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APMO2022-5

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APMO2022-5の解法を置いておきます.

実数 $a,b,c,d$$a^2+b^2+c^2+d^2=1$ をみたすとき, $(a-b)(b-c)(c-d)(d-a)$ のとりうる最小の値を求め, その最小の値を実現する組 $(a,b,c,d)$ をすべて求めよ.

STEP1 問題を言い換える

まず, 最小値は負だとわかります.
最小値が負なので $a-b,b-c,c-d,d-a$ のうちちょうど$1$つまたは$3$つが正となることがわかります. また, いずれの場合でも $a,b,c,d$ の値を適切に並べ替えることで $(a-b)(b-c)(c-d)(d-a)$ の値を変えないまま $a>b>c>d$ とできます.

$a,b,c,d$ の差が問題となっているので, $a,b,c,d$ を平行移動させることを考えてみます.
$a,b,c,d$ が平行移動したとき, $(a-b)(b-c)(c-d)(d-a)$ の値は変わりませんが $a^2+b^2+c^2+d^2=1$ の条件に影響します.
$a-b=x,b-c=y,c-d=z$ とおくと $x,y,z>0$$d-a=-(x+y+z)$ となっています.

STEP2 問題を言い換える2

$x,y,z$ の値から $(a,b,c,d)$ を復元することを考えます.
$(a,b,c,d)=(t,t-x,t-x-y,t-x-y-z)$ となり, $a^2+b^2+c^2+d^2=1$ をみたすように $t$ の値を適切に選ぶ必要があります.
そのためには,
$\begin{aligned} 1 &=a^2+b^2+c^2+d^2\\ &=t^2+(t-x)^2+(t-x-y)^2+(t-x-y-z)^2\\ &=4t^2-2(3x+2y+z)t+3x^2+2y^2+z^2+4xy+2yz+2zx \end{aligned}$
が実数解をもつ必要があり, 判別式を見ることで $3x^2+4y^2+3z^2+4xy+4yz+2zx\leq4$ が必要とわかります.
整理すると, $2(x+y)^2+2(y+z)^2+(z+x)^2\leq4$ となります.
ここで, $(a-b)(b-c)(c-d)(d-a)=-xyz(x+y+z)$ であるため, 次の問題に帰着できることがわかりました.

正の実数 $x,y,z$$2(x+y)^2+2(y+z)^2+(z+x)^2\leq4$ をみたすときの $xyz(x+y+z)$ の最大値を求めよ.

STEP3 問題を言い換える3

$xyz(x+y+z)$ という形で気がついた人もいると思いますが, ここでHeronの公式を思い出してみます.
三辺の長さが $p,q,r$ である三角形の面積は $\dfrac{\sqrt{(p+q+r)(p+q-r)(p-q+r)(-p+q+r)}}{4}$ であり, 三辺の長さが $x+y,y+z,z+x$ である三角形の面積は $\sqrt{xyz(x+y+z)}$ となります.
さらに, 実数 $p,q,r$ について, 三辺の長さが $p,q,r$ である三角形が存在することの必要十分条件は正の実数 $x,y,z$ が存在して $p=y+z,q=z+x,r=x+y$ と書けることなので次の問題に帰着できます.

三角形$\text{ABC}$$2\text{AB}^2+2\text{BC}^2+\text{CA}^2\leq4$ をみたすときの三角形$\text{ABC}$ の面積の最大値を求めよ.

STEP4 解く

$\text{AC}$ の中点を$\text{M}$ とし, $\angle{\text{AMB}}=\theta$とおきます.
このとき, $2\text{AB}^2+2\text{BC}^2+\text{CA}^2\leq4$$\text{BM}^2+2\text{AM}^2\leq1$ と直せて, 三角形$\text{ABC}$ の面積は$\text{AM}\cdot\text{BM}\sin\theta$ となります.
$\text{AM}\cdot\text{BM}\sin\theta\leq\text{AM}\cdot\text{BM}\leq\dfrac{1}{2\sqrt{2}}(\text{BM}^2+2\text{AM}^2)\leq\dfrac{1}{2\sqrt{2}}$
となり, これらの等号がすべて成立するとき, すなわち $\theta=\dfrac{\pi}{2}$, $\text{BM}=\sqrt{2}\text{AM}$, $\text{BM}^2+2\text{AM}^2=1$ のときに最大値を達成することがわかります.
このとき$\text{BM}=\dfrac{1}{\sqrt{2}},\ \text{AM}=\dfrac{1}{2}$ であり, $\text{AB}=\text{BC}=\dfrac{\sqrt{3}}{2},\ \text{AC}=1$ となります.
これに対応する $x,y,z$ の値は $\left(\dfrac{1}{2},\dfrac{\sqrt{3}-1}{2},\dfrac{1}{2}\right)$ となり, $a,b,c,d$ の値を復元すると $(a,b,c,d)=\left(\dfrac{\sqrt{3}+1}{4},\dfrac{\sqrt{3}-1}{4},\dfrac{-\sqrt{3}+1}{4},\dfrac{-\sqrt{3}-1}{4}\right)$ となります.
また,このときの $(a-b)(b-c)(c-d)(d-a)$ の値は $-\dfrac{1}{8}$ でこれが最小値です.
最小値をとるときの $(a,b,c,d)$$\left(\dfrac{\sqrt{3}+1}{4},\dfrac{\sqrt{3}-1}{4},\dfrac{-\sqrt{3}+1}{4},\dfrac{-\sqrt{3}-1}{4}\right)$ およびこれを逆順にしたもの, およびこれらを巡回させたものの計$8$個です.

投稿日:2023714
更新日:72
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tria_math
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