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コラッツ予想における2進ビットシフト、末尾3bitオートマトン、および連続1列崩壊則に基づく収束構造の研究

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コラッツ予想における2進ビットシフト、末尾3bitオートマトン、および連続1列崩壊則に基づく収束構造の研究

著者: 豊田 修慈(Toyoda Shuji)
日付: 2026年7月 改訂補遺版


概要

コラッツ予想は、任意の正の整数 $n$ に対して、偶数なら $n/2$、奇数なら $3n+1$ を適用する操作を繰り返すと、最終的に $1$ に到達するという未解決問題である。
本稿では、この問題を10進数の算術操作としてではなく、2進表現におけるビットシフト、キャリー伝播、末尾ビット状態遷移として再定式化する。
特に、奇数に対する操作
$$ 3n+1 $$

$$ 3n+1=2n+n+1 $$
すなわち
$$ 3n+1=(n\ll1)+(n+1) $$
として捉える。
ここで $n\ll1$ は、2進表現における1ビット左シフトを表す。
本稿では、奇数の末尾3bitを

      001
011
101
111
    

の4状態に分類し、それぞれの状態が次の奇数へどのように遷移するかを分析する。
さらに、末尾に連続する1の個数を $r$、その直上に連続する0の個数を $z$ と定義し、コラッツ操作が連続1列をどのように短縮、融合、崩壊させるかを記述する。
本稿の中心的な主張は以下である。

  • 増大フェーズを維持し得る末尾状態は 111 型に限られる。
  • しかし 111 型であっても、末尾連続1列 $r$ は次の奇数で必ず1つ短くなる。
  • 単独の0を挟む場合、上位側と下位側の1列が融合することがある。
  • しかし融合には、末尾側の連続1列をキャリーが貫通する必要があり、その過程で $r$ は消費される。
  • 融合によって回収できる長さは、次の0障壁までの有限量に制限される。
  • All-1 状態は保存されず、次の操作で最高位直下に0が生成される。
  • したがって、増大フェーズは自己保存的ではなく、縮小フェーズへの遷移を内包している。

1. 導入

コラッツ写像 $C(n)$ を次のように定義する。
$$ C(n)= \begin{cases} n/2 & \text{if } n \equiv 0 \pmod 2, \\ 3n+1 & \text{if } n \equiv 1 \pmod 2. \end{cases} $$
通常の定式化では、奇数ステップと偶数ステップを逐次的に扱う。
しかし本稿では、奇数から次の奇数への写像を直接扱う。
奇数 $n$ に対して、
$$ T(n)=\frac{3n+1}{2^{v_2(3n+1)}} $$
と定義する。
ここで $v_2(m)$ は、整数 $m$ を割り切る2の最大冪指数である。
この $T(n)$ は次の操作を一括して表す。

      奇数 n
↓
3n+1
↓
偶数である限り2で割る
↓
次の奇数
    

本稿の目的は、$T(n)$ の作用を2進数の末尾構造から解析し、増大と縮小がどのように決定論的に発生するかを記述することである。

2. 奇数操作のビット表現

奇数 $n$ に対して、
$$ 3n+1=2n+n+1 $$
である。
2進法では、$2n$$n$ の1ビット左シフトである。

      n   = b_k b_{k-1} ... b_1 b_0
2n  = b_k b_{k-1} ... b_1 b_0 0
    

一方、$n+1$ は、末尾の連続した1列を0へ反転し、その直上の最初の0を1に変える操作である。
例えば、

      10011111
+       1
---------
10100000
    

である。
したがって、$3n+1$ は次の2つのビット列の和として理解できる。

      左シフトされた自己像 2n
+
末尾1列を破壊した n+1
    

この視点では、コラッツ操作は単なる算術操作ではなく、ビット列の自己干渉とキャリー伝播の過程である。

3. 基本補題:奇数ステップは必ず偶数を生成する

補題1

任意の奇数 $n$ に対して、$3n+1$ は偶数である。

証明

奇数 $n$
$$ n=2k+1 $$
と書ける。
すると、
$$ 3n+1=3(2k+1)+1=6k+4=2(3k+2) $$
である。
したがって、$3n+1$ は必ず2で割り切れる。
よって少なくとも1回の右シフトが必ず発生する。
$$ \square $$


4. 末尾3bitオートマトン

奇数の末尾3bitは、次の4種類に限られる。

      001
011
101
111
    

これらはそれぞれ、
$$ n\equiv1,3,5,7\pmod8 $$
に対応する。


4.1 状態 001

$$ n\equiv1\pmod8 $$
のとき、
$$ 3n+1\equiv3\cdot1+1\equiv4\pmod8 $$
である。
したがって、
$$ v_2(3n+1)\ge2 $$
である。
つまり、001 型は右シフト優位の縮小状態である。


4.2 状態 011

$$ n\equiv3\pmod8 $$
のとき、
$$ 3n+1\equiv3\cdot3+1=10\equiv2\pmod8 $$
である。
したがって、$3n+1$ の末尾3bitは

      010
    

型になる。
1回右シフトすると、次の奇数は末尾2bitが

      01
    

になる。
つまり、

      011 → 010 → 01
    

である。
したがって、011 型は1回の右シフト後に 01 型へ強制遷移する。


4.3 状態 101

$$ n\equiv5\pmod8 $$
のとき、
$$ 3n+1\equiv3\cdot5+1=16\equiv0\pmod8 $$
である。
したがって、
$$ v_2(3n+1)\ge3 $$
である。
つまり、101 型は少なくとも3回の右シフトを誘発する強い縮小状態である。


4.4 状態 111

$$ n\equiv7\pmod8 $$
のとき、
$$ 3n+1\equiv3\cdot7+1=22\equiv6\pmod8 $$
である。
したがって、$3n+1$ の末尾3bitは

      110
    

になる。
1回右シフトすると、次の奇数は末尾2bitが

      11
    

になる。
つまり、

      111 → 110 → 11
    

である。
111 型だけが、11 型を一時的に維持できる。
この意味で、長期的な増大可能性を持つ唯一の末尾3bit状態は 111 である。


5. 末尾3bitオートマトンのまとめ

末尾3bitごとの状態遷移をまとめると、次のようになる。

      001 → v₂(3n+1) ≥ 2     縮小
011 → 1回右シフト後に 01 型
101 → v₂(3n+1) ≥ 3     強縮小
111 → 1回右シフト後に 11 型を維持
    

したがって、増大フェーズを継続し得るのは 111 型に限られる。
しかし 111 型であっても、末尾連続1列は無限に維持されない。
これを次節で $r,z$ 状態として定式化する。


6. 末尾連続1列長 $r$ と0障壁長 $z$

奇数 $n$ の2進表現が All-1 でない場合、末尾は一意に次の形で書ける。

      [a]0^z1^r
    

ここで、

  • $r=r(n)$:末尾に連続する1の個数
  • $z=z(n)$:その直上に連続する0の個数
  • $a$:さらに上位のビット列
    である。
    整数としては、
    $$ n=a2^{r+z}+2^r-1 $$
    と書ける。
    ただし、
    $$ r\ge1,\quad z\ge1 $$
    である。
    All-1 の場合は $z=0$ と見なせるが、後述するように All-1 は保存されないため、吸収状態ではない。

7. $r\ge2$ の場合:末尾1列は必ず1つ短くなる

補題2

奇数 $n$
$$ n=a2^{r+z}+2^r-1 $$
と書け、かつ $r\ge2$ であるとする。
このとき、次の奇数 $T(n)$ における末尾連続1列長は
$$ r(T(n))=r(n)-1 $$
である。

証明

$$ n=a2^{r+z}+2^r-1 $$
より、
$$ 3n+1=3a2^{r+z}+3\cdot2^r-2 $$
である。
$r\ge2$ のとき、
$$ 3\cdot2^r-2=2(3\cdot2^{r-1}-1) $$
であり、括弧内は奇数である。
したがって、少なくとも1回の右シフトが発生する。
特に $z=1$ の場合、
$$ 3n+1 = 2\left(3a2^r+3\cdot2^{r-1}-1\right) $$
であり、括弧内は奇数であるため、
$$ v_2(3n+1)=1 $$
である。
したがって、
$$ T(n)=\frac{3n+1}{2} = 3a2^{r+z-1}+3\cdot2^{r-1}-1 $$
となる。
この式の末尾は
$$ 3\cdot2^{r-1}-1 $$
によって決まる。
これは2進法で末尾にちょうど $r-1$ 個の1を持つ。
ゆえに、
$$ r(T(n))=r-1 $$
である。
$$ \square $$


8. 0障壁長 $z$ の役割

前節により、$r\ge2$ の場合には、末尾1列長は必ず1つ短くなる。
ここで問題になるのは、その直上の0列 $z$ がどのように変化するかである。


8.1 $z\ge2$ の場合

末尾構造が

      [a]00...011...1
    

であり、0が2個以上連続している場合、$n+1$ によるキャリーは最初の0を1に変えるが、その上にはなお0が残る。
したがって、1回の操作では上下の1列は融合しない。
この場合、0障壁は完全には消えず、融合は阻止される。


8.2 $z=1$ の場合

末尾構造が

      [a]011...1
    

である場合、0障壁が1個しかない。
このとき、$n+1$ によるキャリーはその単独0を1に変えるため、上位側の1列と下位側の1列が融合する可能性がある。
典型例は、

      1110111
    

のような形である。
この場合、中央の単独0が埋まり、より長い連続1列が一時的に生じ得る。
ただし、補題2により、末尾1列そのものは次の奇数において必ず
$$ r\to r-1 $$
となる。
したがって、単独0は融合を生むことはあるが、末尾1列の自己保存を許すわけではない。


9. $r=1$ の場合:01 型の縮小性

末尾1列長が
$$ r=1 $$
の場合を考える。
このとき、奇数は

      [a]0^z1
    

であり、末尾2bitは

      01
    

である。
この状態では、
$$ n\equiv1\pmod4 $$
であるため、
$$ 3n+1\equiv4\pmod4 $$
となる。
したがって、
$$ v_2(3n+1)\ge2 $$
が成立する。
つまり、01 型は少なくとも2回の右シフトを誘発する。
これは、11 型が1回の右シフトでとどまる可能性があるのに対し、01 型が明確に縮小優位であることを示す。


10. All-1 状態の不安定性

特別な場合として、全ビットが1である数を考える。
$$ n=2^L-1 $$
すなわち、

      111...111
    

である。
このとき、
$$ 3n+1 = 3(2^L-1)+1 = 3\cdot2^L-2 $$
である。
1回右シフトすると、
$$ T(n)=3\cdot2^{L-1}-1 $$
である。
この2進表現は、

      10111...111
    

となる。
例えば、

      11111 → 101111
    

である。
したがって、All-1 状態は保存されない。
これは、
$$ 3n+1=2n+(n+1) $$
という分解からも説明できる。
All-1 に対して、

      2n   = 111...1110
n+1  =1000...000
    

であり、$n+1$ により全ての末尾1列を貫通したキャリーが発生する。
その結果、最高位側で繰り上がりが起こり、最高位直下に必ず0が生成される。
よって、$z=0$ は吸収状態ではない。
連続1列がビット長全体に到達したとしても、その状態は保存されず、次の操作で内部に0を生成する。


11. 111...0...111 型の融合と崩壊

ここまでの議論から、次の構造が見える。

      111...0...111
    

上位側と下位側に1列があり、その間に0列がある場合、0列長 $z$ によって挙動が変わる。

11.1 0列長が1の場合

      111...0...111
    

で、0が1個だけの場合、$n+1$ によるキャリーによってその0が埋められ、上下の1列が融合する可能性がある。
このとき、連続1列は一時的に伸びる。


11.2 0列長が2以上の場合

      111...00...111
    

のように、0が複数ある場合、1回の操作では0障壁を突破できない。
そのため、上下の1列は融合せず、末尾1列は補題2により短くなる。


11.3 All-1 への到達と反転

仮に単独0の融合を繰り返して All-1 状態に近づいたとしても、All-1 状態は保存されない。
All-1 状態では、次の奇数で最高位直下に0が生成される。
したがって、

      連続1列の成長
↓
All-1
↓
最高位直下の0生成
↓
再び [a]0^z1^r 型へ復帰
    

となる。

補遺A:標準形への有限復帰

A.1 標準形

任意の奇数 $n$ の2進表現は、次のいずれかである。

  1. All-1 型:
    $$ n=2^L-1 $$
  2. 非 All-1 型:
    $$ n=a2^{r+z}+2^r-1 $$
    すなわち、
      [a]0^z1^r
    

ただし、
$$ r\ge1,\quad z\ge1 $$
である。
これは、奇数の2進表現が必ず末尾に1を持つこと、および All-1 でない限り末尾1列の直上に最初の0が存在することから従う。


A.2 All-1 は保存されない

All-1 型
$$ n=2^L-1 $$
に対して、
$$ T(n)=3\cdot2^{L-1}-1 $$
であり、その2進表現は

      10111...111
    

となる。
したがって、All-1 は1回の奇数写像で非 All-1 型へ移る。
ゆえに、任意の奇数状態は、最初から標準形であるか、All-1 であっても1回後には標準形
$$ [a]0^z1^r $$
へ復帰する。


補遺B:単独0障壁と $v_2$ の厳密値

B.1 命題

$$ z=1,\quad r\ge2 $$
のとき、
$$ v_2(3n+1)=1 $$
である。

証明

$z=1$ より、
$$ n=a2^{r+1}+2^r-1 $$
と書ける。
したがって、
$$ 3n+1 = 3a2^{r+1}+3\cdot2^r-2 $$
である。
2を括ると、
$$ 3n+1 = 2\left(3a2^r+3\cdot2^{r-1}-1\right) $$
となる。
ここで $r\ge2$ だから、
$$ 3a2^r $$
および
$$ 3\cdot2^{r-1} $$
はいずれも偶数である。
したがって、
$$ 3a2^r+3\cdot2^{r-1} $$
は偶数であり、そこから1を引いた
$$ 3a2^r+3\cdot2^{r-1}-1 $$
は奇数である。
よって、
$$ 3n+1=2\times(\text{奇数}) $$
であるため、
$$ v_2(3n+1)=1 $$
である。
$$ \square $$


B.2 帰結

$z=1,\ r\ge2$ の領域では、2回以上の右シフトは発生しない。
したがって、この領域では各ステップで
$$ r\to r-1 $$
が確実に発生する。
一方、$r=1$ に到達すると、末尾は 01 型となり、
$$ v_2(3n+1)\ge2 $$
が強制される。
したがって、

      (r,1)
↓
(r-1,1)
↓
(r-2,1)
↓
...
↓
(1,1)
↓
v₂ ≥ 2 の縮小状態
    

という有限寿命構造が得られる。

補遺C:融合コスト補題

C.1 目的

単独0を挟んだ上下の1列は融合することがある。
しかし、この融合は自由に起こるものではない。
融合が起こるためには、$n+1$ によるキャリーが末尾の連続1列 $1^r$ を貫通して、直上の単独0へ到達する必要がある。
その過程で、末尾側の連続1列は破壊される。
この意味で、融合には $r$ の消費、より正確には末尾1列の寿命消費が必要である。


C.2 補題:融合コスト補題

奇数 $n$ の2進表現が局所的に

      [b]1^m 0 1^r
    

という構造を含むとする。
ここで、中央の0は単独0障壁であり、右側の $1^r$ は末尾側クラスタである。
この単独0が埋まり、左右の1列が融合するためには、$n+1$ のキャリーが右側の $1^r$ 全体を貫通しなければならない。
したがって、融合は右側クラスタ $1^r$ の破壊を伴う。
特に、$r\ge2$ であれば、次の奇数写像において末尾連続1列長は
$$ r\to r-1 $$
となる。
したがって、融合は末尾クラスタの寿命を保存する操作ではなく、寿命を消費しながら発生する操作である。


C.3 証明

局所構造

      [b]1^m 0 1^r
    

において、$n+1$ を考える。
末尾の $1^r$ に1を足すと、キャリーは $1^r$ をすべて0に反転し、その直上の0に到達する。
したがって、

      0 111...111
+          1
------------
1 000...000
    

となる。
つまり、単独0は1に変わり得るが、そのためには右側の $1^r$ 全体がキャリーによって消費される。
一方、奇数写像 $T(n)$ においては、補題2により、$r\ge2$ の場合、
$$ r(T(n))=r(n)-1 $$
である。
したがって、単独0を埋める融合過程は、末尾クラスタ $1^r$ の寿命を保存しない。
むしろ、
$$ r\to r-1 $$
という寿命消費を伴う。
ゆえに、融合は寿命生成ではなく、寿命消費を伴う再配置である。
$$ \square $$


補遺D:融合回収量の有限性

D.1 命題

融合が起きたとしても、融合によって得られる連続1列の長さは、次の0障壁までの有限長に制限される。
したがって、融合による寿命回収量は有限である。


D.2 証明

任意の有限な2進表現は、1列と0列の交互列として表せる。
例えば、
$$ 1^{s_k}0^{z_k}1^{s_{k-1}}0^{z_{k-1}}\cdots0^{z_1}1^r $$
である。
単独0障壁 $z_i=1$ が埋まると、隣接する2つの1列は融合し得る。
しかし、その融合は次の0障壁に到達した時点で停止する。
すなわち、

      1^p 0 1^q
    

は融合によって

      1^{p+q+1}
    

となり得るが、その上位側にさらに

      0^z
    

が存在すれば、そこで融合は停止する。
したがって、融合により得られるクラスタ長は、次の0障壁までの有限量で上界付けられる。
また、仮に全ビットが1となる All-1 状態に到達したとしても、補遺Aより All-1 は保存されず、次の奇数写像で内部に0を生成する。
ゆえに、融合は無限長の1列を生成する機構にはなり得ない。
$$ \square $$


補遺E:クラスタ寿命関数

E.1 定義

2進表現中の連続1列をクラスタと呼ぶ。
各1クラスタの長さを
$$ r_1,r_2,\ldots,r_k $$
とする。
増大能力を持つクラスタは $r_i\ge2$ のものと考え、クラスタ寿命関数を
$$ W(n)=\sum_{i=1}^{k}\max(r_i-1,0) $$
と定義する。
ここで、

  • $r_i=1$ のクラスタは寿命0
  • $r_i=2$ のクラスタは寿命1
  • $r_i=3$ のクラスタは寿命2
    と解釈する。
    すなわち、$W(n)$111 型の増大能力がどれだけ残っているかを表す量である。

E.2 局所寿命減少

補題2より、末尾クラスタに対して $r\ge2$ なら
$$ r\to r-1 $$
である。
したがって、そのクラスタの寿命
$$ r-1 $$
は1減少する。


E.3 融合と寿命再配置

融合が起きる場合、複数のクラスタが1つのクラスタに再配置される。
例えば、

      1^p 0 1^q
    

が融合すれば、

      1^{p+q+1}
    

となり得る。
このとき見かけ上のクラスタ長は増える。
しかし補遺Cより、融合は右側クラスタをキャリーが貫通することによって発生し、その過程で末尾側の寿命消費を伴う。
したがって、融合は寿命を無から生成するものではなく、既存クラスタ寿命の再配置である。


E.4 定理候補:寿命総量の非増加性

今後の主定理候補として、次を置く。

定理候補

任意の奇数 $n$ に対して、奇数写像 $T(n)$ によるクラスタ寿命関数 $W$ は、長期的に非増加である。
すなわち、ある有限ステップ $k\ge1$ が存在して、
$$ W(T^k(n))\le W(n) $$
であり、さらに増大クラスタが消費された場合には
$$ W(T^k(n))< W(n) $$
となる。
この定理が成立すれば、111 型の増大能力は有限資源であり、無限に自己保存することはできないことが示される。


E.5 コメント

本稿で既に示した事実は以下である。

  1. All-1 は保存されない。
  2. $r\ge2$ の末尾クラスタは $r\to r-1$ となる。
  3. $z=1$ の融合にはキャリーによる末尾1列の消費が必要である。
  4. 融合により回収できる長さは次の0障壁までの有限量に制限される。
  5. $r=1$ に到達すると 01 型となり、少なくとも2回の右シフトが発生する。
    したがって、残る課題は、これらの局所散逸則を統合し、$W(n)$ の長期非増加性を全状態空間で示すことである。

補遺F:融合有限性定理

F.1 定理

任意の有限な2進奇数において、単独0を介した1クラスタの融合は起こり得る。
しかし、その融合は以下の制約を受ける。

  1. 融合には、右側クラスタ $1^r$ をキャリーが貫通する必要がある。
  2. その過程で右側クラスタの寿命は消費される。
  3. 融合後のクラスタ長は、次の0障壁までの有限長に制限される。
  4. All-1 に到達しても、その状態は保存されず、次の写像で内部に0が生成される。
    したがって、融合は無限の増大能力を生成する機構ではなく、有限な寿命再配置に過ぎない。

F.2 証明

  1. 融合が起きるためには、2つの1クラスタの間の0列が消える必要がある。
  2. 0列が2個以上ある場合、$n+1$ のキャリーは最初の0で停止し、0障壁全体を突破できない。
  3. したがって、直接融合が起きるためには、障壁長は
    $$ z=1 $$
    でなければならない。
  4. $z=1$ の場合、$n+1$ のキャリーは末尾の $1^r$ をすべて貫通し、単独0を1に変える。
  5. この過程で末尾の $1^r$ は破壊される。
  6. さらに、補題2により、$r\ge2$ では次の奇数において
    $$ r\to r-1 $$
    である。
  7. よって融合は、末尾クラスタの寿命消費を伴う。
  8. 融合後の1列は、上位に存在する次の0障壁までしか伸びない。
  9. 仮に全ビットが1となっても、All-1 は保存されず、次の奇数写像で内部に0を生成する。
    以上より、融合は有限長の範囲でのみ発生し、無限に増大能力を保存することはできない。
    $$ \square $$

12. 収束構造に関する考察

本稿の解析から、コラッツ写像における増大状態は 111 型に集中していることがわかる。
しかし、111 型は自己保存的ではない。
$r\ge2$ の場合、
$$ r\to r-1 $$
であり、$r=1$ に到達すると 01 型となって、
$$ v_2(3n+1)\ge2 $$
の縮小状態へ入る。
また、単独0による融合は一時的なクラスタ拡大を生むが、そのためには末尾1列をキャリーが貫通する必要がある。
その過程で末尾クラスタの寿命は消費される。
さらに、融合によって得られるクラスタ長は次の0障壁までの有限量に制限される。
All-1 に到達しても保存されず、次の操作で内部に0が生成される。
したがって、増大フェーズは以下のような有限寿命構造を持つ。

      111型
↓
rの消費
↓
単独0融合の可能性
↓
有限長クラスタへの再配置
↓
再び r の消費
↓
01型
↓
v₂ ≥ 2 の縮小
    

この構造は、コラッツ写像における増大が無制限に自己保存されるのではなく、ビット列内部に縮小要因を内包していることを示している。

13. 今後の課題

本稿で示した局所構造は、コラッツ写像の増大フェーズが有限寿命であることを強く示唆する。
ただし、コラッツ予想の完全証明とするためには、次の大域的命題を証明する必要がある。

主定理候補

任意の奇数 $n$ に対して、クラスタ寿命関数
$$ W(n)=\sum_i \max(r_i-1,0) $$
は、コラッツ奇数写像の反復により無限に増大しない。
すなわち、
$$ \sup_k W(T^k(n))<\infty $$
であり、さらに有限回以内に縮小優位状態へ遷移する。
この命題が示されれば、111 型による増大は有限寿命であり、無限発散軌道は存在しないことになる。


14. 結論

本稿では、コラッツ予想を2進ビット列の状態遷移として捉え、以下を示した。

  1. 奇数の末尾3bitは4状態に分類できる。
  2. 増大可能性を持つのは 111 型に限られる。
  3. しかし 111 型の末尾連続1列 $r$ は、$r\ge2$ なら必ず1つ短くなる。
  4. $r=1$ に到達すると 01 型となり、少なくとも2回の右シフトが発生する。
  5. 単独0による融合は起こり得るが、そのためには末尾1列をキャリーが貫通する必要があり、寿命消費を伴う。
  6. 融合によって回収できる長さは、次の0障壁までの有限量に制限される。
  7. All-1 状態は保存されず、次の操作で内部に0が生成される。
  8. したがって、増大フェーズは自己保存的ではなく、縮小フェーズへの遷移を内包している。
    以上により、コラッツ写像における増大構造は、2進表現上の連続1列クラスタの有限寿命として解釈できる。
    今後は、この局所的な寿命消費則を、全軌道に対するクラスタ寿命関数 $W(n)$ の大域的非増加性へ拡張することが課題である。

参考:主要な補題一覧

補題1

任意の奇数 $n$ に対して、$3n+1$ は偶数である。

補題2

$$ n=a2^{r+z}+2^r-1,\quad r\ge2 $$
なら、
$$ r(T(n))=r(n)-1 $$
である。

補題3

$$ z=1,\quad r\ge2 $$
なら、
$$ v_2(3n+1)=1 $$
である。

補題4

$r=1$ の場合、
$$ v_2(3n+1)\ge2 $$
である。

補題5

All-1 状態は保存されない。

補題6

融合が起きるためには、単独0障壁 $z=1$ が必要である。

補題7

融合には、末尾クラスタ $1^r$ をキャリーが貫通する必要があり、寿命消費を伴う。

補題8

融合によって回収できるクラスタ長は、次の0障壁までの有限量に制限される。

補足的見解

本稿の議論は、コラッツ写像の増大を確率的平均ではなく、2進ビット列の決定論的構造として捉えるものである。
特に、
$$ 3n+1=(n\ll1)+(n+1) $$
という分解により、増大は左シフトされた自己像と、末尾1列を破壊するキャリー操作との干渉として理解できる。
この観点では、増大フェーズとは、連続1列クラスタが一時的に維持される状態である。
しかしそのクラスタは、操作のたびに
$$ r\to r-1 $$
として寿命を消費する。
融合はこの寿命を見かけ上再配置するが、無限の増大能力を生成するものではない。
したがって、コラッツ予想の核心は、連続1列クラスタの生成、融合、崩壊の総量が無限に増大し得るかどうかに帰着される。
本稿は、その増大能力が有限資源として振る舞うことを示す構造的枠組みを与える。

投稿日:7日前
更新日:7日前
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