最近, X(旧Twitter)でO変換と言われるものが流行っている。O変換とは以下のような変換で, Oさん(@O28091873)が考えたそうです。今回は, 具体的な問題を解くことの説明は省き, そもそもO変換が行えるかどうかを議論したいと思います。色々な人がO変換を使って問題を解いている様子は
#O変換
で見られます。
$a$を任意の実数とする。そして, $U_{a}$を
\begin{align*}
U_{a}=\{(x, y, z)\in\mathbb{R}^{3}\mid x+y+z=3a\}
\end{align*}
とする。このとき, 写像$\varphi_{a}:\mathbb{R}^{2}\to{U_{a}}$を
\begin{align*}
\varphi_{a}(r, \theta):=\left(a+\cos{\theta}, a+\cos{\left(\theta+\dfrac{2}{3}\pi\right)}, a+\cos{\left(\theta-\dfrac{2}{3}\pi\right)}\right)\quad ((r, \theta)\in\mathbb{R}^{2})
\end{align*}
で定める。このとき, $\varphi_{a}$をO変換と呼ぶことにする。
ただ, 考案者のOさん(@O28091873)や他の人の投稿を見る限り
任意の$(x, y, z)\in\mathbb{R}^{3}$に対し, それぞれ適当な$(r, \theta)\in\mathbb{R}^{2}$をとることで
\begin{equation*}
\begin{aligned}
\left\{\,
\begin{aligned}
& x=\dfrac{x+y+z}{3}+r\cos{\theta}\\
& y=\dfrac{x+y+z}{3}+r\cos{\left(\theta+\dfrac{2}{3}\pi\right)}\\
& z=\dfrac{x+y+z}{3}+r\cos{\left(\theta-\dfrac{2}{3}\pi\right)}
\end{aligned}
\right.
\end{aligned}
\end{equation*}
が成り立つ。
をO変換と呼んでるのかな?
この変換によって, 関数$f:U_{a}\to{\mathbb{R}}$の値域を求める問題を, $f\circ{\varphi_{a}}$の値域を求める問題に言い換えることできる。また,一般の$\mathbb{R}^{3}$の部分集合$U$上の関数$g$に対しては, どうすればいいのかというと, これは各実数$a$に対して, $V_{a}$を$V_{a}=U\cap{U_{a}}$で定め,各々の$g(V_{a})$をO変換を使って調べて
\begin{align*}
\bigcup_{a\in\mathbb{R}}g(V_{a})
\end{align*}
を求めればいい。それは, これが$g(U)$そのものだからである。
じゃあ今からO変換を使ってやるぞ, と言いたいとこだが, 実は
\begin{align*}
\varphi_{a}(\mathbb{R}^{2})=U_{a}
\end{align*}
であることを示す必要がある。なぜなら, そうでないと一般的に
\begin{align*}
f(U_{a})=f\circ{\varphi}_{a}(\mathbb{R}^{2})
\end{align*}
とならないからである。そのためには以下の命題を示さなければならない。
$a$を任意の実数とする。このとき
\begin{equation*}
\begin{aligned}
\left\{\,
\begin{aligned}
& x=a+r\cos{\theta}\\
& y=a+r\cos{\left(\theta+\dfrac{2}{3}\pi\right)}\\
& z=a+r\cos{\left(\theta-\dfrac{2}{3}\pi\right)}
\end{aligned}
\right.
\end{aligned}
となる(r, \theta)\in\mathbb{R}^{2}が存在する
\iff x+y+z=3a
\end{equation*}
が成り立つ。
この命題の$a=0$の場合(補題4)を示せば十分である(一般の$a$に対しては$(x, y, z)\mapsto(x+a, y+a, z+a)$という平行移動を考えればよい)。それを示すために, 以下の補題2と補題3を示そう。
曲線$\gamma_{1}:\mathbb{R}\to{\mathbb{R}^{2}}$を
\begin{align*}
\gamma_{1}(\theta)=\left(\cos{\theta}, \cos{\left(\theta+\dfrac{2}{3}\pi\right)}\right)\quad (\theta\in\mathbb{R})
\end{align*}
で定める。
\begin{align*}
\gamma_{1}(\mathbb{R})=\left\{(x, y)\in\mathbb{R}^{2}\mid x^{2}+\dfrac{(x+2y)^{2}}{3}=1\right\}
\end{align*}
である。
各実数$r\neq{0}$に対し, 曲線$\gamma_{r}:\mathbb{R}\to{\mathbb{R}^{2}}$を以下で定義する。
\begin{align*}
\gamma_{r}(\theta)=\left(r\cos{\theta}, r\cos{\left(\theta+\dfrac{2}{3}\pi\right)}\right)\quad (\theta\in\mathbb{R})
\end{align*}
当然
\begin{align*}
\gamma_{r}(\mathbb{R})=\left\{(x, y)\in\mathbb{R}^{2}\mid x^{2}+\dfrac{(x+2y)^{2}}{3}=r^{2}\right\}
\end{align*}
である。このとき, 曲線族$\{\gamma_{r}\}_{r\in\mathbb{R}^{\times}}$が通過する領域は
\begin{align*}
\left\{(x, y)\in\mathbb{R}^{2}\mid (x, y)\neq{(0, 0)}\right\}
\end{align*}
である。ただし
\begin{align*}
\mathbb{R}^{\times}:=\{x\in\mathbb{R}\mid x\neq{0}\}
\end{align*}
である。
2つの補題の証明を述べる前にそれぞれどのようなことを示したいのかを説明しよう。
補題2では, 単に曲線が楕円であることを述べている(図1を参照)。
$\gamma_{1}$
補題3は $\gamma_{1}$を原点を中心に$|r|$倍だけ相似拡大させた曲線$\gamma_{r}$たちを描くと原点を除く座標平面上の点をびっしり埋め尽くしている, という主張である(図2を参照)。
$\gamma_{r}$たち。黒色は$\gamma_{1}$である
座標平面上の点$(x, y)$を考える。
\begin{equation*}
\begin{aligned}
\left\{\,
\begin{aligned}
& x=\cos{\theta}\\
& y=\cos{\left(\theta+\dfrac{2}{3}\pi\right)}, \\
\end{aligned}
\right.
\end{aligned}
\end{equation*}
つまり
\begin{equation*}
\begin{aligned}
\left\{\,
\begin{aligned}
& x=\cos{\theta}\\
& -\dfrac{x+2y}{\sqrt{3}}=\sin{\theta}\\
\end{aligned}
\right.
\end{aligned}
\end{equation*}
を満たす実数$\theta$が存在するための必要十分条件は, 座標平面上の点$(X, Y)$に対し
\begin{align*}
X^{2}+Y^{2}=1\iff X=\cos{\theta}かつ, Y=\sin{\theta}を満たす実数\theta{が存在する}
\end{align*}
が成り立つことから
\begin{align*}
x^{2}+\dfrac{(x+2y)^{2}}{3}=1
\end{align*}
である。
座標平面上の点$(x, y)$がしかるべき領域の点である必要十分条件は
\begin{align*}
x^{2}+\dfrac{(x+2y)^{2}}{3}=r^{2}
\end{align*}
を満たす実数$r$が存在することである。この条件は, 実数$r$に対し
\begin{align*}
r\neq{0}\iff r^{2}>0
\end{align*}
であることを用いることによって
\begin{align*}
x^{2}+\dfrac{(x+2y)^{2}}{3}>0
\end{align*}
と言い換えられる。$(x, y)$が座標平面上の点であることから
\begin{align*}
x\neq{0}かつx+2y\neq{0},
\end{align*}
つまり
\begin{align*}
(x, y)\neq{(0, 0)}
\end{align*}
が必要十分条件である。
$(x, y, z)\in\mathbb{R}^{3}$に対し
\begin{equation*}
\begin{aligned}
\left\{\,
\begin{aligned}
& x=r\cos{\theta}\\
& y=r\cos{\left(\theta+\dfrac{2}{3}\pi\right)}\\
& z=r\cos{\left(\theta-\dfrac{2}{3}\pi\right)}
\end{aligned}
\right.
\end{aligned}
となる(r, \theta)\in\mathbb{R}^{2}が存在する
\iff x+y+z=0
\end{equation*}
が成り立つ。
$(x, y, z)=(0, 0, 0)$とそうでない場合で分けて考える。後者の場合の証明のために補題2と補題3を証明した。
\begin{equation*}
\begin{aligned}
\left\{\,
\begin{aligned}
& 0=r\cos{\theta}\\
& 0=r\cos{\left(\theta+\dfrac{2}{3}\pi\right)}\\
& 0=r\cos{\left(\theta-\dfrac{2}{3}\pi\right)}
\end{aligned}
\right.
\end{aligned}
となる\theta が存在する
\iff r=0
\end{equation*}
である。なぜなら, $r\neq{0}$のとき
\begin{equation*}
\begin{aligned}
\left\{\,
\begin{aligned}
& 0=r\cos{\theta}\\
& 0=r\cos{\left(\theta+\dfrac{2}{3}\pi\right)}\\
& 0=r\cos{\left(\theta-\dfrac{2}{3}\pi\right)}
\end{aligned}
\right.
\end{aligned}
\iff
\begin{aligned}
\left\{\,
\begin{aligned}
& \theta=\dfrac{\pi}{2}+l\pi となる整数lが存在する。\\
& \theta+\dfrac{2}{3}\pi=\dfrac{\pi}{2}+m\pi となる整数mが存在する\\
& \theta-\dfrac{2}{3}\pi=\dfrac{\pi}{2}+n\pi となる整数nが存在する
\end{aligned}
\right.
\end{aligned}\\
\iff
\begin{aligned}
\theta\in{\emptyset}
\end{aligned}
\end{equation*}
であり, $r=0$のとき, $(x, y, z)=(0, 0, 0)$だからである。
以後, $(x, y, z)\in\mathbb{R}^{3}$を原点ではない点とする。
\begin{equation*}
\begin{aligned}
\left\{\,
\begin{aligned}
& x=r\cos{\theta}\\
& y=r\cos{\left(\theta+\dfrac{2}{3}\pi\right)}\\
& z=r\cos{\left(\theta-\dfrac{2}{3}\pi\right)}
\end{aligned}
\right.
\end{aligned}
となる実数r\neq{0}と実数\theta が存在する
\end{equation*}
ことは, $x+y+z=0\quad\cdots(\ast)$であり, さらに, 以下の条件を満たす実数$\theta$が存在することと同値である。
\begin{equation*}
\begin{aligned}
\left\{\,
\begin{aligned}
& x=r\cos{\theta}\\
& y=r\cos{\left(\theta+\dfrac{2}{3}\pi\right)}
\end{aligned}
\right.を満たすr\neq{0}が存在する \quad\cdots(\ast\ast)
\end{aligned}
\end{equation*}
ここで, 補題2を用いることで, $(\ast\ast)$を満たす実数$\theta$が存在することは
\begin{align*}
x^{2}+\dfrac{(x+2y)^{2}}{3}=r^{2}
\end{align*}
を満たす$r\neq{0}$が存在することと言い換えることができる。これは補題3から
\begin{align*}
(x, y)\neq{0}(かつzは任意の実数)
\end{align*}
と同値である。ゆえに, $(\ast)$かつ$(\ast\ast)$は
\begin{align*}
x+y+z=0, かつ(x, y, z)\neq{0}
\end{align*}
と言い換えられる。
以上から
\begin{equation*}
\begin{aligned}
\left\{\,
\begin{aligned}
& x=r\cos{\theta}\\
& y=r\cos{\left(\theta+\dfrac{2}{3}\pi\right)}\\
& z=r\cos{\left(\theta-\dfrac{2}{3}\pi\right)}
\end{aligned}
\right.
\end{aligned}
となる(r, \theta)\in\mathbb{R}^{2}が存在する
\iff x+y+z=0
\end{equation*}
が成り立つ。