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正多角形の極限を円と認めたら?

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正多角形の極限を円と認めてみる

初めに

ごきげんよう、フラワと申します。
円は曲線で、正多角形は折れ線です。
有限の段階では決して同じ図形ではありませんが、辺の数を限りなく増やした正多角形を円そのものとして認めてみます。
とくに辺の数を $2$ 倍ずつにすると、円周を「内側から増えていく長さ」と「外側から減っていく長さ」の間に捉えられます。
本記事では、題名にある言葉を次の意味で用います。

半径 $r$ の円に内接・外接する正 $n$ 角形を考える。
$n\to\infty$ の極限では、これらを円そのものと認め、したがってそれぞれの周長は円周に一致するものとする。

円周率 $\pi$ を「円周÷直径」で定めれば、半径 $r$ の円周は $2\pi r$ です。
そこで、内接正 $n$ 角形の周長を $\ell_n$、外接正 $n$ 角形の周長を $L_n$ とすると、今回の前提は
$$ \lim_{n\to\infty}\ell_n = \lim_{n\to\infty}L_n =2\pi r $$
と表せます。
以下では、この極限関係そのものを証明するのではなく、これを出発点として、有限の $n$ における周長の大小や三角関数の極限を調べていきます。
では早速、問題形式で見ていきましょう。

外接正 $n$ 角形――角を切り落とす

外接正$n$角形の周長と円周

円を正 $n$ 角形の $n\to\infty$ における極限と認める。
半径 $r$ の円に外接する正 $n$ 角形の周長を $L_n$ とするとき、$3$ 以上の任意の整数 $n$ について
$$ L_n>2\pi r $$
が成り立つことを示せ。

三角不等式による証明

外接正 $n$ 角形の一つの頂点に注目する。
その頂点を挟む二つの辺と円との接点を $T_1,T_2$ とし、接点 $T_1,T_2$ における二本の接線の交点を $A$ とする。
短い方の弧 $T_1T_2$ の中点を $M$ とし、$M$ における円の接線と線分 $AT_1,AT_2$ との交点をそれぞれ $B,C$ とする。
外接正n角形の頂点を切り落とす図 外接正n角形の頂点を切り落とす図
この操作をすべての頂点で行うと、もとの接点と各弧の中点が円周を $2n$ 等分するため、新しくできる多角形は円に外接する正 $2n$ 角形となる。
いま、一つの頂点 $A$ の周辺だけを比べる。
もとの正 $n$ 角形の周の一部は折れ線 $T_1AT_2$ であり、その長さは
$$ T_1A+AT_2 =T_1B+BA+AC+CT_2 $$
である。
一方、新しい正 $2n$ 角形の対応する部分は折れ線 $T_1BCT_2$ であり、その長さは
$$ T_1B+BC+CT_2 $$
である。
三角形 $ABC$ に三角不等式を用いると
$$ BA+AC>BC $$
であるから、角 $A$ を切り落とすことで、この部分の長さは必ず短くなる。
すべての頂点について足し合わせれば
$$ L_n>L_{2n} $$
を得る。
同じ操作を繰り返すと
$$ L_n>L_{2n}>L_{4n}>\cdots>L_{2^kn}>\cdots $$
となる。
$k\to\infty$ のとき $2^kn\to\infty$ であり、正多角形の極限を円と認めるという前提から
$$ \lim_{k\to\infty}L_{2^kn}=2\pi r $$
である。
したがって
$$ L_n>L_{2n}\geqq\lim_{k\to\infty}L_{2^kn}=2\pi r $$
より
$$ L_n>2\pi r $$
が成り立つ。

外接正多角形では、この操作によって辺の数を $2$ 倍にするたびに、周長が短くなりながら円周へ近づいていきます。
根拠になったのは、たった一つの三角不等式でした。

内接正 $n$ 角形――頂点を付け加える

内接正$n$角形の周長と円周

円を正 $n$ 角形の $n\to\infty$ における極限と認める。
半径 $r$ の円に内接する正 $n$ 角形の周長を $\ell_n$ とするとき、$3$ 以上の任意の整数 $n$ について
$$ \ell_n<2\pi r $$
が成り立つことを示せ。

三角不等式による証明

内接正 $n$ 角形の隣り合う二頂点を $P,Q$ とし、短い方の弧 $PQ$ の中点を $M$ とする。
すべての辺について弧の中点を新しい頂点として付け加えると、円周を $2n$ 等分する点が得られるので、新しくできる多角形は円に内接する正 $2n$ 角形となる。
一辺 $PQ$ は、二辺からなる折れ線 $PMQ$ に置き換わる。
三角形 $PMQ$ に三角不等式を用いると
$$ PQ< PM+MQ $$
である。
すべての辺について足し合わせれば
$$ \ell_n<\ell_{2n} $$
を得る。
したがって
$$ \ell_n<\ell_{2n}<\ell_{4n}<\cdots<\ell_{2^kn}<\cdots $$
であり、正多角形の極限を円と認めるという前提から
$$ \lim_{k\to\infty}\ell_{2^kn}=2\pi r $$
である。
よって
$$ \ell_n<\ell_{2n}\leqq\lim_{k\to\infty}\ell_{2^kn}=2\pi r $$
より
$$ \ell_n<2\pi r $$
が成り立つ。

なお、内接側だけなら、さらに短く証明できます。
各辺は、それと同じ両端をもつ円弧より短いので、それらを $n$ 個分足し合わせれば直ちに
$$ \ell_n<2\pi r $$
です。
ただし、あえて正 $2n$ 角形を作る証明にしたことで、外接側との対称性が見えるようになりました。

円周を内と外から挟む

以上から、次の関係が得られました。

内接・外接正多角形による円周の挟みうち

半径 $r$ の円に内接する正 $n$ 角形の周長を $\ell_n$、外接する正 $n$ 角形の周長を $L_n$ とする。
円を正 $n$ 角形の $n\to\infty$ における極限と認めると、すべての整数 $n\geqq3$ について
$$ \ell_n<2\pi r< L_n $$
が成り立つ。

さらに、辺の数を $2$ 倍ずつにしていけば
$$ \ell_n<\ell_{2n}<\ell_{4n}<\cdots<2\pi r $$
および
$$ 2\pi r<\cdots< L_{4n}< L_{2n}< L_n $$
となります。
ここで行った二つの操作を並べてみましょう。

  • 内接正多角形では、一つの線分 $PQ$ を折れ線 $PMQ$ に替えるため、周長は長くなる。
  • 外接正多角形では、折れ線 $BAC$ を一つの線分 $BC$ に替えるため、周長は短くなる。
    向きは反対ですが、どちらの根拠も
    $$ \text{三角形の二辺の和}>\text{残りの一辺} $$
    という同じ事実です。
    内側は増え、外側は減り、その間に円周がある。
    これが今回の話の中心です。

周長を三角関数で表す

ここからは、この挟みうちを三角関数につなげます。
以下、角度は弧度法で表します。
半径 $r$、弧の長さ $s$ に対する中心角を $\theta$ とすると、弧度法の定義は
$$ \theta=\frac{s}{r} $$
です。円一周の弧の長さは $2\pi r$ なので、一周に対応する角は $2\pi$ となります。
内接正 $n$ 角形の隣り合う二頂点を $P,Q$、円の中心を $O$ とすると
$$ \angle POQ=\frac{2\pi}{n} $$
です。
二等辺三角形 $OPQ$ を二つの直角三角形に分ければ、一辺の長さは
$$ 2r\sin\frac{\pi}{n} $$
となるので
$$ \ell_n=2nr\sin\frac{\pi}{n} $$
を得ます。
一方、外接正 $n$ 角形の一辺を $AB$ とし、その接点を $T$、円の中心を $O$ とします。
$OT\perp AB$ であり、対称性から $T$ は辺 $AB$ の中点です。また
$$ \angle AOT=\frac{\pi}{n} $$
であるため、直角三角形 $OAT$ から
$$ AT=r\tan\frac{\pi}{n} $$
です。したがって
$$ L_n=2nr\tan\frac{\pi}{n} $$
となります。
ゆえに
$$ \ell_n<2\pi r< L_n $$

$$ 2nr\sin\frac{\pi}{n} <2\pi r <2nr\tan\frac{\pi}{n} $$
すなわち
$$ \frac{\sin(\pi/n)}{\pi/n} <1< \frac{\tan(\pi/n)}{\pi/n} $$
と書き換えられます。
しかも、正多角形の極限を円と認めるという今回の前提から
$$ \frac{\ell_n}{2\pi r} = \frac{\sin(\pi/n)}{\pi/n} \longrightarrow1 $$
および
$$ \frac{L_n}{2\pi r} = \frac{\tan(\pi/n)}{\pi/n} \longrightarrow1 $$
が成り立ちます。
ここまでで、$x=\pi/n$ という特別な形の数だけを通って $0$ に近づくときの様子が分かりました。
では、ここから任意の実数 $x$$0$ に近づく場合へ進みます。

上の話から $\displaystyle\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1$ を示す

正弦の基本極限

円を正 $n$ 角形の $n\to\infty$ における極限と認めた上で
$$ \lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1 $$
を示せ。

証明に入る前に、先ほど得た二つの数列を
$$ a_n=\frac{\sin(\pi/n)}{\pi/n}, \qquad b_n=\frac{\tan(\pi/n)}{\pi/n} $$
とおきます。
正多角形の極限から
$$ \lim_{n\to\infty}a_n = \lim_{n\to\infty}b_n =1 $$
です。

ここで越えなければならない隙間
$x=\pi/n$ とおき、$n\to\infty$ だから $x\to0$ とするだけでは、$x$$\pi/n$ という値を取る場合しか調べていません。
それだけで分かるのは
$$ \lim_{n\to\infty} \frac{\sin(\pi/n)}{\pi/n}=1 $$
という数列の極限です。
求めたいのは、$x$ がどのような実数値を取りながら $0$ に近づいても成立する関数の極限です。
そこで、任意の $x$ を隣り合う $\pi/n$ の間に挟みます。

まず、右側極限を考える。
$0< x<\pi/3$ を任意に取る。このとき
$$ \frac{\pi}{n+1}< x\leqq\frac{\pi}{n} $$
を満たす整数 $n\geqq3$ がただ一つ存在する。
$x\to+0$ のとき、この $n$$n\to\infty$ となる。
ここで、$0< u< v<\pi/2$ ならば
$$ \sin v-\sin u =2\cos\frac{u+v}{2}\sin\frac{v-u}{2}>0 $$
および
$$ \tan v-\tan u =\frac{\sin(v-u)}{\cos u\cos v}>0 $$
である。したがって、$0< x<\pi/2$ において $\sin x,\tan x$ はともに単調に増加する。
よって
$$ \sin\frac{\pi}{n+1}<\sin x $$
であり、さらに $x\leqq\pi/n$ であるから
$$ \frac{\sin x}{x} > \frac{\sin(\pi/(n+1))}{\pi/n} = \frac{n}{n+1}a_{n+1} $$
を得る。
一方、$0< x<\pi/2$ では $0<\cos x<1$ であるため
$$ \sin x<\tan x $$
である。
また、$x\leqq\pi/n$$\tan x$ の単調増加性から
$$ \tan x\leqq\tan\frac{\pi}{n} $$
であり、さらに $\pi/(n+1)< x$ であるから
$$ \frac{\sin x}{x} < \frac{\tan x}{x} < \frac{\tan(\pi/n)}{\pi/(n+1)} = \frac{n+1}{n}b_n $$
を得る。
以上から
$$ \frac{n}{n+1}a_{n+1} < \frac{\sin x}{x} < \frac{n+1}{n}b_n $$
である。
$x\to+0$ のとき $n\to\infty$ であり
$$ \frac{n}{n+1}a_{n+1}\longrightarrow1, \qquad \frac{n+1}{n}b_n\longrightarrow1 $$
となる。
したがって、はさみうちの原理より
$$ \lim_{x\to+0}\frac{\sin x}{x}=1 $$
である。
次に、$x\to-0$ とする。$t=-x$ とおけば $t\to+0$ であり
$$ \frac{\sin x}{x} = \frac{\sin(-t)}{-t} = \frac{\sin t}{t} $$
であるから
$$ \lim_{x\to-0}\frac{\sin x}{x}=1 $$
となる。
左右の極限がともに $1$ なので
$$ \boxed{ \lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1 } $$
が示された。

正多角形から直接得られたのは、$x=\pi/n$ という離散的な値における極限でした。
その隙間を、任意の $x$ に対して
$$ \frac{\pi}{n+1}< x\leqq\frac{\pi}{n} $$
となる $n$ を選ぶことで埋めたわけです。
この一段階が、数列の極限を関数の極限へつなぐ要所になっています。

さらに――辺の数を2倍にして円周率を挟む

最後に、内接・外接正多角形の周長からもう一つ面白い関係を取り出してみます。
$x=\pi/n$ とおくと
$$ \ell_n=2nr\sin x, \qquad L_n=2nr\tan x $$
なので
$$ \frac{\ell_n}{L_n}=\cos x $$
です。
半角の公式を使うと
$$ \begin{aligned} L_{2n} &=4nr\tan\frac{x}{2}\\ &=\frac{4nr\sin x}{1+\cos x}\\ &=\frac{2\ell_n}{1+\ell_n/L_n}\\ &=\frac{2\ell_nL_n}{\ell_n+L_n}. \end{aligned} $$
また
$$ \begin{aligned} \ell_{2n}^2 &=\left(4nr\sin\frac{x}{2}\right)^2\\ &=8n^2r^2(1-\cos x)\\ &=\ell_nL_{2n} \end{aligned} $$
であるため
$$ \boxed{ L_{2n}=\frac{2\ell_nL_n}{\ell_n+L_n}, \qquad \ell_{2n}=\sqrt{\ell_nL_{2n}} } $$
を得ます。
つまり、$\ell_n,L_n$ が分かっていれば、三角関数の値を新しく計算しなくても、辺の数を2倍にしたときの二つの周長を求められます。
さらに、$\ell_{2n}>\ell_n$ であることを使うと
$$ \begin{aligned} 0< L_{2n}-\ell_{2n} &< L_{2n}-\ell_n\\ &=\frac{\ell_n}{\ell_n+L_n}(L_n-\ell_n)\\ &<\frac12(L_n-\ell_n) \end{aligned} $$
となります。
したがって、辺の数を2倍にするたびに、内接・外接正多角形の周長の差は必ず半分未満に縮まります。
例えば半径 $1$ の円では
$$ \ell_6=6, \qquad L_6=4\sqrt3 $$
です。ここから上の関係を繰り返し使うと、次の値が得られます。

$n$$\ell_n/2$ の近似値$L_n/2$ の近似値
$6$$3.0000$$3.4641$
$12$$3.1058$$3.2154$
$24$$3.1326$$3.1597$
$48$$3.1394$$3.1461$
$96$$3.1410$$3.1427$

半径 $1$ の円周は $2\pi$ なので
$$ \frac{\ell_n}{2}<\pi<\frac{L_n}{2} $$
です。
正多角形の辺の数を $2$ 倍ずつに増やすだけで、円周率が内側と外側から次第に追い詰められていく様子が、数値としても見えてきます。

おわりに

今回は、正多角形の極限を円と認めることから始めて

  • 辺の数を $2$ 倍ずつにすると、内接正多角形の周長は増加しながら円周へ近づくこと
  • 辺の数を $2$ 倍ずつにすると、外接正多角形の周長は減少しながら円周へ近づくこと
  • 円周がその二つの周長に挟まれること
  • そこから $\displaystyle\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1$ が導かれること
  • 内接・外接正多角形を使って円周率を数値的に挟めること
    を見てきました。
    内接側では一辺を二辺に分け、外接側では二辺を一辺に置き換える。
    一見すると反対向きの操作ですが、その中心にあったのは、どちらも同じ三角不等式でした。
    正多角形という有限の折れ線が、辺の数を $2$ 倍ずつにしながら内と外から一つの円へ迫っていく。
    普段は公式として使っている円周や三角関数の極限にも、その裏にはこのような幾何学的な物語があります。
    最後までお読みいただき、ありがとうございました。
    みなさまの日常に良き数学の彩りのあらんことを。
    それでは、ごきげんよう。
投稿日:513
更新日:18日前
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