2

q-類似の級数解説

95
0
$$$$

はじめに

  OMC237-F で遊んでいたら意外な発見があったので共有したいと思います.

今回示したい式

$$ \left(\sum_{i=0}^\infty \frac{1}{[i]_q!}x^i\right)\left(\sum_{i=0}^\infty \frac{(-1)^i i q^{i(i-1)/2}}{[i]_q!}x^i\right) =\sum_{i=1}^\infty \frac{(-1)^i(q-1)^{i-1}}{[i]_q}x^i$$
ただし, $[i]_q:=1+q+\cdots +q^{i-1},\quad [i]_q!:=[1]_q[2]_q\cdots[i]_q$.

ではOMC237-Fで遊んでいきたいと思います.

本編

OMC237-F

 $2016$ 次実数係数多項式 $P(x)$ は任意の $2016$ 以下の非負整数 $i$ について $P(2^i)=i$ をみたします.このとき $P(2^{2017})$ は整数となるので,これを $10^5$ で割った余りを求めてください.

1. ラグランジュの補完公式に当てはめる.

 $y=P(x)$$2017$ 個の点 $(x,y)=(2^i,i)\quad(i=0,1,\dots,2016)$ を通る $2016$ 次多項式なので, ラグランジュの補完公式 を使いたくなります. すると
$$P(x)=\sum_{i=0}^{2016}i\times\frac{(x-2^0)(x-2^1)\cdots(x-2^{i-1})\cdot(x-2^{i+1})(x-2^{i+2})\cdots(x-2^{2016})}{(2^i-2^0)(2^i-2^1)\cdots(2^i-2^{i-1})\cdot(2^i-2^{i+1})(2^i-2^{i+2})\cdots(2^i-2^{2016})}$$
となり, このとき
$$P(2^{2017})=\sum_{i=0}^{2016}i\times\frac{(2^{2017}-2^0)(2^{2017}-2^1)\cdots(2^{2017}-2^{i-1})\cdot(2^{2017}-2^{i+1})(2^{2017}-2^{i+2})\cdots(2^{2017}-2^{2016})}{(2^i-2^0)(2^i-2^1)\cdots(2^i-2^{i-1})\cdot(2^i-2^{i+1})(2^i-2^{i+2})\cdots(2^i-2^{2016})}$$
と表せます. しかし, どうやらこれでは $10^5$ で割った余りを計算するのが大変そうです.どうやらラグランジュの補完公式に代入するだけで解ける問題ではなさそうです...では次!

2. 因数定理を活用する.

 どうやら工夫が要りそうです. $P(x)$ をうまく利用して,
$$Q(x)=P(2x)-P(x)-1$$
という式を考えます. このとき, $i=0,1,\dots,2015$ について,
$$ \begin{aligned} Q(2^i)&=P(2^{i+1})-P(2^i)-1\\ &=(i+1)-i-1\\ &=0 \end{aligned} $$
よって $Q(x)$$(x-2^0)(x-2^1)\cdots(x-2^{2015})$ を因数に持ち $Q(x)$$2016$ 次であるので,定数 $a$ を用いて, $$Q(x)=a(x-2^0)(x-2^1)\cdots(x-2^{2015})$$ という形で表されます. また
$$Q(0)=P(2\cdot 0)-P(0)-1=-1$$
より, $a=-\dfrac{1}{(-2^0)(-2^1)\cdots(-2^{2015})}$ となり,
$$Q(x)=-\left(1-\frac{x}{2^0}\right)\left(1-\frac{x}{2^1}\right)\cdots\left(1-\frac{x}{2^{2015}}\right)$$ という表示が得られます.これより,

$$\begin{aligned} P(2^{2017})&=Q(2^{2016})+P(2^{2016})+1\\ &=-\left(1-\frac{2^{2016}}{2^0}\right)\left(1-\frac{2^{2016}}{2^1}\right)\cdots\left(1-\frac{2^{2016}}{2^{2015}}\right)+2016+1\\ &=2017-(1-2^1)(1-2^2)\cdots(1-2^{2016}) \end{aligned}$$
となりました. だいぶ計算のしやすい形になりました.実際これから $10^5$ で割った余りを求めることができ $CA$ を得ることができます.

3.結果を比較する.

 ここでラグランジュの補完公式で得られた答えと比較すると面白い等式が得られそうなので,ラグランジュの補完公式で得られた級数を変形してみます.
$$ \begin{aligned} P(2^{2017})&=\sum_{i=0}^{2016}i\times\frac{(2^{2017}-2^0)(2^{2017}-2^1)\cdots(2^{2017}-2^{i-1})\cdot(2^{2017}-2^{i+1})(2^{2017}-2^{i+2})\cdots(2^{2017}-2^{2016})}{(2^i-2^0)(2^i-2^1)\cdots(2^i-2^{i-1})\cdot(2^i-2^{i+1})(2^i-2^{i+2})\cdots(2^i-2^{2016})}\\ &=\sum_{i=0}^{2016}i\times\frac{2^0(2^{2017}-1)2^1(2^{2016}-1)\cdots 2^{i-1}(2^{2017-(i-1)}-1)\cdot 2^{i+1}(2^{2017-(i+1)}-1)2^{i+2}(2^{2017-(i+2)}-1)\cdots 2^{2016}(2^{1}-1)}{2^0(2^i-1)2^1(2^{i-1}-1)\cdots2^{i-1}(2^1-1)\cdot (-2^i)(2^1-1)(-2^i)(2^2-1)\cdots(-2^i)(2^{2016-i}-1)}\\ &=\sum_{i=0}^{2016}i\times(-1)^{2016-i}\frac{(2^{2017}-1)(2^{2016}-1)\cdots (2^{2017-(i-1)}-1)\cdot 2^{1}(2^{2017-(i+1)}-1)2^{2}(2^{2017-(i+2)}-1)\cdots 2^{2016-i}(2^{1}-1)}{(2^i-1)(2^{i-1}-1)\cdots(2^1-1)\cdot (2^1-1)(2^2-1)\cdots(2^{2016-i}-1)}\\ &=\sum_{i=0}^{2016}i\times(-1)^{2016-i}2^{1+2+\cdots (2016-i)}\frac{[2017]_2[2016]_2\cdots [2017-(i-1)]_2\cdot [2017-(i+1)]_2[2017-(i+2)]_2\cdots [1]_2}{[i]_2[i-1]_2\cdots[1]_2\cdot [1]_2[2]_2\cdots[2016-i]_2}\\ &=\sum_{i=0}^{2016}i\times(-1)^{2016-i}2^{(2016-i)(2017-i)/2}\frac{[2017]_2[2016]_2\cdots [2017-(i-1)]_2[2017-i]_2 [2017-(i+1)]_2[2017-(i+2)]_2\cdots [1]_2}{[i]_2[i-1]_2\cdots[1]_2\cdot [1]_2[2]_2\cdots[2016-i]_2[2017-i]_2}\\ &=\sum_{i=0}^{2016}i\times(-1)^{2016-i}2^{(2016-i)(2017-i)/2}\frac{[2017]_2!}{[i]_2![2017-i]_2!}\\ \end{aligned} $$
よって、
$$ P(2^{2017}) =\sum_{i=0}^{2016}i\times(-1)^{2016-i}2^{(2016-i)(2017-i)/2}\frac{[2017]_2!}{[i]_2![2017-i]_2!} =2017-(1-2^1)(1-2^2)\cdots(1-2^{2016}) $$が成立. 総和記号の中身の式を $a_i$とすると, $a_{2017}=-2017$となるから,
$$\begin{aligned} \sum_{i=0}^{2017}i\times(-1)^{2016-i}2^{(2016-i)(2017-i)/2}\frac{[2017]_2!}{[i]_2![2017-i]_2!} &=-(1-2^1)(1-2^2)(1-2^3)\cdots(1-2^{2016})\\&=-(-1)^{2016}[2016]_2!\end{aligned}$$
両辺 $[2017]_2!$ で割り $-1$ をかけることで,
$$\sum_{i=0}^{2017}\frac{i}{[i]_2!}\frac{(-1)^{2017-i}2^{(2016-i)(2017-i)/2}}{[2017-i]_2!} =(-1)^{2016}\frac{1}{[2017]_2}$$
となります. より一般に
$$ \begin{aligned} \sum_{i=0}^{n}\frac{i}{(q-1)(q^2-1)\cdots(q^i-1)}\frac{(-1)^{n-i}q^{(n-i-1)(n-i)/2}}{(q-1)(q^2-1)\cdots(q^{n-i}-1)} &=(-1)^{n-1}\frac{1}{q^n-1}\\ \iff\sum_{i=0}^{n}\frac{i}{(q-1)^i[i]_q!}\frac{(-1)^{n-i}q^{(n-i-1)(n-i)/2}}{(q-1)^{n-i}[n-i]_q!} &=(-1)^{n-1}\frac{1}{(q-1)[n]_q}\\ \iff\sum_{i=0}^{n}\frac{i}{[i]_q!}\frac{(-1)^{n-i}q^{(n-i-1)(n-i)/2}}{[n-i]_q!} &=(-1)^{n-1}\frac{(q-1)^{n-1}}{[n]_q} \end{aligned} $$
これは畳み込みの形をしており,
$$\left(\sum_{i=0}^\infty \frac{i}{[i]_q!}x^i\right)\left(\sum_{i=0}^\infty \frac{(-1)^iq^{i(i-1)/2}}{[i]_q!}x^i\right) =\sum_{i=1}^\infty \frac{(-1)^{i-1}(q-1)^{i-1}}{[i]_q}x^i\\\\$$
となります. これを少し変形( $q$$q^{-1}$ に置き換え $x$$-x$ に置き換える.)すると,
$$ \left(\sum_{i=0}^\infty \frac{1}{[i]_q!}x^i\right)\left(\sum_{i=0}^\infty \frac{(-1)^i i q^{i(i-1)/2}}{[i]_q!}x^i\right) =\sum_{i=1}^\infty \frac{(-1)^i(q-1)^{i-1}}{[i]_q}x^i$$
となることが確かめられます.

最後に

今回 OMC の問題で遊んでみたら意外な公式を得ることができました. 以下の問題で同じように遊んでみると,

問題その2

 $n$ 次実数係数多項式 $P(x)$ は任意の $n$ 以下の非負整数 $i$ について $P(q^i)=1$ をみたします.このとき $P(q^{n+1})$ を求めてください.

以下の公式が得られると思うので時間のある方は検証してみてください.

$$ \left(\sum_{i=0}^\infty \frac{1}{[i]_q!}x^i\right)\left(\sum_{i=0}^\infty \frac{(-1)^i q^{i(i-1)/2}}{[i]_q!}x^i\right) =1$$

投稿日:3日前
更新日:11時間前
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

MARTH
MARTH
9
1601
OMC黄

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中