以下全ての測度に-有限性を仮定します。
密度関数
我々は完全加法性等によって抽象的に測度を定義しますが、実際に積分計算が実行できる測度はまず密度関数を持ってるものくらいでしょう。密度関数というのは例えば正規分布 で言うところの の部分ですね。分布と言うからにはは上の測度で、可測集合に対し
と定まっているので、についての積分は以下により計算できます:
というわけで、(積分する気になるくらいの)密度関数を持っている測度は積分が計算できます。上の式から、密度関数を持つ測度はと書かれます。
Radon-Nicodymの定理
では、どんな測度が密度関数を持つのでしょうか。上式から、Lebesgue測度の零集合についてとなることが分かります。このようにある(基準となる)測度の零集合が別の(比較したい)測度で零になっているときはについて絶対連続と言います。実はこの必要条件は密度関数の存在を特徴づけます。
Radon-Nicodymの定理
可測空間上の測度が-有限(実はだけでいい)と仮定する。がについて絶対連続であることはある可測関数が存在しとなることと同値。
この記事ではRadon-Nicodymの定理を簡単なHilbert空間論を使って示しますが、実は副産物として次の定理も同時に出てきます。
Lebesgueの分解定理
-有限測度について、となる測度が存在し、前者はについて特異、後者は絶対連続となる。
特異測度とはの零集合上にしか値を持たない測度のことです。典型的にはデルタ測度の和や(内の普通の)Cantor集合上の測度とかです。
準備
証明に入る前に次の補題を示します。
とはについて自乗可積分な上の関数全体のなすHilbert空間であり、各はを掛ける操作により上の有界線形作用素を定めます。
まずが有限測度のときに示す。に対しだが、とすればとなる。掛け算作用素の形だがまだこれはという稠密な部分でしか成り立っていない式であり、の(本質的)有界性すら言えていない。そこでの有界性を使うとが出て、稠密性から全体でが掛け算作用素になる。例えばについて指示関数を考えるとが降ってくることに注意。
が一般の-有限測度の場合は、を可算個の有限測度部分集合の非交和に分けて、各成分上で上のを取る。同じくが同じく稠密な部分で成り立つが、上と同様の理由でOK。こちらはを少しcutする必要があるが。
のときにRadon-Nicodymの結論が正しい。つまり、任意のでのとき、あるでとなる。
仮定からは有界である、つまりである。は上に掛け算で作用するが、はこれと可換である。故にももと可換になる、共役作用素のこと。に先の補題を使えばが取れ、と正定値性 からとなる(例えば上の指示関数が0であることを示したりする)。
より、 がについて成り立つ。指示関数を考えれば、である。
証明
(Radon-Nicodymと分解定理の)
を上の-有限測度とする。に上の補題を使えば、なるが取れる。形式的な式変形を信じればがにて成り立つことになりそうだが、これはわりと正しい。をに制限した測度を、に制限した測度をとすればこれらは特異、絶対連続。更に上で定めたについてとなる。
これらのことは、にてを適当に取ればいい。