この記事の前に こちらの記事 を読んでおくといいです。
突然だが、次のような問題について考察したい。
次の条件を満たす整数$x$が存在するような素数$p$の必要十分条件を求めよ。
このような問題を脳死で解くためには「平方剰余」なるものをよく知っているとよい。この記事では、第一補充法則の証明を通して以前書いた記事の復習を行うとともに、平方剰余の扱いに慣れることのできるようなテクニックを記していく。
平方剰余まわりの用語について定義する。
$p$は素数であり、$a$は$p$と互いに素である整数であるとする。
「$a$は$p$を法として平方剰余である」とは、
「$x^2\equiv a\ (\text{mod}\ p)$となる整数$x$が存在する」ことである。
「$a$は$p$を法として平方非剰余である」とは、
「$a$は$p$を法として平方剰余でない」ことである
$p$が$3$以上の素数であり、$a$は$p$と互いに素である整数であるとき、
$(\frac{a}{p})$という記号を導入する(ルジャンドル記号)
ルジャンドル記号は分数みたいな形をしているけれども全然分数じゃないです。
定義より明らかだけれども、ルジャンドル記号は$1$or$-1$を取ります。
$\text{mod}\ 3$を考える
$1$は平方剰余か?
$x^2\equiv1$なる$x$は、たとえば$x=1$があるため平方剰余。
つまり$(\frac13)=1$
$2$は平方剰余か?
$x^2\equiv2$なる$x$は存在しないため平方非剰余。
つまり$(\frac23)=-1$
$\\$
$\text{mod}\ 5$を考える
$1$は平方剰余か?
$x^2\equiv1$なる$x$は、たとえば$x=1$があるため平方剰余。
つまり$(\frac15)=1$
$2$は平方剰余か?
$x^2\equiv2$なる$x$は存在しないため平方非剰余。
つまり$(\frac25)=-1$
$3$は平方剰余か?
$x^2\equiv3$なる$x$は存在しないため平方非剰余。
つまり$(\frac35)=-1$
$4$は平方剰余か?
$x^2\equiv4$なる$x$は、たとえば$x=2$があるため平方剰余。
つまり$(\frac45)=1$
つまり、最初の問題「$p \mid x^2+5$なる$x$が存在する$p$の必要十分条件」とは、次のように言い換えられる。
($p=5$は明らかに条件に含まれるため、$p\neq5$として考察する。)
$x^2\equiv-5\ (\text{mod}\ p)$となる$x$が存在する$p$の必要条件を求めよ。
つまり、$-5$が平方剰余となる$p$の必要十分条件を求めよ。
つまり、「$(\frac{-5}{p})=1$となる$p$の必要十分条件を求めよ。」となる。
$p$を$3$以上の素数とし、$a,\ b$は$p$と互いに素である整数とする。また、$l$も$3$以上の整数であり、$p$と$l$は異なるとする。このとき、以下の4つの定理が成立:
$${(\frac{ab}{p})=(\frac{a}{p})\cdot(\frac{b}{p})}$$
が成立。
$${(\frac{l}{p})=(\frac{p}{l})}$$
$${(\frac{l}{p})=-(\frac{p}{l})}$$
一応場合分けをしないで次のように書くこともできる。
$${(\frac{l}{p})=(-1)^{\frac{p-1}{2}\cdot\frac{l-1}{2}}\cdot(\frac{p}{l})}$$
$${(\frac{-1}{p})=1}$$
$${(\frac{-1}{p})=-1}$$
一応場合分けしないで次のように書くこともできる。
$${(\frac{-1}{p})=(-1)^{\frac{p-1}{2}}}$$
$${(\frac{2}{p})=1}$$
$${(\frac{2}{p})=-1}$$
一応場合分けしないで次のように書くこともできる。
$${(\frac{2}{p})=(-1)^{\frac{p^2-1}{8}}}$$
これから注意してほしいことは、「$p=2$のときに注意しないといけないこと」「相互法則を使いたいときは$p\neq l$に注意しないといけないこと」である。これは次の例を見てもわかるだろう。
では、冒頭の問題を解いてみよう。
問題:$p \mid x^2+5$となる$x$が存在する素数$p$の必要十分条件を求めよ。
$p=2,\ 5$は明らかに十分であるから以降$p\neq2,\ 5$とする。
まず、乗法性から$(\frac{-5}{p})=(\frac{-1}{p})\cdot(\frac{5}{p})$となる。
$\\$
$\\$
$\\$
$p=2,\ 5$のときも合わせて、求まる答えは
「$p\equiv1,\ 2,\ 3,\ 5,\ 7,\ 9,\ (\text{mod}\ 20)$」
となる。
おお、きれい。
$x^2\equiv-7\ (\text{mod}\ p)$が整数解をもつような素数$p$を決定せよ。
(解答)
$p=2,\ 7$は明らかに十分。以降、$p\neq2,\ 7$とする。
$(\frac{-7}{p})=(\frac{-1}{p})\cdot(\frac{7}{p})$で、第一補充法則と平方剰余の相互法則を考えると$p$を$\text{mod}\ 4$で場合分けすることになるが、今回は$\text{mod}\ 4$で$1$でも$3$でも結局$(\frac{-1}{p})\cdot(\frac{7}{p})=(\frac{p}{7})$となるため、$p\equiv1,\ 2,\ 4\ (\text{mod\ 7})$のときが必要十分。
よって、「$p\equiv0,\ 1,\ 2,\ 4\ (\text{mod}\ 7)$」が求まるものである。
参考1
つまり、$l\equiv3\ (\text{mod}\ 4)$のとき、$p$の場合分けなしに$(\frac{-l}{p})=(\frac{p}{l})$が成立。
$x^2\equiv6\ (\text{mod}\ p)$が整数解をもつような素数$p$を決定せよ。
(解答)
$p=2,\ 3$は明らかに十分。以降、$p\neq2,\ 3$とする。
$(\frac{6}{p})=(\frac{2}{p})\cdot(\frac{3}{p})$
今度は第二補充法則と平方剰余の相互法則を考えないといけないため、$p$を$\text{mod}\ 8$で分類するのがよい($3\equiv3\ (\text{mod}\ p)$より相互法則も$p$によって場合分けしないといけないから)。
$\\$
$\\$
$\\$
$\\$
以上より求まるものは「$p\equiv1,\ 2,\ 3,\ 5,\ 19,\ 23,\ (\text{mod}\ 24)$」である。
参考2
つまり、$l\equiv3\ (\text{mod}\ 4)$のとき$(\frac{2l}{p})$は、
この手の問題は完全に「乗法性で分解する」→「$-1$や$2$の部分と、素数の部分に分かれる」→「相互法則で法をひっくり返す」で解ける。
ここまででなんとなくわかったと思うが、相互法則の気持ちは、「変数が法にあると考えにくいから、定数を法にもってくる」というところにある。
$3x^2+3x+1\equiv0\ (\text{mod}\ p)$が整数解を持つような素数$p$を決定せよ。
(発想)
「〇〇の二乗」の形にしたい→平方完成
二次方程式の解の公式の導出を途中まで眺める。
$ax^2+bx+c=0$
$ax^2+bx=-c$ $c$を移項
$4a^2x^2+4abx=-4ac$ $4a$倍
$4a^2x^2+4abx+b^2=b^2-4ac$ $b^2$を足す
$(2ax+b)^2=b^2-4ac$ 左辺を因数分解
右辺に$x$がないからこのまま平方根をとったら$x$の一次方程式に変わって解ける。
これと全く同じことをしたらいいのでは...?
(解答)
$3x^2+3x+1\equiv0\ (\text{mod}\ p)$
$3x^2+3x\equiv-1\ (\text{mod}\ p)$
$36x^2+36x\equiv-12\ (\text{mod}\ p)$
$36x^2+36x+9\equiv-3\ (\text{mod}\ p)$
$(6x+3)^2\equiv-3\ (\text{mod}\ p)$
最初の式を見ると$p\neq2,\ 3$は明らか(最後の式は見ない!途中で$12$倍したから、$\text{mod}\ 2$や$3$で$0$をかけてる!)。よって$p\neq2,\ 3$で、$x$の係数と$6$は互いに素だから、$\text{mod}\ p$で$6x$は$p$通りの余りすべてになりうる(除算可能の証明やフェル小の証明、中国剰余定理の証明でやったやつ)。$+3$するのはダイヤルを平行移動させるだけだから無論$6x+3$は$\text{mod}\ p$で$p$通りのすべての値を取りうる。だから、結局は$(\frac{-3}{p})$を考えればいい。
参考1より、$(\frac{-3}{p})=(\frac{p}{3})$であり求まる条件は「$p\equiv1\ (\text{mod}\ 3)$」。
以下、$p$は$3$以上の素数とする。
$a=1,\ 2,\ \cdots,\ p-1$のうち、$(\frac{a}{p})=1$となるものの個数と$(\frac{a}{p})=-1$となるものの個数は両方等しい。つまり両方$\frac{p-1}{2}$個。
$x^2\equiv y^2\ (\text{mod\ p})\Longleftrightarrow p \mid (x-y)(x+y)$であり、$p$は素数だから$p \mid (x-y)$or$p \mid (x+y)$つまり$x\equiv\pm y\ (\text{mod\ p})$と同値。したがって$x\not\equiv \pm y\ (\text{mod}\ p)$であるとき$x^2\not\equiv y^2 \ (\text{mod}\ p)$である。
このことから、$x^2\ (1\leq x\leq p-1)$を$p$で割った余りは、「$x=1,\ 2,\ \cdots\ ,\ \frac{p-1}{2}$では一切被らず」「$x=\frac{p+1}{2},\ \frac{p+3}{2},\ \cdots\ ,\ p-1$つまり$x\equiv -\frac{p-1}{2},\ -\frac{p-3}{2},\ \cdots\ ,\ -1$ではさっき数えたやつと全部被る」となり、$\frac{p-1}{2}$通り現れる。
$a\bot p$とするとき、$(\frac{a}{p})\equiv a^{\frac{p-1}{2}}\ (\text{mod}\ p)$が成立。
方程式$x^{\frac{p-1}{2}}-1\equiv0\ (\text{mod}\ p)$の解は因数定理を考えると重解を含まないで高々$\frac{p-1}{2}$個しか含まない。一方、$\text{mod}\ p$における$\frac{p-1}{2}$個の平方剰余は、たとえば$\alpha$とおくと、$\alpha\equiv k^2$となる$k$が存在するため、フェル小より、
$\alpha^{\frac{p-1}{2}}-1\equiv k^{p-1}-1\equiv0\ (\text{mod}\ p)$
となりこれらはすべて方程式$x^{\frac{p-1}{2}}-1\equiv0\ (\text{mod}\ p)$の解である。よってこの方程式の解がすべて確定し(結局全部平方剰余だった)、平方非剰余はこの方程式の解ではない。
フェル小を考えると平方非剰余は$x^{p-1}-1\equiv0\ (\text{mod}\ p)$の解になるが、$x^{p-1}-1=(x^{\frac{p-1}{2}}-1)(x^{\frac{p-1}{2}}+1)$であり、平方非剰余でこれを$0$と合同にするためには、右側の「$(x^{\frac{p-1}{2}}+1)$」の部分が$0$になるしかない(先程の議論を考えると左側は$p$の倍数にならなくて、$p$が素数だからこっちがまるまる$p$の倍数でないといけない)。
よって方程式$x^{\frac{p-1}{2}}+1\equiv0\ (\text{mod}\ p)$の解は$\frac{p-1}{2}$個の平方非剰余全てである。
$\\$
以上のことより、
$a$が平方剰余のとき
$a^{\frac{p-1}{2}}-1\equiv0\ (\text{mod}\ p)$すなわち$a^{\frac{p-1}{2}}\equiv1\ (\text{mod}\ p)$
これはラグランジュ記号に一致
$a$が平方非剰余のとき
$a^{\frac{p-1}{2}}+1\equiv0\ (\text{mod}\ p)$すなわち$a^{\frac{p-1}{2}}\equiv-1\ (\text{mod}\ p)$
これはラグランジュ記号に一致
$\\$
したがってオイラーの規準は正しい。
オイラーの規準で$a=-1$とすると、第一補充法則$(\frac{-1}{p})=(-1)^{\frac{p-1}{2}}$が従う。
ラグランジュ記号の乗法性は、ラグランジュ記号をオイラーの規準を用いて書き換えると自明。(そういえば乗法性を証明していなかったが、ここではじめて証明できた。)
$p\equiv1\ (\text{mod}\ 4)$のとき、$(\frac{-1}{p})=1$である
$p=4n+1$である。
$4n\cdot(4n-1)\cdots(2n+1)\equiv(-1)\cdot(-2)\cdots(-2n)\equiv(2n)!\ (\text{mod}\ p)$だから、
$((2n)!)^2\equiv(4n)!\equiv-1\ (\text{mod}\ p)$ (ウィルソンの定理より)
よって$-1$は平方剰余。
$p\equiv3\ (\text{mod}\ 4)$のとき、$(\frac{-1}{p})=-1$である
$p-1$は$4$で割った余りが$2$だから、$\frac{p-1}{2}$は奇数であることに注意。
ある$\alpha$が$\alpha^2\equiv-1\ (\text{mod}\ p)$を満たしているとする。
フェル小より$\alpha^{p-1}\equiv1\ (\text{mod}\ p)$で、さらに、$\alpha^{p-1}\equiv(\alpha^2)^{\frac{p-1}{2}}\equiv-1\ (\text{mod}\ p)$が成立するから$1\equiv-1\ (\text{mod}\ p)$つまり$2\equiv0\ (\text{mod}\ p)$。このとき$p=1,\ 2$であり、$p$が$3$以上の素数であることと矛盾。
よって$-1$は平方非剰余。
第一補充法則は、正しい。
前回の記事 を真面目に読んでいた人にとってはたいへんドパガキ向けのものになったのではないでしょうか。
では最後に、まったくドーパミンの出ない復習問題を解いて終わりましょう。
$2027$は素数である。
$2027$で割った余りが$22$になるような平方数は存在するか
(解答)
$(\frac{22}{2027})=(\frac{2}{2027})\cdot(\frac{11}{2027})=-1\cdot(-1)\cdot(\frac{2027}{11})=(\frac{25}{11})=1$より、存在する。
ちなみに、「参考2」を用いたら少し早くなるし、$1001=7\cdot11\cdot13$を知っていたらもっと早くなる。
ほんとにさいごに、今回の記事は「第30回 高校生のための仙台数学セミナー」に参加して実際に解いてきた問題を参考に書かせていただきました。セミナーでは補充法則の証明(この記事には書いてないですが、第二補充法則や平方剰余の相互法則の証明も)を、いい感じに誘導をつけて問題にしていたので楽しかったです。ですからこの記事に書かれてある証明は一応自分が頑張って考えたものになります。誤りがあったらすみません。
ラグランジュ記号周りの諸定理をもちいないと解けない問題、は基本的にどこでも出ないかな...と思いつつも、一応記事にしておきました。平方剰余なんて、「$\text{mod}\ 3$で$x^2$は$2$にならない」ぐらいに認識しておけばどうにでもなります。よければ高評価を押してくださると嬉しいです。
ありがとうございました。