突然ですが、この数式、
大体どのくらいになりそうですか?
では実際に計算してみましょう、と言いたいところですが、複素数は条件が複雑なので、まずは正の実数
正の実数
この極限が「ある一定の値yに収束する」とすると、
この冪塔は無限に続いていくので、指数部分も同様に
つまり
漸化列
これを変形すると、
ここで、以下のように定義される多価性のある超越関数「ランベルトのW関数」を導入します。
LambertW1
このランベルトのW関数を用いれば、数式はさらにこのように変形できます。
(
たとえば
Wのグラフを見てみましょう。
LambertW2
最初に言った通りWは多価関数なので交点が2つありますね。
(
グラフを見て整理してみましょう。
引数の大きさ | W(x)のとる実数値の数 |
---|---|
つまり収束先
の2つをとります。
実際、
さらに複素範囲まで考えれば、
どれが無限冪の「真の収束値」を得るものでしょうか。
さきほどスルーした「ある一定の値
不動点の値 | 不動点数 | 漸近時のふるまい | |
---|---|---|---|
- | 0 | ||
1 | |||
2( | |||
1 | ずっと | ||
1 | 振動して | ||
1 | 振動して | ||
不安定な1(2サイクル) | 2サイクルに収束 | ||
不安定な1(2サイクル) | 2サイクルに収束 |
実際に確認してみれば、たしかに無限冪としての正しい収束値は1つめ(主枝
これが「ある一定の値yに収束した」とすると、
xの冪乗は無限に続いていくので、xのy乗もyであること、つまり、yイコールxのy乗が成り立ちます。
「
ほかの無限冪も見てみましょう。
0.5の無限冪なら、同様にして、その収束値はおよそ0.6412くらいになります。
0.5無限冪
0.05なら、2サイクル(周期2軌道)で振動=2点を行き来する収束をします。
その収束値は
ではなく
の解のうち適切な2つの実数解
具体的には、反復が奇数回のとき
0.05無限冪
厳密解を示したかったら新しく関数を定義する必要がありますね。
余談ですが、ランベルトのW関数を使えば、
これが厳密解です。近似解は
(
では、本題の「iの無限冪」に戻りましょう。
正の実数
よって冪乗
です。
だから、もし
の解を得ることになります。
(変形)
対数の主値をとるなら
です。
Wも多価関数でした。ここでさらにWの主枝(主値の分枝)
よって
つまり、主値をとりつづけたとき、
が収束値の候補です。(ほかの分枝をとれば値は変わる、無限個ある)
ただ、まだ
数値実験で実際に確認してみましょう。
iの無限冪
iの無限冪
それっぽいですね。
それっぽいですが、まだ「確からしい不動点の候補が明確に極限値であることの証明」はできていません。
吸引的不動点の性質
(
(
(
したがって、
というわけで、
は「主値をとれば」安定的な不動点
へ収束し(いま他の候補値はない)、その大体の値は
ということがわかりました。
おしまい。(数値計算ライブラリが対数計算の過程で主値を採用しているなどするため、数値実験でこの値になったからといって一般にそうとは言えない、別の分枝の値をとる計算機なら別の収束値を得る)
複素数の無限冪の収束条件について、
収束するなら黒、発散するなら白でプロットしてみたらこんな感じになりました。
収束テスト:「パラメータ
「頭部」っぽくていいね
逆に、無限に冪乗した結果が
収束先の一定値
だから主値をとれば
よって
おや?実数の実数乗が(実数でない)複素数になってしまいました
主値をとらずとも
(
これ「-1/12」っぽくて良くないですか?