かえでです.
いきなりですが,あなたは不等式証明の手法の1つであるIsolated Fudgingを知っていますか?
※この記事はIMO等の問題のネタバレを含みます.
3変数関数
を示す代わりに
を示すという手法です.
勿論この不等式が成立するとき元の不等式も成立するため,これを示せば不等式が示されます.
1.示すべき不等式が
という形であることを確認する.
このような形の時,fudgingによって示される可能性があるので必ずこれを疑いましょう.
2.
新しく関数
で定めます.
3.
を解くことで求める
ただし,この
4.不等式を示す.
を示せ.
これ以外にもfudgingが有効な問題は沢山あります.Yi SunのTeaching Pageにある以下のpdfに幾つか載っているので解きたい方は解いてください.
Smoothing, Fudging, and Ordering
さて,私が調べた限りではfudgingとして紹介されているものは3変数のものが多かったのですが,これらの議論の内容を見るとfudgingは一般にn変数で有効であるような気がしたので,少し考えてみました.
基本的に先ほど紹介した流れと同様です.
1.示すべき不等式が
という形であることを確認する.
2.
ここで1つ問題が出てきます.n変数だと偏微分をして
なので,ここで,ある操作を行います.
そうです.具体的な
まずはお試し,ということで一般化Nesbittの不等式をn変数fudgingで示してみます.
まずは普通のNesbittの不等式を紹介します.
が成り立つ.(等号成立は
を示す.
逆数をとることにより
これをn変数に一般化すると次のようになります.
が成り立つ.(等号成立は
を示す.
逆数を取ることにより
を示せば良いが,
よって示される.
このように,n変数fudgingを利用してn変数の一般化Nesbittの不等式を示すことができます.
これはおそらく初出の証明です.すごいですね.
以下に("n変数fudgingが使えそうな")演習問題を載せるので,n変数fudgingをマスターしたい皆さんは解いてみてください.
なぜ"使えそうな"なのかというと,難しすぎて筆者も解けなくて確認できないからです!研究が進み次第すぐに改変を行いますので,解答を思いついた方はすぐにかえでに教えてください.
このとき,以下の不等式を示せ.
問題1の不等式を
新しい問題を見つけ次第追加していきます.(2024/01/27)
今回この記事を書いていく上で1つ得た事実を書きます.
「n変数fudgingは使用する場面が殆ど無い上にかなり難易度が高いが,作問などで使えば難問を作れる可能性がある.」
以上です.是非上で述べた通り何かを発見した,もしくは思いついた場合はかえでに教えてください.
ここまで読んでくださりありがとうございました.