2+1}\right)=(u_1,u_2,\ldots ,u_n) \end{align*}
となります.
この立体射影を使えば一般化された次の問題の解を与えることができます.

$a_1^2+a_2^2+\cdots +a_{n+1}^2=a^2$を満たす整数解$(a_1,a_2,\ldots ,a_{n+1},a)$を全て網羅しなさい.

解は$i=1,2,\ldots ,n$に対して整数$m_i,m$を用いて
$(a_1,a_2,\ldots,a_{n+1},a)=(2m_1,2m_2,\ldots ,2m_n,m_1^2+m_2^2+\cdots +m_n^2-m^2,m_1^2+m_2^2+\cdots +m_n^2+m^2)$が網羅しています.

投稿日:1014
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kz
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数学科です 短い数学の話題を不定期でかきます

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