2026年東大理系数学・第6問は、約数の性質を深く掘り下げる非常に美しい数論の問題です。
この問題の背景には、$\pmod 3$ における約数の乗法構造が隠れています。
本稿では、多項式 $x^2 - 1$ が生成する主イデアルによる剰余環 $R[x]/(x^2-1)$ を導入することで、この問題が持つ代数的な本質に直接アプローチします。
剰余環の乗法性を活用することで、問題(2)の不等式評価から問題(3)の数値導出まで、全体に流れる代数的構造を一気に見通せる簡潔な解答例を提示します。
正の整数 $n$ に対して、集合 $F(n)$, $G(n)$ およびその要素数 $f(n)$, $g(n)$ を以下のように定義する。
$$ \quad F(n) = \{ d \in \mathbb{Z} \mid d \mid n \text{ かつ } d \equiv 1 \pmod 3 \} $$
$$ \quad G(n) = \{ d \in \mathbb{Z} \mid d \mid n \text{ かつ } d \equiv 2 \pmod 3 \} $$
$$
\quad f(n) = |F(n)|, \quad g(n) = |G(n)|
$$
$n$ と $m$ が互いに素であるとき、$nm$ の任意の約数は $n$ の約数と $m$ の約数の積として一意に表される。したがって、 $\pmod 3$ における合同式の積の性質から、以下の関係式を得る。
$$ \quad f(nm) = f(n)f(m) + g(n)g(m) \quad \cdots \text{①} $$
$$
\quad g(nm) = f(n)g(m) + g(n)f(m) \quad \cdots \text{②}
$$
ここで、 $3$ の倍数でない任意の整数 $d$ に対して成り立つ合同式 $d^2 - 1 \equiv 0 \pmod 3$ に着目する。
この代数的な合同関係を多項式環の上に構成するため、多項式 $x^2 - 1$ が生成する主イデアル $(x^2 - 1)$ による剰余環 $R[x]/(x^2-1)$ を導入する。
この剰余環の元として、以下の多項式 $P_n(x)$ を定義する。
$$ \quad P_n(x) = f(n) + g(n)x $$
互いに素な $n, m$ に対してこの多項式の積を計算すると、式①および②を踏まえて次のように展開される。
$$ \begin{aligned} \quad P_n(x)P_m(x) &= (f(n) + g(n)x)(f(m) + g(m)x) \\ &= (f(n)f(m) + g(n)g(m)) + (f(n)g(m) + g(n)f(m))x \\ &= f(nm) + g(nm)x \\ &= P_{nm}(x) \end{aligned} $$
したがって、$P_n(x)$ は乗法的関数であり、 $n = \prod p_i^{m_i}$ と素因数分解するとき、その性質から以下の積の形に分解できる。
$$ \quad P_n(x) = \prod P_{p_i^{m_i}}(x) $$
ここで、各素数べきに対する因子 $P_{p^m}(x)$ を $\pmod 3$ の条件で分類すると、以下のようになる。
| 素数 $p$ の条件 | 指数 $m$ の条件 | 因子 $P_{p^m}(x)$ の形 |
|---|---|---|
| $p \equiv 0 \pmod 3$ | 特になし | $1$ |
| $p \equiv 1 \pmod 3$ | 特になし | $m + 1$ |
| $p \equiv 2 \pmod 3$ | $m$ が偶数 | $\frac{m + 2 + mx}{2}$ |
| $p \equiv 2 \pmod 3$ | $m$ が奇数 | $\frac{m + 1}{2}(1 + x)$ |
さらに、$n$ の素因数のうち $p_i \equiv 1 \pmod 3$ であるものの因子から定まる正の整数 $A$ を以下のように定義する。
$$ \quad A = \prod_{p_i \equiv 1 \pmod 3} (m_i + 1)$$
(ただし、該当する素因数がない場合は $A = 1$ とする)
多項式に $x = -1$ を代入した値 $P_n(-1) = f(n) - g(n)$ について、上の因数の分類から次の2つのケースが従う。
■ ケースA:$p_i \equiv 2 \pmod 3$ の奇数乗がある場合 因子に $(1+x)$ を持つため、 $x = -1$ の代入により右辺全体が $0$ となる。
$$
\qquad f(n) - g(n) = 0 \quad \cdots \text{③}
$$
各因子に $x = -1$ を代入すると、右辺は正の整数の積 $A$ となる。
$$
\qquad f(n) - g(n) = A > 0 \quad \cdots \text{④}
$$
いずれのケースにおいても $f(n) - g(n) \ge 0$ が成り立つため、$f(n) \ge g(n)$ が示された。((2)の証明終)
(2)の議論に基づき、 $g(n) = 15$ のときの $f(n)$ の値について、因数の分類による各ケースについて求める。
■ ケースA:$p_i \equiv 2 \pmod 3$ の奇数乗がある場合 ③より、$f(n)$と$g(n)$は等しい。
$$
\qquad f(n) = g(n) = 15
$$
④および多項式の共通因数の構造から、次式が成り立つ。
$$
\qquad A = f(n) - 15 = \gcd(f(n), 15, f(n) - 15)
$$
これより、 $A$ は $15$ の正の約数である。
$$
\qquad A \in \{1, 3, 5, 15\}
$$
したがって、 $f(n) = 15 + A$ より、 $f(n)$ のとりうる値は次のように定まる。
$$
\qquad f(n) \in \{16, 18, 20, 30\}
$$
以上より、 $g(n) = 15$ のときに $f(n)$ がとりうる値は、$15, 16, 18, 20, 30$である。((3)の証明終)