3

積の和典型の3通りの証明

503
0
$$$$

「積の和典型」と呼ばれる次の命題を3通りの方法で証明します.

積の和典型

$m\leq n$を正整数とする.$a_1+a_2+\cdots+a_m=n$なる正整数の組$(a_1,a_2,\dots a_m)$全てに対する$a_1a_2\cdots a_m$の値の総和は$ {}_{n+m-1} \mathrm{ C }_{n-m} $に等しい.

その1:玉を除く

横一列に並んだ$n+m-1$個の玉から$m-1$個の玉を除いて$a_1,a_2,\dots,a_m$個の玉のグループに分け,さらに各グループから$1$個ずつ玉を除くことを考えると除き方は各組$(a_1,a_2,\dots,a_m)$に対して$a_1a_2\cdots a_m$通りだけある.これを全ての組に対して行うことは$m+n-1$個の玉から$2m-1$個を選んで除くことと等価なので,結局積の和は${}_{n+m-1} \mathrm{ C }_{n-m}$である.$\square$

その2:マス目に沿った経路

$(0,0)$から$(2m,n-m)$まで格子点を通りながら最短経路で行く方法であって$(2m,n-m-1)$を通らないものに対して,経路上で$x$座標が$2k$であるような格子点であって$y$座標が最小であるものを$b_k$とする.このとき$a_1+a_2+\cdots+a_m=n,a_0=0$なる正整数の組$(a_0,a_1,a_2,\dots a_m)$に対して$b_{k+1}-b_k=a_k-1$$k=0,1,2,\dots,m-1$について成り立つような経路が$a_1a_2\cdots a_m$だけある.よってこの積の和は全ての経路の総数に等しく,${}_{n+m-1} \mathrm{ C }_{n-m}$である.

その3:べき級数展開

$$ f(x)=(x+2x^2+3x^3+\dots)$$
とすると所望の値は$f(x)^m$を展開したときの$x^n$の係数である.ところで
$$ f(x)=x(1+x+x^2+\cdots)^2 $$
であるので$(1+x+x^2+\cdots)^{2m}$を展開したときの$x^{n-m}$の係数を求めればよく,これは$n-m$個の玉を$2m$人に分配する方法の総数$ {}_{n+m-1} \mathrm{ C }_{n-m} $である.$\square$

証明その2とその3は偶数番目を決めるという意味で本質的に同じであり,その3も$2$乗に変形するので似たようなものです.ところでこの積の和典型は拡張することができて,一般に$a_1+a_2+\cdots+a_m=n$なる正整数の組$(a_1,a_2,\dots a_m)$全てに対する
$$ \prod_{i=1}^m{}_{a_i} \mathrm{ C }_{x}$$
の総和が求められます.この記事の内容を使ってみたい人はOMC001(D)やOMC168(D)を覗いてみて下さい.

投稿日:927
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

natu
natu
144
14993
複素座標入門を終わらせたら何するか悩んでます

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中