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積分ガチャの超級から学ぶ積分のテクニック【全積分ガチャ超級の問題, 解答付き】

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積分定数を統一してCとします.

1: 積分ガチャとは

「おいしい数学」にて, 運営されている高校数学の数学IIIで扱う積分計算をランダムに5問出題するサービスです. 5の倍数以外の日に公開されているweb版と多数の積分が収録されている有料アプリ版が存在します.

web版 積分ガチャ

積分ガチャには初級・中級・上級・超級の4段階の難易度があり, 特に超級は稀に「CAUTION!!」や「WARNING!!」や「DANGER!!」という文字と演出と共に出題され, 解答が公開されていないことが特徴です.

皆さんに高校数学範囲内ギリギリで解ける難しい積分を自力で解き切る達成感を味わって欲しいので今回, 記事を書きました.

2: 関数と積分の公式など

2.1: 関数

逆三角関数

sinx(π/2xπ/2)の逆関数をarcsinxとする.
cosx(0xπ)の逆関数をarccosxとする.
tanx(π/2<x<π/2)の逆関数をarctanxとする.

双曲線関数

実数xに対して, 双曲線関数を次のように定める.
sinhx=exex2
coshx=ex+ex2
tanhx=exexex+ex

逆双曲線関数

arsinhx=log(x+x2+1)(xR)
arcoshx=log(x+x21)(x1)
artanhx=12log1+x1x(1<x<1)

二重階乗

n!!は階乗の一つ飛ばしバージョンです. 例: 5!!=531,8!!=8642
(2n)!!=2nn!
(2n1)!!=(2n)!2nn!

2.2: 積分公式

便利な関数の積分を紹介します.

三角関数の逆関数

dx1x2=arcsinx+C
dx1+x2=arctanx+C

双曲線関数の逆関数

dxx21=arcoshx+C=log(x+x21)+C)
dx1+x2=arsinhx+C=log(x+x2+1)+C)

x2+1の積分

x2+1dx=12xx2+1+12arsinhx+C

ウォリス積分

n,mは自然数とする.
0π2sinnxdx={(n1)!!n!!π2if n even,(n1)!!n!!if n odd.={(2m)!4mm!2π2if n=2m,4mm!2(2m)!12mif n=2m1.

2.3: 便利な置換

t=tanxと置換したとき
sinx=t21+t2,cosx=11+t2
有効な場合: sin2x,cos2x,tanxのみで構成される場合

ワイエルシュトラス置換

t=tanx2と置換したとき
sinx=2t1+t2,cosx=1t21+t2,tanx=2t1t2
有効な場合: sinx,cosx,tanxの1次式が含まれる場合

x2+1の置換
  1. x=tant置換dxdt=tan2t+1=x2+1,x2+1=1|cost|
  2. x=sinht置換dxdt=cosht,x2+1=cosht

x=1tantなどもあるが, (1), (2)で解けることが大半

2.4: 積分のテクニック

King Property

abf(x)dx=abf(a+bx)dx

xf(sinx)の積分

0πxf(sinx)dx=π20πf(sinx)dx

(xα)m(βx)nの積分

m,n0以上の整数とする.
βα(xα)m(βx)ndx=m!n!(m+n+1)!(βα)m+n+1
特にベータ関数という特殊関数で次のように表される.
B(m+1,n+1)=01xm(1x)ndx=m!n!(m+n+1)!

ベータ関数

実数x,yx>0,y>0を満たす.
B(x,y)=01tx1(1t)y1dt=Γ(x)Γ(y)Γ(x+y)
B(x,y)=20π2sin2x1θcos2y1θdθ

fは偶関数とする.
aaf(x)1+exdx=12aaf(x)dx

1aaf(x)1+x2dx=1aaf(1x)1+x2dx

符号関数

符号関数sgnx={1if x<0,0if x=0,1if x>0.と定める.
|x|xdx=|x|+C=xsgnx+C
|x|xf(x)dx=|x|xf(x)dx=sgnxf(x)dx

3: 問題

3.1: 問題を解く前に

問題は上から難易度順とその問題が活用できる具合で独断と偏見で並べています.

各問題は「問題」「コメント(ポイント・方針)」「解答」という流れで書かれているので, 問題を解きたい人は解答を見ないようにして注意してください. 途中で詰まった場合はコメントをクリックすることでヒントを得ることができます.


3.2: 問題1~5

I1=sin2xsinx+cosx+1dx



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ポイント: 三角関数, ワイエルシュトラス置換, 部分分数分解
不定積分で三角関数のみで構成され, 1次式の三角関数があるので, tanx2で置換する. 1(1+x2)2の積分も意外と盲点なのでできるようになった方がいいと思う.


t=tanx2とおくと, dx=21+t2dt
I1=(2t1+t2)22t1+t2+1t21+t2+121+t2dt=2t2(1+t2)2(1+t)dt={12(1+t)+1t2(1+t2)+t1(1+t2)2}dt

1(1+t2)2の積分を変形する.
dt1+t2=t1+t2+2t2(1+t2)2dt=t1+t2+2{11+t21(1+t2)2}dtdt(1+t2)2=t2(1+t2)+12dt1+t2
I1=t2(1+t2)+{12(1+t)t2(1+t2)+t(1+t2)2}dt=t2(1+t2)+12dt1+t14(1+t2)1+t2dt+12(1+t2)(1+t2)2dt
I1=1+t2(1+t2)+12log(1+t)14log(1+t2)+C
I1=12(1+tanx2)cos2x2+12log|cosx2+sinx2|+C



I2=0121(x+1)31x2dx



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ポイント: 三角関数
1x2があるので, まずは三角関数で置換することを考える. x+1があるので半角の公式で変形することを考えてcosで置換する.


x=costとおくと, dx=sintdt
I2=π3π2dt(cost+1)3=18π3π2dtcos6t2=14π6π4dtcos6t

s=tantとおくと, ds=(s2+1)dt
I2=14131(1+s2)2ds=14[s+23s3+15s5]131=715143135



I3=3274x12xdx



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ポイント: 全体置換
根号の中に分子・分母が1次式の有利関数がある関数の積分は全体を置換することで解ける. 積分ガチャの超級はtanの逆関数が頻出するので1x2+1の積分は覚えておくと便利.


y=x12xとおくと, 2ydy=dx(2x)2
I3=13y2y(2x)2dy

y2=12x12x=1y2+1より
I3=132y2(y2+1)2dy=[y(1y2+1)]13+13dyy2+1=[yy2+1+arctany]13
I3=234+π12



I4=01x2x+1x2+1dx



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ポイント: x2+1(双曲線関数)
基本的な積分しかないので素直に解く. x2+1の積分は大学受験の数学でも頻出なので覚える. よく置換する関数x+x2+1sinhの逆関数arsinhx=log(x+x2+1)の中身になっている.


I4=01(x2+1122xx2+1)dx=[x2+1]01+01x2+1dx

x=sinhyとおくと, dx=coshydy,y=log(x+x21)
I4=12+0log(1+2)cosh2ydy=12+0log(1+2)1+cosh2y2dy=12+[12y+14sinh2y]0log(1+2)
I4=12+12log(1+2)+14(1+2)2(1+2)22=122+12log(1+2)



I5=0π(3π2x)x2sinx32sin2xdx



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ポイント: King Property, 三角関数
sinx=sin(πx)が成り立つので, King Propertyで分子の3次式が消えそうと予想ができれば, あとは11+x2の形の関数を積分をすればよい. King Propertyさえ知っていればすぐに解けると思う.


King Propertyでy=πxとおいて, 置換前と後の2個の積分を足す.
I5=0π(π+2y)(πy)2siny32sin2ydy=120π{(3π2y)y2+(π+2y)(πy)2}siny32sin2ydy=π320πsiny32sin2ydy

t=cosyとおくと, dt=sinydy
I5=π3211dt1+2t2=π301dt1+2t2=π3201(2t)1+(2t)2dt=π32[arsinh2t]01
I5=π32log(2+3)



3.3: 問題6~10

総和 B

I6=02π(k=1nksinkx)2dx(nは自然数)



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ポイント: 総和, 三角関数
大学受験の数学でたまに出題される問題. 誘導なしの場合, 二重総和の処理が難しいので解いた経験があるかどうかで難易度が決まる.


I6=02π(k=1nksinkx)(l=1nlsinlx)dx=02πk=1nl=1nklsinkxsinlxdx=k=1nl=1nkl02πsinkxsinlxdx

k=lのとき, 02πsinkxsinlxdx=02πsin2kxdx=[1cos2kx2]02π=π
klのとき, 02πsinkxsinlxdx=1202π{cos(kl)xcos(k+l)x}dx=12[sin(kl)xklsin(k+l)xk+l]02π=0

I6=k=1nπk2=n(n+1)(2n+1)6π



I7=x2+1x+x2+13dx



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ポイント: 全体置換
x+x2+13の積分はそのまま計算できないので, これを置換する. 不定積分なので最後の処理が面倒.


y=x+x2+13とおくと, 3y2dy=x+x2+1x2+1dx=yx2+1dx
y3=x+x2+1よりy6=2xy3+1x=y612y3x2+1=y6+12y3
I7=(y6+12y3)y3(y6+1)2y4dy=34(y6+2+1y6)dy=34(y77+2y15y5)+C
I7=345y12+70y6735y5+C

y6=2xy3+1であるから5y12+70y67=5(2xy3+1)2+70y67=(20x2+70)y6+20xy32=(20x2+70)(2xy3+1)+20xy32
5y12+70y67=40x(x2+4)y3+20x2+68となる.
I7=30x(x2+4)(x+x2+1)+15x2+5135(x+x2+1)53+C



I8=π2π2(1+sinx)ndx(nは自然数)



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ポイント: ウォリス積分
1+(三角関数)の形があるので, 半角の公式が使えるか試す. 後はウォリス積分なので漸化式を作って計算しても, 公式に代入してもよい.


2y=x+π2とおく.
I=0π2(1cos2y)ndy=2n+10π2sin2nydy

ウォリス積分より
I=2n+1(2n1)!!(2n)!!π2=2n(2n1)!!(2n)!!π=(2n)!2nn!2π



I=0πsin(x2)sinxdx



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ポイント: King Property, sinx±cosx置換
sin±cos置換の基本問題. 初見で解く難易度は高いが, スマートな解答ができる良問だと思う.


King Propertyより, y=πxとおく.
I9=0πcos(y2)sinydy=120π(cosx2+sinx2)2sinx2cosx2dx

y=sinx2cosx2とおくと, 2dy=(sinx2+cosx2)dx,2sinx2cosx2=1y2
I9=111y2dy=π2



I10=esin4xcosx(1+2cos2xcos4x)sin9xdx



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ポイント: 怪しい部分の置換
sin4xの主張が強すぎる. 置換後はett2の微分を見つけるのが難しいくらい.


t=sin4xとおくと, dt=4sin3xcosxdx
I10=et(2t)4t3dt=14(2ett3ett2)dt=14(ett2)dt=et4t2+C
I10=esin4x4sin8x+C



3.4: 問題11~15

I11=e2x1e4x+4e3x+10e2x+4ex+1dx



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ポイント: 相反方程式, ex±ex置換
分母の多項式の係数が対称なので, exで割ると上手くいく. 分子の値からex±ex置換はプラスの方を取って置換する.


I11=exexe2x+4ex+10+4ex+e2xdx

t=ex+exとおくと, dt=(exex)dx,e2x+e2x=t22
I11=dtt2+4t+8=dt(t+2)2+4=(t/2+1)(t/2+1)2+1dt=arsinh(t2+1)+C
I11=arsinh(coshx+1)+C=log(1+ex+ex2+1+(ex+ex2)2)+C



I12=abcos(xabx)dx(ab0)



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ポイント: 偶関数, 奇関数
三角関数の中身に1/xがあるので, これを処理する. できることは限られるので, 試行錯誤していれば積分できる.


ab=0のとき I12=abcosxdx=sinbsina
ab>0のとき t=xabxとおくと, dt=(1+abx2)dx,t=xabxx=t±t2+4ab2,1+abx2=2tx
I12=abbax2xtcostdt

偶関数, 奇関数の積分の性質より
I12=abbat±t2+4ab±2t2+4abcostdt=12abba±tt2+4ab+t2+4abt2+4abcostdt=0bacostdt=sin(ba)
I12=sin(ba)



I13=x2(xcosxsinx)2dx



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ポイント: 部分積分
xcosxsinxが怪しいので微分すると, (xcosxsinx)=xsinxとなるので部分積分をする.


I13=(xcosxsinx)(xcosxsinx)2(xsinx)dx=x(xcosxsinx)sinx+dxsin2x=x(xcosxsinx)sinx1tanx+C
I13=xsinx+cosxxcosxsinx+C



I14=01x3nxx4dx(n0以上の整数)



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ポイント: 怪しい部分の置換
作問した感想ですが, ルート絡みの積分は三角関数, 双曲線関数の置換で簡単になることが多いので, その置換ができないようにしたかった.


y=x32とおくと, dy=32x12dx
I14=2301y2n1y2dy

n=0のとき, 円の積分になるから
I14=23011y2dy=π6

n1のとき, y=sintとおくと, dy=costdt
I14=230π2sin2ntcos2tdt=230π2(sin2ntsin2n+2t)dt=23{(2n1)!!(2n)!!(2n+1)!!(2n+2)!!}π2
I14=2(2n1)!!3(2n)!!(12n+12n+2)π2=(2n1)!!3(2n+2)!!π=(2n)!4nn!2(n+1)π6
I14=(2n)!4nn!2(n+1)π6



I15=430(2t+1)3(t2)3(t2+1)(3t1)3(t+3)3dt



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ポイント: tan置換, 三倍角の公式
t2+1があり, 2t+1,t2,3t1,t+3tanの加法定理で見られるような値なので, tan置換で計算する.


実数απ2<α<0,tanα=43を満たす. t=tanθとおくと, dt=(t2+1)dx
I15=α0(2tanθ+1)3(tanθ2)3(3tanθ1)3(tanθ+3)3dθ=α0(2sin2θ3sinθcosθ2cos2θ)3(3sin2θ+8sinθcosθ3cos2θ)3dθ=α0(3sin2θ+4cos2θ)3(4sin2θ3cos2θ)3dθ=α0tan3(2θα)dθ
I15=122α0tan3(θα)dθ=122α0({tan(θα)}1)tan(θα)dθ=14[tan2(θα)+2log|cos(θα)|]2α0
I15=0



3.5: 問題16~22

I16=0π2cosx+cos3x+cosxsinx(1+sinx)23dx



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ポイント: 三角関数, 怪しい部分の置換
根号の中を整理して残った部分を置換して積分する. 1t3+1,1t4+1の積分はどちらも部分分数分解を利用して計算するが, 結構重たい計算を要求されるので慣れが必要だと思う.


I16=0π2sinx+sin3x+cosxsinx(1+cosx)23dx=0π2cosxsinx(1cosx)(1+cosx)23dx=0π2tanx2cosx3dx

t3=cosxとおくと, dx=3t2sinxdt
I16=01tanx23t2sinxdt=013t31+t3dt=3301dt1+t3=301(1t+1+3((2t1)/3)((2t1)/3)2+1122t1t2t+1)dt
I16=3[log|1+t|12log|t2t+1|+3arctan((2t1)/3)]01=3log2+π3



I17=221(x4x6)1x232x864x6+40x48x2+1dx



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ポイント: 三角関数
1x2と下限の値からsincosで置換する. どちらでも計算できるが, 置換後の積分区間の綺麗さとcosを含む変形の方が多いのでcosで置換する. sin42t+cos42tを作れることに気が付くのが難しい.


x=costとおくと, dx=sintdt
I17=0π4(cos4tcos6t)sin2t32cos8t64cos6t+40cos4t8cos2t+1dt=0π4(cos4tcos6t)sin2t18cos2t(1cos2t)(2cos2t1)2dt=0π4cos4tsin4t18cos2tsin2tcos22tdt
=1160π4sin42t12sin22tcos22tdt=1160π4sin42tcos42t+sin42tdt=1320π2sin4tcos4t+sin4tdt
King Propertyより, s=π2tとおく.
I17=1320π2cos4scos4s+sin4sds=1640π2dt=π128



I18=01x2log(x+1)(x2+1)2dx



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ポイント: 部分積分, King Property
積分できる部分を順番に積分をして, 最後に残った積分を頑張って解く問題. tanx+10からπ4の積分はKing Propertyで処理する.


I18=01(x2+1)(x2+1)2xlog(x+1)2dx=[xlog(x+1)2(x2+1)]01+12011x2+1(log(1+x)+x1+x)dx
=14log2+12011(x+1)(x2+1)dx+1201log(1+x)x2+1dx=14log2+1401(x+1x2+11x+1)dx+1201log(1+x)x2+1dx
=14log2+14[12log|x2+1|log|x+1|+arctanx]01+1201log(1+x)x2+1dx=38log2+π16+1201log(1+x)x2+1dx


log(1+x)x2+1の積分についてx=tantとおくと, dx=(tan2t+1)dt
01log(1+x)x2+1dx=0π4log(1+tant)dt

King Propertyより, s=π4tとおく.
0π4log(1+tant)dt=0π4log(1+tan(π4s))ds=0π4log(1+1tans1+tans)ds=π4log20π4log(1+tans)ds
0π4log(1+tant)dt=π8log2I18=π16+π616log2



I19=1xn(x21)dx(nは自然数)



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ポイント: 部分分数分解
積分よりも部分分数分解がメインで他とは毛色が違う問題. 積分と級数の関係性が見られる.


部分分数分解をする.
1xn(x21)=Ax1+Bx+1+k=1nCkxk
1=Axn(x+1)+Bxn(x1)+(x21)k=1nCkxnk
係数比較して
A+B+C1=0,AB+C2=0,Cn=1,Cn1=0,Cm+2Cm=0(m=1,2,,n2)A=12,B=(1)n12,Cm=1+(1)n+m2

n1で代入できるように調整して
I19=1xn(x21)dx=(Ax1+B1+x+k=1nCkxk)dx=Alog|1x|+Blog|1+x|+C1log|x|+Cn+1nxnk=1nCk+1kxk+C
I19=12log|1x|+(1)n12log|1+x|1+(1)n+12log|x|+k=1n1+(1)n+k12kxk+C



I20=1+x2(1x2)1+x4dx



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ポイント: x±1/x置換, 符号関数
偶数次式しかないので, x±1/xの置換が有効な問題. xの正負に注意しなければならないので, 積分ガチャの超級でも符号関数を使う難問である.


y=x1xとおくと, dy=(1+1x2)dx
I20=1+x2(1x2)1+x4dx=1+x2(1x2)1+x4x21+x2dy=x|x|dy(x1/x)x2+1/x2=sgnxdyyy2+2

t=2yとおくと, dt=2y2dy
I20=sgnx1yy2+2y22dt=sgnx2|t|t11+t2dt=|t|2tsgnxarsinht+C
I20=12sgn(x21)arsinh(2xx21)+C



I21=ππsin2nx(1+ex)1+cosxdx(nは自然数)



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ポイント: King Property, 漸化式(ベータ関数)
まずKing Property, 次に1+cosxは半角の公式, 最後にベータ関数の形にする. 一応, すべての積分は高校数学の範囲内で解けるので, 今回はベータ関数を使う場合と使わない場合の両方で計算する.


King Propertyで, y=xとおく.
I21=ππsin2ny(1+ey)1+cosydy=12ππsin2nx1+cosxdx=0πsin2nx1+cosxdx=22n20πsin2nx2cos2n1x2dx
I21=22n20π2sin2nxcos2n1xdx

  • ベータ関数を使う場合
    ジャンドルの倍数公式Γ(x)Γ(x+1/2)=212xπΓ(2x)で変形する.
    I21=2n12Γ(n+1/2)Γ(n)Γ(2n+1/2)=2n12212nπΓ(2n)Γ(2n+1/2)=2n12212nπΓ(2n)2Γ(2n)Γ(2n+1/2)=2n12212nπΓ(2n)2214nπΓ(4n)
    I21=23n1(2n1)!22(4n1)!

  • ベータ関数を使わない場合
    t=sinxとおくと, dt=cosxdx
    I21=22n201t2n(1t2)n1dt

F(2n,n1)=01t2n(1t2)n1dtとして, 漸化式を導く.
F(2n,n1)=[12n+1t2n+1(1t2)n1]01+2(n1)2n+101t2n+2(1t2)n2dt=2(n1)2n+1F(2(n+1),n2)

mを自然数として, m回部分積分をした項まで計算する.
F(2n,n1)=22(n1)(n2)(2n+1)(2n+3)F(2(n+2),n3)=2m(n1)(n2)(nm)(2n+1)(2n+3)(2n+2m1)F(2(n+m),nm1)

m=n1を代入するが, n1なのでm0で対応するようにすると
F(2n,n1)=2m(n1)!(2n1)!!(nm1)!(2n+2m1)!!F(2(n+m),nm1)=2n1(n1)!(2n1)!!0!(4n3)!!F(4n2,0)

二重階乗を計算すると
F(2n,n1)=2n1(n1)!(2n1)!!0!(4n3)!!01t4n2(1t2)0dt=2n1(n1)!(2n1)!!(4n1)!!=2n1(2n1)!2(4n1)!
I21=23n1(2n1)!22(4n1)!



I22=01x2+1+x4x2+1x4x2+1dx



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ポイント: 二重根号
二重根号を外せる関数でMIT Integration Beeにも類題がある積分である. サイト運営者が解けなかったため, 積分ガチャ超級で唯一演出で「DANGER!!」と出る問題.


二重根号を外す. A+B=x2+1+x4x2+1x4x2+1を満たすようなA,Bを求める.
A+B+2AB=x2+1+x4x2+1x4x2+1より, A+B=x2+1x4x2+1,AB=14x44x2+4
(AB)2=(A+B)24AB=(x2+1x4x2+1)21x4x2+1=3x2(x4x2+1)2
A,B=A+B±|AB|2=A+B±(AB)22=x2±3x+12(x4x2+1)=12(x23x+1)

I22=1201(1x2+3x+1+1x23x+1)dx=1201((2x+3)(2x+3)2+1+(2x3)(2x3)2+1)dx
I22=12[arsinh(2x+3)+arsinh(2x3)]01=12[log(2x+3+(2x+3)2+1)+log(2x3+(2x3)2+1)]01
I22=2log(2+3)



演習問題

演習問題とありますが, 知識問題多めになっています.

I=0π2cosxsinx(cos4x+sin4x)(ecos2x+esin2x)dx



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ポイント: 三角関数, 半角の公式
cos2x,sin2xの微分でcosxsinxが現るので, 消えるようにcos2x=cos2xsin2xで置換する. ecos2x+esin2x=ecoshcos2x2を使った問題を作ろうとしてできた.


2t=cos2xとおくと, dt=sin2xdx
I=0π2cosxsinx(e1+cos2x2+e1cos2x2)(cos4x+sin4x)dx=e21212(1+4t2)coshtdt

部分積分t2coshtdt=t2sinht2tsinhtdt=t2sinht2tcosht+2coshtdt=t2sinht2tcosht+2sinhtより
I=e2[(4t2+9)sinht8tcosht]1212=3e7



I=π2π2dx(cos8x+sin8x)(1+ex)



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ポイント: 計算量を減らすこと
おまけの1+exと激重積分があるので, 8乗をどれだけ軽くできるかが大事になる.


King Propertyより2積分を足して, 1+exを消す.

I=π2π2dx(cos8x+sin8x)(1+ex)=12π2π2dxcos8x+sin8x=0π2dxcos8x+sin8x

cos8(π4+x)+sin8(π4+x)=cos8(π4x)+sin8(π4x)が成り立つので, x=π4で対称性が言えて
I=20π4dxcos8x+sin8x=250π4dx(1+cos2x)4+(1cos2x)4=240π4dxcos42x+6cos22x+1=230π2dxcos4x+6cos2x+1

部分分数分解をして
=20π2(1cos2x+3221cos2x+3+22)dx=20π2(1422sin2x14+22sin2x)dx


式が複雑になるので, a=422,b=4+22とおき, 前半と後半に分けて積分する.
前半=20π2dx422sin2x=12a0π2(1asinx+1a+sinx)dx
後半=20π2dx4+22sin2x=12b0π2(1bsinx+1b+sinx)dx

t=tanx2とおくと, dt=t2+12dx
前半=2a01(1at22t+a+1at2+2t+a)dt=2a201(1(t1/a)2+11/a2+1(t+1/a)2+11/a2)dt
後半=2b01(1bt22t+b+1bt2+2t+b)dt=2b201(1(t1/b)2+11/b2+1(t+1/b)2+11/b2)dt


dxx2+c2=1carctanxc+C,arctanx+arctan1x=π2より
前半=2aa21[arctanat1a21+arctanat+1a21]01=22aa21(arctana1a21+arctana+1a21)=22aa21π
前半=2bb21[arctanbt1b21+arctanbt+1b21]01=22bb21(arctanb1b21+arctanb+1b21)=22bb21π


ab=22,a21=21,b21=2+1より
2積分を合わせて, Iを次のようにa, bを使って表せる.
I=22aa21π22bb21π=(1+2)b(21)a4π

a2+b2=8,ab=22より, (ba)2=a2+b22ab=842=2a2b=(1+2)a
I=(1+2)2(21)4aπ=(4+2)4224π



I=02nπ(1+cosx)(1+cosx2)(1+cosx2n1)dx(nは自然数)



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ポイント: 三角関数の総和・総乗
積分より三角関数の変形を知っているかどうかの問題. 積分値の予想はしやすいので数学的帰納法を用いても計算ができそう.


半角の公式より
(1+cosx)(1+cosx2)(1+cosx2n1)=2ncos2x2cos2x4cos2x2n=sin2x2nsin2x2n(sin2x2n0)
x=0,2nπのとき, sin2x2n=0である. limx0sin2x2nsin2x2n=2n,limx2nπsin2x2nsin2x2n=2nより
mを整数として(1+cosx)(1+cosx2)(1+cosx2n1)={sin2x2nsin2x2nif x2nmπ,2nif x=2nmπ.とすれば, 連続となる.

x=2nyとおくと, dx=2ndy,f(x)={sin22nxsin2xif xmπ,2nif x=mπ.として

I=0πf(y)dy
ここでcosの総和を考えると, 2k=02n11cos(2k+1)x=sin2nxsinxなので
I=0π(2k=02n11cos(2k+1)x)2dx=4k=02n11l=02n110πcos(2k+1)xcos(2l+1)xdx
klのとき, 0πcos(2k+1)xcos(2l+1)xdx=12[sin(2k+2l+2)x2k+2l+2+sin(2k2l)x2k2l]0π=0
k=lのとき, 0πcos(2k+1)xcos(2l+1)xdx=[1+cos(4k+2)x2]0π=π2
I=4k=02n11π2=2nπ



I=01(1+2x+(1+x)x)(1+x+xx2)dx



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ポイント: 二重根号
二重根号の特殊なパターンの外し方をする問題が作りたかったので作った. 三角関数置換の対策のために2種類の二重根号付き積分をかけた.


(A+B)2=A+B+2ABより
x+xx2=x42(1x+1+x)
と二重根号を変形できる.

(Ax4+Bx34)2=2ABx+(A2+B2x)xより
2x+(1+x)x=x4x34
と二重根号を変形できる.

I=01(1+x4x34){1+x42(1x+1+x)}dx
展開して個別に積分をする.

1+x4x34の積分

J1=01(1+x4x34)dx=[x+45x5447x74]01=4335


x41xの積分

J2=01x41xdx
x=sin4tとおく.
J2=0π2sint1sin2t4costsin3tdt=40π2(sin4tsin6t)dt=4(3!!4!!5!!6!!)π2=π8


x41+xの積分

J3=01x41+xdx
x=sinh4tとおく.
J3=0log(1+2)sinht1+sinh2t4coshtsinh3tdt=40log(1+2)(sinh4t+sinh6t)dt
ここでsinh2ntdt=2n12nsinh2n2tdt+12ncoshtsinh2n1tが成り立つので
J3=40log(1+2)(sinh4t+sinh6t)dt=23[coshtsinh5t]0log(1+2)+230log(1+2)sinh4tdt
=[23coshtsinh5t+16coshtsinh3t]0log(1+2)120log(1+2)sinh2tdt=[23coshtsinh5t+16coshtsinh3t14coshtsinht+14t]0log(1+2)
J3=7212+14log(1+2)


(xx)1xの積分

J4=01(xx)1xdx

t=1xとおく.
J4=401t4(1t2)2dt=4[15t527t7+19t9]01=32315


(xx)1+xの積分

J5=01(xx)1+xdx

t=1+xとおく.
J5=412t(t21)2(2t2)dt=4[19t9+47t7t5+23t3]12=3263(21)


I=J1+12(J2+J3+J4+J5)=29231260642315+216π+28log(1+2)

投稿日:13日前
更新日:3日前
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  9. 3.2: 問題1~5
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