0

(高校生むけ)合同式の基本

81
0
$$\newcommand{C}[0]{\mathrm C} \newcommand{m}[0]{ \ (\mathrm{mod} \ } $$

合同式の基本

(※今回の記事は生徒に解説するために作ったので,100%高校範囲です.)

断りがなければ,$a,b,c$を整数,$k,n,m$を0以上の整数とします.

1.合同式とは

合同式とは,整数の剰余(あまりのことね.)に着目した式のことです.
例えば,$a$$bをm$で割った剰余が等しいことを

$a\equiv b\m n)$

と書きます.
これを$a,b$$n$を法として合同($a$ and $b$ are congruent modulo $n$)と言います.
(modulo【前】:〜を法として)
例えば,
$$ 57\equiv 7 \m 5), \ 57\equiv 2 \m 5), \ 57\equiv -3 \m 5) $$
です.
これは適切な整数$K$を用いて$57$を,

$57=5K+7, \ 57=5K+2, \ 57=5K-3$

と表せることに対応していますね.

2.合同式の性質1

合同式の性質1

$(\mathrm {i})a\equiv a\m n)$(反射律)
$(\mathrm {ii})a\equiv b\m n)\implies b\equiv a\m n)$(対称律)
$(\mathrm {iii})a\equiv b\m n)\mathrm{かつ}b\equiv c\m n)\implies a\equiv c\m n)$(推移律)

合同式の性質2-1

任意の整数$a,b,c,d$に対し,$a\equiv b\m n),c\equiv d\m n)のとき,$

$(\mathrm {I})a+c\equiv b+d\m n)$(加法)
$(\mathrm {II})a-c\equiv b-d\m n)$(減法)
$(\mathrm {III})ac\equiv bd\m n)$(乗法)

合同式の性質2-2

$(\mathrm {I})$
条件より,
$a+c\equiv b+c\m n),b+c\equiv b+d\m n)$
推移律$(\mathrm {iii})$より,
$\therefore a+c\equiv b+c\equiv b+d\m n).$

$(\mathrm {II})$
条件より,$c,d$は任意なので$c\to -c,d\to -d$と置き換えて,$(\mathrm {I})$より,
$\therefore a-c\equiv b-d\m n).$

$(\mathrm {III})$
条件と$(\mathrm {I})$より,
$ac\equiv bc\m n),bc\equiv bd\m n)$
推移律$(\mathrm {iii})$より,
$\therefore ac\equiv bc\equiv bd\m n).$

これで合同式においても等式と同様に加減乗が保障されました.
難しかったら最悪$a=b+nk,c=d+nl$と置けば証明できます.

合同式の性質2-2

$(\mathrm {IV})$任意の整数$a,b$に対し,$ac\equiv bc\m n)$$c$$n$が互いに素のとき,$a\equiv b\m n)$(除法)

合同式の性質2-2

$(\mathrm {IV})$

$ac\equiv bc\m n)$即ち$(a-b)c\equiv 0\m n)$より,$(a-b)c$$n$の倍数.
$c$$n$が互いに素ゆえ,$(a-b)$$n$の倍数となるから
$\therefore a\equiv b\m n)$.

条件付きで加減乗(除)が保障されました.

べき乗

$(\mathrm {V})$$a\equiv b\m n)\implies a^m\equiv b^m\m n)$

べき乗

$(\mathrm {V})$
数学的帰納法を用いる.
$(\mathrm {i})m=1$のときは自明.
$(\mathrm {ii})m=k$のとき$a^k\equiv b^k\m n)$と仮定すると,$m=k+1$のとき$a^{k+1}\equiv b^{k+1}\m n)$を示す.
仮定と条件より,
$a^{k}\cdot a\equiv b^{k}\cdot a\m n), \ a\cdot b^{k}\equiv b\cdot b^{k}\m n)$だから,
$\therefore a^{k+1}\equiv a\cdot b^{k}\equiv b^{k+1}\m n) \ \ldots m=k+1$でも成立.
以上により,題意は示された.

$(\mathrm {III})$を使ってもよいならもっと簡単に示せますね.

フェルマーの小定理

$(\mathrm {VI})$$p$を素数とすると,
$a^p\equiv a\m p)$
$(\mathrm {VII})$$p$が素数,$a,p$が互いに素のとき,
$a^{p-1}\equiv 1\m p)$

フェルマーの小定理

$(\mathrm {VI})$
$k=1,...,p-1$のとき,
$k_p\C_k=p_{p-1}\C_{k-1}$ , $p,k$は互いに素より,
${}_p\C_k$$p$の倍数だから,二項定理より,

$a^p=[(a-1)+1]^p=(a-1)^p+{}_p\C_1(a-1)^{p-1}+...+{}_p\C_{p-1}(a-1)+1\equiv (a-1)^p+1\m p)$

よって,これを繰り返すと,

$a^p\equiv (a-1)^p+1\equiv(a-2)^p+2\equiv...\equiv1^p+a-1\equiv a\m p)$

を得る.

$(\mathrm {VII})$
条件より$(\mathrm {IV})$が使えるので,$(\mathrm {VI})$の両辺を$a$で割ると,
$\therefore a^{p-1}\equiv 1\m p).$

3.使用例1:ユークリッドの互除法

合同式を使うと,次のようになります.

ユークリッドの互除法

$0< r_k<...< r_1< b$
$a\equiv r_1 \m b), \ b\equiv r_2 \m r_1), ...,r_{k-1}\equiv0\m r_k)\implies\gcd(a,b)=r_k$

$\dfrac{10033}{12877}$を約分せよ.(数検1級 2010/4)

互除法で最大公約数を求める.

$12877\equiv 2844\m 10033)$
$10033\equiv 1501\m 1244)$
$2844\equiv 1343\m 1501)$
$1501\equiv 158\m 1343)$
$1343\equiv 79\m 158)$
$158\equiv 0\m 79)$

より,$\gcd(10033,12877)=79$だから,
$$\therefore \frac{10033}{12877}=\frac{10033/79}{12877/79}=\frac{127}{163}.$$

4.使用例2:一次不定方程式

次の方程式の整数解をすべて求めよ.
$72x+32y=3$

小さい方の係数を法として計算

$71x+32y \equiv 71x \equiv 7x\equiv 3 \m 32)...(1)$
$3\equiv 35\m 32)$($(1)$より,右辺が$7$の倍数になるようにする)より,
$7x\equiv 35\m 32)$
$7$$32$は互いに素だから,
$x\equiv 5\m 32)$
よって,$x=32k+5(k\in \mathbb Z)$と表せるから,
$32y=-71x+3=-71(32k+5)+3=-71\cdot32k-352$
故に,
$\therefore x=32k+5,y=-71k-11 (k\in \mathbb Z).$

特殊解を求めなくても一次不定方程式を解くことができました.

4.演習問題

$(1)2^{50}$を7で割った余りを求めよ.(易)
$(2)17^{50}$を9で割った余りを求めよ.(易)
$(3)23^{100}$を19で割った余りを求めよ.(易)
$(4)n^5-n$$30$の倍数になることを示せ.(普)
$(5)n$が自然数のとき,$2^{6n-5}+3^{2n}$$11$の倍数となることを示せ.(普)
$(6)n$が自然数のとき,$5^{2n-1}+7^{2n-1}+23^{2n-1}$$35$の倍数となることを示せ.(普)
$(7)$$\sum_{k=1}^nk!$が平方数となるような$n$を全て求めよ.(難)
(ヒント:$0$から$9$までの平方の$1$の位に注目せよ.)
$(8)$整式$x^{2023}-1$を整式$x^4+x^3+x^2+x+1$で割ったときの余りを求めよ.(難)
(ヒント:$x^4+x^3+x^2+x+1\equiv 0\m x^4+x^3+x^2+x+1)$より,$x^5-1\equiv 0\m x^4+x^3+x^2+x+1)$)
$(9)$自然数$n$に対し,$n^2+2,n^4+2,n^6+2$の最大公約数を求めよ.(難)
(ヒント:$n^4+2,n^6+2$$n^2+2$でそれぞれ互除法.)

投稿日:202382

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

東北大学工学研究科に在籍しています. 数学ガチ勢ではありませんし,ガバ証明が多いので,数学科の方はイラつくかもしれません. 妄想や問題を解くときの脳内を書き綴っていこうと思います.

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中