素数定理とは以下のような主張です
関数$\pi:\mathbb R\to\mathbb R$を
$$\pi(x):=x\text{以下の素数の個数}$$
として定める。この時、以下が成り立つ
$$ \pi(x)/\frac x{\mathrm{log} x}\ (x\to\infty)=1$$
18世紀の末頃、ガウスは15歳の時に素数定理を予想したという話があります(ルジャンドルも同時期に予想しました)。しかし実際に素数定理が証明されたのは1896年で複素関数論を用いたものでした。つまり予想から解決までおよそ100年かかったというそうです。またこれを改良したより強い近似として以下の内容が知られています。
$$ \pi(x)/\mathrm{Li}(x) (x→∞)=1$$
ここで$\mathrm{Li}(x)$は
$$\mathrm{Li}(n):=\int_2^n\frac1{\mathrm{log}\ x}dx$$
である
はたして「証明」ではなく「予想」をすることは比較的簡単にできるのでしょうか?
今回は「素数定理」の予想を立てることを目標になるべく高校生でも分かるように頑張って記事を書きました。
・今回の「予想」をするにあたり、本記事に出てくる定義や式は全く数学的に厳密なものではありません。スピリチュアルと感じたらそれは正しいです。
・高校生でも分かるように頑張って記事を書きましたが、これは高校生が理解できることを保証したものではありません。ごめんなさい
・前提知識は数3cまでを想定していますが複雑すぎる計算はありません。
簡単に記号や言葉遣いの約束です
・$\mathbb N,\mathbb R$はそれぞれ自然数と実数を表しています。
・カギカッコは命題や数値や関数の値を表します。厳密に表せないものもこのように表してます。
・確率という言葉を曖昧に使っています。気持ちとしては濃度,割合,分布に近いです。
・:=は定義をする時に使います
・$\approx$は大雑把な等式の時に使います。
・命題$r$と$s$に対して「$r$か$s$のどちらか、または両方が成り立つ」という命題を$r\lor s$で表します。
・$n$が$m$よりとても大きいとき$n\gg m$と表します。逆に$n$が$m$よりとても小さいとき$m\gg n$と表します。
・$\Delta x$で$x$における微小変化を表します。厳密な定義はないですが、微分の定義$\lim_{h\to0}\frac{f(x+h)-f(x)}h$に出てくる$h$を$\Delta x$と思ってください。つまり$h=\Delta x$です。
・$\Pi$は総積を表します。総和$\Sigma$の掛け算バージョンだと思ってください。数字の集合$S=\{s_1,s_2,...\}$に対して、$\Pi_{s\in S}\ f(s)=f(s_1)f(s_2)...$とします。
・$O$はなんか小さくて無視できる項です。
正の実数$x$に対して
$$ P(x):=「x\text{付近の数が素数である確率}」$$
とします($P$は厳密に定義されていませんが、なんとなくそういうものなんだなと思っていてください)。「$x$付近の数が素数である確率」を「$x$付近の素数の濃度」と思うと
$$ \pi(n)\approx∫_2^nP(x)dx$$
が成り立っているはずです(ここで積分区間は最小の素数である$2$から始めました)。
なぜ濃度から個数がわかるのかといいますと、例えば無限に長い水筒に無限の味噌汁が入っていたとします。味噌汁といえば味噌が沈殿することで有名ですから、水筒の高さが高くなるほど味が薄くなっていきます。素数分布と似てますね。ここで高さ$h$までの味噌汁に含まれてる味噌の量は、各高さ$s$における味噌の濃度を$0< s< h$まで積分すれば求まりそうです。
| 味噌汁定理の話 | 素数定理の話 |
|---|---|
| 水筒 | $\mathbb N$ |
| 味噌汁 | 自然数 |
| 味噌 | 素数 |
| 味噌汁の濃さ | $P(n)$ |
| 高いと味が薄い | $n$が大きいと$P(n)$が小さい |
| 高さ$h$までに含まれる味噌 | $\pi(n)$ |
味噌汁定理と同様に素数定理を考えることで上の積分の近似が成り立ちそうな気がします。
この$P$を求めていきます。
$x$が大きくなるにつれて$P(x)$は小さくなっていくはずです。では$P(n+1)$は$P(n)$に比べてどれほど小さくなるでしょうか?
そもそも$n$が素数とは「$n$未満で割れる整数が1以外にない」ということであり、これは言い換えると「$n$未満の全ての素数で割り切れない」という事です。なので
$$ P(n)=「\text{整数が$n$より小さい素数で割り切れない確率」}$$
と言えそうです。また
$$\text{「整数$x$が$n+1$より小さい素数で割れない」}$$
$$\Leftrightarrow$$
$$\text{「整数$x$が$n$より小さい素数で割り切れない」$\lor$「整数$x$が$n$付近の素数で割れない」}$$
なので、下辺の二つの命題を排反事象とすると
$$\begin{array}{l}
P(n+1)
\\
\approx\text{「整数が$n+1$より小さい素数で割り切れない確率」}
\\
\approx\text{「整数が$n$付近の素数で割れない確率」×「整数が$n$より小さい素数で割り切れない確率」}
\\
\approx P(n)×「\text{整数が$n$付近の素数全てで割れない確率」}
\end{array}$$
と変形できます。
自然数$n$に対して$n$より大きい整数$x$が$n$の倍数である確率は$\frac1n$です。また$n$が大きいときに$n$付近の素数$p$に対して「$x$が$p$で割れる確率」は$\frac1p\approx\frac1n$です。なので$n\gg1$として$n$付近の素数全体の集合を$\mathbb P_n$とし、その集合の要素の個数を$\#\mathbb P_n=P(n)$と思うことにすると
$$\begin{array}{l}
\text{$「n$付近の素数全てで割れない確率」}
\\
\approx\Pi_{p\in\mathbb P_n}\text{「整数が$p$で割れない確率」}
\\
\approx\Pi_{p\in\mathbb P_n}(1-\text{「整数が$p$で割れる確率」})
\\
\approx\Pi_{p\in\mathbb P_n}(1-\frac1n)
\\
\approx(1-\frac1n)^{\#\mathbb P_n}
\\
\approx1-\frac1n×\#\mathbb P_n+O(n^{-2})
\\
\approx1-\frac1n×{\#\mathbb P_n}
\\
\approx1-\frac1n×P(n)
\end{array}$$
となりそうです
$$\begin{array}{l} P(n+1) \\ \approx P(n)×「n\text{付近の素数全てで割れない確率」} \\ \approx P(n)×(1-\frac1n×P(n)) \\ \therefore P(n+1)-P(n)\approx-\frac{P(n)^2}n \end{array}$$
ここで$n$が大きい時、相対的に$1$は小さく$n\gg 1\approx\Delta n$と思うことができます。よって
$$P'(n)\approx\frac{P(n+\Delta n)-P(n)}{\Delta n}\approx P(n+1)-P(n)\approx-\frac{P(n)^2}n$$
という微分方程式を立てることができます。これを解くと
$$
(\frac1{P(x)})'=-\frac{P'(x)}{P^2(x)}\approx\frac1{x}
$$
$$P(x)\approx\frac 1{\mathrm{log}\ x+C}\ (C\text{は任意定数})$$
と分かります。また$x$が十分大きければ$\mathrm{log}\ x\gg C$となり無視できるので
$$P(x)\approx\frac 1{\mathrm{log}\ x+C}\approx\frac 1{\mathrm{log}\ x}$$
となりステップ1から
$$\pi(n)\approx∫_2^nP(x)dx\approx\int_2^n\frac1{\mathrm{log}\ x}dx=\mathrm{Li}(n)$$
となるだろうという予想を立てることができました!
いやいや、式変形が曖昧過ぎて納得できない!と思う方もいるかもしれません
2
ガウスは少年の頃、どのように素数定理を予想したのでしょうか?
MAAが提供しているドミニカさんの記事
によると、
Gauss claimed merely to have looked at the data and seen the pattern;his complete statement reads "I soon recognized that behind all of its fluctuations, this frequency is on the average inversely proportional to the logarithm."
(ガウスは単にデータを見てパターンを見ただけだと主張した。彼の完全な声明は「私はすぐに、そのすべての変動の背後にあるこの周波数が平均して対数に反比例していることを認識した」となっている。)
つまり数字を見てたら近似できそうな関数$\frac{\mathrm{log}\ x}x$を閃いたそうです。えぇ...(困惑)
これは天才を超えて超常現象の領域ですね...恐れ入ります