前回お話しした通り、整数問題には大きく3つの観点があります。
今回はこれの2つ目の「不等式評価をする」についてみていきたいと思います。
ちなみに、本当に難しい問題はこの不等式評価を使う問題が多いです。
不等式評価とは、$m^2-1< m^2< m^2+1$のようにある式を上や下から不等式で抑えることを言います。早速例題を見てみましょう。
$\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{z}=1$を満たす自然数$(x,y,z)$の組を全て求めよ
まず式を見ると、対称的な形をしているとわかります。これはどういうことを意味しているかというと、例えば$(x,y,z)=(1,2,3)$が解なら、順番を並べ替えただけの
$(x,y,z)=(1,3,2),(2,1,3),(2,3,1),(3,1,2),(3,2,1)$
も全て解になるはずです。つまり、$(x,y,z)=(1,2,3)$という解さえ見つけてしまえば、後の5つも自動的についてくるということです。だから、これからは$x,y,z$の順に大きくなっていく、つまり$x\le y \le z$を満たす解を探していきます。
※このように対称性から新たに大小関係の条件を付け足すことは有用なテクニックなので覚えておきましょう。
さて、$x\le y \le z$という不等式を設定しましたが、ここからどうすれば良いのでしょうか?
まず、$\dfrac{1}{x},\dfrac{1}{y},\dfrac{1}{z}$は全て正なので$x,y,z$のうち一つでも$1$(以下)だと、それだけで$\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{z}$が$1$を超えてしまいアウトです。よって$2 \le x,y,z$です。
これで下からの押さえつけは完了したので次に上から押さえこみたいです。つまり$x,y,z\le$○○ というような不等式が欲しいです。
また、実際には$x,y,z$の3つすべてに成り立つ不等式でなくとも1つの文字でも強力な不等式、(例えば$2\le x\le3$みたいなもの)が得られればあとは一つずつ試せばよいので、
最も強力な不等式が得やすそうな文字に注目します。
今回の場合は上から押さえつけるとき、はじめから($x\le y \le z$より)一番小さいとわかっている$x$に注目しましょう。そうすれば上で言う○○の部分の数字をより小さくすることができ、より強い絞り込みができます。
$x\le$○○を示したいとき、逆に$x$が大きかったら何が不都合なのかを考えます。
この問題で言うと、
「$x$が大→$\dfrac{1}{x}$が小→$\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{z}$が$1$に届かない」
と考えます。
ちゃんと書けば、
$x\le y\le z$なので$\dfrac{1}{z}\le \dfrac{1}{y}\le \dfrac{1}{x}$より
$1=\dfrac{1}{z}+ \dfrac{1}{y}+ \dfrac{1}{x} \le \dfrac{1}{x}+ \dfrac{1}{x}+ \dfrac{1}{x}=\dfrac{3}{x}$
より
$1\le \dfrac{3}{x}\Leftrightarrow x\le3$
よって、$2\le x\le3$という強力な不等式を得ました。
あとは、$x=2,3$それぞれの場合について考えればよいです。
$x=2$の時
$\dfrac1y+\dfrac1z=\dfrac12$
$\Leftrightarrow 2z+2y=yz$
$\Leftrightarrow yz-2y-2z=0$
$\Leftrightarrow (y-2)(z-2)=4$
$x=2$ と$z\ge y \ge x$ より$y,z\ge2$なので、$z-2\ge y-2\ge0$
よって$(y-2,z-2)=(1,4),(2,2)$
$\Leftrightarrow (y,z)=(3,6),(4,4)$
$x=3$の時
$\dfrac1y+\dfrac1z=\dfrac23$
$\Leftrightarrow 3z+3y=2yz$
$\Leftrightarrow 2yz-3y-3z=0$
$\Leftrightarrow 4yz-6y-6z=0$←あとから$2$倍するやり方もOK
$\Leftrightarrow (2y-3)(2z-3)=9$
$x=3$ と$z\ge y \ge x$ より$y,z\ge3$なので、$2z-3\ge 2y-3\ge3$
よって$(2y-3,2z-3)=(3,3)$
$\Leftrightarrow (y,z)=(3,3)$
よって$(x,y,z)=(2,3,6),(2,4,4),(3,3,3)$とその並べ替え
この問題で大事なことは、
Ⅰ.対称的な式に遭遇したら大小関係を勝手に決めてもいい
Ⅱ.不等式評価をするといってもやみくもにするのではなく、制約の強い文字に注目し、その文字の値が大きすぎる、または小さすぎるとき、何が不都合なのかを考える
ということです。
(1)$$\dfrac{1}{ab}+\dfrac{1}{bc}+\dfrac{1}{ca}=1$$を満たす整数の組$(a,b,c)$を全て求めよ
A.$(1,2,3),(-1,-2,-3)$とその並べ替え
(2)$l,m,n$は自然数として、$$ v=\dfrac{1}{l}+\dfrac{1}{m}+\dfrac{1}{n}$$とおく.
$v<\dfrac{23}{24}$を満たす$v$の最大値を求めよ.(出典:大学への数学10月号p.5(2025))
A.$\dfrac{19}{20}$
$\dfrac{n^3}{2^n+1}$が整数となるような自然数$n$を全て求めよ
先ほどとは違って、文字が一つしかありません。だから、注目する文字に困ることはありません。では$n$が大きすぎたり、小さすぎたりすると何が不都合でしょうか?
例えば、$n=10$を代入すると$\dfrac{n^3}{2^n+1}=\dfrac{1000}{1025}$となり、整数ではありません。
$n=11$を代入すると、$\dfrac{n^3}{2^n+1}=\dfrac{1331}{2049}$となり、整数ではありません。
...
ここから、「$n$がある程度大きいと、分母が大きくなりすぎて、$\dfrac{n^3}{2^n+1}$が$1$より小さくなってしまう」ということがわかります。さらに$\dfrac{n^3}{2^n+1}$は明らかに正なので、$0$と$1$の間には整数はないから、そのような場合には$\dfrac{n^3}{2^n+1}$は整数になりえないとわかります。
すると、$n^3$が$2^n+1$以下となる条件を求めたくなります。
実験してみると、
| n | n^3 | 2^n+1 |
|---|---|---|
| 1 | 1 | 3 |
| 2 | 8 | 5 |
| 3 | 27 | 9 |
| 4 | 64 | 17 |
| 5 | 125 | 33 |
| 6 | 216 | 65 |
| 7 | 343 | 129 |
| 8 | 512 | 257 |
| 9 | 729 | 513 |
| 10 | 1000 | 1025 |
| 11 | 1331 | 2049 |
となり、$n\ge10$では$2^n+1$の方が大きいと予想できます。このことを証明するためには、厳密には数学的帰納法を用いなければなりませんが模試などではグラフを描けば十分です。
グラフによる大小比較
グラフより、$n\ge10$では$0<\dfrac{n^3}{2^n+1}<1$で不適より、$n\le9$を調べればよく、先ほどの表より、$n=3$が唯一の解です。
$\dfrac{2^n+n}{3^n}$が整数となるような自然数$n$を全て求めよ
$m^3+3m^2+2m+6$が立方数となるような自然数$m$を全て求めよ
前回、$n^2+n+8$が平方数になるような$n$を求める問題をやりました。その時は因数分解が実行できましたが、今回は$3$次式でそううまくいくかはわかりません。そこで不等式による挟み込みの出番です。
$x$の整式$f(x)=a_{n}x^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots a_{0}$が$n$乗数になるような$x$を求めたいとき、$a_{n}$が$n$乗数の場合は、つまり、$a_n=m^n$と表せる時は
$$(mx-○○)^n\le f(x)\le(mx-△△)^n$$という不等式で挟み込むとうまくいくことが多い。
(ただし$(\sqrt[n]{a_{n}}x-○○),(\sqrt[n]{a_{n}}x-△△)$は整数になるようにすること!
つまり、分数が係数に入っていてはいけない)
特に$a_{n}=1$の時は
$$(x-○○)^n\le f(x)\le(x-△△)^n$$
となる。
また、○○と△△に当てはまる数を決めるときには$a_{n-1}$に注目するとよい。
$n$乗数というのはある非負整数$z$を用いて$z^n$と表せる数のことです。
今回の場合を見てみましょう。(与式)=$m^3+3m^2+2m+6$は、だいたい$(m+1)^3$くらいなのでその近辺で挟み込みを試みます。
また、先ほどの$n^3$と$2^n+1$の例と同じように、すべての$m$で成り立つ不等式を作る必要はありません。例えば、$n=1,2,3$の時のみ成り立たないような不等式がたったら、$n=1,2,3$の時は個別に考えられるので問題ないです。
これを踏まえて、$$m^3< m^3+3m^2+2m+6<(m+1)^3$$という不等式を考えます。いったん、この不等式が成り立つような$m$について考えます。すると、$m^3+3m^2+2m+6$は隣り合う二つの立方数に挟まれていることになり、その間に立方数があるわけがありません。よって、このような$m$に対しては、$m^3+3m^2+2m+6$が立方数となることはありません。
では、上の不等式はどのような時成り立つでしょうか?
$m^3< m^3+3m^2+2m+6<(m+1)^3$
$\Leftrightarrow m^3< m^3+3m^2+2m+6< m^3+3m^2+3m+1$
$\Leftrightarrow\begin{cases} 0<3m^2+2m+6\\ 0< m-5 \end{cases}$
$\Leftrightarrow 5< m$
よって、$m\le5$の時のみ考えればよいです。
$m=1$の時
$m^3+3m^2+2m+6=12$より不適
$m=2$の時
$m^3+3m^2+2m+6=30$より不適
$m=3$の時
$m^3+3m^2+2m+6=66$より不適
$m=4$の時
$m^3+3m^2+2m+6=126$より不適
$m=5$の時
$m^3+3m^2+2m+6=216=6^3$よりOK
したがって、$m=5$が唯一の解である。
$f(x)< g(x)< h(x)$
という不等式で挟み込むとき、この不等式がある整数$N$よりも大きい範囲でずっと成り立っていなければ意味がありません。このような不等式を作るためには、関数のつよさに着目する必要があります。$f(x),g(x),h(x)$の順につよくなっていれば、この不等式は十分大きい$x$で成り立ちます。
関数のつよさは、下のように見ます。
Ⅰ.多項式関数のつよさ
多項式は、最高時の係数から順々に見ていき、同点なら一個下の項、、、という風に続けていってある時点でどちらかが大きかったらそちらがつよい関数です。
違う言い方では、$g(x)-f(x)$の最高次の係数が正の時、$g(x)$の方がつよいです。
Ⅱ.指数関数のつよさ
まず、底が$1$よりも大きいような指数関数はどんな多項式関数よりも強いです。
指数関数同士では底が大きい方がつよいです。
(数Ⅲの極限の分野の関数の強弱とは異なります。)
このヒエラルキーを意識した不等式を作るように心がけましょう。
先ほどの問題においても
$$f(m)=m^3$$ $$
g(m)=m^3+3m^2+2m+6$$ $$
h(m)=(m+1)^3=m^3+3m^2+3m+1$$
とすれば$f(m),g(m)$においては、2次の係数までをみて$f(m)$よりも$g(m)$の方がつよいとわかり、$f(m),g(m)$においては、1次の係数までをみて$g(m)$よりも$h(m)$の方がつよいとわかります。
ただし、$m$が負の値も取りうる場合はそううまくはいかないこともあるので気をつけましょう。
$$f(x)=x^4+x^3+x^2+x+1$$が平方数となるような正の整数$x$を全て求めよ
この問題は解説を書きます
(解説)
整数$y$を用いて$f(x)=y^2$とおきます。
$$g(x)=(x^2+\dfrac12x+\dfrac12)^2=x^4+x^3+\dfrac54x^2+\dfrac12x+\dfrac14$$
$$h(x)=(x^2+\dfrac12x)^2=x^4+x^3+\dfrac14x^2$$
とすると、先ほどの関数のつよさの観点からすれば$h,f,g$の順につよいので
$h(x)< f(x)< g(x)$という不等式を考える価値があります。また、挟み込むとき、分数が係数に入っていてはいけなかったので、$4$倍します。ここで、
$$4f(x)=4y^2=(2y)^2$$
です。
また、
$$4g(x)=4x^4+4x^3+5x^2+2x+1$$
$$4h(x)=4x^4+4x^3+x^2$$
なので、
$4h(x)<4f(x)$
$\Leftrightarrow4x^4+4x^3+x^2<4x^4+4x^3+4x^2+4x+4$
$\Leftrightarrow0<3x^2+4x+4$
これは常に成り立ちます。よって、$4h(x)<4f(x)$
つぎに、
$4f(x)<4g(x)$
$\Leftrightarrow4x^4+4x^3+4x^2+4x+4<4x^4+4x^3+5x^2+2x+1$
$\Leftrightarrow0< x^2-2x-3=(x-3)(x+1)$
$\Leftrightarrow x<-1,3< x$
よって、($x$は正の整数なので)$3< x$の時、$4f(x)<4g(x)$
さらに$4h(x)<4f(x)$と合わせて、$3< x$の時、$4h(x)<4f(x)<4g(x)$
つまり、$$4(x^2+\dfrac12x)^2<(2y)^2<4(x^2+\dfrac12x+\dfrac12)$$
$$\Leftrightarrow (2x^2+x)^2<(2y)^2<(2x^2+x+1)^2$$
しかし、これは連続する二つの平方数の間に平方数が存在することになり矛盾です。よって$x\le3$がわかります。
$x=1$の時、$f(x)=5$よりだめ。
$x=2$の時、$f(x)=31$よりだめ。
$x=3$の時、$f(x)=121$よりOK。
よって、$x=3$が唯一の解。
これで、不等式評価の簡単な部分はさらえたでしょう。いよいよ次で3つの観点の最後なので頑張りましょう!