この回は、学んだ知識を自分で選び、つなげるための問題編です。
第Ⅰ段階は第1回の基礎講義だけで取り組めます。
第Ⅱ段階からは、第2回の例題と確認問題で判断の練習をしてから進んでください。
問題の前には必要な履修と学習の役割を表示しました。
別解で使うだけの単元は問題の必須履修に含めません。追加の単元を未習なら、第Ⅲ段階の該当問題を後へ回しても、最後の基本体系の総合問題へ進めます。
第2回の比較練習で複数の候補を選ぶ練習をした後、まず答えを見る前に、「求めたい情報」「使える条件」「候補とその目的」の三つを短く書いてください。
計算の途中でも、得た式が何の問題へ変わったかを確かめます。
初めの方法が進まなければ、残る障害を言葉にして別の候補へ戻ります。
模範解答は答案としての論証、解説は方法を選ぶ理由です。二つは別々に開けます。異なる視点が役立つ問題には独立した別解も置きました。解答だけを確認した後、方法を選べなかった箇所を解説で読み直す使い方もできます。
演習の道筋
第Ⅰ段階 基礎の定着
第Ⅱ段階 条件から典型を選ぶ
第Ⅲ段階 追加の単元へ接続する
総合問題と最終問題
必要な履修の多さ、典型の組合せの多さ、問題の難しさは別の観点です。各段階にも難易度の幅があります。
各問は、まず問題だけで考えます。最初の方向を選べないときだけ「最初の着眼」を開いてください。模範解答、別解、解説・発想はそれぞれ独立しています。解説の最後の対応表は、問題中の手掛かりから行った一手を、基礎の知識と講義の判断へ結び直すためのものです。
「像」は置換した量が実際に取る全値、「枝」は増加・減少などで分けたグラフの部分です。問題のパラメータは、まず固定して変数を動かし、その後に値を変えて場合を分けます。数学Ⅲなどの追加知識が必要な問題は、講義編だけでその単元の全内容を学べるという意味ではありません。冒頭の履修単元を確認して選んでください。
A「定着・復習」は講義の計算や判断を再確認する問題です。B「転移」は表示・条件・要求などが変わったときに判断を選び直す問題、C「総合」は一つの操作で得た情報から次の構造へ進む問題です。役割は難易度と別で、Cにも講義との距離が近い問題があります。小問が並んでいるだけでは総合と数えません。役割の具体的な理由は解説内に置きました。
最初の着眼を閉じて、問題文から候補を作る練習を先に行います。対応表示は解説を開いた後に読みます。短い問題は「手掛かり→判断」と参照、複数の重要な接続がある問題は詳細表で示します。第1回は知識、第2回は選ぶ根拠です。追加履修の知識は各問冒頭の前提に含まれます。
第1回の定義・公式・グラフを使う問題です。
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
半径$3$、中心角$120^\circ$の扇形について、(1)中心角を弧度で表せ。(2)弧の長さと面積を求めよ。
弧長の公式に入れる角は、度数法と弧度法のどちらでしょうか。
(1)$120^\circ=2\pi/3$。
(2)弧長は$3\cdot2\pi/3=2\pi$、面積は$3^2\cdot(2\pi/3)/2=3\pi$。
角度が度で与えられ、長さと面積が求められています。弧長の式は「半径何個分の弧か」という弧度の定義から作ったので、まず度を弧度へ変えます。半径を掛ければ長さ、さらに半径を掛けて二で割れば扇形の面積です。数値を入れる前に、どの単位の角を使う式かを確かめる練習です。
講義編の対応箇所
度の角で弧長・面積を求める → 180度とπの対応で弧度へ直す
知識:第1回・第1節 円の弧の長さで角を測る
判断:第1回の基本操作
半径と非負の中心角が分かる → 弧長rθと面積r²θ/2へ代入する
知識:第1回・第1節 円の弧の長さで角を測る
判断:第1回の基本操作
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
$\theta=-5\pi/6$のとき、$\sin\theta,\cos\theta,\tan\theta$を求めよ。
回った量と、最後に指す方向を分けて考えてください。
$-5\pi/6$は終辺が$7\pi/6$と同じで、基準の鋭角は$\pi/6$。第三象限の座標から$\sin(-5\pi/6)=-1/2,\cos(-5\pi/6)=-\sqrt3/2$、従って$\tan(-5\pi/6)=1/\sqrt3$。
負の角は時計回りの回転です。一周を足すと$7\pi/6$なので第三象限、基準の鋭角は$\pi/6$と読めます。単位円の横と高さを両方負にすれば余弦と正弦が決まり、最後に高さを横で割って正接を出します。符号を三つ独立に暗記するより、点の座標と比からそろえてください。
講義編の対応箇所
負の角が指定される → 一周を足して終辺と象限を確定する
知識:第1回・第1節 一般角と弧度法、第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る、第1回・第2節 象限と符号、基本的な値
判断:第1回の基本操作
基準の鋭角がπ/6 → 二座標の大きさと符号を決め、比から正接へ戻る
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第2節 象限と符号、基本的な値
判断:第1回の基本操作
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
$\pi/2\lt \theta\lt \pi$、$\sin\theta=5/13$とする。$\cos\theta,\tan\theta$を求めよ。
大きさを決める条件と、符号を決める条件が一つずつあります。
$\cos^2\theta=1-25/169=144/169$。第二象限では余弦が負なので、$\cos\theta=-12/13$、$\tan\theta=-5/12$。
一つの三角値と象限が与えられています。二乗和から余弦の大きさは決まりますが、平方根だけでは正負の二候補が残ります。角の区間はその符号を選ぶための条件です。第二象限の横座標は負なので負根を選び、その後に正接の比へ進みます。
講義編の対応箇所
正弦一つと第二象限 → 二乗和で余弦の大きさを出す
知識:第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る
判断:第1回の基本操作
余弦の平方には正負が残る → 角の範囲で負根を選び、比を取る
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第2節 象限と符号、基本的な値
判断:第1回の基本操作
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
$-\pi/2\lt \theta\lt 0$、$\tan\theta=-2$とする。$\sin\theta,\cos\theta$を求めよ。
正接は比です。指定された角の範囲は、その比にどの符号を付けるのでしょうか。
$1+\tan^2\theta=1/\cos^2\theta$より$\cos^2\theta=1/5$。第四象限なので$\cos\theta=1/\sqrt5,\sin\theta=-2/\sqrt5$。
正接は高さと横座標の比です。正接から余弦の大きさを求めるには$1+\tan^2\theta=1/\cos^2\theta$を使えます。正接が負という情報だけでは第二・第四象限を区別できませんが、指定区間が第四象限を選びます。余弦を正に決め、正弦は比が$-2$になるよう戻します。
講義編の対応箇所
正接の比と第四象限 → 1+tan²=1/cos²で余弦の大きさを出す
知識:第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る
判断:第1回の基本操作
比だけでは象限が未確定 → 指定範囲から余弦正を選び、正弦を比から戻す
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第2節 象限と符号、基本的な値
判断:第1回の基本操作
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
$y=-3\cos(2x-\pi/2)+1$の振幅、最小の正の周期、全実数での値域を求めよ。また、$x=0,\pi/4,\pi/2$での値を求めよ。
括弧の中身を元の入力uに合わせると、代表点の移動を計算できます。
振幅は$3$、最小の正の周期は$\pi$、値域は$[-2,4]$。三点の値は順に$1,-2,1$。基本余弦のグラフを横に$1/2$倍、右に$\pi/4$移し、上下を反転して縦に$3$倍、上に$1$移したものになる。
括弧の中を$2(x-\pi/4)$と読めば、横の変換を分けられます。基本余弦上の点$(u,v)$は$(u/2+\pi/4,-3v+1)$へ移ります。この対応から横の周期は半分、縦の中心は$1$、上下の幅は$3$です。最後の三点は式へ代入し、移動方向の読み違いがないかを確かめる役割を持ちます。
講義編の対応箇所
角の係数2・縦係数−3・定数1 → 元の点から(u/2+π/4,1−3v)へ移す
知識:第1回・第3節 複数の変形を一つの対応にする
判断:第1回の基本操作
非定数の余弦波 → 振幅・周期・値域を読み、代表点の値で向きを照合する
知識:第1回・第3節 正弦・余弦のグラフ、第1回・第3節 複数の変形を一つの対応にする
判断:第1回の基本操作
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
$\sin(5\pi/12),\cos(5\pi/12),\tan(5\pi/12)$を求めよ。
この角は、値を知っている二つの角の和にできます。
$5\pi/12=\pi/4+\pi/6$より、加法定理から
$\displaystyle \sin\frac{5\pi}{12}=\frac{\sqrt6+\sqrt2}{4},\quad\cos\frac{5\pi}{12}=\frac{\sqrt6-\sqrt2}{4},\quad\tan\frac{5\pi}{12}=2+\sqrt3.$
正接の加法定理の分母$1-1/\sqrt3$は非零である。
角$75^\circ$をそのまま暗記する必要はありません。既に値が分かる$45^\circ$と$30^\circ$の和なので、加法定理から作れます。正弦・余弦を先に出して比を取る方法と、正接の加法定理を使う方法があり、後者では分母の非零を確認します。どちらも第一象限の符号と一致するかが検算になります。
講義編の対応箇所
75度は既知の二角の和 → 加法定理で正弦と余弦を作る
知識:第1回・第4節 加法定理とは何か、第1回・第2節 象限と符号、基本的な値
判断:第1回の基本操作
正接も求める → 比または正接の加法定理を使い、分母非零を確認する
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第1回の基本操作
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
$\pi/2\lt \theta\lt \pi$、$\sin\theta=3/5$とする。$\sin2\theta,\cos2\theta$を求めよ。
二倍角の二つの公式で、必要になる元の値は同じでしょうか。
$\cos\theta=-4/5$なので、$\sin2\theta=2(3/5)(-4/5)=-24/25$、$\cos2\theta=1-2(3/5)^2=7/25$。
二倍角が求められ、元の正弦が既知です。余弦の二倍角は正弦だけで書けますが、正弦の二倍角は積なので元の余弦の符号まで必要です。まず指定象限で余弦を決め、各公式へ入れます。「倍角を全部同じ形で覚える」のではなく、既知の値だけを残せる式を選ぶ確認です。
講義編の対応箇所
二倍角が要求され、元の正弦が既知 → 正弦だけで足りる式と余弦も要る式を区別する
知識:第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第1回の基本操作
元の角が第二象限 → 余弦の負符号を残して積の公式へ渡す
知識:第1回・第2節 象限と符号、基本的な値、第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る、第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第1回の基本操作
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
$\pi\lt \theta\lt 2\pi$、$\cos\theta=-3/5$とする。$\sin(\theta/2),\cos(\theta/2),\tan(\theta/2)$を求めよ。
平方根の符号を選ぶ前に、半分の角の範囲を作ってください。
$\pi/2\lt \theta/2\lt \pi$より、半角の正弦は正、余弦は負。
$\displaystyle \sin\frac\theta2=\frac2{\sqrt5},\quad\cos\frac\theta2=-\frac1{\sqrt5},\quad\tan\frac\theta2=-2.$
半角の大きさは元の余弦から作れます。残る課題は平方根の符号です。元の角の区間を二で割ると半角は第二象限になるので、正弦は正、余弦は負と決まります。元の角の象限の符号を半角へ流用せず、新しい角の区間を作ってください。
講義編の対応箇所
半角の三角値が要求される → 半角の区間を先に作る
知識:第1回・第2節 象限と符号、基本的な値、第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第1回の基本操作
元の余弦から半角の二乗が出る → 正弦正・余弦負の根を選び、比を取る
知識:第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る、第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第1回の基本操作
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
$\sin\theta=1/3$のとき、$\sin3\theta$を求めよ。
求める式を、既知の正弦だけで書けるか考えます。
三倍角公式より$\sin3\theta=3(1/3)-4(1/3)^3=23/27$。
求める角が元の三倍で、正弦だけが既知です。三倍角を正弦の三次式にした公式なら、未知の余弦を求めずに済みます。加法定理で$2\theta+\theta$から作り直すこともできますが、使い慣れた公式ならこの段階では直接計算して構いません。
講義編の対応箇所
正弦だけが既知で三倍角が欲しい → 正弦の三次式を選び余弦の別計算を省く
知識:第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第1回の基本操作
一変数の有理数計算になった → 公式へ代入して値を出す
知識:第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第1回の基本操作
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
(1)$\sin(5\pi/12)+\sin(\pi/12)$を求めよ。(2)$\cos(5\pi/12)\cos(\pi/12)$を求めよ。
和と積では、変換後に現れる角が違います。既知角になる方を比べます。
(1)和積より$2\sin(\pi/4)\cos(\pi/6)=\sqrt6/2$。
(2)積和より$\{\cos(\pi/2)+\cos(\pi/3)\}/2=1/4$。
(1)は和、(2)は積なので、公式を使う方向が逆です。和を積へすると平均角と半差が既知角へ、積を和へすると和の角と差の角が既知角へなります。公式名より、変換後の角が計算できるかを先に見ます。個々の$75^\circ,15^\circ$の値を出して計算する別の候補と比べると、ここでは根号の展開を減らせます。
講義編の対応箇所
一方は和、他方は積 → それぞれ平均角・半差または和・差の角が既知角になるか見る
知識:第1回・第4節 積和公式は、加法定理の二式から積を取り出す、第1回・第4節 和積公式は、角の和と差を逆に解く
判断:第1回の基本操作
変換した角の値が既知 → 個々の根号値を計算せず一段で数値を出す
知識:第1回・第2節 象限と符号、基本的な値、第1回・第4節 積和公式は、加法定理の二式から積を取り出す、第1回・第4節 和積公式は、角の和と差を逆に解く
判断:第1回の基本操作
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
(1)$\sqrt3\sin x-\cos x$を一つの正弦で表し、全実数$x$についての最大値・最小値を求めよ。(2)実数$a,b$について、$a\sin x+b\cos x$が全ての実数$x$で$0$となる条件を求めよ。(3)$0\leq x\lt 2\pi$で$a\sin x+b\cos x=0$の解の個数を求めよ。
振幅と、係数の正負に合う位相を別々に確認します。
(1)$\sqrt3\sin x-\cos x=2\sin(x-\pi/6)$。全実数で角は全て動くので、最大値$2$、最小値$-2$。
(2)$x=0$から$b=0$、$x=\pi/2$から$a=0$が必要で、この条件は十分でもある。従って$a=b=0$。
(3)$a=b=0$なら区間の全ての角が解なので無限個。それ以外なら合成した正弦が一周内で$0$を取る二角だけで、二個。
(1)は同じ角の一次結合なので、一つの正弦へまとめれば全実数の角での値域が読めます。(2)は一角で零になる条件ではなく、全実数の角で同じ式が零になる恒等式です。二つの簡単な角を入れると二係数を別々に決められます。(3)では係数が両方零のとき、方程式そのものが恒等零になります。振幅で割ってから考えると、この無限解の場合を消してしまいます。
講義編の対応箇所
同じ角の一次結合の極値 → 係数を合わせて合成し、全実数の位相で両端を実現する
知識:第1回・第5節 三角関数の合成
判断:第1回の基本操作
全実数の角で零か、零を取る角数か → 振幅零と非零を分け、非零なら一周の零点を数える
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る、第1回・第5節 三角関数の合成、第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す
判断:第1回の基本操作
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
$0\leq x\lt 2\pi$で、$\sin2x=\sqrt3/2$を解け。
円の座標から角の候補を作り、指定範囲の端で選びます。
$u=2x\in[0,4\pi)$。$u=\pi/3,2\pi/3,7\pi/3,8\pi/3$なので、$x=\pi/6,\pi/3,7\pi/6,4\pi/3$。
方程式に現れる角は$2x$です。元の$x$が一周する間に$2x$は二周するので、基本の一周の解だけを二で割ると後半を落とします。変換後の区間$[0,4\pi)$を最初に書き、二周期の解を全部集めてから元の角へ戻す順を確認します。
講義編の対応箇所
正弦の値と一周の半開区間 → 同じ高さの二点から角の系列を出す
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す
判断:第1回の基本操作
二倍角など入力が変わる → 入力の範囲を同時に変え、元の角へ戻す
知識:第1回・第6節 位相を変えたら、区間も変える、第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す
判断:第1回の基本操作
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
$0\leq x\leq2\pi$で、$\cos(x-\pi/3)=1/2$を解け。
同じ方向を表す二端でも、実数の角としては二つです。
$x-\pi/3=\pm\pi/3+2n\pi$($n$は整数)より$x=2n\pi$または$2\pi/3+2n\pi$。区間内では$x=0,2\pi/3,2\pi$。
位相を動かしても、元の区間の端が消えるわけではありません。余弦の一般解を作って$x$へ戻すと、$0$と$2\pi$が両方候補になります。この問題は閉区間なので両方とも異なる実数の解です。単位円の同じ終辺と、角を実数として数えることを区別します。
講義編の対応箇所
位相のある余弦と閉区間 → 入力の範囲を移して二系列の一般解を作る
知識:第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す、第1回・第6節 位相を変えたら、区間も変える
判断:第1回の基本操作
元の二端も許される → 元の角へ戻して範囲内の値を選び、両端を個別に検査する
知識:第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す
判断:第1回の基本操作
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
$0\leq x\lt \pi$で、$\tan2x=1$を解け。
入力が二倍になっています。正接の周期と、入力の範囲も一緒に確かめます。
$2x=\pi/4+n\pi$($n$は整数)より$x=\pi/8+n\pi/2$。従って$x=\pi/8,5\pi/8$。どちらも$\cos2x\ne0$である。
正接の周期は$\pi$です。まず$2x$の一般解を$\pi/4+n\pi$と書き、元の区間で整数$n$を選びます。正接が定義されない角は方程式の候補になりません。今回の二候補は極から離れており、元の式へ入れられます。
講義編の対応箇所
正接の入力が二倍 → 入力の範囲を一緒に二倍にし、周期πの系列を選ぶ
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る、第1回・第3節 正接のグラフ、第1回・第6節 位相を変えたら、区間も変える
判断:第1回の基本操作
入力の系列と未定義点 → 元の角へ割り戻し、分母零や右端を入れない
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す
判断:第1回の基本操作
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
$0\leq x\lt 2\pi$で、$\sin(x+\pi/6)\geq1/2$を解け。
等しい値の点を境に、円のどちら側の弧を選ぶか考えます。
$u=x+\pi/6\in[\pi/6,13\pi/6)$。この区間では$u\in[\pi/6,5\pi/6]$だけで、次の周期の端$13\pi/6$は含まれない。従って$x\in[0,2\pi/3]$。
正弦が$1/2$以上なのは、一周では上側の閉じた弧です。位相の区間を移すと次の周の境目まで届きますが、その右端は元の開端に対応して含まれません。弧と移した区間の共通部分を取ってから$x$へ戻すと、端の扱いを保持できます。
講義編の対応箇所
正弦・余弦の不等式 → 水平・鉛直の直線のどちら側の円弧かを読む
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第6節 不等式は、点ではなく円弧を探す
判断:第1回の基本操作
等号と厳密不等号 → 境界角を含めるか除くか決め、必要な区間を合併する
知識:第1回・第6節 不等式は、点ではなく円弧を探す
判断:第1回の基本操作
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
$0\leq x\lt 2\pi$で、$\tan x\lt -1$を解け。
正接が値を持たない点は、等号の端とは扱いが違います。
正接の各増加する部分より、$x\in(\pi/2,3\pi/4)\cup(3\pi/2,7\pi/4)$。極は未定義、$-1$となる角は厳密不等式により除く。
正接には未定義点があり、その点をまたいで単調とはいえません。各増加する部分で$-1$を取る点を決め、その左側の部分を選びます。極は未定義、$-1$の点は厳密不等式のため除外、と二種類の開端を区別してください。
講義編の対応箇所
正接の不等式 → 極で定義域を分け、増加する各区間で比較する
知識:第1回・第3節 正接のグラフ、第1回・第6節 不等式は、点ではなく円弧を探す
判断:第1回の基本操作
正接が未定義の端 → 解区間へ極を入れず、周期の各部分を合わせる
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る、第1回・第3節 正接のグラフ
判断:第1回の基本操作
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
$\cos x\ne0$のとき、$1+\tan^2x=1/\cos^2x$を示せ。また、$\sin x/(1+\cos x)=\tan(x/2)$が成り立つ角の範囲を述べ、示せ。
恒等式では、両辺に現れる全ての式が定義される範囲を保ちます。
第一式は$\sin^2x+\cos^2x=1$を$\cos^2x$で割ればよい。第二式の共通定義域は$x\ne\pi+2n\pi$($n$は整数)。この範囲では
$\displaystyle \frac{\sin x}{1+\cos x}=\frac{2\sin(x/2)\cos(x/2)}{2\cos^2(x/2)}=\tan\frac x2.$
恒等式は両辺が意味を持つ範囲で示します。第一式は余弦の二乗で割る条件が問題文にあり、第二式は左右の分母が同時に零になる角を除く必要があります。半角の式へ変えると同じ因子が約分できますが、その因子の非零を先に確認することが証明の一部です。
講義編の対応箇所
半角に関係する分数の恒等式 → 加法・倍角と二乗和で両辺を同じ形へ直す
知識:第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る、第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第1回の基本操作
分母や正接が現れる → 全ての式が定義される共通範囲を残す
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第1回の基本操作
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
(1)$\sin^2x$の最小の正の周期を求めよ。(2)$\sin x+\sin(x+\pi)$に最小の正の周期があるか。
一項の周期ではなく、式全体がどんな関数かを先に確認します。
(1)$\sin^2x=(1-\cos2x)/2$なので周期は$\pi$。もし$T\gt 0$が周期なら$x=0$で$\sin^2T=0$、従って$T=n\pi$であり、最小は$\pi$。
(2)式は恒等的に$0$。任意の正数が周期なので、最小の正の周期はない。
周期を一つ見つけることと、それが最小と示すことは別です。(1)は零点に一周期後も戻る必要があるので、$x=0$を使って候補の周期を$\pi$の整数倍へ絞れます。(2)は和が定数になり、任意の正数が周期です。各項の周期をそのまま「最小周期」と答えず、和の式を先に整理します。
講義編の対応箇所
二乗や正弦の和の周期 → 一項の周期を流用せず式全体を簡単にする
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る、第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第1回の基本操作
恒等零または非定数 → 最小の正の周期があるかを区別する
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る
判断:第1回の基本操作
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
余弦のグラフを平行移動と縦横の拡大縮小で変形したグラフがある。最小の正の周期は$\pi$、最大値は$1$、最小値は$-3$で、$x=\pi/6$で最大値を取る。このグラフの式を一つ求めよ。また、基本余弦の点$(u,v)$との対応を述べよ。
上下の平均・半差、一周期の幅、山の位置はそれぞれ別の情報を与えます。
中心線は$y=-1$、振幅は$2$。周期$\pi$なので角の係数は$2$とできる。$x=\pi/6$で余弦が$1$となるように選べば$y=2\cos\{2(x-\pi/6)\}-1$。点$(u,v)$は$(u/2+\pi/6,2v-1)$へ移る。
グラフから式へ戻す問題です。上下の平均が中心、差の半分が振幅、周期が角の係数を決めます。最後に最大の位置で横移動を決めます。式の表し方は周期分の位相の違いなどで一意ではないので、条件を満たす一式を作り、点の対応で検証します。
講義編の対応箇所
波の上下端・周期・山の位置が分かる → 中心と振幅、横係数の絶対値を順に作る
知識:第1回・第3節 グラフから式を作る
判断:第1回の基本操作
同じグラフの別表示 → 位相と反転を展開し、代表点の対応で同じ式か確かめる
知識:第1回・第3節 複数の変形を一つの対応にする、第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第1回の基本操作
復習と転移を区別し、操作の後に残る仕事を調べます。
必要な履修:数学Ⅰ・二次関数、数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
$0\leq\theta\lt 2\pi$で、$2\sin^2\theta+3\cos\theta-1$の最大値・最小値と、それを取る角の条件を求めよ。
一方の三角関数は二乗だけです。二種類を残さずに済むか見ます。
$t=\cos\theta\in[-1,1]$とおくと、式は$1+3t-2t^2=-2(t-3/4)^2+17/8$。従って最大値$17/8$は$\cos\theta=3/4$となる二角で取る。最小値は両端を比べて$-4$で、$\theta=\pi$のとき。
求めるのは式の極値で、正弦は二乗だけ、余弦は一次で現れています。正弦の二乗を二乗和で消すと、余弦一つの二次式になります。正接への置換もできますが、ここでは分数や除外方向を新しく作るので利点が少ない候補です。
置換後の仕事は数学Ⅰの二次関数です。平方完成して軸が$[-1,1]$内にあるか調べ、最大側は頂点、最小側は両端を比べます。最後に、求めた余弦の値が実際の角で取れることと、最小の角が指定区間にあることを確かめます。変形に成功した後の二次関数と、角への復元を別々に練習してください。
角の範囲を$[0,\pi/2]$へ狭めても、頂点$t=3/4$は像$[0,1]$へ入るので最大値は同じです。しかし最小値は両端の比較で$1$となり、全実数の角での$-4$は取れません。式の変換は同じ、渡す像だけが変わります。
講義編の対応箇所
正弦の二次式と余弦の一次式 → 二乗和で余弦一つへまとめる
知識:第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る
判断:第2回・§1 求めるものが変わると、変換後の仕事も変わる
区間上の二次関数 → 平方完成の軸と両端を比較する
知識:第1回・第5節 三角関数の合成
判断:第2回・§1 求めるものが変わると、変換後の仕事も変わる
最適な置換値 → 値が実際の像に入り角で実現することを戻す
知識:第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す
判断:第2回・§1 求めるものが変わると、変換後の仕事も変わる、第2回・§2 合成した後、山に届くかを調べる
必要な履修:数学Ⅰ・二次関数、数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:C 総合
問題
$0\lt \theta\leq5\pi/6$で、$\cos2\theta+2\sin\theta=k$の相異なる解の個数を、実数$k$の値によって分類せよ。
二つの角の表現を一種類へそろえる候補を比べ、その量を指定区間で何回取るかも調べてください。
$t=\sin\theta$とおくと$0\lt t\leq1$で、与式は
$\displaystyle 1+2t-2t^2=k,\qquad 1+2t-2t^2=\frac32-2\left(t-\frac12\right)^2.$
指定範囲では、$0\lt t\lt 1/2$に一角、$1/2\leq t\lt 1$に二角、$t=1$に一角が対応する。実際、正弦は$(0,\pi/2]$で増加し、$[\pi/2,5\pi/6]$で$1$から$1/2$へ減少する。
放物線の$(0,1/2)$での値域は$(1,3/2)$、$[1/2,1]$での値域は$[1,3/2]$である。$k=1$では$t=0,1$のうち$1$だけを採用する。$1\lt k\lt 3/2$では二根がそれぞれ$(0,1/2),(1/2,1)$にあり、$k=3/2$では一つの重根$t=1/2$となる。従って解の個数は
$\displaystyle \begin{cases}0& (k\lt 1\text{ または }k\gt 3/2),\\1&(k=1),\\3&(1\lt k\lt 3/2),\\2&(k=3/2).\end{cases}$
角数が要求されているため、二次式へ変換した後も元の区間との対応を残す必要があります。余弦の倍角と正弦が混在していますが、$\cos2\theta=1-2\sin^2\theta$なら一種類へそろいます。$\cos\theta$を置くと一次の正弦を符号付きの根号で残すため、今回は正弦が先です。
次の仕事は三角公式ではなく、放物線の頂点と端の値による根の配置です。ただし、根が二個だから角が四個とはいえません。指定区間は一周でも第一象限だけでもなく、正弦$1/2$以上だけに戻りの角があります。この境目は方程式の係数からでなく、区間の右端から得ます。
最後に、一つの置換値を何回取るかを掛けます。開端の$t=0$は除き、閉端の$\theta=5\pi/6$は$t=1/2$の二つ目として数えます。頂点の重根を二値と数えない確認も別に必要です。区間が変わると対応の重みが変わる、という判断を未知の区間で作り直す問題です。
この問の役割:倍角から二次式を発見し、途中までの戻りと開端の重みを再構成。
講義編の対応箇所
倍角の余弦と一次の正弦、角数の要求 → 倍角を正弦へ戻し、置換値の範囲を渡す
知識:第1回・第4節 倍角・半角・三倍角、第1回・第2節 定義は、円上の点の座標
判断:第2回・§1 求めるものが変わると、変換後の仕事も変わる、第2回・§4 二次方程式の根を、角の個数へ戻す
二次式と開閉の違う元の端 → 頂点・端値から置換値の根の配置を分ける
知識:第1回・第3節 正弦・余弦のグラフ
判断:第2回・§1 求めるものが変わると、変換後の仕事も変わる、第2回・§4 二次方程式の根を、角の個数へ戻す
正弦の増加区間と途中までの減少区間 → 各値の対応数を作り、重根と開端を戻して数える
知識:第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す、第1回・第6節 位相を変えたら、区間も変える
判断:第2回・§4 二次方程式の根を、角の個数へ戻す
必要な履修:数学Ⅰ・二次関数、数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
全実数$\theta$について、$\sin\theta+\cos\theta+4\sin\theta\cos\theta$の最大値・最小値を求めよ。
二つを交換しても値が変わらない式です。条件と何を共有しているか見ます。
$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とする。$p=\sin\theta+\cos\theta\in[-\sqrt2,\sqrt2]$とすると$sc=(p^2-1)/2$なので、式は$2p^2+p-2=2(p+1/4)^2-17/8$。最小値は$-17/8$、最大値は両端を比べて$2+\sqrt2$。いずれも像内の$p$で達成される。
一次部分は正弦と余弦の和、二次部分は積です。両方が交換対称なので、個々の三角値を残すより和$p$を残せないかを調べます。二乗和$1$から積が$p$の二次式になるため、全項を同じ$p$へまとめられます。
合成で和の正確な像を渡したら、あとは区間上の二次関数です。二次部分だけを二倍角にすると、元の一次部分と別角が混ざったままになるので、今回は全項を一緒にまとめる置換を優先します。極値の$p$が像内にあることまで確かめて元の問題を完了します。
例えば$\sin^2\theta-\cos^2\theta$を追加すると、交換で符号が変わる項が混ざります。$p=s+c$だけではどちらが$s$か分からず、式の値を一意に決められなくなります。対称な式かを調べる理由は、この情報の不足を避けるためです。
講義編の対応箇所
交換して変わらない和と積 → 和pを保存し二乗和で積をpの二次式へする
知識:第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る
判断:第2回・§3 条件の和を保存し、隠れた共通の一次式も探す
和pが取り得る範囲 → 合成で正確な像を渡し、二次関数の軸と端を調べる
知識:第1回・第5節 三角関数の合成
判断:第2回・§1 求めるものが変わると、変換後の仕事も変わる、第2回・§3 条件の和を保存し、隠れた共通の一次式も探す
最大最小の候補値 → 等号のpが元の角で実現するか確かめる
知識:第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す
判断:第2回・§2 合成した後、山に届くかを調べる、第2回・§3 条件の和を保存し、隠れた共通の一次式も探す
必要な履修:数学Ⅰ・数と式、数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
$\sin\theta+\cos\theta=1/2$のとき、(1)$\sin^3\theta+\cos^3\theta$を求めよ。(2)$\sin^3\theta-\cos^3\theta$の取り得る値を全て求めよ。
二つを交換したとき、和の求値と差の求値は同じ情報で決まるでしょうか。
$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とすると$sc=-3/8$、$(s-c)^2=7/4$。
(1)$s^3+c^3=(s+c)^3-3sc(s+c)=11/16$。
(2)$s^3-c^3=(s-c)(1+sc)=\pm5\sqrt7/16$。両符号について$s=(1/2\pm\sqrt7/2)/2,c=(1/2\mp\sqrt7/2)/2$は二乗和$1$となるため、実際の角で実現する。
条件は和しか与えていません。しかし二乗和もあるため、和から積まで決まります。(1)は$s,c$を交換しても変わらない式なので、和と積だけで表す候補が合理的です。先に二次方程式で$s,c$を求める方法より計算を短くできます。
(2)は交換で符号が反転します。同じ二乗和・和・積に対して二つの割り当てが残り、差の符号が必要になることを、計算前から予測できます。差の二乗を出して二符号を残し、最後に両方の単位円上の点を作って実現性を示します。平方根の二候補を根拠なく一つへ選ばない問題です。
講義編の対応箇所
条件は正弦と余弦の和 → 積を二乗和から求め、立方和を和と積へ表す
知識:第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る
判断:第2回・§3 条件の和を保存し、隠れた共通の一次式も探す
立方差は交換で符号が変わる → 差の二乗と正負を残し両割当てを作る
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る
判断:第2回・§3 条件の和を保存し、隠れた共通の一次式も探す
二つの三角値が得られた → 二乗和1を確かめ、両符号の単位円上の実現を示す
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標
判断:第2回・§3 条件の和を保存し、隠れた共通の一次式も探す、第2回・§14 距離や軌跡を、円の座標へ翻訳する
必要な履修:数学Ⅰ・二次方程式、数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:B 転移
問題
$0\leq\theta\leq\pi/2$で$2\sin^2\theta-3\sin\theta\cos\theta=1/2$を満たす$\theta$について、$\tan\theta$の取り得る値を求めよ。
欲しいのは角そのものではなく比です。角の範囲も最後まで残します。
$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とする。定数を二乗和でそろえると$3s^2-6sc-c^2=0$。$c=0$なら元の左辺は$2$なので不適。$c^2$で割り、$t=\tan\theta$とおくと
$\displaystyle 3t^2-6t-1=0,\qquad t=1\pm\frac{2\sqrt3}{3}.$
指定範囲のうち$c\ne0$では$t\geq0$なので負根は除く。答えは$1+2\sqrt3/3$。この正接を取る角は$(0,\pi/2)$に存在し、逆向きの変形も同値なので実現する。
求めるものは正接、つまり正弦と余弦の比です。左辺の二次項を同じ余弦の冪で割れば比だけにできますが、右辺の定数が残ります。二乗和$1$を使って定数も二次へすることが、その障害を除く操作です。
講義の例題と異なる仕事は、角が第一象限の端を含む範囲に制限されていることです。まず余弦零の端を元の式で調べ、その後に二次方程式を解きます。二つの実根のうち、指定範囲の正接の値域$[0,+\infty)$に入る方だけを採用し、その角が実際にあることを戻します。
二倍角も成立する候補ですが、角を求めてから比へ戻す仕事が必要です。今回は欲しい比を直接未知数にする方を優先します。反対に同じ左辺の最大値なら、二倍角で一つの波へする方が上下の限界へ直接届きます。式が変形できることに加え、目的と角の範囲で優先順位と採用根を決める問題です。
この問の役割:係数と第一象限の制限が変わる近い転移。指定範囲で根の採用を判断する。
講義編の対応箇所
欲しいのは正接で、定数と二次項 → 定数を二乗和で同次化して比を残す
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る
判断:第2回・§5 比を答えたいから、定数を同じ次数へそろえる
割る量は余弦の二乗 → 余弦零の端を元の式で除いてから比の二次式を作る
知識:第1回・第2節 象限と符号、基本的な値、第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る
判断:第2回・§5 比を答えたいから、定数を同じ次数へそろえる、第2回・§9 割る前に、符号と零点を扱う手間を比べる
二根と第一象限の区間 → 正接の像で負根を除き、正根を元の角で実現する
知識:第1回・第3節 正接のグラフ、第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す
判断:第2回・§4 二次方程式の根を、角の個数へ戻す
必要な履修:数学Ⅰ・不等式、数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:C 総合
問題
$0\leq\theta\lt 2\pi$で、$\sin3\theta\leq\sin\theta$を解け。
二辺の差の零点と符号を調べるには、和の形と積の形のどちらが読みやすいでしょうか。
和積公式から、与式は$2\sin\theta\cos2\theta\leq0$と同値である。
$\sin\theta=0$となる$\theta=0,\pi$は解である。$0\lt \theta\lt \pi$では$\sin\theta\gt 0$なので、$\cos2\theta\leq0$より$\pi/4\leq\theta\leq3\pi/4$。$\pi\lt \theta\lt 2\pi$では$\sin\theta\lt 0$なので、$\cos2\theta\geq0$より$\pi\lt \theta\leq5\pi/4$または$7\pi/4\leq\theta\lt 2\pi$。
以上より解集合は
$\displaystyle \{0\}\cup[\pi/4,3\pi/4]\cup[\pi,5\pi/4]\cup[7\pi/4,2\pi).$
$t=\sin\theta\in[-1,1]$とおく。三倍角から与式は$2t(1-2t^2)\leq0$であり、$t\in[-1/\sqrt2,0]\cup[1/\sqrt2,1]$。これを指定区間の単位円へ戻すと、主解答と同じ解集合を得る。
$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とすると、三倍角と二乗和から左辺の差は$2s(c^2-s^2)$。$c=0$の二角は直接代入し、$\pi/2$を採用、$3\pi/2$を除く。$c\ne0$では$t=s/c$として、$c^3$の符号を保つ。$c\gt 0$では$t(1-t^2)\leq0$、すなわち$-1\leq t\leq0$または$t\geq1$。$c\lt 0$では$t(1-t^2)\geq0$、すなわち$t\leq-1$または$0\leq t\leq1$。それぞれを余弦の正負の区間へ戻し、先の$\pi/2$を加えると主解答と同じ集合になる。
比較する二つの正弦は角が違うため、差を零以下とする方が共通の条件になります。零点と符号を知りたいので、差を積へする和積が候補です。二つの角の平均と半差が$2\theta,\theta$となり、零点と符号の区間を直接読めます。
三倍角で正弦の三次不等式へ移る方法も合理的です。今回は角の区間を求めるだけなので、二因子の符号へ分ける方が計算は短くなります。一方、正弦値の範囲を求める要求なら、別解の一変数の形が便利です。
積へできても正弦で直ちに割りません。正弦零は等号の解であり、正弦が負なら不等号の向きも変わります。因数分解は符号を見えるようにする操作で、その後には零点・区間・端を戻す仕事が残ります。
もう一つの別解は、三次同次式を余弦の三乗で割る方法です。方法は成立しますが、余弦の符号で不等号を分け、余弦零の二角を別に代入する費用が増えます。正接を使えるという事実と、今回先に選ぶ理由を分けて比べてください。
この問の役割:異なる角の差を積へし、零点と符号へ接続。
講義編の対応箇所
異なる角の正弦を不等式で比較 → 移項して和積で零点と符号を分ける
知識:第1回・第4節 和積公式は、角の和と差を逆に解く
判断:第2回・§7 角の差だけでなく、和・積・商を読む、第2回・§9 割る前に、符号と零点を扱う手間を比べる
積の一因子が区間により正負を変える → 零点を保ち、各因子の符号を組み合わせる
知識:第1回・第6節 不等式は、点ではなく円弧を探す、第1回・第2節 象限と符号、基本的な値
判断:第2回・§9 割る前に、符号と零点を扱う手間を比べる、第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す
元の半開区間と等号 → 零点を合併し包含する端と除く端を確定する
知識:第1回・第6節 不等式は、点ではなく円弧を探す、第1回・第6節 位相を変えたら、区間も変える
判断:第2回・§9 割る前に、符号と零点を扱う手間を比べる
必要な履修:数学Ⅰ・二次関数、数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
$Q=3\sin^2\theta+2\sin\theta\cos\theta+\cos^2\theta$とする。(1)全実数での最大値・最小値を求めよ。(2)$0\leq\theta\leq\pi/4$での最大値・最小値を求めよ。
二小問は式が同じで、角の範囲だけが違います。上下の限界の扱いを比べます。
$Q=2-\cos2\theta+\sin2\theta=2+\sqrt2\sin(2\theta-\pi/4)$。
(1)最大値$2+\sqrt2$、最小値$2-\sqrt2$。
(2)$u=2\theta\in[0,\pi/2]$では$\sin u$も$-\cos u$も増加するので、$Q$は増加。最小値$1$は$\theta=0$、最大値$3$は$\theta=\pi/4$。
$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とする。(1)円の関係式から$2-(Q-2)^2=(s^2-c^2-2sc)^2\geq0$。従って$2-\sqrt2\leq Q\leq2+\sqrt2$。$\theta=3\pi/8,7\pi/8$でそれぞれ上端・下端を取る。三角関数の合成の代わりに、円上の非負の平方で範囲と等号を示す方法である。
三項は二次で、要求は式の上下の限界です。比を答える問題と違い、二倍角で一次式へすれば除算なしで全実数の角を扱えます。合成は一つの波の振幅を与え、全実数の角での最大・最小へ直接つながります。
指定区間の小問では、二倍角の動く範囲を作り直します。この範囲で正弦と余弦の負が両方増えるため、直接の増減が短く、全実数の角での振幅を使いません。別解の非負の平方は全実数の角での上界・下界を代数的に示す候補です。同じ式でも、角の区間と要求に応じて最後の仕事が変わります。
例えば比を問われたら正接への置換が候補になりますが、全実数の角での極値を正接へ移すと$\theta$の情報を有理式へ渡し、余弦零も別に処理します。短い弧の(2)では、その比の範囲も必要です。二倍角は元の区間を二倍した枝だけで済むため、今回の要求に直結します。
講義編の対応箇所
二次同次式の極値 → 二倍角で次数を下げ、一次の波へ合成する
知識:第1回・第4節 倍角・半角・三倍角、第1回・第5節 三角関数の合成
判断:第2回・§6 同じ二次式でも、極値なら除算を避けられる
全実数の角と短い区間の違い → 振幅の達成と位相の範囲を別々に確認する
知識:第1回・第3節 正弦・余弦のグラフ、第1回・第6節 位相を変えたら、区間も変える
判断:第2回・§6 同じ二次式でも、極値なら除算を避けられる、第2回・§2 合成した後、山に届くかを調べる
短い区間で各項の増減が同方向 → 合成を続けず端を直接比べる
知識:第1回・第3節 正弦・余弦のグラフ
判断:第2回・§6 同じ二次式でも、極値なら除算を避けられる
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:B 転移
問題
全実数$\theta$について、次の二式の値域をそれぞれ求めよ。
$\displaystyle F=\sin(\theta+\pi/6)+\cos(\theta-\pi/6),\quad G=\sin(\theta+\pi/6)\cos(\theta-\pi/6).$
角の差が定数という条件を、和と積でそれぞれどう使えるでしょうか。
$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とする。$F=(\sqrt3+1)(s+c)/2$より、値域は$[-(\sqrt6+\sqrt2)/2,(\sqrt6+\sqrt2)/2]$。
積和より$G=\sin2\theta/2+\sqrt3/4$なので、値域は$[(\sqrt3-2)/4,(\sqrt3+2)/4]$。
二式とも角の差が定数ですが、一方は和、他方は積です。和は加法定理で同じ角の一次結合へ、積は積和で角の差を定数へする候補が出ます。角の差だけから一律に展開方法を決めてはいけません。
和をまとめた後は合成で振幅を求め、積を和へした後は二倍角の一つの波の像を使います。全実数の角なので、それぞれの位相で両端を取れます。積を全面展開する方法も成立しますが、積和なら定数差という情報を一段で使えるため、こちらを優先しました。
角差が定数でも演算は決まっていません。商に変われば分母零の角を先に残し、値を求める方程式なら分母を払って一次式へ戻す候補もあります。和の合成をそのまま商へ使うことはできません。
この問の役割:正弦・余弦の表示と係数が変わる近い転移。遠い転移とはしない。
講義編の対応箇所
角差は定数だが演算は和と積 → 和は加法で角をそろえ、積は積和で定数差を残す
知識:第1回・第4節 加法定理とは何か、第1回・第4節 積和公式は、加法定理の二式から積を取り出す
判断:第2回・§7 角の差だけでなく、和・積・商を読む
変換後は一つの波 → 合成または二倍角の像から範囲を出す
知識:第1回・第5節 三角関数の合成、第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第2回・§7 角の差だけでなく、和・積・商を読む、第2回・§2 合成した後、山に届くかを調べる
角に制限がない → 両端と中間値が実際に取れることを確認する
知識:第1回・第3節 正弦・余弦のグラフ
判断:第2回・§2 合成した後、山に届くかを調べる
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:B 転移
問題
$\pi/2\leq\theta\leq\pi$で、$2\sin\theta+2\cos\theta$の最大値・最小値を求めよ。
波の山が、指定された角の区間で取れるとは限りません。
式は$2\sqrt2\sin(\theta+\pi/4)$。位相は$[3\pi/4,5\pi/4]$で、正弦は減少する。最大値$2$は$\theta=\pi/2$、最小値$-2$は$\theta=\pi$。
元の区間で$\sin\theta$と$\cos\theta$はともに減少する。従って和も減少し、両端を調べればよい。この問題では、基本グラフの増減が合成より短い別解になる。
同じ角の一次式なので合成が候補です。ただし区間が半周未満なので、振幅をそのまま最大値にすることはできません。合成した位相へ元の両端を移して、波のどの部分を通るかを調べます。
今回は正弦が減る一つの枝に収まります。従って端の比較だけで済み、山の値$2\sqrt2$は指定区間で取れません。出力が「振幅と位相」であることを踏まえ、次に「山・谷に届くか」を問う練習です。
この問の役割:区間と二項の増減の関係が変わり、直接端を見る選択を試す近い転移。
講義編の対応箇所
一次の三角式と短い弧 → 合成して位相の範囲を移す
知識:第1回・第5節 三角関数の合成、第1回・第6節 位相を変えたら、区間も変える
判断:第2回・§2 合成した後、山に届くかを調べる
位相が一つの減少部分にある → 山に届かないので端値で最大最小を出す
知識:第1回・第3節 正弦・余弦のグラフ
判断:第2回・§2 合成した後、山に届くかを調べる
別の直接候補では二項がともに減る → 合成を省いて同じ端値へ進める
知識:第1回・第3節 正弦・余弦のグラフ
判断:第2回・§6 同じ二次式でも、極値なら除算を避けられる、第2回・§2 合成した後、山に届くかを調べる
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:B 転移
問題
$0\leq\theta\lt 2\pi$で、$\sin7\theta=\sin3\theta$の解を全て表し、その個数を求めよ。
欲しいのは高倍角の値ではなく、二つの値が等しい角です。
和積より$2\cos5\theta\sin2\theta=0$。従って
$\displaystyle \theta=\frac{k\pi}{2}\ (k=0,1,2,3),\qquad \theta=\frac{(2k+1)\pi}{10}\ (k=0,\ldots,9).$
重複は$\pi/2,3\pi/2$の二角なので、相異なる解は$4+10-2=12$個。
要求は零点で、異なる倍角の正弦の差です。七倍角を多項式へ展開するより、和積で積が零の形にする方が各角を直接決められます。平均と半差は整数倍の角なので、二つの因子の一般解が簡単です。
因子ごとに区間内の角を作った後は、和集合の個数を調べます。二リストには共通の角があるため、個数を単純に足してはいけません。共通解を条件から出して一度だけ数えます。因数分解の情報を消さず、最後まで解集合として扱う問題です。
二つの零因子の角の集合が交わるかは、二つの一般解を同時に満たす整数条件です。今回の二重計上を除く仕事は、和積公式の仕事ではありません。因数分解まではできても個数を間違えたなら、この集合の重なりを復習します。
この問の役割:高倍角の二系列の重複を周期で処理する近い転移。
講義編の対応箇所
高倍角の正弦の差で零点が欲しい → 多項式展開より和積の積を優先する
知識:第1回・第4節 和積公式は、角の和と差を逆に解く
判断:第2回・§10 高倍角でも、零点だけなら積を作る
二つの零因子 → 各角の一般解と区間内のリストを作る
知識:第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す、第1回・第6節 位相を変えたら、区間も変える
判断:第2回・§10 高倍角でも、零点だけなら積を作る
リストが交わる → 共通解を同時条件で出し一度だけ数える
知識:第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す
判断:第2回・§10 高倍角でも、零点だけなら積を作る、第2回・§4 二次方程式の根を、角の個数へ戻す
必要な履修:数学Ⅰ・図形と計量、数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
三角形の内角$A,B,C$が$A=\pi/3$を満たすとする。$\sin B+\sin C$と$\sin B\sin C$の値域をそれぞれ求めよ。
未知の二角には、一つの和の条件が付いています。
$d=(B-C)/2$とすると$B,C\gt 0$から$-\pi/3\lt d\lt \pi/3$。
$\displaystyle \sin B+\sin C=\sqrt3\cos d\in(\sqrt3/2,\sqrt3],$
$\displaystyle \sin B\sin C=(\cos2d+1/2)/2\in(0,3/4].$
最大値はどちらも$d=0$、すなわち$B=C=\pi/3$で取る。小さい端は退化三角形に対応して取らない。
三角形の内角から$B+C$が定数と分かります。二つの未知角を別々に解く必要はなく、平均角を固定して半差だけを残せます。和・積の公式がこの固定和を式へ反映するための候補です。
新しい変数の範囲は、正の内角から作ります。小さい端の値は一つの内角が零になる極限なので、実際の三角形では取れません。最大値は二角が等しい配置で実現します。変形が正しくても退化の端まで含めると、値域の括弧が変わってしまいます。
講義編の対応箇所
三角形の内角の一つが固定 → 他二角の和を固定し、半差一つへ移す
知識:第1回・第4節 和積公式は、角の和と差を逆に解く、第1回・第4節 積和公式は、加法定理の二式から積を取り出す
判断:第2回・§13 固定された角の和を、定数として残す
内角は正で退化しない → 半差の開区間を先に作り公式の像へ渡す
知識:第1回・第3節 正弦・余弦のグラフ
判断:第2回・§13 固定された角の和を、定数として残す
小さい端は退化配置 → 取らない下端と実現する最大の等号を区別する
知識:第1回・第6節 不等式は、点ではなく円弧を探す
判断:第2回・§13 固定された角の和を、定数として残す、第2回・§2 合成した後、山に届くかを調べる
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、いろいろな式
学習の役割:A 定着・復習
問題
実数$a,b$について、(1)$-\pi\lt x\lt \pi$で$a\sin x+b\cos x=1$が相異なる二解$x_1,x_2$を持つ条件を求めよ。(2)そのとき、$\tan((x_1+x_2)/2)$が定義される条件と値を求めよ。(3)角の範囲を$-\pi\leq x\leq\pi$へ変えた場合、方程式が相異なる二解を持つ条件を求めよ。
個数だけでなく、二解の半和も求めることに着目します。
(1)$t=\tan(x/2)$は$(-\pi,\pi)$と実数全体を一対一に対応させる。この区間で$\cos(x/2)\gt 0$なので、$\sin x=2t/(1+t^2),\cos x=(1-t^2)/(1+t^2)$。元の方程式は
$\displaystyle 2at+b(1-t^2)=1+t^2,\qquad (b+1)t^2-2at+1-b=0.$
$b=-1$なら$-2at+2=0$で、$a\ne0$なら一根、$a=0$なら根なし。$b\ne-1$なら二次式の判別式は$4(a^2+b^2-1)$。従って相異なる二解の必要十分条件は$b\ne-1$かつ$a^2+b^2\gt 1$。
(2)$t_j=\tan(x_j/2)$とすると、根と係数の関係から$t_1+t_2=2a/(b+1),t_1t_2=(1-b)/(b+1)$。半和の余弦は$\cos(x_1/2)\cos(x_2/2)(1-t_1t_2)$である。二つの余弦は正なので、求める正接が定義される条件は$1-t_1t_2\ne0$、すなわち$b\ne0$。そのとき
$\displaystyle \tan\frac{x_1+x_2}{2}=\frac{t_1+t_2}{1-t_1t_2}=\frac ab.$
$b=0$なら半和の余弦が零で、正接は未定義。
(3)置換が表さない$x=\pm\pi$は、どちらも$b=-1$のときだけ元の方程式を満たす。$b=-1,a\ne0$では内部の一解と両端で三解、$(a,b)=(0,-1)$では両端だけで二解。従って閉区間の二解条件は、$b\ne-1,a^2+b^2\gt 1$、または$(a,b)=(0,-1)$。
個数だけなら合成と水平線の交点が候補です。しかし半和の正接も求めるため、半角の正接二つの和と積を利用する方法が結論へ直結します。元の区間は半角正接が実数全体へ一対一となる範囲なので、二次式の相異なる二根と二角をそのまま対応させられます。
次に二次方程式の最高次係数と判別式を調べます。係数が零なら二根の判別式を流用せず、一次または定数の式へ再分類します。その後、根の和と積を加法定理へ渡しますが、分母零なら求める値が未定義です。「二解がある」条件と「正接を計算できる」条件は別です。
閉区間の小問では、置換が表さない両端を元の式で確認します。同じ終辺でも二つの実数の角なので二解を足します。新しい境界は、次数・対応・求値の定義の三箇所から生まれています。
(3)では閉端二角を加えるだけでなく、内部の式の次数が下がる$b=-1$を先に分けます。また$b=0$では二解があっても半和の正接が未定義です。個数・置換の欠落点・最終的な商の定義という三つの境界を独立に検査します。
この問の役割:(1)(2)は講義の同題を復習、(3)は閉端への追加確認。全体を遠い転移とはしない。
講義編の対応箇所
二解の個数に加え半和の正接を問う → 根の和積を使える半角正接を候補にする
知識:第1回・第4節 倍角・半角・三倍角、第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第2回・§11 半角正接は、角の和へ近付くために選ぶ
開区間と二次式 → 一対一の対応を示し、最高次係数零と判別式を分ける
知識:第1回・第3節 正接のグラフ
判断:第2回・§11 半角正接は、角の和へ近付くために選ぶ、第2回・§4 二次方程式の根を、角の個数へ戻す
二根の和と積が得られた → 半和の正接の分母非零を独立に調べる
知識:第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第2回・§11 半角正接は、角の和へ近付くために選ぶ、第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す
閉区間へ変更した → 置換が表さない二端を元の式で検査し内部根と合わせる
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る、第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す
判断:第2回・§11 半角正接は、角の和へ近付くために選ぶ、第2回・§4 二次方程式の根を、角の個数へ戻す
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、図形と方程式
学習の役割:C 総合
問題
実数$k$について、$0\leq\theta\leq\pi/2$で$\sin\theta+\cos\theta=k$となる角の個数を求めよ。
同じ高さを二回通る場所と、一回だけ通る場所を分けます。
式は$\sqrt2\sin(\theta+\pi/4)$で、位相は$[\pi/4,3\pi/4]$。従って$1\leq k\lt \sqrt2$で二個、$k=\sqrt2$で一個、それ以外は零個。$k=1$の二角は$0,\pi/2$。
単位円の第一象限の弧と直線$x+y=k$の交点を数える。$k\lt 1$の交点はこの弧に入らず、$k=1$では両端、$1\lt k\lt \sqrt2$では内点二つ、$k=\sqrt2$では接点一つとなる。
角の個数を求めるので、合成した波と水平線の交点を考えます。位相の区間は山を挟む二枝なので、各枝の像を先に作ると、一般の高さには二角、山の高さには一角と分かります。
端値$1$は左右両端で実現し、二角です。最大値だけを知っていても個数は決まりません。値域に加え、同じ値を何回通るかという対応情報が必要です。
この問の役割:合成した値の根から角の対応数へ接続。
講義編の対応箇所
一次式の角数で第一象限に制限 → 合成した波を山の左右へ分ける
知識:第1回・第5節 三角関数の合成、第1回・第6節 位相を変えたら、区間も変える
判断:第2回・§2 合成した後、山に届くかを調べる、第2回・§4 二次方程式の根を、角の個数へ戻す
二部分の値域が重なる → 端の二角・内点の二角・山の一角を数え分ける
知識:第1回・第3節 正弦・余弦のグラフ、第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す
判断:第2回・§4 二次方程式の根を、角の個数へ戻す
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、図形と方程式
学習の役割:A 定着・復習
問題
$P=(\cos\theta,\sin\theta)$、$0\leq\theta\leq\pi/2$、$A=(2,1)$とする。距離$AP$の最大値・最小値と、それを取る点$P$を求めよ。
円上の点への距離は、二乗するとどの項が一定になるでしょうか。
$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とする。$AP^2=6-4\cos\theta-2\sin\theta$。$4c+2s\leq2\sqrt5$は$c=2/\sqrt5,s=1/\sqrt5$で等号。従って最小値は$\sqrt5-1$、その点は$(2/\sqrt5,1/\sqrt5)$。また$s,c\geq0$で$(c+s)^2=1+2sc\geq1$だから$c+s\geq1$。従って$4c+2s\geq2(c+s)\geq2$。等号は$(c,s)=(0,1)$だけで、最大値は$2$。
距離を求める問題ですが、動点は単位円上です。二乗した距離の二次部分は二乗和で定数になり、残る一次式の最大・最小へ帰着します。根号を抱えたまま扱うより、大小が保存される非負の二乗を先に使います。
近点は中心から定点への方向にあり、第一象限の弧内で実現します。遠点について全円の反対方向を使うと区間を失うので、一次式の下界をこの弧上で調べます。最後に距離の平方根と点の座標へ戻し、等号条件も答えます。
この問の役割:§14と同じ距離問題。指定弧の端と下界の証明の定着として保持。
講義編の対応箇所
単位円上の点からの距離 → 距離を二乗し円の関係で二次部分を消す
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る
判断:第2回・§14 距離や軌跡を、円の座標へ翻訳する
正の係数の一次式が残る → 合成の上界と等号方向を弧内で確認する
知識:第1回・第5節 三角関数の合成
判断:第2回・§2 合成した後、山に届くかを調べる、第2回・§14 距離や軌跡を、円の座標へ翻訳する
反対方向は指定弧外 → 二乗和と非負から和1以上を示し、直接下界を作る
知識:第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る、第1回・第2節 象限と符号、基本的な値
判断:第2回・§14 距離や軌跡を、円の座標へ翻訳する
距離の二乗と等号点 → 非負の平方根と点の座標へ戻す
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標
判断:第2回・§14 距離や軌跡を、円の座標へ翻訳する
必要な履修:数学Ⅰ・図形と計量、数学Ⅱ・三角関数、図形と方程式
学習の役割:A 定着・復習
問題
(1)直線$y=2x$と$y=-x$のなす鋭角を$\varphi$とするとき、$\tan\varphi$を求めよ。(2)直線$x=0$と$y=-x$のなす鋭角を求めよ。
傾きが定義される直線と、鉛直線を最初に分けます。
(1)傾きの差の公式から$\tan\varphi=|(2-(-1))/(1+2(-1))|=3$。
(2)後者は$x$軸に対して$\pi/4$の傾きの直線なので、鉛直線との鋭角も$\pi/4$。
直線の向きの差が欲しいので、傾きを正接とみなして加法定理を使えます。ただし傾きは鉛直線で定義されません。(1)は二傾きが有限、(2)は鉛直線を含むため、最初の分類が違います。
また直線の傾きを表す角には$\pi$のずれがあり、加法定理が出す符号付きの正接をそのまま鋭角としません。鋭角の正接は正なので絶対値を取り、分母零なら直角という例外へ分けます。ここでは図の向きから第二小問を短く処理できます。
傾きの公式は各直線が鉛直でなく、正接を求める場合の候補です。二傾き$m_1,m_2$について$1+m_1m_2=0$なら二直線は垂直で、角は$\pi/2$ですが、その正接は未定義です。角を求めることと、角の正接を数として出せることを分けてください。
講義編の対応箇所
直線の方向差で正接が欲しい → 傾きを正接と見て加法定理へ渡す
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第2回・§14 距離や軌跡を、円の座標へ翻訳する、第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す
鋭角という指定 → 符号付き比から絶対値を取り、分母零なら直角へ分ける
知識:第1回・第2節 象限と符号、基本的な値、第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す
鉛直線が現れる → 有限の傾き式を流用せず図形の向きで角を読む
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標
判断:第2回・§14 距離や軌跡を、円の座標へ翻訳する、第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、図形と方程式
学習の役割:B 転移
問題
$0\leq\theta\leq\pi$で、$x=\cos\theta+2\sin\theta,y=2\cos\theta-\sin\theta$とする。点$(x,y)$の軌跡を求めよ。
座標から式を消すだけで、候補の全点を通るといえるでしょうか。
二乗和より$x^2+y^2=5$。逆に$c=(x+2y)/5,s=(2x-y)/5$なので、$s\geq0$に対応する$2x-y\geq0$が必要。これら二条件を満たす点では$c^2+s^2=1$かつ$s\geq0$なので、$0\leq\theta\leq\pi$の角が作れ、元の二式も成立する。従って軌跡は$x^2+y^2=5,\ 2x-y\geq0$で表される閉じた半円周。
二座標が正弦・余弦の一次式なので、二乗和を消去する候補が出ます。係数が直交する組になっているため円の式が現れます。ただし角は上半周だけなので、全円と答えると情報を落とします。
一次連立を逆に解くと、正弦の非負性を座標の不等式へ移せます。ここまでが必要条件です。さらにその半円の任意の点から二乗和$1$・正弦非負の三角値を作り、元の角と座標を復元して十分性を示します。消去して終わるのではなく逆構成まで行うことが、軌跡の答案の完成です。
角を全実数へ広げれば同じ円の式が出ますが、符号制限は不要となり円周全体になります。今回の半円という結論は、消去の計算ではなく、残された正弦の非負条件から出ています。
この問の役割:軌跡の符号から逆に角の範囲を構成する近い転移。
講義編の対応箇所
二座標が正弦・余弦の一次式 → 二乗和で円の消去式を作る
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る
判断:第2回・§14 距離や軌跡を、円の座標へ翻訳する
角の範囲は半周 → 一次連立を逆に解き正弦非負を座標の条件へする
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第2節 象限と符号、基本的な値
判断:第2回・§14 距離や軌跡を、円の座標へ翻訳する、第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す
候補点から二つの三角値を作れる → 単位円と符号を使って角を復元し十分性を示す
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す
判断:第2回・§14 距離や軌跡を、円の座標へ翻訳する
必要な履修:数学Ⅰ・二次関数、集合と命題、数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:C 総合
問題
実数$a,d$に対して$F(\theta)=\sin^2\theta-a\cos\theta+d$とする。(1)全ての実数$\theta$で$F(\theta)\geq0$となる条件を求めよ。(2)$F(\theta)=0$となる角が存在する条件を求めよ。(3)$d=0$のとき、各実数$a$に対して零点があるか。また、全ての$a$に共通する零点があるか。
全ての角、一つの角、全てのaに共通の角は、要求が違います。
$t=\cos\theta\in[-1,1]$とすると$F=1-t^2-at+d=1+a^2/4+d-(t+a/2)^2$。上に凸なので最小は両端の小さい方、すなわち$d-|a|$。最大は軸$t=-a/2$が区間内なら$1+a^2/4+d$、区間外なら近い端で$|a|+d$である。従って
$\displaystyle M(a)=\begin{cases}1+a^2/4&|a|\leq2,\\|a|&|a|\geq2\end{cases}$
と書けば像は$[d-|a|,d+M(a)]$。区間上の二次関数なので端間の全値も実現する。
(1)最小値が非負であることが必要十分で、$d\geq|a|$。
(2)零が像に入ることが必要十分で、$-M(a)\leq d\leq|a|$。
(3)$d=0$は全ての$a$で(2)の条件を満たすため、その$a$ごとの零点は存在する。一方、共通の零点があれば$a=0$から$\sin^2\theta=0$、$a=1$との比較から$\cos\theta=0$となり、二乗和$1$に矛盾する。従って共通の零点はない。
三角部分は余弦一つの二次式へまとめられます。第一小問の「全て」は最小値が零以上、第二小問の「存在」は零が実際の像へ入ることです。同じ式でも、要求を先に翻訳すると何を計算すべきかが分かります。
$t^2$の係数が負の、上に凸の放物線なので、最小値は端、最大値は軸の位置によって変わります。軸が区間を出る境界$|a|=2$を出してから、像の下端と上端を零と比較します。
第三小問は各$a$ごとに角を選んでよい条件と、一角を全$a$へ共通にする条件の対照です。後者は二つの$a$を代入すれば矛盾する条件を同時に要求します。パラメータの分類に成功しても、条件の読み方の順序まで同じだと思わないでください。
(1)から得た条件は、どの角にも通用する下界です。(2)の条件は、一つの角を選べればよい条件です。同じ像から答えを作れますが、最小値だけを調べて「零点がある」と結論すると、像の最大値が零より小さい場合を落とします。
この問の役割:全称条件からパラメータ付き二次関数の端・軸へ接続。
講義編の対応箇所
| 問題中の手掛かり | そこから行う判断 | 第1回の知識 | 第2回の判断 |
|---|---|---|---|
| 一方は正弦二乗、一方は余弦一次 | 余弦の像上の二次式へ置く | 二乗和と正接 | §1 |
| 全ての角か、一角の存在か | 最小値非負と零の像への所属を選び分ける | 振幅・位相・値域 | §16 |
| 軸がパラメータで移る | 軸の区間への出入りと端値で場合を分ける | グラフの増減と交点 | §1、§16 |
| 各aの零点と共通角が別に問われる | 一つの角で二つのaの条件を同時に満たせるか検査する | 二乗和と正接 | §16 |
必要な履修:数学Ⅰ・二次関数、数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:B 転移
問題
実数$a$に対し、全実数$\theta$で$\sin^2\theta-a\sin\theta$の最大値・最小値を求め、等号を取る正弦の値も述べよ。
頂点と両端のうち、パラメータによって役割が変わる点を見ます。
$t=\sin\theta\in[-1,1]$で$t^2-at=(t-a/2)^2-a^2/4$。最小値は$|a|\leq2$なら$-a^2/4$($t=a/2$)、$a\gt 2$なら$1-a$($t=1$)、$a\lt -2$なら$1+a$($t=-1$)。最大値は$1+|a|$で、$a\gt 0$なら$t=-1$、$a\lt 0$なら$t=1$、$a=0$なら$t=\pm1$で取る。境界$a=\pm2$の最小点はそれぞれ$t=\pm1$。
正弦の二次式なので像$[-1,1]$上の二次関数へ移れます。今回は最小側の軸が$a$で動きます。軸が内側か外側かを最初に分ければ、最小点が頂点か近い端かが決まります。
最大側は上に開く放物線なので両端の比較です。端値の差の符号から、$a$の正負でどちらの正弦を選ぶかが分かります。境界$a=0$では二端とも最大、$a=\pm2$では頂点と端が同じ点になります。条件式と等号の正弦値を対で答える練習です。
この問の役割:根の配置をパラメータの条件へ戻す近い転移。
講義編の対応箇所
正弦の二次式で軸が動く → 正弦の像へ置き平方完成する
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る
判断:第2回・§1 求めるものが変わると、変換後の仕事も変わる
軸が区間内外に移る → 近い端または頂点で最小、両端比較で最大を決める
知識:第1回・第3節 正弦・余弦のグラフ
判断:第2回・§1 求めるものが変わると、変換後の仕事も変わる、第2回・§4 二次方程式の根を、角の個数へ戻す
境界値と等号が問われる → 頂点と端の合流、最大の二端一致を別に記す
知識:第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す
判断:第2回・§2 合成した後、山に届くかを調べる、第2回・§4 二次方程式の根を、角の個数へ戻す
必要な履修:数学Ⅰ・不等式、数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:A 定着・復習
問題
$0\leq\theta\lt 2\pi$で、$\dfrac{\sin\theta-1/2}{\cos\theta}\geq0$を解け。
分子の零と分母の零を、同じ角の軸に並べてください。
分子の零点は$\pi/6,5\pi/6$、分母の零点は$\pi/2,3\pi/2$。分母の二点を除いて、これらの順に区間を分ける。$[0,\pi/6)$では分子負・分母正、$(\pi/6,\pi/2)$では両方正、$(\pi/2,5\pi/6)$では分子正・分母負、$(5\pi/6,3\pi/2)$では両方負、$(3\pi/2,2\pi)$では分子負・分母正である。
従って商が非負の解は$[\pi/6,\pi/2)\cup[5\pi/6,3\pi/2)$。分子の零点は等号として含み、分母の零点は未定義なので含めない。
商の不等式なので、分母を機械的に払うと符号による向きの変更が必要です。分子・分母の零点を同じ角の軸へ並べ、各区間で二つの符号を比べる方法なら、その変更を表に保持できます。
分子零は等号として採用、分母零は未定義として除外します。二種類の端を区別し、選んだ区間を合併します。正弦と余弦の範囲を別々に調べても、同じ角での符号の対応が分からないので、角の区間へ戻すことが必要です。
この問の役割:根号商の符号・分母条件を§12と同じ構造で再確認。
講義編の対応箇所
商の不等式で分母符号が変わる → 分子・分母の零点を同じ角の軸へ並べる
知識:第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す
判断:第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す
零点で区間が分かれる → 各区間の符号を比べ、商非負の部分を選ぶ
知識:第1回・第6節 不等式は、点ではなく円弧を探す
判断:第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す、第2回・§9 割る前に、符号と零点を扱う手間を比べる
等号端と未定義端は違う → 分子零を含め、分母零を除く
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第6節 不等式は、点ではなく円弧を探す
判断:第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す
必要な履修:数学Ⅰ・数と式、数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:B 転移
問題
(1)全実数$\theta$で$|\sin\theta|+|\cos\theta|$の最大値・最小値を求め、等号条件を述べよ。(2)関数$f$は$[-1,1]$上で増加する奇関数で、$|f(t)|\leq1$を満たすとする。全実数$\theta$で$0\leq\cos\theta\,f(\cos\theta)\leq|\cos\theta|$を示せ。
二乗から戻るための条件と、関数fの仮定を使える入力範囲を見ます。
$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とする。(1)式は非負で、その二乗は$1+2|sc|$。$0\leq|sc|\leq1/2$より、最小値$1$、最大値$\sqrt2$。最小は$sc=0$、最大は$|s|=|c|=1/\sqrt2$で取る。
(2)奇性から$f(0)=0$。増加性より$t$と$f(t)$の符号は反対にならず、$tf(t)\geq0$。また$|f(t)|\leq1$から$tf(t)\leq|t|$。$t=\cos\theta$は仮定の区間に入るので結論を得る。
(1)は絶対値の和で非負です。二乗すれば和の二乗が二乗和$1$と積の絶対値になり、倍角の値域で上下を評価できます。元の式が非負という条件により、二乗した大小から元へ戻せます。折れ目の角と等号を別に確認します。
(2)は新しい関数が含まれますが、既知の条件をその入力へ運ぶ問題です。余弦の像が仮定区間内にあり、奇性は零の値、増加は符号の一致、上界は大きさを与えます。負の余弦を掛ける際に向きを誤らないよう、積の符号と絶対値の上界を分けて証明します。三角関数は入力範囲を提供しています。
この問の役割:(1)は絶対値と値域の近い転移、(2)は§25と同じ評価の復習。小問の並列を総合としない。
講義編の対応箇所
非負の絶対値の和 → 二乗して二乗和と積の絶対値へまとめる
知識:第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る
判断:第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す
積の大きさの限界 → 二倍角で上下を出し、非負の元の式へ戻す
知識:第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第2回・§2 合成した後、山に届くかを調べる、第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す
新しい関数の条件は入力範囲に付く → 余弦の像を仮定へ運び、奇性・増加・上界を別々に使う
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第2節 円の対称性を読む
判断:第2回・§16 「存在」と「全て」を読み、選ぶ順序を保つ、第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す
必要な履修:数学Ⅰ・数と式、数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:C 総合
問題
$O=(0,0)$とする。原点と異なる二つの格子点$A=(p,q),B=(r,s)$($p,q,r,s$は整数)を通る直線$OA,OB$のなす小さい方の角は、$\pi/3$にならないことを示せ。ただし格子点とは、両座標が整数の点である。
整数座標から有理数として取り出せる方向の情報と、指定角の三角値を比べてください。
二直線がいずれも鉛直でなければ、その傾き$m_1=q/p,m_2=s/r$は有理数である。$1+m_1m_2=0$なら二直線は垂直なので、なす角は$\pi/2$。それ以外では、なす小さい角$\varphi\in[0,\pi/2)$について
$\displaystyle \tan\varphi=\left|\frac{m_2-m_1}{1+m_1m_2}\right|$
は有理数である。しかし$\varphi=\pi/3$なら$\tan\varphi=\sqrt3$で無理数だから矛盾する。
少なくとも一方が鉛直の場合、両方が鉛直なら角は$0$。他方が水平なら角は$\pi/2$。他方の傾き$m$が零でない有理数なら$\tan\varphi=1/|m|$は有理数であり、同じ矛盾を得る。従って$\pi/3$にはならない。
禁止したい角は与えられていますが、角そのものを座標から求める必要はありません。整数座標からまず確実に取り出せるのは、鉛直を除く直線の有理な傾きです。傾きは方向角の正接なので、角の差の正接を作ると、四則演算で有理性を保てます。目標角の正接が無理数であることと衝突させるための選択です。
余弦を座標から作る候補もありますが、長さの平方根が入り、有理性の保存が見えにくくなります。今回は正接の方が要求する矛盾へ直結します。その代わり、鉛直線と分母零を先に分ける必要があります。小さい角を取るため絶対値も残します。
格子点の距離や配置を全て列挙する仕事は不要です。図形の整数条件→有理な比→角の差の有理式→既知の無理数との矛盾、という接続を認識する問題です。
この問の役割:格子点から有理な比を発見し、角の差と無理性へ接続。
講義編の対応箇所
整数座標と二直線の角 → 非鉛直なら傾きを方向角の正接として読む
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第3節 正接のグラフ
判断:第2回・§14 距離や軌跡を、円の座標へ翻訳する、第2回・§18 有理・無理では、有限回の公式が橋になる
角の差を知りたい、有理性を保ちたい → 正接の差の式を優先し分母零を分ける
知識:第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第2回・§7 角の差だけでなく、和・積・商を読む、第2回・§18 有理・無理では、有限回の公式が橋になる
鉛直線または指定角の無理な正接 → 例外を別処理して矛盾を完成する
知識:第1回・第2節 象限と符号、基本的な値、第1回・第3節 正接のグラフ
判断:第2回・§14 距離や軌跡を、円の座標へ翻訳する、第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す、第2回・§18 有理・無理では、有限回の公式が橋になる
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、いろいろな式
学習の役割:C 総合
問題
(1)$\cos(2\pi/5)$を求めよ。(2)$\cos(2026\cdot2\pi/5)+\cos(2025\cdot2\pi/5)$を求めよ。(3)$x^{2026}+x^{2025}$を$x^4+x^3+x^2+x+1$で割った余りを求めよ。
五等分の角で等しくなる二つの余弦と、巨大な添字の余りを別々に見ます。
(1)$\theta=2\pi/5,c=\cos\theta$とする。$\cos3\theta=\cos2\theta$より$(c-1)(4c^2+2c-1)=0$。$0\lt c\lt 1$なので$c=(\sqrt5-1)/4$。
(2)$2026$は$5$で割って$1$余り、$2025$は$5$の倍数。周期から答えは$1+c=(3+\sqrt5)/4$。
(3)$x^5-1=(x-1)(x^4+x^3+x^2+x+1)$なので、割る多項式に関して$x^5$と$1$の余りは同じ。よって求める余りは$x+1$。
五等分の角なので、二倍と三倍が余弦の対称性で同じ値になります。そこから元の余弦の低次数の方程式を作れることが、全面的な五倍角展開より有利な候補です。二次の根を出した後は角の範囲で符号を選びます。
巨大な添字の小問では、その多項式を展開する必要はありません。角の周期が五倍で戻るので余りで添字を減らします。最後の多項式の余りも、割る式と$x^5-1$の関係が同じ周期を作ります。ただしここは数値の三角値ではなく多項式全体の合同関係なので、最後に余りの次数が条件を満たすことを確認します。
この問の役割:添字の周期と整数の余りを接続。
講義編の対応箇所
五等分の角で二倍と三倍の余弦が同じ → 高次数展開を避け低次の多項式を作る
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る、第1回・第2節 円の対称性を読む、第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第2回・§20 高倍角は、固定次数・変動次数・有理性で選び分ける
実根が複数 → 角の範囲の符号で根を選ぶ
知識:第1回・第2節 象限と符号、基本的な値
判断:第2回・§20 高倍角は、固定次数・変動次数・有理性で選び分ける
巨大な添字と多項式の余り → 周期またはxの5乗の置換で添字を減らし、余りの次数を確認する
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る
判断:第2回・§20 高倍角は、固定次数・変動次数・有理性で選び分ける
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、図形と方程式、いろいろな式
学習の役割:C 総合
問題
曲線$C:y=\sqrt{x+1}$($x\geq-1$)と、曲線$D:x=\sqrt{y+1}$($y\geq-1$)を考える。$D$を原点の周りに反時計回りに角$\alpha$($0\leq\alpha\leq\pi/2$)だけ回転した曲線と$C$の交点の個数と座標を求めよ。
二つの式の座標交換を一つの図形操作として見て、その後の回転とまとめられないか考えてください。
$D$は$C$を直線$y=x$に関して鏡映した曲線である。その後の回転との合成は、方向角$\psi=\pi/4+\alpha/2$の直線に関する鏡映である。
交点を$P$とし、その鏡映点を$Q$とする。$P,Q$はともに$C$上にある。もし$P\ne Q$なら、$C$の狭義増加性から弦$PQ$の傾きは正。一方、鏡映の性質から$PQ$は鏡映軸に垂直であり、その傾きは$\psi\in[\pi/4,\pi/2]$で負または零になる。矛盾するので$P=Q$、すなわち交点は軸上である。逆に$C$と軸の交点は鏡映で動かないので、求める交点である。
$\alpha\lt \pi/2$では$m=\tan(\pi/4+\alpha/2)\geq1$とおく。$\sqrt{x+1}=mx$より$x\geq0$であり、二乗すると$m^2x^2-x-1=0$。負根は不適、正根は元の式を満たす。従って交点は一個で、
$\displaystyle \left(\frac{1+\sqrt{1+4m^2}}{2m^2},\frac{1+\sqrt{1+4m^2}}{2m}\right).$
$\alpha=\pi/2$では軸は$x=0$で、交点は一個、$(0,1)$である。
二つの曲線は同じ式の座標交換なので、回転後の根号式をいきなり連立する前に、鏡映との合成を候補にできます。合成すると一つの直線を見つける仕事へ減ります。ただし、鏡映軸が分かっただけでは交点が軸上に限るとはいえません。
ここで根号の曲線は狭義増加、鏡映軸は第一象限の$45^\circ$から$90^\circ$の方向です。異なる二点の弦が正の傾きであることと、軸に垂直な方向であることが衝突するため、交点を軸へ絞れます。この方向の検査がなく、円などを同じように鏡映すれば、軸外にも交点を持ち得ます。
絞った後は根号方程式です。負根が出る二次式だけを解いて終えると、二乗で増えた候補を採ってしまいます。右辺$mx$の非負を残して正根を選び、逆に成立を確認します。最後の鉛直軸は正接で表せないので、端の回転を座標条件へ戻します。既習の鏡映判断を別の曲線へ運び、符号管理へ再分類する問題です。
この問の役割:別曲線の鏡映の弦の矛盾を検査し、根号の符号へ接続。
講義編の対応箇所
| 問題中の手掛かり | そこから行う判断 | 第1回の知識 | 第2回の判断 |
|---|---|---|---|
| 二曲線が座標交換の関係 | 鏡映と回転を一軸への鏡映へまとめる | 加法定理と分母 | §15 |
| 増加曲線と第一象限の鏡映軸 | 弦の方向を比較し軸上の点へ絞る | 単位円の座標と比 | §15 |
| 軸と根号曲線の連立 | 二乗の前に非負を残し負根を除く | 二乗和と正接 | §12 |
| 回転端で軸が鉛直 | 正接の式を使わず座標から端を戻す | 正接の枝と未定義点 位相と元の角の範囲 | §15、§12 |
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、図形と方程式
学習の役割:C 総合
問題
円盤$E:(x-1)^2+y^2\leq4$を原点の周りに、全ての回転角で回転する。(1)少なくとも一つの回転後の円盤に含まれる点の集合、(2)全ての回転後の円盤に含まれる点の集合を求めよ。(3)円盤をその境界の円周だけに変えたとき、(1)(2)に対応する二つの集合を求めよ。
回転しても変わらない量と、回転で動く量を分け、固定した点から円の中心までの距離を調べてください。
回転後の中心は単位円上を動き、半径は$2$である。点$P$の原点からの距離を$r\geq0$とする。中心を$Q$とすると、$PQ$は$|r-1|$から$r+1$までの全ての値を取る。$r\gt 0$では余弦定理$PQ^2=r^2+1-2r\cos\beta$から従い、$r=0$では常に$1$である。
(1)ある中心で$PQ\leq2$となる条件は$|r-1|\leq2$、従って$0\leq r\leq3$。答えは$x^2+y^2\leq9$。
(2)全ての中心で$PQ\leq2$となる条件は$r+1\leq2$、従って$0\leq r\leq1$。答えは$x^2+y^2\leq1$。
(3)ある中心で$PQ=2$となる条件は$|r-1|\leq2\leq r+1$、すなわち$1\leq r\leq3$。答えは$1\leq x^2+y^2\leq9$。全ての中心で$PQ=2$となる点はない。実際$r\gt 0$では最大距離と最小距離が異なり、$r=0$では距離が$1$だからである。
原点を中心とする円盤なら回転しても条件は変わりませんが、今回は中心がずれています。保存されるのは点の原点からの距離と円の半径、動くのは中心の方向です。固定した点からその中心までの距離を三角関数で表すと、回転の全条件を一つの距離の値域へ渡せます。
「ある回転」は最短距離が半径以内か、「全て」は最長距離が半径以内か、という別の出力です。境界だけなら、半径が距離の値域に入るか、距離の全値が半径に一致するかへ選び直します。円盤の結果から境界を機械的に取るのではありません。
距離の端は中心を同じ方向・反対方向へ置いて実現します。中間値も角を動かして実現できることを余弦の値域で確かめます。存在条件に必要なのは単なる上下界でなく、間の値も本当に取れるという情報です。
この問の役割:ずれた中心の回転を距離の値域へ移し、存在・全称・境界へ再分類。
講義編の対応箇所
原点からずれた円盤を全方向回転 → 動く中心と固定点の距離を角一つで表す
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第2回・§14 距離や軌跡を、円の座標へ翻訳する、第2回・§16 「存在」と「全て」を読み、選ぶ順序を保つ
少なくとも一つか全てか → 距離の最小または最大を半径と比較する
知識:第1回・第3節 正弦・余弦のグラフ
判断:第2回・§16 「存在」と「全て」を読み、選ぶ順序を保つ
円周だけへ条件が変わる → 値域に半径が入るか全値が一致するかを再分類する
知識:第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す、第1回・第6節 不等式は、点ではなく円弧を探す
判断:第2回・§16 「存在」と「全て」を読み、選ぶ順序を保つ
必要な履修:数学Ⅰ・方程式、数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:C 総合
問題
$0\leq\theta\lt 2\pi$で、$\sqrt{2+2\cos2\theta}=1+\sin\theta$を解け。
二乗してよい条件を先に確かめ、その後にどの三角値へそろえると一変数になるか比べてください。
左辺の根号内は$4\cos^2\theta\geq0$、右辺は$1+\sin\theta\geq0$である。従って二乗は同値で、$s=\sin\theta$とおくと
$\displaystyle 4(1-s^2)=(1+s)^2\quad\Longleftrightarrow\quad(s+1)(5s-3)=0.$
よって$s=-1,3/5$。$\sin\alpha=3/5$を満たす$0\lt \alpha\lt \pi/2$の角を$\alpha$とすると、解は$\alpha,\pi-\alpha,3\pi/2$である。
根号があるので二乗は候補ですが、その前に両辺の非負を確認します。ここでは右辺が非負なので、二乗した候補に新しい符号条件を加える必要はありません。これが、講義の右辺が正負を取る例との違いです。
倍角の余弦を正弦へ戻すと、右辺と同じ一変数の二次式になります。左辺を$2|\cos\theta|$として区間分けする方法も使えますが、非負が既に確保されている今回は二乗して正弦へそろえる方が短くなります。最後には正弦の内点と端点で対応する角数を変え、$s=-1$の一角も残します。
この問の役割:倍角と二乗の同値性から正弦の端・内点へ接続。
講義編の対応箇所
根号と1+正弦 → 根号内と右辺の非負を確認し二乗の同値性を確保する
知識:第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る、第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す
倍角の余弦と一次の正弦 → 正弦へそろえて二次方程式を解く
知識:第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第2回・§1 求めるものが変わると、変換後の仕事も変わる
内点の根と端の根 → 指定区間の角へ戻し端の一角を残す
知識:第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す
判断:第2回・§4 二次方程式の根を、角の個数へ戻す、第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:C 総合
問題
$\dfrac{\sin(\theta+\pi/6)}{\cos(\theta-\pi/6)}=2$を満たす$\theta$について、$\tan\theta$を求めよ。
商の値から比を求めます。最初の分母条件を変形後にも残してください。
$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とする。元の分母は非零。加法定理と分母を払う操作から$(\sqrt3-2)s+(1-2\sqrt3)c=0$。$c=0$なら分子分母の比は$\sqrt3$で不適なので、$c\ne0$。
$\displaystyle \tan\theta=\frac{2\sqrt3-1}{\sqrt3-2}=-4-3\sqrt3.$
この正接では分母は$c(\sqrt3+\tan\theta)/2\ne0$であり、元の比も$2$となる。
同じ定数差の二角ですが、要求は商の値から正接を出すことです。加法定理で同じ角の一次式にし、分母が非零という元の条件を保持して分母を払えば、正弦と余弦の比へ移れます。
余弦零では比を作れないため元の商を直接確かめます。不適と分かった後で正接への置換し、最後には得た比が元の分母を零にしないことまで戻します。商の代数化では、候補を出す操作と除外値の確認を往復する必要があります。
この問の役割:異なる角の商を一次式へし、正接の定義域へ接続。
講義編の対応箇所
定数差の二角の商から正接を問う → 加法で同じ角にそろえ、元の分母非零を保ち払う
知識:第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第2回・§7 角の差だけでなく、和・積・商を読む、第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す
正弦余弦の一次関係 → 余弦零を調べてから比を求める
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標
判断:第2回・§5 比を答えたいから、定数を同じ次数へそろえる、第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す
正接の候補が出た → 元の商の分母非零と値2を戻して確認する
知識:第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第2回・§7 角の差だけでなく、和・積・商を読む、第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す
必要な履修:数学Ⅰ・二次関数、数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:C 総合
問題
全実数$\theta$について
$\displaystyle F(\theta)=\frac72-\frac32\cos2\theta-2\sin2\theta-8\sin\theta+4\cos\theta$
の最大値・最小値を求め、それぞれを取るときの$(\sin\theta,\cos\theta)$を全て求めよ。
角と倍角が混在しています。一次項の係数比から候補を作り、残りの項もその量だけで決まるか検査してください。
$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とし、$q=2s-c$とおく。倍角と$s^2+c^2=1$より
$\displaystyle F=1+4s^2-4sc+c^2-8s+4c=q^2-4q+1=(q-2)^2-3.$
合成から$-\sqrt5\leq q\leq\sqrt5$で、この全ての値が実現する。軸$2$は区間内にあるので、最小値は$-3$。端の比較から最大値は$6+4\sqrt5$で、$q=-\sqrt5$のときに取る。
最大の等号条件は$(s,c)=(-2/\sqrt5,1/\sqrt5)$。最小では$c=2s-2$を二乗和へ代入すると$5s^2-8s+3=0$より、$(s,c)=(1,0),(3/5,-4/5)$。いずれも単位円上にあるから角で実現する。
一次の角と倍角が混在するので、式全体を一回の合成でまとめることはできません。極値の要求に対し、倍角部分だけを合成しても一次項が残り、同じ角で両者が極値を取るとは限りません。そこで次数を上げる費用はあっても、倍角を$s^2,sc,c^2$へ戻し、一次項と共通の量を探す候補が生まれます。
一次項$-8s+4c$は$2s-c$の倍数です。この係数比が$q$の候補を作ります。まだ答えになる保証はないので、二次部分から$q^2$を引き、二乗和による定数だけが残るかを検査します。残ると分かって初めて、一変数へ進みます。講義の候補と同じ$q$を思い出す問題ではなく、今回の係数から候補を作り直す問題です。
次は$q$の像を合成で渡し、数学Ⅰの二次関数へ移ります。軸と端を比べて値を決めた後にも、今回の要求には等号を取る座標が残っています。像の端は合成の等号条件で、内点$q=2$は直線と単位円の連立で復元します。一つの$q$に複数の点があるため、最小の等号条件を一組だけにしません。
この問の役割:倍角に隠れた二次式を一次係数から発見し、像・二次関数・等号座標へ接続。
講義編の対応箇所
| 問題中の手掛かり | そこから行う判断 | 第1回の知識 | 第2回の判断 |
|---|---|---|---|
| 一次の角と倍角が混在し極値が欲しい | 倍角を二次式へ戻し一次項の係数比から候補を作る | 倍角・半角・三倍角 二乗和と正接 | §3 |
| 候補の二乗と二次部分の差 | 二乗和の定数だけが残るか検査して一変数へする | 二乗和と正接 | §3 |
| 置換後は二次関数 | 合成の像を渡し軸と両端を比較する | 振幅・位相・値域 | §1、§2、§3 |
| 値だけでなく等号の座標も要求 | 像の端と内点を別に単位円上へ復元する | 単位円の座標と比 基本方程式・角の系列 | §3、§14、§4 |
必要な履修:数学Ⅰ・図形と計量、数学Ⅱ・三角関数、図形と方程式
学習の役割:B 転移
問題
$A=(-1,0),B=(1,0)$とし、$P=(x,y)$は$y\gt 0$を満たす。(1)$\angle APB=\pi/3$となる点の軌跡を求めよ。(2)$\angle APB=2\pi/3$に変えると軌跡はどうなるか。
二つの指定角は、余弦の符号にどんな違いがあるでしょうか。
$R=x^2+y^2$とすると、余弦定理から$\cos\angle APB=(R-1)/(AP\,BP)$、$(AP\,BP)^2=(R-1)^2+4y^2$。$y\gt 0$なので$AP,BP$は非零である。
(1)$\cos\angle APB=1/2$なので$R-1\gt 0$。二乗して$3(R-1)^2=4y^2$、符号から$R-1=2y/\sqrt3$となる。従って軌跡は$x^2+(y-1/\sqrt3)^2=4/3$、$y\gt 0$である。逆にこの円弧上では$R-1=2y/\sqrt3\gt 0$、余弦定理の余弦は$1/2$となるので、元の角を満たす。
(2)余弦が$-1/2$なので$R-1\lt 0$を残す。同じ二乗の式から$R-1=-2y/\sqrt3$、軌跡は$x^2+(y+1/\sqrt3)^2=4/3$、$y\gt 0$。逆向きも余弦が$-1/2$と確認できる。いずれも$y=0$の端点$A,B$は含まない。
固定した二点を見込む角が一定なので、円周角から円弧を疑う候補が出ます。中心が直ちに決まらなくても、余弦定理なら角を三辺へ移せます。座標の距離の二乗を使うと、共通する$x^2+y^2$が残って円の式を作れます。
二つの角は正弦が等しく余弦の符号が逆です。二乗によって両者を同じ式にすると、必要な枝を区別できなくなります。そこで平方化の前に鋭角・鈍角の符号を記録し、$y\gt 0$と合わせて根号の枝を選びます。
最後は円の条件から余弦定理へ戻して、元の角と端の非退化を確認します。三角関数の処理だけでなく、図形の角を代数へ翻訳し、必要条件の円弧から十分性を戻す訓練です。
補角では正弦が同じため、正弦だけの条件を二乗しても二つの軌跡を区別できません。余弦の符号が「鋭角か鈍角か」という問題文の情報を保存します。計算結果にどの円が合うかを後から選ぶのでなく、二乗前に符号を残します。
この問の役割:角と符号の条件が変わる軌跡の近い転移。
講義編の対応箇所
二点を見込む固定角 → 円周角の候補と余弦定理での距離の式を比べる
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第2回・§14 距離や軌跡を、円の座標へ翻訳する
鋭角と鈍角で余弦の符号が違う → 二乗前の符号を残して円の枝を分ける
知識:第1回・第2節 象限と符号、基本的な値、第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る
判断:第2回・§14 距離や軌跡を、円の座標へ翻訳する、第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す
円弧の候補 → 余弦定理へ戻り、角と端の非退化を確かめる
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標
判断:第2回・§14 距離や軌跡を、円の座標へ翻訳する
追加の履修がある問題です。三角関数が何を渡し、接続先が何を処理するかを分けます。
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学B・数列
学習の役割:C 総合
問題
正整数$n$と実数$x$について、$\displaystyle\sum_{k=0}^{n-1}\sin((2k+1)x)$を求めよ。
隣の添字で同じ項が消える差を作れるか、角の並びを見てください。
$\sin x\ne0$では、$2\sin x\sin((2k+1)x)=\cos2kx-\cos(2k+2)x$を足して
$\displaystyle \sum_{k=0}^{n-1}\sin((2k+1)x)=\frac{1-\cos2nx}{2\sin x}=\frac{\sin^2nx}{\sin x}.$
$\sin x=0$では全ての項が$0$なので、和は$0$。
角が等差で並び、求めるのは和です。各項を別々に計算するより、隣り合う添字で同じ項が消える形を作れないかを考えます。積和に正弦二つの積から余弦の差を作る式があり、$\sin x$を掛けると差の二角がちょうど隣の偶数倍になります。
足した後は最初と最後だけが残ります。ここで$\sin x$が非零なら割って和を復元できます。零なら変形の逆向きは使えないので、元の各項へ戻して確認します。消去を作る因子と、その因子で割る条件を別々に扱う問題です。
この問の役割:積和・望遠和と除外角の処理を接続。
講義編の対応箇所
等差の角の和 → 隣の添字で消える差を作れる積和の因子を試す
知識:第1回・第4節 積和公式は、加法定理の二式から積を取り出す
判断:第2回・§10 高倍角でも、零点だけなら積を作る、第2回・§20 高倍角は、固定次数・変動次数・有理性で選び分ける
足して最初と最後が残る → 非零の因子で割って和を復元する
知識:第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第2回・§20 高倍角は、固定次数・変動次数・有理性で選び分ける
掛けた因子が零の場合 → 元の各項を直接調べて欠落を補う
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る
判断:第2回・§9 割る前に、符号と零点を扱う手間を比べる、第2回・§20 高倍角は、固定次数・変動次数・有理性で選び分ける
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、いろいろな式、数学A・数学と人間の活動、数学B・数列
学習の役割:A 定着・復習
問題
$\theta/\pi$と$2\cos\theta$がともに有理数であるとする。$2\cos\theta$の取り得る値を全て求めよ。
二つの有理性の条件を、一つの式へ結ぶには何を記録すればよいでしょうか。
$q=2\cos\theta$、$C_n=2\cos n\theta$とする。加法定理から$C_0=2,C_1=q,C_{n+1}=qC_n-C_{n-1}$。帰納法で$n\geq1$の$C_n$は$q$の整数係数・最高次係数$1$の多項式になる。
$\theta/\pi$が有理なので、ある正整数$m$で$m\theta$は$2\pi$の整数倍、従って$C_m=2$。$q=p/r$を既約、$r\gt 0$とすると、$C_m(q)-2=0$に$r^m$を掛けた式から$r$は$p^m$を割る。既約性により$r=1$。よって$q$は整数で$-2\leq q\leq2$。答えは$-2,-1,0,1,2$で、$\theta=\pi,2\pi/3,\pi/2,\pi/3,0$でそれぞれ実現する。
角が$\pi$の有理数倍という情報は、整数回の角の加算で一周へ戻ることを意味します。一方、三角値の有理性は、分母の割り切りへ渡したい条件です。二つを結ぶには、角の加算を整数係数の多項式として記録する候補が出ます。
余弦そのものより$2\cos n\theta$を残すと、漸化式の係数の二が消え、最高次係数が一の整数係数多項式になります。これが分母を追うための選択です。周期から多項式が零となる式を一つ得たら、既約分母を払って整数性を示します。
最後は値域から整数の候補を有限個へ絞り、それぞれの角を作ります。三角関数の固有部分は周期・加法・値域、残る論証は整数です。有理な角だから三角値も有理、と推論する問題ではありません。
この結論は「角が$\pi$の有理数倍」という仮定に依存します。その仮定を外せば、例えば$2\cos\theta=6/5$となる角も存在します。三角値の有理性だけから整数性を結論しません。
この問の役割:§20の有理余弦の整数条件の証明を運用する復習。
講義編の対応箇所
角がπの有理数倍 → 有限回の加算で一周へ戻る整数mを作る
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る
判断:第2回・§20 高倍角は、固定次数・変動次数・有理性で選び分ける
三角値も有理数 → 二倍余弦の加法から最高次係数1の整数係数多項式を作る
知識:第1回・第4節 加法定理とは何か、第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第2回・§20 高倍角は、固定次数・変動次数・有理性で選び分ける
その多項式に有理根がある → 既約分母を払って整数性を示す
知識:第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る
判断:第2回・§20 高倍角は、固定次数・変動次数・有理性で選び分ける
整数候補と値域 → 五候補を絞り各角を作って十分性を示す
知識:第1回・第2節 象限と符号、基本的な値、第1回・第5節 三角関数の合成
判断:第2回・§20 高倍角は、固定次数・変動次数・有理性で選び分ける
必要な履修:数学Ⅱ・いろいろな式、三角関数、数学C・複素数平面
学習の役割:C 総合
問題
実数$a,b$について、$z^4-az^3+bz^2-az+1=0$の四根が、重複度を含めて全て絶対値$1$となるための必要十分条件を求めよ。
係数を前から読む場合と後ろから読む場合を比べます。
定数項が$1$なので$z\ne0$。$t=z+z^{-1}$とすると$t^2-at+b-2=0$。この二次式の根を$t_1,t_2$とすれば、四次式は$(z^2-t_1z+1)(z^2-t_2z+1)$である。
全根の絶対値が$1$なら$t_j=z+\overline z\in[-2,2]$。逆に$t_j\in[-2,2]$なら、各二次式の根は単位円上で、端$t_j=\pm2$の重根も適する。
$\Delta=a^2-4b+8$として、必要十分条件は$\Delta\geq0$かつ$|a|+\sqrt\Delta\leq4$。整理すると
$\displaystyle \boxed{|a|\leq4,\qquad2|a|-2\leq b\leq a^2/4+2}.$
最後の整理を確かめると、二根$(a\pm\sqrt\Delta)/2$が$[-2,2]$内にある条件は$\sqrt\Delta\leq4-|a|$。右辺の非負性から$|a|\leq4$、二乗から$b\geq2|a|-2$、$\Delta\geq0$から$b\leq a^2/4+2$が出る。逆にこれら三条件なら同じ不等式へ戻れるので十分でもある。
係数が前後で対称なので、逆数の二項をまとめる候補が出ます。定数項が非零なら根が零でないため、中央の冪で割れます。$z+1/z$を置けば四次が二次へ落ちることを、次数と対称性から予測できます。
要求は根の絶対値が一です。単位円上なら逆数は共役で、和は$2\cos\theta\in[-2,2]$。従って二次式の二根の配置へ翻訳します。逆にその区間の実数から単位円上の二根を作れるので、必要条件だけでは終わりません。
二次式の判別式と両根の上下限を組み合わせ、絶対値の不等式へ整理します。境界の重根も問題文では許されているため含めます。単位円上の条件と、有限回の冪で一になる条件は区別してください。
この問の役割:相反四次式を二次の根の配置へし、単位円の根へ戻す。
講義編の対応箇所
| 問題中の手掛かり | そこから行う判断 | 第1回の知識 | 第2回の判断 |
|---|---|---|---|
| 四次式の係数が前後対称 | 零根がないと確かめ中央冪で割り逆数対をまとめる | 二乗和と正接 | §20 |
| 単位円上の根という要求 | 逆数が共役になる和を二倍余弦の像へ翻訳する | 単位円の座標と比 | §20 |
| 二次式の二根の配置 | 判別式と両根の端条件を合わせる | 基本方程式・角の系列 | §4、§20 |
| 境界の重根も許される | 単位円の根を逆に作って必要十分を閉じる | 単位円の座標と比 基本方程式・角の系列 | §20 |
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学A・場合の数と確率
学習の役割:A 定着・復習
問題
原点から出発し、毎回独立に、角$0,2\pi/3,4\pi/3$の三方向のいずれかを等確率で選んで距離$1$だけ進む。正整数$n$回後に原点にいる確率を求めよ。
終点を決める情報に、歩いた順まで必要でしょうか。
三方向の移動回数を$H_0,H_1,H_2$とすると、変位は$(H_0-(H_1+H_2)/2,\sqrt3(H_1-H_2)/2)$。零となる条件は$H_0=H_1=H_2$。従って$n$が$3$の倍数でないとき確率は$0$。
$n=3m$なら、方向0の位置を${}_{3m}C_m$通り、残りから方向1を${}_{2m}C_m$通り選ぶ。全$3^{3m}$列は等確率なので、答えは${}_{3m}C_m{}_{2m}C_m/3^{3m}$。
三方向は等角で一周を分けています。独立に方向を選ぶ設定なので、最後の位置は歩いた順ではなく方向別の回数で決まります。各方向の余弦・正弦を座標へして和を零と置くと、三回数が等しい条件へ移れます。
そこからは整数条件と数え上げです。総歩数が三の倍数かを最初に分け、適する場合は各方向を配置する位置を二項係数で数えます。途中経路の形を追うより、終点を判定するのに必要な回数だけを記録する方が計算を減らせます。
この問の役割:§19と同じ三方向独立選択。方向回数と列数の定着として保持。
講義編の対応箇所
独立に三方向を選ぶ → 各方向の座標を方向別回数に掛けて終点を出す
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第2節 象限と符号、基本的な値
判断:第2回・§19 周期を見たら、方向別の回数と時系列を区別する
終点の二座標が零 → 三回数の等しさと歩数の割り切りを得る
知識:第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る
判断:第2回・§19 周期を見たら、方向別の回数と時系列を区別する
適する回数が固定 → 方向を置く位置を数え全列の等確率で割る
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る
判断:第2回・§19 周期を見たら、方向別の回数と時系列を区別する
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学A・場合の数と確率
学習の役割:C 総合
問題
原点から右向きに出発する。各回、独立に等確率で「現在の向きに距離$1$進む」か「その場で反時計回りに$\pi/2$回す」を選ぶ。八回の操作後、原点にいて、かつ右向きである確率を求めよ。
終点の位置と最後の向きは、それぞれ何の回数・どの履歴で決まるでしょうか。
進む操作を$F$、回す操作を$R$と書く。八回の列は全て確率$2^{-8}$。最後に右向きとなるには$R$の回数が$0,4,8$である。
回転が零回では八歩右へ進み不適。回転が八回では位置は原点のままで適する一列である。回転が四回では、四つの$R$の前後に入る$F$の個数を順に$a,b,c,d,e\geq0$とすると$a+b+c+d+e=4$で、終点は$(a-c+e,b-d)$。
原点となる条件は$a+e=c,b=d$。従って$c+d=2$である。$(c,d)=(0,2),(1,1),(2,0)$に対し$a+e=c$の非負整数解は順に$1,2,3$通り。各五つ組は一つの操作列に対応するから、六列である。求める確率は$(1+6)/2^8=7/256$。
戻る位置だけでなく、最後の向きも指定されています。向きは回転回数の四で割った余りで決まり、この条件から回転回数を先に絞れます。一方、位置は各回転の間に何歩進んだかに依存します。回転回数だけでは終点を決められません。
毎回独立なのは二種類の操作の選択であり、進む方向の選択ではありません。三方向へ独立に進む前問の多項係数を、そのまま流用しないことが重要です。回転の間のブロックへ零歩も許して配れば、履歴の依存を保ったまま短い整数条件へ移れます。
座標の二条件から反対方向の歩数が等しいと分かり、総歩数から$c+d=2$へ再分類できます。最後に全て回転する零移動の列も加えます。「原点」と「右向き」を別々に翻訳し、同じ列で両方を満たすことを確かめる問題です。
この問の役割:四方向の履歴依存と最後の向きを同時に翻訳。
講義編の対応箇所
| 問題中の手掛かり | そこから行う判断 | 第1回の知識 | 第2回の判断 |
|---|---|---|---|
| 終点と最後の向きを同時指定 | 回転の周期から許される回転回数を絞る | 周期と定義域 | §19 |
| 進む方向が以前の回転に依存 | 回転の間の零歩を許すブロックで列を表す | 単位円の座標と比 象限・特殊角 | §19 |
| 四方向の座標と総歩数 | 位置の二条件を非負整数の配分へ移す | 単位円の座標と比 | §19 |
| 零移動の列と等確率の全列 | 例外を加え一対一の列数を全列数で割る | 周期と定義域 | §19 |
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学B・数列、数学C・複素数平面
学習の役割:B 転移
問題
$z_0=1+i$とし、$z_{n+1}$は$z_n$を原点を通り偏角$n\pi/6$の直線に関して鏡映した点とする。$z_n$を求め、数列の最小の正の周期を求めよ。
軸の向きと同じ角だけ座標を回すと、何が一定になるか試します。
$c(\beta)=\cos\beta+i\sin\beta$とこの解答内で略記する。鏡映から$z_{n+1}=c(n\pi/3)\overline{z_n}$。$q_n=c(-n\pi/6)z_n$とすると$q_{n+1}=c(-\pi/6)\overline{q_n}$、従って$q_{n+2}=q_n$。ゆえに
$\displaystyle z_{2m}=c(m\pi/3)(1+i),\qquad z_{2m+1}=c(m\pi/3)(1-i).$
周期$12$で戻る。偶数の周期$2m$には$c(m\pi/3)=1$が必要なので最小は$12$。奇数で$z_{2m+1}=z_0$となるには$c(m\pi/3)=i$が必要だが、整数$m$では不可能。従って最小周期は$12$。
軸の角が等差で増え、鏡映を繰り返しています。各回を静止座標で展開すると添字に依存する係数が続くので、軸と同じ角を引く座標が候補です。鏡映式にその回転を入れ、係数が本当に定数になるかを計算します。
固定した座標では二回の鏡映で戻るため偶奇に分かれます。しかし元の点には回転因子が残り、周期二とは答えられません。元へ戻した式で、偶数回に一周する条件と奇数回に出発点へ戻る条件を比べます。変換先の周期と元の周期を分ける最後の確認が必要です。
回転座標で二周期になったのは$q_n$であって、元の$z_n$ではありません。戻す係数も同時に周期を満たす必要があります。初期点が鏡映の固定軸上などにあるとより短い周期もあり得るため、最小周期は初期点への戻り方まで検査します。
この問の役割:動く軸の一般式を初期値と最小周期へ運ぶ近い転移。
講義編の対応箇所
鏡映軸の角が等差で増える → 軸と同じ回転を引いた座標を試す
知識:第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第2回・§21 動く軸を固定するが、定数化を計算で確かめる
回転後の鏡映式 → 係数が一定になることを計算し二回分を合成する
知識:第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第2回・§21 動く軸を固定するが、定数化を計算で確かめる
変換先は二周期 → 静止座標へ戻し偶数と奇数の帰還を調べる
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る
判断:第2回・§21 動く軸を固定するが、定数化を計算で確かめる
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、図形と方程式、数学C・複素数平面
学習の役割:C 総合
問題
$z=\cos\theta+i\sin\theta$、$0\lt \theta\lt 2\pi$とする。$w=(z+1)/(z-1)$の表す点の軌跡を求めよ。
円上の点という条件は、分子と分母の共通因子に使えます。
指定区間で$z\ne1$。$h=\theta/2$とすると$0\lt h\lt \pi$で$\sin h\gt 0$。倍角から$z+1=2\cos h(\cos h+i\sin h)$、$z-1=2i\sin h(\cos h+i\sin h)$。従って$w=-i\cos h/\sin h$は純虚数である。
逆に任意の純虚数$w=it$($t$は実数)を取ると、$w\ne1$なので$z=(w+1)/(w-1)$が定義される。$|w+1|=|w-1|$より$|z|=1$、また$z=1$は$w+1=w-1$となり不可能。従って$0\lt \theta\lt 2\pi$の角で表せ、元の変換も成立する。答えは虚軸全体。
動点は単位円を一周し、分数変換には$z-1$が分母として現れます。偏角で$z$を表すと、$z\pm1$には半角の共通因子があり、比からその因子が消えます。単なる有理式の展開より、単位円と半角の対応を使う方法が軌跡へ短く届きます。
半角の正弦は指定区間で正なので、分母を払う条件も確定しています。結果は純虚数ですが、「虚軸に入る」という必要条件だけでは軌跡は完成しません。任意の虚軸上の点から元の$z$を逆算し、絶対値一・除外点以外という条件を確かめます。
原点も含むか、分母の極に対応する端は何かを確認してください。三角関数は単位円の媒介変数と半角の比として、変換の全範囲を記述しています。
例えば$\theta=\pi$では$w=0$で、虚軸の原点も含まれます。一方、欠落する$\theta=0,2\pi$は元の分母が零です。分子が零になる場合と、変換自体が未定義になる場合を分けると、軌跡の欠ける点を取り違えません。
この問の役割:複素数の商を半角と直線の実現範囲へ接続。
講義編の対応箇所
単位円の分数でz±1がある → 倍角から半角の共通因子を作り比を簡単にする
知識:第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第2回・§11 半角正接は、角の和へ近付くために選ぶ、第2回・§21 動く軸を固定するが、定数化を計算で確かめる
半角の開区間 → 正弦の非零を保ち純虚数という必要条件を得る
知識:第1回・第2節 象限と符号、基本的な値、第1回・第2節 定義は、円上の点の座標
判断:第2回・§11 半角正接は、角の和へ近付くために選ぶ、第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す
軌跡の全体が要求される → 任意の純虚数から逆算し元の円と除外点を確認する
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標
判断:第2回・§14 距離や軌跡を、円の座標へ翻訳する、第2回・§21 動く軸を固定するが、定数化を計算で確かめる
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学C・ベクトル
学習の役割:C 総合
問題
$0\leq\theta\lt 2\pi$とし、空間の点$A=(\cos\theta,\sin\theta,1)$、$B=(\cos2\theta,\sin2\theta,-1)$を考える。原点$O$から直線$AB$へ下ろした垂線の足を$P$とする。$O$が直線$AB$上にある場合は$P=O$とする。(1)$P$の座標を求めよ。(2)$OP^2$の値域と、最大・最小となる$\theta$を求めよ。
二点の原点からの距離を先に比べてください。垂直という条件は、どのベクトルの内積で確かめられますか。
$A,B$は第三座標が異なるので相異なる。$\vec{OA}=\vec u,\vec{OB}=\vec v$とおくと$|\vec u|^2=|\vec v|^2=2$。中点$M$について
$\displaystyle \vec{OM}\cdot\vec{AB}=\frac12(\vec u+\vec v)\cdot(\vec v-\vec u)=\frac12(|\vec v|^2-|\vec u|^2)=0.$
従って$P=M$で、座標は$((\cos\theta+\cos2\theta)/2,(\sin\theta+\sin2\theta)/2,0)$。
加法定理から$\vec u\cdot\vec v=\cos\theta\cos2\theta+\sin\theta\sin2\theta-1=\cos\theta-1$。よって
$\displaystyle OP^2=\frac14|\vec u+\vec v|^2=\frac{1+\cos\theta}{2}.$
値域は$[0,1]$。最大$1$は$\theta=0$、最小$0$は$\theta=\pi$のときに取る。
垂線の足という図形条件は、直線上の点と直線の方向の内積が零、という条件へ翻訳できます。一般の点を$A+t(B-A)$と置いても解けますが、原点からの二点の距離が等しいことを先に読むと中点が候補になり、一つの内積で確かめられます。全座標の連立より短い理由がここにあります。
足を決めた後には、長さの二乗の値域が要求されています。二つのベクトルの和の二乗を展開すると、内積に異なる角の積が現れます。同じ正弦・余弦の組合せなので、角の差の余弦へまとめると一つの値域へ帰着します。
最後に元の$\theta$の半開区間で最大と最小を復元します。最小では足が原点になる退化も問題文で許され、除外しません。なす角の公式を直接代入する講義例題とは、図形条件から内積を作る入口が違います。
この問の役割:等距離・垂線の図形条件から内積を作り、加法定理と値域へ接続。
講義編の対応箇所
原点から等距離の二点と垂線の足 → 中点を候補にし直線方向との内積で確かめる
知識:第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る
判断:第2回・§22 角度条件は、長さで割った内積へ移す
二つのベクトルの和の長さ → 二乗を展開して内積を角の差の余弦へまとめる
知識:第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第2回・§7 角の差だけでなく、和・積・商を読む、第2回・§22 角度条件は、長さで割った内積へ移す
一つの余弦と半開区間 → 値域と等号を元の角へ戻し原点の足も含める
知識:第1回・第3節 正弦・余弦のグラフ、第1回・第6節 方程式は、同じ座標を持つ円上の点を探す
判断:第2回・§2 合成した後、山に届くかを調べる、第2回・§4 二次方程式の根を、角の個数へ戻す、第2回・§22 角度条件は、長さで割った内積へ移す
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学B・数列、数学C・複素数平面、数学Ⅲ・極限
学習の役割:C 総合
問題
平面上で、第一の移動の変位を複素数$1$で表す。次の移動は、直前の変位を反時計回りに$\pi/4$回し、長さを$\sqrt2/3$倍したものとする。原点から$n$回移動した点$z_n$と、その極限を求めよ。
一定の回転と倍率は、位置そのものと一回の変位のどちらに付いていますか。
変位の公比は$q=(1+i)/3$である。従って$z_n=(1-q^n)/(1-q)$。$|q|=\sqrt2/3\lt 1$なので$q^n\to0$、ゆえに$z_n\to1/(1-q)=(6+3i)/5$。
一回ごとの移動は、前の移動を一定回転して一定縮小したものです。回転と倍率は複素数の乗法で同時に記録でき、一定の公比へなります。位置ではなく変位にこの規則が付いているので、まず変位の等比数列を作り、位置はその和とします。
極限では公比の偏角でなく絶対値を調べます。縮小率が一未満なので冪は零に近づき、等比和の極限が使えます。ここは数列の仕事で、三角関数は回転を係数へ翻訳しています。
この問の役割:幾何的な移動を複素数の比へし、等比和と極限へ接続。
講義編の対応箇所
直前の変位を一定回転・一定縮小 → 位置でなく変位を一定の複素数倍として記録する
知識:第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第2回・§21 動く軸を固定するが、定数化を計算で確かめる
位置は変位の和 → 有限な等比和を作る
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る
判断:第2回・§21 動く軸を固定するが、定数化を計算で確かめる
極限の要求 → 公比の絶対値が1未満と確かめ極限を取る
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標
判断:第2回・§21 動く軸を固定するが、定数化を計算で確かめる
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学Ⅲ・極限、微分法
学習の役割:C 総合
問題
(1)実数$a$について、$-\pi\leq x\leq\pi$で方程式$x^2=a\sin x$の相異なる解の個数を求めよ。また、零でない解がある場合、その符号を$a$と関連付けて述べよ。
(2)$G_a(x)=x-a\sin x$が$[-\pi,\pi]$で狭義増加となる$a$の範囲を求めよ。
零と区間の端を先に分け、正の範囲でパラメータを一つの関数の値へ移す候補を考えてください。
(1)$x=0$は常に解で、$x=\pm\pi$は解でない。$0\lt x\lt \pi$では$\sin x\gt 0$なので、$a=g(x)=x^2/\sin x$と書ける。
$h(x)=\sin x-x\cos x$とおくと、$h(0)=0$、$h'(x)=x\sin x\gt 0$より$h(x)\gt 0$。従って
$\displaystyle g'(x)=\frac{x(2\sin x-x\cos x)}{\sin^2x}=\frac{x(\sin x+h(x))}{\sin^2x}\gt 0.$
さらに$\lim_{x\to0+0}g(x)=0$、$\lim_{x\to\pi-0}g(x)=+\infty$。連続性と狭義増加性から、正の解は$a\gt 0$のとき一個、それ以外はない。
負の解では$x=-u$($0\lt u\lt \pi$)とすると$u^2=(-a)\sin u$。従って$a\lt 0$のとき一個、それ以外はない。以上より$a=0$では一個、$a\ne0$では二個で、零でない解の符号は$a$の符号と一致する。
(2)$G_a'=1-a\cos x$。$|a|\lt 1$なら全区間で正。$a=1$では零点は$x=0$だけ、$a=-1$では両端だけであり、他では正なので、どちらも狭義増加である。$a\gt 1$では$0$の近く、$a\lt -1$では$\pi$の近くの内点で導関数が負となるため不適。従って$-1\leq a\leq1$。
境界でも、任意の二点間に導関数が正の小区間があり、全区間では非負である。非減少性とその小区間の増加を合わせれば、二点の関数値は厳密に増加する。
三角関数の外にも$x$が残るので、$\sin x$だけへ置いても元の$x^2$を一意に表せません。まず零と端を分け、正側では正弦で割ってパラメータを分離すると、固定した曲線と高さ$a$の交点数へ移れます。
直接$x^2-a\sin x$を微分する候補もありますが、パラメータによって導関数が変わります。商なら一つの増加性と値域の検査を全ての$a$に使えます。導関数の分子が直ちに正と見えなければ、講義で準備した$\sin x-x\cos x$の符号を使い、そこへ正の$\sin x$を加えればよいと再分類します。
元の左辺は偶関数、右辺の正弦は奇関数です。そのため同じ$a$で正負一対の解になるとは限りません。負側へ$x=-u$と戻すと$a$の符号が反転することを明示します。変数が三角関数の外に残る構造と、対称性の使い分けを問う問題です。
(2)は講義で扱った増加性の定着です。導関数が非負であることと、関数が狭義増加であることは同じ判定ではありません。境界で導関数零となる点が孤立していれば、任意の二点間には増加する小区間が残ります。零点を機械的に除いて$|a|\lt 1$としないことを再確認します。
この問の役割:(1)は外側の二乗から増加性・極限・符号反転へ接続。(2)は孤立零点と狭義増加の定着を確認。
講義編の対応箇所
| 問題中の手掛かり | そこから行う判断 | 第1回の知識 | 第2回の判断 |
|---|---|---|---|
| 変数が三角関数の外にも残る | 零と端を分け正側でパラメータを分離する | 象限・特殊角 偶奇性・対称角 | §23 |
| 商の増加性が欲しい | 導関数の分子を既習の正の量へ分ける | グラフの増減と交点 象限・特殊角 | §23 |
| 増加する商の両端の極限 | 値域と連続性から水平線との交点を一個にする | グラフの増減と交点 基本方程式・角の系列 | §23、§4 |
| 負側と偶奇の異なる両辺 | 変数反転でパラメータの符号も変えて元へ戻す | 偶奇性・対称角 | §23 |
| 別小問の導関数は境界で孤立した零点を持つ | 非減少と正の小区間を合わせ、狭義増加の境界を残す | グラフの増減と交点 | §23 |
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学Ⅲ・積分法
学習の役割:C 総合
問題
次の定積分を求めよ。 $(1)\ \int_0^{\pi/3}\dfrac{\sin x}{(2+\cos x)^2}\,dx$。 $(2)\ \int_0^{\pi/2}(\sin x+\cos x)^4\,dx$。 $(3)\ \int_0^{\pi/2}\sin(3x+\pi/4)\sin(x-\pi/4)\,dx$。
積分後に何を扱いたいかを考え、内側と微分因子、先に作れる二乗、異なる角の積を見比べてください。
(1)$u=2+\cos x$とすると$du=-\sin x\,dx$、両端は$3,5/2$で、
$\displaystyle -\int_3^{5/2}u^{-2}\,du=[u^{-1}]_3^{5/2}=\frac1{15}.$
(2)$(\sin x+\cos x)^4=(1+\sin2x)^2$だから、
$\displaystyle \int_0^{\pi/2}(1+2\sin2x+\sin^22x)dx=\frac\pi2+2+\frac\pi4=\frac{3\pi}4+2.$
(3)積和公式から被積分関数は$\{\cos(2x+\pi/2)-\cos4x\}/2=-(\sin2x+\cos4x)/2$。従って積分は$-1/2$。
(1)は三角関数の奇数冪ではありませんが、分母の内側の余弦と、その微分因子である正弦が見えます。置換後に$dx$とともに一変数の有理式になるため、展開や半角正接より先に試せます。
(2)は四乗を直ちに二項展開するより、まず二乗を作ると二乗和が$1$になり、倍角の二乗だけが残ります。その後の偶数冪は次数を下げて項ごとに積分します。隠れた基本関係を一段ずつ利用する例です。
(3)は二つの異なる角の積です。零点を求める要求なら因子を残しますが、ここでは原始関数が欲しいので積和で二つの余弦へ分けます。角の和と差と、置換の端の向きも答案で確認します。三小問は独立した方法選択の練習であり、三つを並べたこと自体を総合度とはしません。(2)に二段の接続があります。
この問の役割:(1)(3)は方法の表層を変えた転移、(2)は隠れた二乗から次数低下を接続。三小問の並列自体は総合度に数えない。
講義編の対応箇所
余弦を含む分母と外の正弦 → 内側の微分因子を保存して端も置換する
知識:第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る
判断:第2回・§24 積分の公式は、残る微分と積の形で選ぶ
正弦と余弦の和の四乗 → 二乗和で一段まとめて偶数冪を倍角へする
知識:第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る、第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第2回・§3 条件の和を保存し、隠れた共通の一次式も探す、第2回・§24 積分の公式は、残る微分と積の形で選ぶ
異なる角の積で原始関数が欲しい → 積和で項ごとの積分へ渡す
知識:第1回・第4節 積和公式は、加法定理の二式から積を取り出す
判断:第2回・§7 角の差だけでなく、和・積・商を読む、第2回・§24 積分の公式は、残る微分と積の形で選ぶ
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学Ⅲ・極限、積分法
学習の役割:A 定着・復習
問題
$\displaystyle\int_0^\pi\frac{dx}{2+\cos x}$を求めよ。
単純な微分因子のない分母です。置換の欠落点になる端にも注意します。
まず上端を$b\lt \pi$として$t=\tan(x/2)$を使うと、$dx=2dt/(1+t^2)$なので積分は$2\int_0^{\tan(b/2)}dt/(3+t^2)$。$b\to\pi-0$で上端は$+\infty$。さらに$t=\sqrt3\tan u$とすれば
$\displaystyle 2\int_0^\infty\frac{dt}{3+t^2}=\frac2{\sqrt3}\int_0^{\pi/2}du=\frac\pi{\sqrt3}.$
元の被積分関数は$[0,\pi]$で連続なので、最初の端の極限は元の積分に一致する。
分母に一次の余弦があり、単純な微分因子は付いていません。半角正接なら余弦と$dx$が同じ分母を持つので、有理式へまとめられます。奇数冪の置換などより一般的なこの方法を選ぶ理由です。
ただし上端$\pi$は半角正接の欠落点です。有限な端で同値な積分を作り、その後で端を近づけます。置換後の無限端は、元の被積分関数の発散ではありません。元の連続性を確認することで、求めた極限が元の定積分に一致すると説明できます。
この問の役割:§24確認と同じ半角置換。分母と端を含む計算の定着。
講義編の対応箇所
一次余弦の分母で微分因子はない → 半角正接で三角値とdxを有理式へする
知識:第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第2回・§11 半角正接は、角の和へ近付くために選ぶ、第2回・§24 積分の公式は、残る微分と積の形で選ぶ
上端が置換の欠落点 → 有限端で計算し端を左から近づける
知識:第1回・第3節 正接のグラフ
判断:第2回・§11 半角正接は、角の和へ近付くために選ぶ、第2回・§24 積分の公式は、残る微分と積の形で選ぶ
無限端の有理式 → 正接の拡大置換で値を出し元の連続性と対応させる
知識:第1回・第3節 正接のグラフ、第1回・第3節 一般の関数で、点の移動を確かめる
判断:第2回・§24 積分の公式は、残る微分と積の形で選ぶ、第2回・§27 発散する二量は、有限な端で一つの式へまとめる
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学Ⅲ・積分法
学習の役割:A 定着・復習
問題
$\displaystyle\int_0^\pi x\sin x\,dx$を求めよ。
積の形と、区間の中点に関する対称性から二候補を挙げます。
部分積分から$[-x\cos x]_0^\pi+\int_0^\pi\cos x\,dx=\pi$。
積分を$I$とし、$x=\pi-u$に替えると$I=\int_0^\pi(\pi-u)\sin u\,du$。元の式と足して$2I=\pi\int_0^\pi\sin u\,du=2\pi$、従って$I=\pi$。対称性は、重み$x$と$\pi-x$の和が定数になることを利用する。
通常変数と三角関数の積なので、部分積分が基本候補です。さらに区間が$[0,\pi]$で正弦は中点に関して対称、$x$と$\pi-x$は和が定数です。この条件なら置換した等しい積分を足し、重みを消す別の候補が出ます。
部分積分は汎用的、対称性はこの区間の構造を使って計算を短くする方法です。二解法を比べることで、特殊な数値を覚えるのでなく、関数と区間の両方が対称かを次の問題でも調べられます。
この問の役割:§25と同じ中点反転。未知のまま積分を決める証明の定着。
講義編の対応箇所
通常変数の重みと正弦の積 → 部分積分、または対称区間で重みを補う候補を比べる
知識:第1回・第2節 円の対称性を読む
判断:第2回・§25 対称性と積分で定義された関数を、式の形から使う
積分の両端と原始関数 → 端の項と残る定積分を計算する
知識:第1回・第2節 象限と符号、基本的な値
判断:第2回・§25 対称性と積分で定義された関数を、式の形から使う
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学Ⅲ・微分法、積分法
学習の役割:B 転移
問題
実数$x$について$F(x)=\int_0^x\sin(x-t)\sin2t\,dt$とする。$F(x)$を求め、$F''(x)+F(x)=\sin2x$を示せ。
積分する文字と外側の文字を区別し、角の和・差で内部の変数をどこまで分離できるか見てください。
積和公式から
$\displaystyle F(x)=\frac12\int_0^x\{\cos(x-3t)-\cos(x+t)\}\,dt.$
$t$で積分して両端を代入すると、
$\displaystyle F(x)=\frac12\left\{\frac{\sin x+\sin2x}{3}-(\sin2x-\sin x)\right\}=\frac{2\sin x-\sin2x}{3}.$
従って$F''(x)=(-2\sin x+4\sin2x)/3$なので、$F''(x)+F(x)=\sin2x$。
上端だけでなく被積分関数の中にも$x$があります。上端の微分の公式だけで処理すると、その依存を落とします。今回は角の一次式の積なので、積和で内部変数$t$だけを積分できる形へする候補が先に出ます。
加法定理で$x$の係数と$t$の積分へ分離する方法も合理的です。今回は積和なら二つの余弦の原始関数だけで済みます。$x$を固定して$t$で積分し、式を明示した後に$x$で微分する順序を守ります。
講義の同じ周波数の例では$t$に依らない項が積分後に$x$を作りました。今回は角の差にも$t$が残るため、その計算結果を流用できません。内部変数の係数をもう一度観察することが転移の要点です。
この問の役割:核の周波数を変えた近い転移。積和の係数を作り直す。
講義編の対応箇所
積分の内部と端に同じ外部変数 → 内部の変数を固定した角の係数で整理する
知識:第1回・第4節 積和公式は、加法定理の二式から積を取り出す、第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第2回・§25 対称性と積分で定義された関数を、式の形から使う、第2回・§24 積分の公式は、残る微分と積の形で選ぶ
積和後にも内部変数が残る → 各項を内部変数で積分し両端を代入する
知識:第1回・第4節 積和公式は、加法定理の二式から積を取り出す
判断:第2回・§24 積分の公式は、残る微分と積の形で選ぶ、第2回・§25 対称性と積分で定義された関数を、式の形から使う
明示式になった関数 → 外の変数で二階微分して要求の等式へ戻す
知識:第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第2回・§25 対称性と積分で定義された関数を、式の形から使う
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学Ⅲ・積分法
学習の役割:B 転移
問題
$\displaystyle\int_0^1x^2\sqrt{1-x^2}\,dx$を求めよ。
平方根の中身を、円の基本関係式へ結び付けられます。
$x=\sin u,0\leq u\leq\pi/2$とおく。この区間では$\sqrt{1-\sin^2u}=\cos u$、$dx=\cos u\,du$。従って積分は$\int_0^{\pi/2}\sin^2u\cos^2u\,du=\pi/16$。
根号に$1-x^2$があり、区間は$0\leq x\leq1$です。二乗和を使って根号を余弦へ移すため$x=\sin u$が候補になります。指定区間に合わせて$u\in[0,\pi/2]$を選べば余弦は非負なので、絶対値を正当に外せます。
微分$dx$も余弦を一つ生み、偶数冪の積へ帰着します。ここからは前の積分問題の倍角を再利用します。根号を消す三角置換、変換後の積分の再分類、という接続であり、最初の置換だけで終了しません。
この問の役割:根号の代数式から円の座標へ移る近い転移。
講義編の対応箇所
平方根が1−x² → 円の二乗和へ結び正弦で一対一の置換をする
知識:第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る、第1回・第2節 定義は、円上の点の座標
判断:第2回・§24 積分の公式は、残る微分と積の形で選ぶ
平方根は非負 → 余弦が非負となる角の範囲を選びdxも変える
知識:第1回・第2節 象限と符号、基本的な値、第1回・第6節 位相を変えたら、区間も変える
判断:第2回・§24 積分の公式は、残る微分と積の形で選ぶ、第2回・§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す
両方偶数冪の三角積 → 倍角の和へして積分し端を戻す
知識:第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第2回・§24 積分の公式は、残る微分と積の形で選ぶ
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学C・ベクトル、数学Ⅲ・積分法
学習の役割:C 総合
問題
空間の二点$A=(2\cos\theta,2\sin\theta,0)$、$B=(\cos\varphi,\sin\varphi,2)$を結ぶ線分が通過する領域の体積を求めよ。(1)$\theta,\varphi$が独立に全実数を動く場合。(2)$\theta$が全実数、$0\leq\varphi-\theta\leq\pi/2$の範囲を動く場合。(3)設定を変え、$A$が円盤$x^2+y^2\leq4,z=0$、$B$が円盤$x^2+y^2\leq1,z=2$を独立に動く場合。(4)$A=(t,0,0)$、$-1\leq t\leq1$とし、$B$が円盤$x^2+y^2\leq1,z=2$を独立に動く場合。
積分する前に、一つの高さの断面で全ての点を作れるか考えます。
高さ$h=2\lambda$($0\leq\lambda\leq1$)の点は、水平成分が長さ$r_1=2(1-\lambda),r_2=\lambda$の二方向の和である。その長さの二乗は$r_1^2+r_2^2+2r_1r_2\cos(\varphi-\theta)$。
(1)半径は$|r_1-r_2|$から$r_1+r_2$まで。角の差で全半径、二角の同時回転で全方位を実現する。断面積は$4\pi r_1r_2=8\pi\lambda(1-\lambda)$。従って体積は$2\int_0^1 8\pi\lambda(1-\lambda)\,d\lambda=8\pi/3$。
(2)余弦は$[0,1]$を動くので、内半径は$\sqrt{r_1^2+r_2^2}$、外半径は$r_1+r_2$。同様に全半径・全方位を実現し、断面積は$2\pi r_1r_2=4\pi\lambda(1-\lambda)$。体積は$4\pi/3$。両端の断面は円周で面積$0$となり、同じ公式に含まれる。
(3)水平成分の長さは三角不等式から$r_1+r_2=2-\lambda$以下。逆に長さ$\rho\leq r_1+r_2$、任意の方向の点は、二成分を同じ方向へそれぞれ$r_1\rho/(r_1+r_2),r_2\rho/(r_1+r_2)$の長さに選べば実現する。断面は半径$2-\lambda$の円盤なので、体積は$2\pi\int_0^1(2-\lambda)^2\,d\lambda=14\pi/3$。
(4)高さ$2\lambda$で、半径$\lambda$の円盤の中心が$x$軸上の$[-(1-\lambda),1-\lambda]$を動く。和集合は長さ$2(1-\lambda)$、幅$2\lambda$の帯と両端の半円。任意の点は、この中心区間上の最も近い点を選ぶと半径$\lambda$の円盤内に入り、元の$A,B$から実現する。断面積は$4\lambda(1-\lambda)+\pi\lambda^2$、体積は$2\int_0^1\{4\lambda(1-\lambda)+\pi\lambda^2\}\,d\lambda=(4+2\pi)/3$。
体積を求めるので、固定高さの断面を作ります。線分上の位置は高さが内分比を決め、その水平座標は二つの円の半径を内分係数倍した二方向の和です。二乗した長さに角の差の余弦が出るので、差の制約から内外の半径を決められます。
必要条件の半径だけでは断面は決まりません。差の角で全中間半径、共通の回転で全方位を作り、円環の全点が実現することを確認します。(2)は角差の範囲が狭いため、同じ外半径でも穴が変わります。
(3)の円盤では短い成分を選べ、穴はなくなります。(4)は一方の中心が線分を動くので、円環ではなく帯と半円です。円周・円盤・中心の動く範囲を読み直してから、断面積を高さで積分します。三角関数の翻訳が終わった後の集合構成と積分が、難しさの大きな部分です。
円周を動く端点の断面では、二成分の長さが固定されて穴が残ります。円盤を動く端点では長さも選べ、同じ外半径でも内部を埋められます。輪郭の図が似ていても、各点をどの端点から作るかを確認しなければ断面の面積は決まりません。
この問の役割:断面、円周/円盤、角の独立性から必要十分な半径と体積へ接続。
講義編の対応箇所
| 問題中の手掛かり | そこから行う判断 | 第1回の知識 | 第2回の判断 |
|---|---|---|---|
| 線分が空間を動く | 高さを固定し二端の重み付き水平成分を作る | 単位円の座標と比 | §26 |
| 円周二方向の和 | 長さの二乗を角差の余弦へして全半径を調べる | 加法定理と分母 二乗和と正接 | §26 |
| 断面候補と元の自由度 | 角差で半径、同時回転で全方位を逆に実現する | 単位円の座標と比 | §26、§14 |
| 円盤または線分へ条件変更 | 内側の穴や中心区間を再分類し全点の実現を示す | 単位円の座標と比 | §26 |
| 断面の集合が確定 | その面積を高さで積分する | 位相と元の角の範囲 | §26 |
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、対数関数、数学Ⅲ・極限、微分法、積分法
学習の役割:C 総合
問題
曲線$y=\log(1+\sin x)$の$\pi/2\leq x\leq b$($\pi/2\lt b\lt 3\pi/2$)の部分の長さを$L(b)$とする。$L(b)$を求め、$\lim_{b\to3\pi/2-0}\{L(b)+\log(1+\sin b)\}$を求めよ。$\log$は自然対数とする。
弧長の根号をまず整理してください。極限を取る前に、二つの対数で同じ量をそろえられないでしょうか。
指定区間で$1+\sin x\gt 0$であり、
$\displaystyle \sqrt{1+(y')^2}=\sqrt{1+\frac{\cos^2x}{(1+\sin x)^2}}=\sqrt{\frac2{1+\sin x}}.$
$u=x/2-\pi/4$とおくと$1+\sin x=2\cos^2u$、$0\leq u\lt \pi/2$なので$\cos u\gt 0$。$u_b=b/2-\pi/4$として
$\displaystyle L(b)=2\int_0^{u_b}\frac{du}{\cos u}=2\log\frac{1+\sin u_b}{\cos u_b}.$
ここで原始関数は微分により確認できる。有限な$b$でまとめると、
$\displaystyle L(b)+\log(1+\sin b)=2\log(1+\sin u_b)+\log2.$
$b\to3\pi/2-0$で$u_b\to\pi/2-0$だから、極限は$2\log2+\log2=\log8$。
弧長の入口は微分して速さを作ることです。今回は二乗和を整理しても$1+\sin x$の平方根が残るため、そのまま正弦を置くより半角で平方を作る候補が出ます。根号を外すには新しい角の区間と余弦の符号も必要です。
次の要求は、弧長と負へ発散する対数の和の極限です。それぞれの極限を先に取ると有限な差の情報を失うため、有限な$b$で原始関数を作り、半角でそろえた同じ余弦を相殺します。ここで初めて端の値を代入できます。
講義の$\log\cos x$の式を記憶して流用するのではなく、導関数の二乗→半角の平方→符号→有限な端での相殺、という手順を再構成します。弧長公式と積分法は数学Ⅲの前提です。
この問の役割:別曲線の弧長を半角で積分し、有限な端で対数を相殺。
講義編の対応箇所
| 問題中の手掛かり | そこから行う判断 | 第1回の知識 | 第2回の判断 |
|---|---|---|---|
| 対数曲線の長さ | 導関数の二乗を二乗和で整理する | 二乗和と正接 | §27 |
| 1+正弦の平方根 | 半角で平方を作り新しい区間で符号を確保する | 倍角・半角・三倍角 位相と元の角の範囲 | §24、§27、§12 |
| 二項が別々に発散し得る | 有限端で同じ対数へまとめて相殺する | 位相と元の角の範囲 | §27 |
| 相殺後は有限な端値 | 指定方向の片側極限へ戻す | グラフの増減と交点 | §27 |
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学Ⅲ・極限、積分法
学習の役割:A 定着・復習
問題
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\int_0^1(1+x)\sin^2(nx)\,dx$を求めよ。
速く動く部分の平均と、平均からの誤差を分けます。
倍角から積分は$3/4-J_n/2$、ただし$J_n=\int_0^1(1+x)\cos2nx\,dx$。部分積分すると
$\displaystyle J_n=\left[\frac{(1+x)\sin2nx}{2n}\right]_0^1-\frac1{2n}\int_0^1\sin2nx\,dx.$
従って$|J_n|\leq3/(2n)\to0$。答えは$3/4$。
角が$n$倍で速く回り、重みは$n$によらない一次式です。二乗を倍角へすると一定の平均成分と振動成分に分けられます。点ごとの極限が存在するかを調べるより、振動成分の積分を小さく評価する方法が目的へ直結します。
部分積分は振動の原始関数から$1/n$を取り出すために選びます。重みの微分も一定なので残差に一様な上界が付きます。平均値を答えと予想するだけでなく、その誤差が零になることを示す問題です。
この問の役割:§28の平均化の計算を再現する復習。
講義編の対応箇所
固定の重みと速い正弦二乗 → 倍角で定数の平均と余弦の残差へ分ける
知識:第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第2回・§28 速い振動と高冪の集中は、別の極限である
残差の積分 → 部分積分で1/nの因子を取り絶対値の上界を作る
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標
判断:第2回・§25 対称性と積分で定義された関数を、式の形から使う、第2回・§28 速い振動と高冪の集中は、別の極限である
誤差が零へ近づく → 平均項の積分を残す
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る
判断:第2回・§28 速い振動と高冪の集中は、別の極限である
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学Ⅲ・極限、積分法
学習の役割:A 定着・復習
問題
$\displaystyle\lim_{T\to\infty}\frac1T\int_0^T|\sin(x^2)|\,dx$を求めよ。
角の動く速さが一定でない場合、平均の誤差を何で押さえればよいでしょうか。
$g(u)=|\sin u|-2/\pi$とする。一周期$\pi$の積分は$0$なので、$F(u)=\int_0^u g(v)\,dv$は周期$\pi$で、$|F(u)|\leq\pi$。
$T\geq1$として$[0,1]$の$g(x^2)$の積分の絶対値は$1$以下。残りは$u=x^2$へ替え
$\displaystyle \int_1^{T^2}\frac{g(u)}{2\sqrt u}\,du=\left[\frac{F(u)}{2\sqrt u}\right]_1^{T^2}+\int_1^{T^2}\frac{F(u)}{4u^{3/2}}\,du.$
右辺の絶対値は$\pi/(2T)+\pi/2+\pi(1-1/T)/2=\pi$以下。従って平均$2/\pi$との差は$(1+\pi)/T$以下で、答えは$2/\pi$。
絶対値の正弦は周期的ですが、角が$x^2$なので$x$について同じ周期で繰り返しません。一周期平均を候補にするなら、位相を変数へして生じる重みまで評価する必要があります。
平均を引いた周期関数の一周期積分は零となり、その原始関数は有界です。これを部分積分へ入れると、振動を追わずに誤差を上から押さえられます。置換の重みは零で特異なので、最初の有限区間を直接評価してから残りを置換します。
残差が$T$によらない定数以下と示せれば、最後に$T$で割って零へ送れます。三角関数の平均、角が変数の一次式でない場合の置換、特異端の分離、誤差の評価の接続であり、「よく振動するから平均」という一言では証明になりません。
この問の役割:§28で証明した二次の角の平均化を再現する発展的な復習。
講義編の対応箇所
位相がx²で平均を問う → 一周期平均を引き周期積分零の残差を作る
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る
判断:第2回・§28 速い振動と高冪の集中は、別の極限である
残差の原始関数 → 周期性から有界と示す
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る
判断:第2回・§28 速い振動と高冪の集中は、別の極限である
二乗変数への置換が零で特異 → 零の近くを直接評価し残りだけ部分積分する
知識:第1回・第3節 一般の関数で、点の移動を確かめる
判断:第2回・§27 発散する二量は、有限な端で一つの式へまとめる、第2回・§28 速い振動と高冪の集中は、別の極限である
全誤差の上界が一定 → 長さTで割って平均へ戻す
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る
判断:第2回・§28 速い振動と高冪の集中は、別の極限である
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学Ⅲ・積分法
学習の役割:C 総合
問題
$f$は実係数の多項式で、$[-1,1]$上で減少しない奇関数とする。「減少しない」とは$t_1\leq t_2$なら$f(t_1)\leq f(t_2)$という意味である。また、この区間で$|f(t)|\leq1$とする。
$\displaystyle I=\int_0^{\pi/2}(\cos x+\sin x)f\left(\frac{\cos x-\sin x}{\sqrt2}\right)dx,$
$\displaystyle J=\int_0^{\pi/2}(\cos x-\sin x)f\left(\frac{\cos x-\sin x}{\sqrt2}\right)dx.$
$(1)\ I=0$を示せ。$(2)\ 0\leq J\leq2(\sqrt2-1)$を示せ。
区間の中点で反転したとき、外の和・差と内側の入力はどう変わるでしょうか。まず入力の範囲を確かめてください。
$q(x)=(\cos x-\sin x)/\sqrt2$の値域は$[-1/\sqrt2,1/\sqrt2]$で、仮定の区間に含まれる。
(1)$x=\pi/2-u$と置くと、$\cos x+\sin x=\cos u+\sin u$、$q(x)=-q(u)$。奇性から$I=-I$となり、$I=0$。
(2)$f(0)=0$と減少しない性質から$qf(q)\geq0$。従って被積分関数は非負であり、$|f(q)|\leq1$から$0\leq(\cos x-\sin x)f(q)\leq|\cos x-\sin x|$。よって
$\displaystyle 0\leq J\leq\int_0^{\pi/2}|\cos x-\sin x|dx=2\int_0^{\pi/4}(\cos x-\sin x)dx=2(\sqrt2-1).$
(1)について、$q=(\cos x-\sin x)/\sqrt2$と置くと$dq=-(\cos x+\sin x)dx/\sqrt2$。従って$I=\sqrt2\int_{-1/\sqrt2}^{1/\sqrt2}f(q)dq=0$。最後の等号は$f$の奇性による。
未知の多項式を展開すると、その係数まで必要になります。代わりに、問題が与えた奇性・増加方向・大きさの上界を利用できる入力の対応を探します。最初に$f$へ入れる量の範囲が仮定の区間内か確かめます。
(1)では区間の中点で反転すると、外の和は変わらず、内の差だけが符号を変えます。奇性が積分全体を反転させるので、未知のまま零と決まります。内側の微分因子も外にあるため、置換による別解も自然です。
(2)は外の因子が変わったため、同じ零の結論を使えません。内側と同符号の因子なので、奇性と減少しない性質から非負が出ます。上からは$|f|\leq1$で絶対値へ渡し、零点$\pi/4$で区間を分けて積分します。この上界が最良だとは要求されていないので、未知の$f$の最適化を追加する必要はありません。
この問の役割:入力の像、反転、微分因子、符号上界を要求ごとに選び直す。
講義編の対応箇所
| 問題中の手掛かり | そこから行う判断 | 第1回の知識 | 第2回の判断 |
|---|---|---|---|
| 未知多項式に三角関数の差を入力 | 入力の値域を仮定の区間へ収める | 振幅・位相・値域 位相と元の角の範囲 | §2、§25 |
| 中点反転で外の和は不変、内の差は反転 | 奇性を使って積分とその負を等しくする | 偶奇性・対称角 加法定理と分母 | §25 |
| 別小問は入力と同符号の外因子 | 奇性と単調性で非負、絶対値上界で大きさを押さえる | 偶奇性・対称角 象限・特殊角 | §16、§12、§25 |
| 差の零点を含む積分 | 零点で符号を分け上界を積分する | 不等式・端・和集合 | §9、§24 |
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学Ⅲ・極限、積分法
学習の役割:A 定着・復習
問題
$I_n=\int_0^1x^{n-1}\cos(\pi x)\,dx$($n$は正整数)とする。(1)$\lim_{n\to\infty}nI_n$を求めよ。(2)$\lim_{n\to\infty}n^2(nI_n+1)$を求めよ。
第一小問で端の値、第二小問で端の値との差を求めています。
(1)平均値の定理より、$0\leq\cos\pi x+1\leq\pi(1-x)$($0\leq x\leq1$)。$n\int_0^1x^{n-1}dx=1$だから
$\displaystyle 0\leq nI_n+1\leq\pi n\int_0^1x^{n-1}(1-x)dx=\frac\pi{n+1}\to0.$
従って$nI_n\to-1$。
(2)二回の部分積分により
$\displaystyle nI_n=[x^n\cos\pi x]_0^1+\pi\int_0^1x^n\sin\pi x\,dx=-1-\frac{\pi^2}{n+1}I_{n+2}.$
二回目の端の項は$\sin0=\sin\pi=0$によって零である。従って
$\displaystyle n^2(nI_n+1)=-\pi^2\frac{n^2}{(n+1)(n+2)}\{(n+2)I_{n+2}\}\to\pi^2.$
最後は(1)を添字$n+2$へ適用した。
高冪の重みは区間の右端へ集中し、余弦は$n$で変わらない連続関数です。第一小問は端の値が候補ですが、重みの全量が一で、端以外の影響が消えることを評価して正当化します。
第二小問はその極限だけでは解けません。端の値を引いた誤差の次の大きさが必要です。余弦を微分すると正弦、その正弦は両端で零なので、部分積分を二回すれば端の項を整理し、添字を二つ増やした同じ積分へ戻せます。
得た恒等式へ第一小問の極限を再適用します。同じ規則を再利用するには、その前にどの残差の恒等式が必要か、という途中の判断が中心です。
この問の役割:§28確認の集中と次の剰余の証明を再現する復習。
講義編の対応箇所
高冪の重みと固定余弦 → 端点値との差に1−xの上界を付け集中を証明する
知識:第1回・第3節 正弦・余弦のグラフ
判断:第2回・§28 速い振動と高冪の集中は、別の極限である
次の次数の誤差も要求 → 部分積分で端の値と導関数の零を取り出す
知識:第1回・第2節 象限と符号、基本的な値、第1回・第4節 倍角・半角・三倍角
判断:第2回・§25 対称性と積分で定義された関数を、式の形から使う、第2回・§28 速い振動と高冪の集中は、別の極限である
添字をずらした同じ積分 → 第一小問の極限を再適用する
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る
判断:第2回・§28 速い振動と高冪の集中は、別の極限である
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学B・数列、数学Ⅲ・極限
学習の役割:C 総合
問題
$0\lt \alpha\lt \pi/2$とする。$P_0=(1,0)$とし、$P_n$は$P_{n-1}$から、原点を通り角$n\alpha$の直線へ下ろした垂線の足とする。$P_n=(x_n,y_n)$の座標を求め、点$(\sum_{n=0}^Nx_n,\sum_{n=0}^Ny_n)$が$N\to\infty$で近付く点の座標を求めよ。
一回の投影で、長さと方向はそれぞれどう変わりますか。
$c=\cos\alpha,s=\sin\alpha$とする。前の点の方向と次の軸の角の差は$\alpha$で、射影の長さは$c\gt 0$倍となる。帰納法から$P_n=(c^n\cos n\alpha,c^n\sin n\alpha)$。
有限和の座標を$(U_N,V_N)$とする。加法定理により
$\displaystyle \begin{aligned}c^2U_N-csV_N&=\sum_{n=0}^Nc^{n+1}\cos((n+1)\alpha)\\&=U_N-1+c^{N+1}\cos((N+1)\alpha),\\csU_N+c^2V_N&=\sum_{n=0}^Nc^{n+1}\sin((n+1)\alpha)\\&=V_N+c^{N+1}\sin((N+1)\alpha).\end{aligned}$
従って$s^2U_N+csV_N=1-c^{N+1}\cos((N+1)\alpha)$、$-csU_N+s^2V_N=-c^{N+1}\sin((N+1)\alpha)$。$s\gt 0$なので消去して
$\displaystyle \begin{aligned}U_N&=1-c^{N+1}\cos((N+1)\alpha)+\frac cs c^{N+1}\sin((N+1)\alpha),\\V_N&=\frac cs\{1-c^{N+1}\cos((N+1)\alpha)\}-c^{N+1}\sin((N+1)\alpha).\end{aligned}$
$0\lt c\lt 1$で正弦・余弦は有界なので、極限座標は$(1,c/s)=(1,\cos\alpha/\sin\alpha)$。
追加の履修:数学C・複素数平面。直線間の角が$\alpha$なので、射影の長さは毎回$\cos\alpha$倍になる。$\cos\alpha\gt 0$より方向も$n\alpha$であり、帰納法で$P_n=((\cos\alpha)^n\cos n\alpha,(\cos\alpha)^n\sin n\alpha)$。
複素数$q=\cos\alpha(\cos\alpha+i\sin\alpha)$で表すと和は$(1-q^{N+1})/(1-q)$。$|q|\lt 1$なので極限は
$\displaystyle \frac1{1-q}=\frac1{\sin^2\alpha-i\sin\alpha\cos\alpha}=1+i\frac{\cos\alpha}{\sin\alpha}.$
答えの座標は$(1,\cos\alpha/\sin\alpha)$。
次の投影軸と前の点の方向の差が一定です。投影では長さがその余弦倍、方向が軸の方向へ変わります。角の範囲から余弦が正なので、反対向きへずれる例外もありません。これで各点の二つの座標を、等比の長さと回転する角として書けます。
求めるのは座標の和です。有限和に同じ回転と縮小を作用させると、各項が次の項になり、最初と最後の項だけが元の和からずれます。この一項ずらす操作によって、二つの座標和について連立一次方程式を作れます。答案では加法定理によるこの計算を明示しています。
連立式を有限な$N$で解いてから極限を取れば、先に無限和の収束を仮定する必要はありません。残る端の項は、長さの比が一未満で三角値が有界という情報から零へ近付きます。各点の式を作る仕事、有限和を求める仕事、極限を取る仕事を分けて接続しています。
複素数平面を学んだ読者には、回転と縮小を一つの公比へ記録する別解もあります。その等比和は、基本解答の二つの連立式を一つへまとめる方法です。問題に取り組む必須履修には含めていません。
この問の役割:動く射影から縮小回転、座標和の極限へ接続。ただし講義との距離は近い。
講義編の対応箇所
投影軸の角差が一定 → 長さの余弦倍と向きを分け点の式を帰納的に作る
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標、第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第2回・§21 動く軸を固定するが、定数化を計算で確かめる、第2回・§22 角度条件は、長さで割った内積へ移す
座標を足す有限和 → 一項ずらす加法から二つの一次連立を作る
知識:第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第2回・§22 角度条件は、長さで割った内積へ移す
縮小率が正で1未満 → 連立を解き有界な三角因子の端項を零へする
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標
判断:第2回・§21 動く軸を固定するが、定数化を計算で確かめる、第2回・§22 角度条件は、長さで割った内積へ移す
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学A・場合の数と確率、数学B・数列
学習の役割:A 定着・復習
問題
単位円上の点$(1,0)$から出発し、毎回独立に等確率で、原点の周りに$2\pi/3$または$-2\pi/3$回転する。$n$回後に$(1,0)$にいる確率$p_n$を求めよ。ただし$n\geq0$。
一周した角を同じ位置とみなすと、到達できる位置はいくつありますか。
位置は角$0,2\pi/3,4\pi/3$の三状態。出発点の状態からは一回で同じ状態へ戻れず、他の二状態からは確率$1/2$で戻る。従って$p_{n+1}=(1-p_n)/2$、$p_0=1$。
$\displaystyle p_{n+1}-\frac13=-\frac12\left(p_n-\frac13\right)$
より$p_n=1/3+(2/3)(-1/2)^n$。
点は回転しても三つの位置しか取りません。連続な角の問題を三状態へ分類できるのが、周期性の役割です。今回の要求は出発点へいる確率なので、終点の三状態を毎回の確率へ結びます。
出発点からは次の一回で出発点へ戻れず、他のどちらからも同じ確率で戻ります。そのため他二状態を一括して$1-p_n$とでき、一変数の漸化式になります。これらの遷移が等しくない問題では、この集約はできません。零回の初期値を入れてから、定常値を引いて等比数列へ移します。
この問の役割:§19の三状態補足を漸化式の解まで完成する復習。
講義編の対応箇所
一回の角はπの有理数倍 → 一周を同一視し到達する三状態を作る
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る
判断:第2回・§19 周期を見たら、方向別の回数と時系列を区別する
他二状態からは同じ帰還確率 → 状態の遷移を一つの確率の漸化式へする
知識:第1回・第2節 定義は、円上の点の座標
判断:第2回・§19 周期を見たら、方向別の回数と時系列を区別する
一次漸化式 → 定常値を引き等比数列と初期条件で解く
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る
判断:第2回・§19 周期を見たら、方向別の回数と時系列を区別する
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学Ⅲ・微分法、積分法
学習の役割:A 定着・復習
問題
$F(x)=\displaystyle\int_{\sin x}^{\cos x}t^2\,dt$とする。$F'(x)$を求めよ。
両端が動きます。どちらの端も保つ書き方から始めます。
まず$F(x)=(\cos^3x-\sin^3x)/3$。従って$F'(x)=-\cos^2x\sin x-\sin^2x\cos x=-\sin x\cos x(\sin x+\cos x)$。
上端も下端も三角関数で動いています。片方だけの可変端として微分すると、もう一つの寄与を落とします。被積分関数が多項式なので、先に原始関数を両端へ入れる方法が短く、必要な微分も通常の合成と積だけになります。
三角関数の役割は入力の二つの動きです。三角積分の公式を探す問題ではなく、合成関数の導関数を両側で完全に取る問題と再分類してください。
積分の中身が$t^2$でも上下端に三角関数が入るため、微分の段階では三角関数の微分が必要です。元の積分を多項式の原始関数で評価するところまでは数学Ⅱ、端を$x$で微分するところは数学Ⅲ、と知識の切替箇所を分けられます。
この問の役割:§25で準備した両端が動く積分の微分を再確認。
講義編の対応箇所
上下の両端が三角関数 → まず多項式の原始関数に両端を代入する
知識:第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る
判断:第2回・§25 対称性と積分で定義された関数を、式の形から使う
明示した二つの合成関数 → 両方を微分し共通因子で整理する
知識:第1回・第2節 円の方程式から関係式を得る
判断:第2回・§25 対称性と積分で定義された関数を、式の形から使う
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、図形と方程式、数学B・数列、数学C・複素数平面
学習の役割:C 総合
問題
$P_0$は原点とする。$n\geq1$に対し$P_n$は$P_{n-1}$を直線$x\cos(n\pi/3)+y\sin(n\pi/3)=1$に関して鏡映した点である。$P_n$の座標を複素数で表し、数列$P_n$が周期的かを判定せよ。
軸の向きが戻っても、点の位置も戻るとは限りません。
$q=\cos(\pi/3)+i\sin(\pi/3)$、$P_n$を表す複素数を$z_n$、$w_n=q^{-n}z_n$とする。第$n$回の軸はこの座標で実部$1$の直線となり、前の点は$q^{-1}w_{n-1}$である。実部$1$の直線に関する鏡映は$w\mapsto2-\overline w$だから、$w_n=2-q\overline{w_{n-1}}$、$w_0=0$。
二回作用させると$w_n=w_{n-2}+2(1-q)$なので、$m\geq0$で$w_{2m}=2m(1-q)$、$w_{2m+1}=2(m+1)-2mq$。従って
$\displaystyle z_{2m}=q^{2m}\,2m(1-q),\qquad z_{2m+1}=q^{2m+1}\{2(m+1)-2mq\}.$
座標は各式の実部と虚部である。$q^6=1$から$z_{6m}=6m(1-q)$。$q\ne1$なのでその絶対値は無限に大きくなり、点の数列は周期的でない。
軸の法線方向が毎回一定回転し、しかも軸は原点を通りません。方向だけを見て六周期と決めず、回転後に軸の距離がどう残るかを調べます。同じ角を引く座標では軸が$x=1$となり、鏡映は$2-\overline w$なので定数項が現れます。
前の点も新しい座標へ回す必要があります。この一回分の回転を含めると、定数係数の共役を含む漸化式になります。二回作用させると共役が消え、偶数項の等差へ帰着できます。
最後は静止座標へ戻します。六回で方向は戻りますが、平行移動の累積が残るので点は戻りません。「回転座標で係数を定数にする」ことと「点が周期的になる」ことを分ける対照問題です。
この問の役割:§21の同じ軸の確認を静止座標と周期へ接続する完成練習。講義との距離は近い。
講義編の対応箇所
法線角は等差、軸は原点を通らない → 法線と同じ回転を引き定数項を含む鏡映を作る
知識:第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第2回・§21 動く軸を固定するが、定数化を計算で確かめる
共役を含む更新 → 二回分を合成し平行移動の差へする
知識:第1回・第4節 加法定理とは何か
判断:第2回・§21 動く軸を固定するが、定数化を計算で確かめる
向きの係数は有限周期 → 静止座標に戻し位置の非有界性から周期性を否定する
知識:第1回・第3節 同じ方向へ戻ると、値も戻る
判断:第2回・§21 動く軸を固定するが、定数化を計算で確かめる
問題(73)〜(76)は基本体系で取り組めます。問題(77)は数学Ⅲを使います。ここまで学んだ判断が、どの条件から候補になるかを自分で確かめてください。
必要な履修:数学Ⅰ・二次関数、集合と命題、数学Ⅱ・三角関数
学習の役割:C 総合
問題
実数$a,k$について、方程式$(\sin\theta+\cos\theta-a)^2=k$を考える。
(1)$0\leq\theta\leq\pi$で、相異なる解がちょうど三個となる$a,k$の条件を求めよ。
(2)$0\leq\theta\lt 2\pi$に範囲を変えた場合、同じ条件を求めよ。
(3)全ての実数$\theta$について$(\sin\theta+\cos\theta-a)^2\geq k$となる条件を求めよ。
式に繰り返す量を探し、その一つの値に元の角がいくつ対応するかを分けます。
$p=\sin\theta+\cos\theta=\sqrt2\sin(\theta+\pi/4)$とおく。
(1)$\theta\in[0,\pi]$では$p$の像は$[-1,\sqrt2]$。$\theta\in[0,\pi/4]$では$p$は$1$から$\sqrt2$へ増加し、$\theta\in[\pi/4,\pi]$では$\sqrt2$から$-1$へ減少する。従って一つの$p$に対応する角の個数は、$-1\leq p\lt 1$で一個、$1\leq p\lt \sqrt2$で二個、$p=\sqrt2$で一個。像外は零個である。
$k\lt 0$では零根、$k=0$では一つの$p=a$に高々二角なので、三解にはならない。$k\gt 0$で$h=\sqrt k$とすると二根は$a-h\lt a+h$。対応数の合計が三になるのは、一根が一角・他根が二角の場合だけである。小さい根が一角なら第一の条件、小さい根が二角なら大きい根は頂点値で一角となる第二の条件が出る。従って条件は次のいずれかである。
$\displaystyle \boxed{-1\leq a-h\lt 1\leq a+h\lt \sqrt2}$
$\displaystyle \boxed{1\leq a-h\lt \sqrt2=a+h}.$
(2)一周では$p\in[-\sqrt2,\sqrt2]$で、内点には二角、両端には一角が対応する。従って$k\gt 0$かつ
$\displaystyle \boxed{a-h=-\sqrt2\lt a+h\lt \sqrt2}$
$\displaystyle \text{または}\quad\boxed{-\sqrt2\lt a-h\lt \sqrt2=a+h}.$
(3)区間$[-\sqrt2,\sqrt2]$上で$(p-a)^2$の最小値を取ればよい。条件は$|a|\leq\sqrt2$で$k\leq0$、$|a|\gt \sqrt2$で$k\leq(|a|-\sqrt2)^2$。いずれも最小値は実現する。
式の中で反復するのは$\sin\theta+\cos\theta$です。この一次式を残せば、外側は距離の二乗$(p-a)^2$になり、パラメータの二根を扱いやすくできます。最初の候補は合成による置換ですが、要求が三解なので、値域だけでなく同じ$p$を何角が取るかを先に記録します。
半周の小問では合成した波が山を越え、一部の値は一回、別の値は二回現れます。元の両端の値が異なるため、対応数の境界は振幅の両端だけではありません。二つの単調枝の像を重ねると、一回・二回・山の一回が問題文から導けます。
次に外側の二次式へ移り、$k\lt 0$、$k=0$、$k\gt 0$を分けます。二根が違うときは、それぞれの対応数の合計が三になる組を列挙します。重根を二値と数えることも、値域外の根に角を配ることもできません。
一周の小問では同じ置換でも対応表が変わり、内点二角・端一角になります。最後の全称条件は個数ではなく最小値です。像の区間から$a$までの距離へ再分類すれば、ここで根の配置を続ける必要はありません。式の変形、二次式、角への対応、要求の変更を順に接続する総合問題です。
解が三個という要求には、二次式の判別式が正というだけでは足りません。内点二角の値と端点一角の値、あるいは半周の一角・二角の枝を組み合わせる必要があります。結論を見て二根を合わせるのでなく、最初に対応数の表を作れば、候補の組合せを漏れなく出せます。
この問の役割:複数の基本判断を条件に沿って接続する総合問題。
講義編の対応箇所
| 問題中の手掛かり | そこから行う判断 | 第1回の知識 | 第2回の判断 |
|---|---|---|---|
| 和と二次積が混在 | 対称な和を保存し二乗和で一変数へする | 二乗和と正接 | §3 |
| 二次式の根と半周の指定 | 置換の像を分け一値に対応する角の表を作る | 振幅・位相・値域 基本方程式・角の系列 | §2、§4 |
| 解の個数による要求 | 根の位置と重複を対応数に結び境界値を分ける | 基本方程式・角の系列 | §4 |
| 全ての角で不等式という別要求 | 根の列挙から区間上の最小値へ判断を切り替える | グラフの増減と交点 | §1、§16 |
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、図形と方程式
学習の役割:C 総合
問題
単位円上の三点$A=(1,0)$、$P=(\cos\theta,\sin\theta)$、$Q=(\cos2\theta,\sin2\theta)$を考える。ただし$0\leq\theta\lt 2\pi$。三角形$APQ$の面積の最大値と、それを取る全ての角を求めよ。三点が重なる場合の面積は$0$とする。
二つの角の点が同じ円にあります。面積の式を、一つの角の情報へまとめます。
$c=\cos\theta,s=\sin\theta$とすると、座標から面積$S$は
$\displaystyle S=\frac12|(c-1)\sin2\theta-s(\cos2\theta-1)|=|s|(1-c).$
従って$S^2=(1-c)^3(1+c)$、$-1\leq c\leq1$。非負の四数に対する相加相乗平均から、
$\displaystyle \left(\frac{1-c}{3}\right)^3(1+c)\leq\left(\frac{3(1-c)/3+(1+c)}4\right)^4=\frac1{16}.$
よって$S^2\leq27/16$。四数の相加相乗平均は$uv\leq((u+v)/2)^2$を二回用いて導け、等号は四数が等しいときに限る。ここでは$(1-c)/3=1+c$、すなわち$c=-1/2$で等号となり、単位円上で実現する。従って最大値は$3\sqrt3/4$、角は$2\pi/3,4\pi/3$。
追加の履修:数学Ⅱ・微分法。$f(c)=(1-c)^3(1+c)$、$-1\leq c\leq1$とすると$f'(c)=-2(1-c)^2(1+2c)$。従って$c=-1/2$まで増加し、その後減少するので最大値$27/16$。$S\geq0$から最大面積$3\sqrt3/4$、角は$2\pi/3,4\pi/3$。
面積の要求なので、三点の座標から面積を作るか、弦の長さと挟む角で表す候補が出ます。座標には二倍角があり、まず二倍角へ整理すると一つの正弦・余弦にまとまるため、座標を基本解法に選びました。面積が絶対値で非負という情報を保持して、二乗から余弦一つの積へ移ります。
三次と一次の因子を同じ大きさへ合わせたいと考えると、三つの$(1-c)/3$と一つの$1+c$の和が定数になります。第2回の円と面積の節で扱った「重複度に合わせて因子を配り、和を固定する」判断です。最大値の不等式だけでなく、等号の$c$が像内で実現するかを確かめます。
微分を学んだ読者には別解もあります。基本解法は追加の微積分を要求せず、座標→倍角→一変数の像→非負の積の上界→角への復元という既知の接続で完了します。
この問の役割:依存する二変数の和・差、実現範囲、等号を接続。
講義編の対応箇所
| 問題中の手掛かり | そこから行う判断 | 第1回の知識 | 第2回の判断 |
|---|---|---|---|
| 円上三点の面積 | 座標の面積公式へ入れ倍角で一つの正弦余弦へする | 単位円の座標と比 倍角・半角・三倍角 | §14 |
| 面積は非負 | 二乗して余弦の像上の非負の積へ移る | 二乗和と正接 | §12、§14 |
| 二因子の重複度は3対1 | 和が定数になる四因子へ配り上界と等号を作る | 二乗和と正接 | §6、§14 |
| 等号の余弦値 | 像内の実現を確かめ全ての角へ戻す | 基本方程式・角の系列 | §2、§14 |
必要な履修:数学Ⅰ・図形と計量、二次関数、数学Ⅱ・三角関数、図形と方程式
学習の役割:C 総合
問題
平面上の正三角形$T$の頂点を$(-2,0),(1,\sqrt3),(1,-\sqrt3)$とする。短辺の長さが$a$、長辺の長さが$2a$の長方形を考え、短辺の方向が$x$軸の正方向となす角を$\theta$とする。ただし$a\gt 0$、$0\leq\theta\leq\pi/6$。長方形は、方向を保ったまま平行移動できるものとし、辺上の点も$T$に含まれるとする。
(1)長方形全体を$T$に含められる$a$の最大値を求めよ。
(2)$a$を固定する。長方形全体を$T$に含め、かつ$T$の三辺のそれぞれと少なくとも一点で接する配置が存在する$\theta$の個数を、$a$によって求めよ。
長方形の全点を調べる代わりに、各辺で最も外側に出る点を選べます。
三角形は$L_0(x,y)=x\leq1$、$L_1(x,y)=(-x+\sqrt3y)/2\leq1$、$L_2(x,y)=(-x-\sqrt3y)/2\leq1$の共通部分で、$L_0+L_1+L_2=0$。
長方形の中心を一度原点に置く。三方向の角を$\beta_j=2j\pi/3$($j=0,1,2$)とすると、長方形上での$L_j$の最大値は
$\displaystyle h_j=\frac a2|\cos(\theta-\beta_j)|+a|\sin(\theta-\beta_j)|.$
これは頂点の二つの符号をそれぞれ最大側に選べば得られる。中心を$(u,v)$へ移す条件は$L_j(u,v)\leq1-h_j$。三式を足して$S=\sum h_j\leq3$が必要。
逆に$S\leq3$なら、$b_j=1-h_j$から$(3-S)/3$を引いた三値は和$0$。その三値を$\ell_0,\ell_1,\ell_2$とし、$u=\ell_0,v=(2\ell_1+\ell_0)/\sqrt3$と選べば$L_0,L_1$は最初の二値となり、和零の関係から$L_2$も第三の値になる。各値は$b_j$以下なので、全長方形を実際に含められる。従って包含の必要十分条件は$S\leq3$。三辺全てへ接するなら各不等式が等号なので$S=3$が必要。逆に$S=3$なら上の構成の余裕は零で、各方向の最大値を取る頂点が対応する辺に乗るため、三辺への接触が実現する。
$0\leq\theta\leq\pi/6$では、三つの余弦の符号は順に正・非正・負、正弦の符号は非負・負・正である。従って絶対値を外して加法定理で整理すると
$\displaystyle \sum_{j=0}^2|\cos(\theta-\beta_j)|=2\cos\theta,\qquad \sum_{j=0}^2|\sin(\theta-\beta_j)|=\sin\theta+\sqrt3\cos\theta.$
ゆえに$S=af(\theta)$、$f(\theta)=(1+\sqrt3)\cos\theta+\sin\theta$。
$R=\sqrt{5+2\sqrt3}$、$\tan\phi=1/(1+\sqrt3)$、$0\lt \phi\lt \pi/6$とすると$f=R\cos(\theta-\phi)$。従って$[0,\phi]$で増加、$[\phi,\pi/6]$で減少する。端値は$f(0)=1+\sqrt3$、$f(\pi/6)=2+\sqrt3/2$で、前者が小さい。
(1)最小値$1+\sqrt3$から、最大の$a$は$\boxed{3/(1+\sqrt3)}$。$\theta=0$、中心$(1-a/2,0)$で三辺に接して実現する。
(2)$af(\theta)=3$を二つの枝で数える。ここで
$\displaystyle a_0=\frac3{\sqrt{5+2\sqrt3}},\quad a_1=\frac6{4+\sqrt3},\quad a_2=\frac3{1+\sqrt3}$
とおくと$a_0\lt a_1\lt a_2$であり、求める個数は
$\displaystyle N(a)=\begin{cases}0&0\lt a\lt a_0\text{ または }a\gt a_2,\\1&a=a_0\text{ または }a_1\lt a\leq a_2,\\2&a_0\lt a\leq a_1.\end{cases}$
$a=a_0$は合成の頂点で一角、$a=a_1$は減少する部分の端と増加する部分の内点で二角、$a=a_2$は$\theta=0$だけである。
問題 (75) の (1) の等号配置:$\theta=0$。図は解答後の確認用です。
求めるのは、ある平行移動で長方形全体を入れられる最大サイズと、三辺へ同時に接する向きの個数です。四頂点の座標を各辺へ代入する候補は十二条件になります。辺の条件が一次式なので、各方向で最も外に出る頂点を先に選べば、三つの「中心の位置+半幅」の条件へ圧縮できます。
ここで$L_j$の二係数の二乗和は全て$1$です。そのため、各$L_j$の増分を、法線方向の半幅としてそのまま書けます。一般の$Ax+By$なら係数の長さの倍率も必要で、境界の右辺までそろえることを第2回で確認しました。半幅は短辺・長辺の方向を法線へ投影して足した量です。二符号を最大側へ選ぶため絶対値が付きます。これは図形から三角関数への翻訳で、係数は辺の長さの半分から来ます。ここで和積などを試す前に、三辺の法線の和が零であることを使います。
三条件を足すと中心が消え、半幅の和だけの必要条件が残ります。しかし各辺に別々の中心を選べることでは十分でありません。残る余裕を三方向へ均等に配り、二つの独立な辺の値から一つの中心を作ることで、同時に実現できると示します。三辺全てへ接する場合は余裕が零です。
この段階で図形の存在条件が、$af(\theta)\leq3$と$af(\theta)=3$へ移りました。指定区間で絶対値の符号を確定させると一次の三角式になり、合成が波の頂点と両端を与えます。最大サイズは$f$を最小にする向き、接する向きの個数は高さ$3/a$が二つの単調枝と何回交わるか、という違う要求です。
境界は山の高さと二つの異なる端の高さから決まります。最大サイズだけから個数の分類は出ないので、各枝の像をもう一度使います。必要条件の消去、配置の逆構成、絶対値の処理、合成、最小値、解の個数という判断が連続しており、途中で欲しい情報を確かめ直すことが解法を組み立てる中心です。
三辺で半幅が最小となる向きを個別に選び、その三つの最小値を足すことはできません。長方形の向きは一つの共通の$\theta$です。また、三辺の各条件を別々の中心で満たすだけでは配置になりません。共通の向き・共通の中心という二つの依存関係を、計算を縮めるときも残します。
この問の役割:三角形は§17と近いが、同時接触・向き・個数への接続を維持。一般多角形への転移の証拠とはしない。
講義編の対応箇所
| 問題中の手掛かり | そこから行う判断 | 第1回の知識 | 第2回の判断 |
|---|---|---|---|
| 三辺は一次不等式、図形は長方形 | 各辺で最大の頂点を選び中心と半幅の三条件へする | 単位円の座標と比 加法定理と分母 | §17 |
| 辺の二係数は単位長さ、三式の和は零 | 倍率を確かめ中心を消して必要条件を出す | 二乗和と正接 | §17 |
| 同じ一中心の存在が要求される | 余裕を配り二辺の値から中心を逆構成して十分性を示す | 単位円の座標と比 | §14、§17 |
| 包含と三辺同時接触の違い | 不等式と等式を選び分け角の範囲で絶対値を外す | 象限・特殊角 不等式・端・和集合 | §16、§17、§12 |
| 一次の三角式が残る | 合成の山と二端を出して最小値と交点数へ使い分ける | 振幅・位相・値域 位相と元の角の範囲 | §2、§4 |
| パラメータの境界と等号 | 二つの単調部分の像で各境界の個数を数える | グラフの増減と交点 基本方程式・角の系列 | §4 |
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学Ⅰ・二次関数・方程式
学習の役割:C 総合
問題
実数$a\geq0$とし、
$\displaystyle F_a(\theta)=\frac{1+\sin2\theta}{a+\sin\theta+\cos\theta}$
を、$0\leq\theta\lt 2\pi$のうち分母が零でない角について考える。
(1)$F_a$の値域を$a$によって求めよ。
(2)方程式$F_a(\theta)=k$が相異なる解をちょうど四個持つ$a,k$の条件を求めよ。
(3)$k=0$の解の個数を$a$によって求めよ。
分子と分母で反復する量があります。その量の範囲と除外値を先に渡します。
$R=\sqrt2$、$t=\sin\theta+\cos\theta$とする。$t$の像は$[-R,R]$で、内点には二つの角、端点には一つの角が対応する。分子は$t^2$なので、$F_a=f_a(t)=t^2/(a+t)$、$t\ne-a$である。
まず$a\gt 0$とする。同じ枝の$u\lt v$について
$\displaystyle f_a(v)-f_a(u)=(v-u)\left(1-\frac{a^2}{(a+u)(a+v)}\right).$
従って$(-\infty,-2a]$で増加、$[-2a,-a)$で減少、$(-a,0]$で減少、$[0,\infty)$で増加である。極の両側ではそれぞれ$-\infty,+\infty$へ近付く。境界の値は$f_a(-2a)=-4a,f_a(0)=0,f_a(\pm R)=2/(a\pm R)$である。ただし分母零の端は使わない。
(1)$0\lt a\lt R$では極が像の内部にある。右側の$(-a,0]$だけで$[0,+\infty)$を取る。左側は、$-2a$が像内ならそこで最大$-4a$、像より左なら$t=-R$で最大$2/(a-R)$となる。$a=R$では極が左端で、値域は$[0,+\infty)$。$a\gt R$では分母が常に正で、最小$0$、最大は両端を比べた$2/(a-R)$となる。中間値の実現も二次式で確かめられる。$k\gt 0$の負根$(k-\sqrt{k^2+4ak})/2$は$(-a,0)$内なので、$a\leq R$なら全て実現する。$a\gt R$なら、この負根が$-R$以上となる条件は$k\leq2/(a-R)$であり、上の区間の全値を実現する。$k=0$は$t=0$で実現する。
負の値について、$0\lt a\leq R/2,k\leq-4a$なら大きい方の根は$[-2a,-a)$に入り、像内で実現する。$R/2\lt a\lt R,k\leq2/(a-R)$なら、二次式の$-R$での値は$2+k(R-a)\leq0$、$-a$での値は$a^2\gt 0$なので、その二点の間に大きい方の根がある。従ってこちらも全て実現する。以上の根の位置は、平方根の式または上に開く放物線の符号から確かめられ、微分・積分の知識を要しない。
$a=0$では元の分母の条件$t\ne0$が残り、$f_0(t)=t$。以上より、値域は
$\displaystyle \boxed{\begin{cases}[-R,0)\cup(0,R]&a=0,\\(-\infty,-4a]\cup[0,+\infty)&0\lt a\leq R/2,\\(-\infty,2/(a-R)]\cup[0,+\infty)&R/2\lt a\lt R,\\{}[0,+\infty)&a=R,\\{}[0,2/(a-R)]&a\gt R.\end{cases}}$
(2)$a\gt 0$では$f_a(t)=k$は$t^2-kt-ak=0$と同値である。$t=-a$を代入すると$a^2\gt 0$なので、この二次式の根に除外値は混ざらない。四個の解を得るには、相異なる二根がともに$(-R,R)$に入ることが必要十分である。
$k\gt 0$では二根は正・負の一つずつで、正根の絶対値の方が大きい。正根が$R$より小さい条件は、正側の枝の増加性から$k\lt 2/(a+R)$。従って四個の解の条件は$0\lt k\lt 2/(a+R)$である。等号では正根が端となり、三個の解になる。
$a\gt 0$における$k\lt 0$は$0\lt a\lt R$の場合だけ可能で、二根とも極の左側にある。二つの枝が像内にあるには$-2a\gt -R$、すなわち$a\lt R/2$が必要。増加する部分$[-R,-2a]$の値域は$[2/(a-R),-4a]$、減少する部分$[-2a,-a)$の値域は$(-\infty,-4a]$だから、相異なる二内点の条件は$2/(a-R)\lt k\lt -4a$。左の等号では一根が端で三個の解、右の等号では重根一つで二つの角となる。
$a=0$では$f_0=t$なので高々二つの角、$k=0$は次の(3)のとおりで四個の解にはならない。従って答えは
$\displaystyle \boxed{a\gt 0,\quad0\lt k\lt \frac2{a+R}}$
$\displaystyle \text{または}\quad\boxed{0\lt a\lt R/2,\quad\frac2{a-R}\lt k\lt -4a}.$
(3)$a\gt 0$なら根は$t=0$で分母$a$は非零。像の内点なので二つの角。$a=0$なら$t=0$は分母零のため除外され、解は零個である。
追加の履修:数学Ⅱ・微分法。三角関数から$t$へ移した後の$f_a$は実数の有理関数である。$a\gt 0$で$f_a'(t)=t(t+2a)/(a+t)^2$。分母は正なので、$-2a,0$を零点、$-a$を除外点として増減表を作ると、基本解答と同じ四枝が得られる。極値・像・角の対応数の処理は基本解答と同じ。微分は枝を見つける部分を短くするが、分母の除外と逆像の個数を代わりに確認してくれるわけではない。
求めるものは商の値域と、同じ値を取る角の個数です。分子の$1+\sin2\theta$は$(\sin\theta+\cos\theta)^2$、分母にも同じ一次式があります。全てを半角正接へ展開する候補もありますが、ここでは反復する一次式を置けば二次の商にまとまり、次数も元の区間との対応も小さく保てます。
最初に渡す情報は$t$の像と分母の除外です。値域の問題では実数の商の枝、角の個数の問題では一つの$t$に対応する角数も必要です。二つの要求が同じ置換を使っても、最後の仕事は違います。
次はパラメータの境界を探します。分母から極$-a$が出ます。第2回の商の節で使った「二つの値の差」を取ると、$-2a,0$を境に増減が決まります。この三点が像の両端へ入る時を比べれば、$a=0,R/2,R$という境界を計算前に候補として挙げられます。これは結論の表から境界を後付けしたものではありません。
値域が出た後、四個の解という要求へ戻ります。内点一値なら二つの角、端一値なら一つの角なので、相異なる二内点が必要です。正の$k$では正負の二根が生じるため大きい絶対値の根を、負の$k$では極の左に二枝が残るかと、その枝の像の重なりを調べます。重根の境界は二値として数えません。
最後に$a=0$を独立に戻します。約分後の式は単に$t$でも、$t=0$の穴が残ります。(3)はこの情報を落とすと答えが変わる検査です。難しい部分は新しい三角公式ではなく、三角関数が渡した像・商の分岐・パラメータの境界・元の角数を接続することにあります。
この問の役割:置換から商の境界と根の配置、角数へ接続。
講義編の対応箇所
| 問題中の手掛かり | そこから行う判断 | 第1回の知識 | 第2回の判断 |
|---|---|---|---|
| 分子と分母に同じ一次結合 | 和を置き、像と分母零を同時に渡す | 二乗和と正接 振幅・位相・値域 | §3、§12 |
| 分母一次・分子二次の商 | 二値の差の符号から極と増減の境目を作る | 不等式・端・和集合 | §8 |
| 動く境目と固定の像 | 端へ入る時を比較しa=0,R/2,Rで分ける | グラフの増減と交点 | §8、§4 |
| 値域から四個の解の要求へ変わる | 相異なる二内点の根という配置へ再分類する | 基本方程式・角の系列 | §4、§8 |
| 正の値と負の値の枝 | 根の符号または二枝の像の重なりを比較する | 不等式・端・和集合 | §8、§4 |
| 約分できるa=0とk=0 | 約分前の穴を戻して零点の個数を確定する | 単位円の座標と比 | §12、§8 |
必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、指数・対数関数、数学Ⅲ・微分法、積分法と極限
学習の役割:C 総合
問題
正整数$n$に対し$I_n=\int_0^1x^{n-1}\sin^2(\pi x)dx$、$J_n=\int_0^1x^{n-1}\sin^2(n\pi x)dx$とする。(1)$\lim_{n\to\infty}n^3I_n$を求めよ。(2)$\lim_{n\to\infty}nJ_n$を求めよ。
重みが集中する幅の中で、二小問の正弦の角は同じ程度に動くでしょうか。
(1)$g(x)=\sin^2\pi x$は$g(0)=g(1)=g'(0)=g'(1)=0$、$g''(x)=2\pi^2\cos2\pi x$。二回の部分積分で
$\displaystyle I_n=\frac{2\pi^2}{n(n+1)}\int_0^1x^{n+1}\cos2\pi x\,dx.$
平均値の定理から$|\cos2\pi x-1|\leq2\pi(1-x)$なので、$(n+2)\int_0^1x^{n+1}\cos2\pi x\,dx$と$1$の差の絶対値は$2\pi/(n+3)$以下。従って$n^3I_n\to2\pi^2$。
(2)$t=n(1-x)$と置換すると、$n$が整数なので$\sin^2(n\pi-\pi t)=\sin^2\pi t$であり、
$\displaystyle nJ_n=\int_0^n(1-t/n)^{n-1}\sin^2\pi t\,dt.$
固定した$A\gt 0$について$n\gt A$とし、$0\leq u\lt 1$で$-u/(1-u)\leq\log(1-u)\leq-u$($\log(1-u)=-\int_0^u dv/(1-v)$から従う)を使うと、$[0,A]$で$(n-1)\log(1-t/n)$は$-t$へ一様に近付く。指数を戻して$(1-t/n)^{n-1}\to e^{-t}$も一様である。従って有限区間の積分は$\int_0^Ae^{-t}\sin^2\pi t\,dt$へ近付く。
一方、$n\geq2$、$0\leq t\lt n$で$(1-t/n)^{n-1}\leq e^{-t/2}$なので、$A$以降の寄与の絶対値は$\int_A^\infty e^{-t/2}dt=2e^{-A/2}$以下。極限側の尾部も$e^{-A}$以下。先に$n\to\infty$、次に$A\to\infty$とすれば
$\displaystyle \lim_{n\to\infty}nJ_n=\int_0^\infty e^{-t}\sin^2\pi t\,dt.$
有限端の原始関数$e^{-t}(-\cos\lambda t+\lambda\sin\lambda t)/(1+\lambda^2)$から、$\int_0^\infty e^{-t}\cos\lambda t\,dt=1/(1+\lambda^2)$。二倍角を使い$\lambda=2\pi$とすると、答えは$\frac12(1-1/(1+4\pi^2))=2\pi^2/(1+4\pi^2)$。
両小問は高冪の重みを持ちますが、正弦の角が$n$で変わるかが違います。(1)は固定した連続関数で端点値が零です。その零の次の大きさが欲しいので、部分積分で端の値と端の導関数を取り出し、添字を増やした同じ集中型の積分へ渡す候補が出ます。
(2)へ固定関数の集中定理を使うことはできません。$1-x$が$1/n$程度の重みの幅でも正弦の角は定数程度変化し、端点値だけでは情報を落とします。第2回の最後で比べた「集中幅の中で関数が動くか」という判断から、距離を$n$倍する置換を選びます。整数$n$という条件は、端の位相$n\pi$を二乗の周期で消すために使います。
拡大後の積分には指数型の重みと、速さが一定になった正弦が残ります。区間自体も長くなるので、有限な部分だけの極限では十分ではありません。対数の上下界から有限部分の一様な誤差、減衰する指数から尾部の上界を別々に作り、順に極限を取ります。
最後の積分は二倍角で定数と余弦へ分け、指数と三角関数の積の原始関数へ帰着します。難しさは新しい公式の記憶ではなく、最初の集中規則が使えない条件を見抜き、適切な幅へ移し、二種類の誤差を評価して接続するところにあります。二つの答えの違いが、その判断の必要性を示しています。
この問の役割:集中幅と動く角を比較し、剰余評価と積分の極限を接続。数学Ⅲの前提を要する。
講義編の対応箇所
| 問題中の手掛かり | そこから行う判断 | 第1回の知識 | 第2回の判断 |
|---|---|---|---|
| 高冪の重みだが一方の角は固定、一方はn倍 | 集中する幅で三角関数が変わるかを比較する | 周期と定義域 | §28、§29 |
| 固定関数の端の値と導関数が零 | 部分積分で次の端の情報を取り出し誤差を押さえる | 倍角・半角・三倍角 象限・特殊角 | §25、§28 |
| n倍角は幅1/nでも動く | 端からの距離をn倍し整数nの周期で位相を消す | 周期と定義域 点の対応 | §29 |
| 区間も拡大する | 有限部分の対数評価と尾部の減衰評価を分け極限を正当化する | 単位円の座標と比 | §29 |
| 指数重みと一つの正弦二乗が残る | 倍角で平均と余弦に分け原始関数で積分する | 倍角・半角・三倍角 | §24、§29 |
模範解答を読んで理解できた問題も、次は答案を閉じて解き直します。そのとき計算を丸ごと再現する前に、最初に使えた条件と、変換後に必要になった判断を短く書いてください。
例えば、問題(46)で二次関数にするところまで出たのに最大値を取り違えたなら、置換をもう一度暗記するより、数学Ⅰの軸と区間の両端を復習します。問題(73)で二つの置換値は出たのに角の個数を取り違えたなら、元の区間における一値と角の対応を作り直します。三角関数の変換、他分野の処理、両者の対応を分けると、次の練習が具体的になります。
| 答案を閉じると止まる場所 | 第2回で読み直す節 | 別の問題で確かめる |
|---|---|---|
| 一つの量へまとめる候補が出ない | 「条件の和を保存し、隠れた共通の一次式も探す」 | (22)(23)(46)を、残す量の候補から選び直す |
| 同じ二次式で方法を選べない | 「比を答えたいから…」「同じ二次式でも、極値なら…」 | (24)(26)で、出力とその後の仕事を比べる |
| 割る・二乗する段階で解を落とす | 「割る前に…」「符号を失う変形では…」 | (25)(38)(44)で、変形前の条件を先に書く |
| 代数の根は出たが角数が違う | 「二次方程式の根を、角の個数へ戻す」 | (21)(31)(73)で、像と対応数を別々に作る |
| 円の式は出たが軌跡を言い切れない | 「距離や軌跡を、円の座標へ翻訳する」 | (35)(47)で、任意の点から元の角を戻す |
| 別々の最適値を組み合わせてしまう | 「一つの配置で、複数の境界を同時に満たす」 | (36)(43)(75)で、共通の角・中心を指定する |
| 周期を見たが回数や操作列が混ざる | 「周期を見たら、方向別の回数と時系列を区別する」 | (51)(52)(70)で、一回の操作の意味から分類する |
| 極限の規則を似た形へ使ってしまう | 「速い振動と高冪の集中…」「集中の幅と振動の幅…」 | (65)(68)(77)で、幅の中で角が動くかを比べる |