ここでは,代数多様体といえば代数閉体$k$上有限型かつ分離的な整スキームとする.
代数多様体$X$は,各点$x\in X$についてストーク$\mcO_{X,x}$が整閉整域になるとき,正規多様体と呼ばれる.
代数多様体$X$は,各点$x\in X$についてストーク$\mcO_{X,x}$が正則局所環になるとき,非特異多様体と呼ばれる.また,ストーク$\mcO_{X,x}$が正則局所環でないとき,$x\in X$を特異点と呼ぶ.
次の命題はよく知られている.証明は略す.
正則局所環は整閉整域である.
特に,この命題から,非特異多様体は正規多様体であることがわかる.
正規多様体は非特異多様体よりも広いクラスであることを分かってもらえればそれでいい.
$\pi:X\to Y$を局所ネータースキームの間の固有射とし,$\mcF$を$X$上の連接層とする.このとき,高次順像$R^i\pi_*\mcF$は$Y$上の連接層であることが知られている.
上の状況で,$n\ge 1$に対し
$$
X_n = X\times_Y \Spec\,\,\mcO_y/\mfm_y^n
$$
と定義する.そして,自然な射$v:X_n\to X$を用いて$\mcF_n = v^*\mcF$と定義する.すると以下が成り立つ.
$\pi:X\to Y$を局所ネータースキームの間の固有射で,$\mcF$を$X$上の連接層,$y\in Y$とする.このとき,
$$
((R^i\pi_*\mcF)_y)^\wedge \cong \varprojlim H^i(X_n,\mcF_n)
$$
が成り立つ.ここで,左辺は$ (R^i\pi_*\mcF)_y$の$\mfm_{Y,y}$-完備化というものを表している.
どういう同型かは理解できていないので,後で,この定理を使うときもふわふわしていると思うが,ご容赦願いたい.
スキームの間の射$\pi:X\to Y$が誘導する層の射$\mcO_Y\to \pi_*\mcO_X$が同型を与えるとき,$\pi$は$\mcO$-連結であるという.
局所ネータースキームの間の固有射$\pi:X\to Y$が$\mcO$-連結であるとき,任意の$y\in Y$に対して$\pi^{-1}(y)$は連結である.
交わりを持たない閉部分集合$X'$と$X''$について$\pi^{-1}(y)=X'\cup X''$となっていると仮定する.すると,各$n$に対して
$$
H^0(X_n,\mcO_{X_n})=H^0(X'_n,\mcO_{X_n})\oplus H^0(X''_n,\mcO_{X_n})
$$
を得る.
(rm. 位相空間として,$X_n$は$\pi^{-1}(y)$と同相であることと,$X=X'\cup X''$($X'$と$X''$は互いに素な閉集合)のとき$H^i(X,\mcO_X)=H^i(X',\mcO_X)\oplus H^i(X'',\mcO_X)$になることを使った.)
$i=0$の場合の定理2より,
$$
\hat{\mcO_y} = (\pi_*\mcO_X)_y^\wedge = \varprojlim H^0(X_n,\mcO_{X_n})
$$
を得る.よって$\hat{\mcO_y}=A'\oplus A''$.という形になることがわかる.
(rm. 構造層の$0$次コホモロジーは大域切断に対応するから,もちろん環の構造を持つ.)
しかし,局所環は他の2つの環の直和とはなりえないので,これは矛盾.
(rm. 局所環の極大イデアルによる完備化は再び局所環になることを使った.)
(rm. もし,局所環が2つの環の直和となったら,2つの環の単位元をそれぞれ$e_1,e_2$としたとき,$e_1+e_2=1,e_1e_2=0$が成り立つ.$e_1e_2=0$より$e_1,e_2$は非単元.つまり,$e_1,e_2$は局所環の極大イデアルに含まれる.よって$e_1+e_2$は$1$になりえない.)
$\pi:X\to Y$が多様体の間の固有かつ双有理な射でさらに$Y$が正規多様体であるとする.このとき,$\pi$は$\mcO$-連結である.
問題は$Y$上局所的なので,$Y$はアフィンで$\Spec A$としてよい.すると,$\pi_*\mcO_X$は連接層なので,$B=\Gamma(Y,\pi_*\mcO_X)$は有限生成$A$加群であることがわかる.
ここで,$\pi$は双有理なので,$X$と$Y$の関数体は同型である.つまり,$B$の商体と$A$の商体は同じ.$A$は整閉整域だったから$A=B$でなければならない.よって$\Gamma (Y,\pi_*\mcO_X)\cong \Gamma (Y,\mcO_Y)$が分かった.よって$A$加群のなす圏と準連接$\mcO_{\Spec A}$加群の圏の間の同値より,$\pi_*\mcO\cong \mcO_Y$である.
特異点解消の観点から嬉しさをアピールしたいと思う.
多様体$Y$の特異点解消とは,固有双有理射$f:X\to Y$で$X$が非特異多様体なもののことをいう.
正規曲面の特異点は孤立していることが知られている.
$f:Y\to X$を$2$次元正規特異点$(X,x)$の特異点解消とする.$f^{-1}(x)_{red}=\sum_{i=1}^r E_i$とすると,交点数$E_i\cdot E_j$を$(i,j)$成分とする行列は負定値になる.
例えば,石井志保子-特異点入門-定理6.1.6を参照.
この定理の証明にZariskiの主定理が使われています.MumfordはZariskiの弟子なので,師匠の定理を使って定理を証明するなんて,なんかいいですね.(まあ,Zariskiの功績が偉大すぎるので,代数幾何やってりゃそりゃいつかは使うことになるでしょうが...)
Zariskiの主定理について知りたいと思って勉強したノートそのまんまですが,誰かの役に立てればと思います.代数幾何に興味を持って貰えれば嬉しいです.